琵琶湖文化館 the Museum Of Shiga Pref
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浮城モノ語り

第22話 寿老人図
 

 「新年あけまして、おめでとうございます」は正月のあいさつの定番です。なぜ年が明けるとめでたいのか、お餅が食べられるから、お年玉がもらえるから―。子供のころはそんな具合だったかと思います。しかし、子供心にも新年を迎えることに何かしら改まった清い気持ちになる感じがして、新しい年のスタートに背筋が伸びるとともにワクワク感があったように記憶しています。
 このようにわれわれ日本人は、年の改まりとともに、自分自身を再生していくという感性を培ってきました。そうしたものを演出するのが瑞祥画を呼ばれる一群の絵画です。花鳥図では、例えば蓮・水鳥・魚などは「豊かさ」、牡丹は「富貴」、桃は「長寿」、葡萄・瓢箪・石榴などは「子孫繁栄」、鳳凰は「天下泰平」、蝙蝠は「福」と言うように、人々のさまざまな願いが込めらている場合が多く、それらは吉祥図として、人々に親しまれてきました。
 また正月には、一年の「福」を授かろうと、社寺に初詣に出かけますが、その「福の神」の中から選ばれた最強の神々が「七福神」と呼ばれる七柱の福の神です。「七福神」とは、ご存じのように、商売繁盛の神の恵比須、豊作の神の大黒天、学問と財福の神の弁財天、勝負事の神の毘沙門天、開運・良縁・子宝の神の布袋、福徳・長寿の神の福禄寿、長寿・幸福の神の寿老人―の七神です。このうち恵比須は唯一日本の神で、大黒天・弁財天・毘沙門天は「天部」という仏教のほとけであり、もとは古代インドの神です。福禄寿・寿老人は中国・道教の仙人です。布袋は中国の禅僧で、実在した人物です。このように七福神は、インド・中国・日本のそれぞれ異なった宗教の神が合体して出来上がったものです。日本における七福神信仰は室町時代末期ごろにはじまりますが、流行するのは江戸時代に入ってからで、七福神にちなんだ社寺を巡拝する「七福神めぐり」が全国的な広がりをみせ、現在でも各地で行われています。
 本作品は鈴木其一(すずき・きいつ1976-1868)筆の「寿老人図」で、寿老人のルーツは、道教の教祖・老子が天に昇ってなったという仙人です。白髭の老体にあらわされ、長寿を記した巻物を持ち、千五百年生きているという鹿を連れる姿が一般的で、人々に延命長寿の福徳を授けるとされています。
 長寿のシンボルである寿老人は、まさに正月を飾るにふさわしいものであり、年のはじめに長寿・幸福を祈りたいものです。もっとも今の長寿大国日本では、長生きが幸か不幸かわかりませんが、単に長寿ということではなく、心身ともに健康であってこその長寿。「いかに良く生きるか」。寿老人はそう教えているようです。

(学芸員 上野 良信)