琵琶湖文化館 the Museum Of Shiga Pref
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収蔵品

浮城モノ語り

第2話 扇面散花鳥図

 琵琶湖文化館は仏教美術の博物館として広く親しまれていますが、実は近世の優れた絵画作品も数多く収蔵しています。今回ご紹介する一幅は、江戸時代の琳派(りんぱ)の絵師酒井抱一(さかい・ほういつ 1761~1829)が描いたものです。流水を背景に扇面を散らし、上から梅に鶯(うぐいす)・菜の花に蝶(ちょう)・蒲公英(たんぽぽ)と蓮華(れんげ)・紅白の芥子(けし)を描いています。流水の明るい青色と扇子の赤色や金・銀彩が際立って、洒脱な作品となっています。
 「琳派」とは日本美術史における画派の一つです。江戸時代前期の京都で活躍した俵屋宗達(たわらや・そうたつ)や本阿弥光悦(ほんあみ・こうえつ)、尾形光琳(おがた・こうりん)などが始まりとされ、時代を経てさらにその世界を展開させたのが酒井抱一です。
 抱一は、譜代大名の名門酒井家に生まれ、本名を忠因(ただなお)といいます。抱一が幼少期を過ごした江戸の上屋敷は文化人たちが集うサロンで、機知を好み洒落を愛する江戸の市井文化に触れて成長します。やがて抱一37歳の時に出家することになります。
 その頃から抱一は尾形光琳・乾山兄弟へ傾倒していきます。彼らの画風を熱心に研究し、やがて抱一独自の世界を形成します。京風の可憐で上品な作風はそのままに、写実性やしっとりとした情緒性が加わり、簡潔な構図は洒脱さを増しました。特に宗達・光琳のきらびやかな金箔に対し、抱一は銀箔を巧みに用いて、冷えた美しさをあらわします。京の文化の中で育まれた美の世界を、江戸の文化の中で再構築していったのです。
 こうして抱一が新たに打ち出した琳派は「江戸琳派」として確立され、その後は弟子の鈴木其一(すずき・きいつ)等に受け継がれ、近代ではジャポニズムとして西洋美術に影響を与えました。現代においてもなお我々を魅了し、世界に通じる日本美術の一つとしてインパクトを与え続けています。

(学芸員 稲田 素子)