日別アーカイブ: 2015年12月4日
工房お訪ね日記③
さてさて、不定期に継続中の工房お訪ね日記。今回は文化財の修理工房で見せていただいた「紙の貼り付けの様子」についてご紹介です。
コチラの作業は、本紙(絵を描いている紙)の裏から裏打紙を貼っておられるところです。本紙に密着する肌裏(はだうら)を美濃【みの】紙で、増裏(ましうら)を美栖【みす】紙で、総裏(そううら)を宇陀【うだ】紙で、三度ないし四度重ねて裏打ちするのだそうです。裏打紙は本紙を守ったり補強する意味があり、それぞれ特徴の異なる紙を重ねることで、表装としてのバランスや巻いた時のしなやかさなどを調節されるそうです。
こちらで使われる手漉き和紙は、奈良で特別に「ゴフンを混ぜて作っていただいたもの」と、うかがいました。ここでワタクシ、またもや聞き間違えをしてしまい・・・「え?古墳を混ぜる??それは奈良だから?!」何ノ事ダカ分カリマセン・・・その後の説明で、「胡粉」は貝殻の微粉末から作られ、混ぜる割合によって微妙に紙の風合いが変わるのだと教えていただきました。ほっ。。内心冷や汗~古墳では無理です(笑)。
使っておられた宇陀紙については、もうこの絶妙な風合いで作れる職人さんがいらっしゃらないとのこと。和紙の原料となる楮(こうぞ)が少なくなっているとは聞いてましたが、技術を持った職人さんまで・・・なんてコトでしょ!あきつ、修行の旅に出てもイイデスカ?
工程では、霧吹きで水を吹き、刷毛で古糊をうっすらと伸ばし、湿らした裏打紙を重ねた上から更に乾いた刷毛でシャッシャッと撫でておられました。皺が寄らないように慎重かつ繊細に・・・と、ここで疑問。使われている糊は、接着力が弱い糊でしたね?そんなに優しく撫でただけでちゃんとくっつくものですか?剥がれてきませんか?ポイントはこの何種類もある刷毛たちです。これらを駆使し使い分けることが重要となります。また手漉きの和紙は、裏から専用の刷毛で叩くと、紙同士が毛羽立って、うまい具合に絡み合い、それで「くっつく」のだそうです。裏打ちの最終段階:総裏ともなりますと、宇陀紙の上からこの見た目にも逞しい極太の刷毛で、シャッシャッどころか、バンバン、ダンダン、ドンドン、と強く叩いて、紙と紙を絡ませるそうです。どうですか、このでっぷりとした専用の刷毛。風格充分!いいお仕事してくれそうです。ということで、糊は、仲介・仲立ち・助っ人的なお役目だけ!なのでまた何年か後に修理が必要となった場合には、裏から水を吹くだけで、うま~く剥がすことが出来るのですね。これに気付いた昔の人はエライ!尊敬します。
ですがここでも問題が。。。この極太の刷毛も、もう作り手さんがいらっしゃらないそうなんです・・・なんてコトでしょ!あきつ、分身を飛ばして後継者となるべく修行をしてきてもイイデスカ?
さて、次回の工房お訪ね日記はいよいよ最終回となります。
筆:あきつ