琵琶湖文化館 the Museum Of Shiga Pref
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浮城モノ語り

第34話 南山寿星図

 お正月に、よく見かける開運招福を願う七福神。今回は、その七福神の一柱である寿老人の、少し趣の異なる絵をご紹介したいと思います。

 岩に腰を掛け背の高い帽子を被り、杖を携えた白髪・白鬚の老人が寿老人です。傍らには齢千五百年を経た玄鹿が寄添っています。寿老人は南極星の化身とされ、「寿星」とも称され、古くから、寿命を司る神として信仰を集めました。吉祥画として多く描かれていますが、こちらの寿老人は目の落ち窪んだ鬼気迫る容貌で、福の神としては異様です。背景に描かれた松・竹・梅の花を付けた枝が寿老人を覆うように伸びるのも特徴的で、吉祥画とは思えないほどの緊迫感と荘厳な雰囲気が画面全体を支配しています。同じ寿老人でも、第22話で紹介した「寿老人図」と比較すると、その画面の厳かさが伝わってくるのではないでしょうか。

 本作品を描いた狩野栄信(かのう・ながのぶ1775-1828)は奥絵師四家の一つ、木挽町狩野家8代目の絵師です。幼少より厳しい教えを受け、11歳で徳川将軍の御用を務める「奥絵師」としてデビューします。現存する作品には秀作・力作が多く見られ、中国名画の場面をいくつか組み合わせて一画面を構成し、新画題を作る手法を確立しました。また、中国・清代の絵画に学んで、遠近法を取り入れた奥行のある画面空間を作るのに成功しています。さらには、家祖である狩野尚信(かのう・ひさのぶ)風のしゃれた水墨画の再興や、長崎派や南蘋(なんびん)派の影響を思わせる極彩色の著色画、大和絵の細密濃彩の画法の積極的な摂取など、流派にこだわらない新しい狩野派の画風を追求しました。

 数ある寿老図の中でも、本作品のように異様な寿老図は、東京国立博物館に所蔵されている雪舟筆「梅潜(うめくぐ)りの寿老」を原本とするもので、本作品のほかにも模写本が何点か知られていますが、いずれも雪舟ゆかりの雲谷(うんこく)派か狩野派の作品です。明時代の中国に渡り、直接中国画を学んできた雪舟の影響力は大きく、日本離れした独特の趣が狩野栄信をはじめとする多くの絵師に受け入れられたのかもしれません。

(学芸員 上野 良信)