琵琶湖文化館 the Museum Of Shiga Pref
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収蔵品

浮城モノ語り

第15話 揉み紙風炉先屏風「渋リズム」

 
 和紙は非常に柔軟性に富み、なおかつ強度を備えた素材であったことから、古くから様々に加工されてきました。揉み紙はその名のとおり、紙を揉んで模様を作り出すものであり、紙の持つ特性を最大限に活用した加工方法といえます。
 作業工程としては、まず和紙に色を塗り重ねます。これを手で折ったり揉んだりすると、上層の絵の具だけが割れてその隙間から下層の色が見えます。このワレが揉み紙の模様となるのです。下層と上層の絵の具の配色も大切ですが、最も重要かつ困難であるのは、紙を揉んだ際に上層だけが割れて下層はしっかりと紙に残るようにすることなのです。完成した揉み紙には、一つとして同じものはありません。とくに絵の具が割れた際に出来る「小枝」と呼ばれる小さなワレが揉み紙では重要であり、これが独特の風合いを生むのです。
 本品は、滋賀県無形文化財「揉み紙」の技術保持者であった松田喜代次(1913~1995)が制作した「渋リズム」です。高さ45.6センチメートル、幅188.1センチメートルです。茶室で使用する風炉先屏風であり、柿渋の茶色に黄色の曲線が鮮やかに浮かび上がった作品です。紙は上下の幅を3分割しており、中段を太くして曲線をあらわし、上下段は無数の細い縦筋をやや太めの2本の横筋が束ねています。まるでヨシで作られたかのような雰囲気をもっています。
 揉み紙は基本的には絵画や書、空間などを引き立てる存在であり、それ自体が華やかな存在感を与えるようなものであってはいけません。それでいて独特の存在感を持っているのであり、技術的には非常に高度なものを要します。唐紙屋の8代目であった松田喜代次は、60年以上にもわたりこの絶妙な存在感を持った揉み紙を作りつづけたのであり、伝統的な技術を受け継いだ最後の職人だったのです。
 なお、この作品は、アメリカ合衆国ミシガン州にあるフレデリックマイヤーガーデン&スカルプチャーパーク(グランドラピッツ市)で開催された滋賀特別展「Splendors of Shiga:Treasures from Japan」に出品されました。

(主任 井上 ひろ美)