琵琶湖文化館 the Museum Of Shiga Pref
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収蔵品

浮城モノ語り

第41話 活版印刷技術資料

 今回紹介する収蔵品は、長く近現代の印刷技術の主流であった鋳造活字(鉛製活字)を用いた活版印刷に関する資料群です。
 滋賀県内には古代から近世にかけての、特に社寺の活動とともに木版や木活字といった優品が多く現存し、琵琶湖文化館にもこれら日本の印刷文化を伝える作品が寄託、収蔵されています。
 明治以降、日本の近代化・西洋化とともに鋳造活字による活版印刷が広く普及しますが、これらは近年の写真植字やDTP(デスクトップパブリッシング)の登場によって、もはや過去の技術となってしまいました。本資料群は、この失われつつある活版印刷の全容を伝えてくれる資料で、かつて滋賀県の文化財刊行物などを多く手掛けていた中村印刷株式会社(京都市)において使用されていたものです。同社が活版印刷事業に終止符を打つに伴って、所縁のある滋賀県に寄贈されました。
 このように直接印刷所から寄贈されたという経緯もあって、活版印刷の各作業工程で用いられる器具・用具がほぼ欠けることなく、まさに活版印刷所を再現することが可能なほどに、資料が一式揃った状態で収蔵されています。 なお本資料群を活版印刷の各作業工程に分類・列挙すると下記の通りとなります。

1.活字を鋳造する・・・パターン、母型、母型箪笥、活字鋳造機など
2.活字を選ぶ・・・ケース棚(活字棚)、文選箱、すだれケースなど
3.版(版下)を組む・・・植字台、輪郭罫および罫線、現存する組版例など
4.印刷する・・・紙型など


















 ちなみに「母型」とその母型を収納する「母型箪笥」はほぼ全点が寄贈されました。これは右の写真のような細長い銀色の「活字」(左側)は、母型(右側)に鉛を流し込んで鋳造されるため、原型である母型は活字以上に重要であるとされたためです。もし火事などにあった場合は、まずは母型を持って逃げろといわれたほど、印刷所にとっては命と言えるものであったそうです。
 また同社は特に戦後において、京都大学をはじめとする大学や博物館施設などの学術刊行物の印刷を多く手がけてこられたことから、「外字」といわれる特殊な文字や記号を表現する活字が多く鋳造されており、その原型である母型は希少なものであるといえます。
 失われつつある日本の活版印刷文化。その技術と実像を知ることのできる貴重な資料群です。

 

(学芸員 渡邊 勇祐)