琵琶湖文化館 the Museum Of Shiga Pref
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浮城モノ語り

第48話 狗子図

 今回は、今年の干支「犬」を描いた、かわいい作品をご紹介します。「二曲屏風」に無邪気に戯れる子犬たちを描いたもので、作者は有名な円山応挙(1733~95)です。
 石田幽汀(ゆうてい/1721~1786)に狩野派の画法を学んだ応挙は、のちに中国の古画から西洋の画法まで独自に研究を重ね、いわゆる「写生画」という新様式を確立させました。その新しい流れは円山派という一大流派をつくりあげ、多くの門人を輩出しました。

 「写生」の画家と言われるように、応挙は多くの写生帖を描いています。その内容は人物をはじめ、風景、動植物など、まさに百科事典のようで、いずれも対象への鋭い観察眼が行き届いていて、特に動物に対しては、克明な写生の中に深い愛情が込められているようです。その中でも他の画家があまり主題としなかった子犬を好んで描いています。犬はあまりにも日常的な動物であるため、絵の主題に選ばれることも少なかったようです。しかし応挙は、こうした子犬に対しても慈愛に満ちたまなざしで見ています。
 応挙の描く子犬は、いずれも生後間もない子犬たちで、繊細な毛描きは、子犬のふわふわした柔らかさや温かさまでも伝えており、まるでぬいぐるみのようです。思わず「かわいい」とつぶやいてしまいそうです。写生を得意とした応挙であっても、ただ単にカメラで撮影するように写しただけで、かわいいと感じる絵が出来上がるはずもなく、試行錯誤を重ね、かわいいものを「かわいい形」として描く技術を模索し、「応挙スタイルの子犬」を確立したのです。

 子犬は体の色によって描き方が異なりますが、白い子犬と茶色で鼻筋の白い子犬の組み合わせが多く、何度も作品に登場します。おそらく応挙自身が飼っていたか、近くに居たのでしょう。応挙は様々なバリエーションの子犬を描いていますが、犬の体の構造をしっかりと捉えながら、全体はころりとした丸い形の中に収められています。さらに子犬を正・側・背面と、あらゆる方向から観察し、描写し尽くそうとしています。
 本図の子犬もまた、あらゆる角度から描かれています。白い子犬の背によりかかって、気持ちよさそうに眠る子犬は遊び疲れたのでしょうか。リアルさを追求するだけでなく、特徴を強調するという応挙独自の子犬の姿を見ることができます。

 また、応挙の描く子犬は目に特徴があります。実物の犬の目は視線を敵にさとられないように黒目がちでほとんど白目が見えませんが、応挙の描く子犬はしっかり白目の部分が描かれています。それは人間の目に近く、楽しさや不安感など、多彩な感情を表現できるのだそうです。今にもしっぽを振って動き出しそうな応挙の子犬の「かわいい」の秘密はこんなところに隠れているのです。

(学芸員 上野 良信)