琵琶湖文化館 the Museum Of Shiga Pref
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収蔵品

北村季吟(きたむらきぎん) 詠草  1幅       江戸時代  本館蔵
 北村季吟は、名を静厚といい、通称は久助、七松子、拾穂軒、湖月亭などと号している。古典の注釈書を数多く著した人物でもあるが、最もよく知られているのは、「松尾芭蕉の師匠」ということになるだろう。北村氏は野洲郡北村(現 野洲市北)の出自で、季吟の祖父も父も医者であるとともに、連歌もたしなむ文化人であった。季吟も医術を修めるかたわら、京都の有名な俳人 安原貞室に入門して俳諧の手ほどきを受け、その後松永貞徳の門下に入り和歌や古典研究についても指導を受けた。当代一の師匠の元でメキメキと実力をつけた季吟は俳諧に古典学を活かして独自の世界を築き、東本願寺門跡を初めとする多くの門弟を指導するかたわら、古典学の研究分野において「湖月抄」「伊勢物語拾穂抄」「徒然草文段抄」「枕草子春曙抄」「百人一首拾穂抄」など、著名な古典文学の注釈書の執筆に力を注いだ。また幕府の初代歌学方(かがくかた)として歌書の研究と詠歌を司る役職に就き、5代将軍徳川綱吉に和歌の手ほどきを行った。
 今回紹介する書は、寛文13年(1673)に詠まれたもので、
  元旦 けさや春あつさりさつと一霞
  上巳 貂も花に酔やふるきの桃の色
  寛文十三年三月廿十五日 季吟(印)

と書かれている。一首目は「元旦」の朝、目覚めた時に外を見ればうっすらと霞がかかっていたであろうことが詠まれている。二首目「上巳」は桃の節句に桃の花が今を盛りと咲き誇っている様子を詠んでいる。
 この資料はもともと季吟が懐紙にしたためたものであるが、現在は掛け軸装になっている。実はこの資料は、折れや汚れ、表具裂に傷みが見られた。しかし、この資料が江戸時代の俳諧をリードした郷土ゆかりの偉人にかかわる資料であり、他館の展覧会に貸し出す機会も多いことから、平成20(2008)年度に修理を行い、本紙の裏打ち紙を外して打ち直し、裂を新調した。今回の修理により、資料は再び息を吹き返し、安心して活用できるようになったのである。