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滋賀県博物館協議会の情報交換会「どうする!?博物館の防虫・防黴・殺菌」にて
皆さんは滋賀県博物館協議会(略して「県博協」)という組織をご存じでしょうか?
【ホームページより引用】 滋賀県博物館協議会は、県内の博物館施設(美術館・資料館なども含む)相互の連絡を図り、博物館活動を通じて県民文化の振興に寄与するために、公私の別・規模・分野などさまざまな特色ある博物館がその社会的使命の達成のために協力することを目指しており、現在69館(2025年1月現在)が加盟しています。
県内には多様な施設があり、それぞれの分野で個性や魅力を生かした活動を行っています。しかし、個々の取り組みだけでは限界があるのも事実・・・。そこで、各館が「横」のつながりを持ち、相互に連携しながら協力していこうという目的で設立されたのが県博協です。
県内の博物館・美術館を掲載したガイドマップポスターの作成や、分野を超えた情報交換など、さまざまな取り組みを進めています。その取り組みの一つとして先日開催されたのが、情報交換会「どうする!?・・・」です。

「博物館に虫?カビ?菌??」と聞くと驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。でもちょっと待って!嫌がらずに話をきいて~!
作品に悪影響を及ぼすこれらの存在は、程度の差こそあれ、私たちの身近に必ずいる生き物です。その被害をどう食い止めるか・・・博物館でも美術館でも資料館でも図書館でも(!)その予防と対策に頭を悩ませています。さらに厄介なのは、こうした被害が施設にとって「負(マイナス)」のイメージを伴うデリケートな問題であること。「えっ、マジで?」と思われる方も多いでしょう。「カビ🌟出ました♪」なんて軽く言えるものではありません。だからこそ、情報が共有されにくいという厄介さもあるのです。

1月23日に行われた情報交換会では、加盟館や市町の文化財担当者など42名が参加。関心の高さがうかがえました。「防虫・防黴対策のこれまでと今後」「文化財行政の現場における防黴防虫の現状と課題」といった発表が行われる中、当館の武内学芸員も登壇。「滋賀県におけるアルプ燻蒸の実施報告」というテーマでお話ししました。おや?ちょっと聞き慣れない言葉が出てきましたね。 これまで博物館では、虫にもカビにも効く「エキヒュームS」という薬剤を使った燻蒸が主流でした。当館でも、収蔵庫や新しく寄託・寄贈された文化財を守るため、殺虫・殺菌効処理を行ってきました。
ところが昨年、このエキヒュームSが販売中止に。文化財に使えるのは、文化財への負担が少なくエキヒュームSと同じ効果のある「アルプ」という薬剤だけになりました。そこで、これからの対策をどうするかと検討を重ねた結果、「アルプ」を使った燻蒸へ切り替えることになったのです。

館としては初めて扱う薬剤で、対応できる業者も限られていたため、施工までに何度も打ち合わせや聞き取りを重ねました。ガス管理は夜通し続くため、学芸員も宿直当番制で対応し、5日間かけてようやく作業完了。おかげさまで無事に施工することができました。
滋賀県では初めての取り組みだったこともあり、「実際どうでした?」と他館の学芸員さんから問い合わせをいただくことが多く、今回、県博協の情報交換会にて報告させていただきました。

文化財を適切な状態、適切な環境で守っていくことは、とても難しいことです。なぜなら、文化財の状態や材料、これまで置かれていた状況は様々。それらを一つの「収蔵庫」という場所で守っていかなければならないからです。そのためには、文化財のこと、周囲の環境のことをよく見て管理する人間の目、空調や断熱材などの設備、文化財の導線に考慮した構造など、様々な力を合わせていくしかありません。
令和9年12月に開館する新しい琵琶湖文化館の収蔵庫の各設備も、こうした文化財を守るために重要な要素の一つと考えております。災害等により破損の恐れが生じた文化財を緊急的かつ一時的に保管するための「文化財緊急保管庫」や、燻蒸を行うための専用空間も備えます。
現在、滋賀県では、新しい琵琶湖文化館の収蔵庫整備に向け、皆さまのご支援を募っております。ご理解とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
[クラウドファンディング:受付は2/17まで]
今、話題の人物の作品も収蔵しています!

令和8年から羽柴秀長を主人公としたNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」が始まりましたね。琵琶湖文化館にも秀長ゆかりの作品がないかと探していたところ、秀長の名前が書かれた収蔵品がありました!さすが、収蔵品の層が厚い博物館ですね(やや自慢)!!
その作品は、『扶桑城郭誌』という3冊の書籍です。この本はその名前のとおり、東北地方から九州まで日本国内の城郭(城絵図)を記録したものです。上巻には、滋賀県内の城として、彦根城、水口城、膳所城が載せられています。江戸時代中頃に書かれた「主図合結記」を手本に写されたもので、当時、県内にはこの3城しか残っていなかったのです。



書かれています。
[ 扶桑城郭誌/琵琶湖文化館蔵 ]
そして中巻には、奈良県内の城として大和郡山城があり、「天正(年間)半ばより」城主として「大和大納言秀長卿」の名前があります。大和郡山城は筒井順慶により建てられ、秀長によって整備拡張がなされました。秀長は初代城主としてこの地を治め、秀長死後は養子(秀吉の甥、秀次の弟)の秀保が継ぎました(*資料には秀俊がありますが、秀保の誤りです。)細かく見ていくと、西側が右、東側が左に位置し、本丸、二の丸、外堀の様子や、「地形西高し」など地形の注記もあります。
新しい琵琶湖文化館には、県内の文化観光拠点としての役割もあります。
秀長の居城である大和郡山城は県外にありますが、収蔵品の展示をきっかけとして、近江ゆかりの人物の足跡を訪ねてみたり、昔の城絵図を見ながら現地を歩いてみたりする機会が増えていくことを期待しています。
滝川一益を応援したい、なにゆえに
皆さんはご覧になっていますか?NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」で、織田家の重臣・滝川一益(演:猪塚健太)が登場しましたね。一益は伊勢、甲斐攻略などで活躍し、信長から上野国と信濃国の一部を与えられて関東方面の攻略を任されました。信長の天下統一戦争における重要な部将として著名な人物です。

一方で、一益が近江国甲賀郡にルーツを持つことについては、意外と知られていません。
一益の直系子孫が江戸幕府に提出した系図によれば、一益は甲賀郡一宇野(櫟野)城主であった滝川一勝の次男とされています。別の子孫の伝えるところでは、甲賀に出自を有するが生まれたのは尾張国海西郡だともいわれるなど、諸説あるところです。

ただし本人が遺した複数の古文書に「大原滝川」と名乗っている例があり、それはみずからが「大原同名中」の一員だという認識を示しています。戦国期の日本で大小の在地領主層が地域の防衛と支配のために郡単位で結成した連合を「郡中惣」と呼び、近江甲賀郡の「甲賀郡中惣」はその典型例として知られます。「同名中」は郡中惣の下部にあって、在地領主層が自分と名字を同じくする同族や被官、百姓らを傘下に取り込んだ在地組織です。大原同名中は櫟野を含む大原庄の武士たちが結成したもので、一益が大原同名中および甲賀郡中惣へ宛てた書状の差出に「大原滝川一益」と署名するのは出自を強く意識しているからです。

写真は、かつて当館の副館長が撮影した個人蔵の滝川一益書状写です。年不詳7月4日付けのもので、天正2年(1574)から10年までの発給と考えられます。内容は(甲賀)郡中奉行に宛て、郡中で起きた喧嘩を強く非難し、御法度に任せて成敗することがもっともだと勧告しています。差出が「大原滝川一益」と書かれていることが重要で、江戸時代前期の写ではありますが一益の花押をまねた「花押影」も据えられています。一益のルーツが近江甲賀であったことを証拠立てる、貴重な史料です。

どうでしょう、皆さん。 滝川一益、応援したくなったでしょう?
誰もが知るほどの武将ではありませんし、「今回初めて名前を知った」という方もいらっしゃるかもしれません。地元としては「近江甲賀ゆかりの武将」というだけでも十分に“推し”なのですが、大河ドラマや『あきつブログ』をきっかけに、滝川一益とその活躍に注目していただければ幸いです。
ニンニン♪

