月別アーカイブ: 4月 2018
夢か現か 猿の面影
現代の桃源郷として人気を集めるMIHOミュージアムさんで、春季特別展「猿楽と面―大和・近江および白山の周辺から」が開催中です(会期は6月3日まで)。
タイトルにある「猿楽(さるがく)」というのは、何でしょうか?これは、奈良時代に中国より伝わった「散楽(さんがく)」に由来する、歌や踊りを伴う芸能のことで、平安時代・鎌倉時代から盛んになりました。皆さまは「能楽」というのをよくご存知だと思いますが、これの古い呼び方でもあります。念のため付け加えると、猿楽の演者はもちろん「人間さま」で、「お猿さん」とは関係がないそうです(笑)。
今回のMIHOさんの展示には、そんな猿楽に使われた面(「おもて」と言うそうです)が、なんと350点も!集められています。そしてその中に、普段は文化館でお預かりしている、滋賀各地の神社に古くから伝わる貴重な面も出品されている、というわけなのです(詳しくは「収蔵品公開情報」をご覧ください)。
展示室に入ると、そこには各地から集められた面がズラリと並び、まさに圧巻としか言いようがありません!それに、よく「無表情」という意味で「能面のよう」という言葉が使われますが、それが間違った使い方ではないかと思うほど、各々の面には表情があって、とっ~ても魅力的です。特に、色白+シワくちゃ=キュートな「翁」の面などを見ていると。。。「お猿さん」とは関係がないと言われても、どうにも「お猿さん」の顔に見えてきて仕方がない。。。本当に関係はないのかしらん?
人々が「猿楽」に熱狂したという室町時代。近江にも、多賀大社や日吉大社に属した猿楽座(役者のグループ)が6つもあったと伝えられます。なかでも大津・坂本の比叡(日吉)座は、犬王(道阿弥)という一世を風靡するような役者を輩出したとか!!日吉大社というと、そういえば、「神猿(まさる)」という神様のお使いがいて、「お猿さん」と縁の深い神社ですよね。そんな神社へ奉納する芸能の中で、猿を彷彿とさせる面を付け、物まね(猿真似?)などの芸を披露したなら、神様もきっとお楽しみになった違いない。だから、「猿楽」がもとは「散楽」であったのだとしても、そこにいつかの時点で、「お猿さま(=神様の化身)が楽しむもの」という意味も加わっていったのではないか???などと、またまた勝手な妄想を抱きながら、名残り惜しく展示室を去るのでありました。。。
それはさておき、GWも目前です。これからは新緑の美しい季節。信楽山中の、まさしく幽玄なる世界の中で、面に面と向き合って、静かに対話してみるのもおススメです。(会期中に展示替えがありますので、お目当ての作品のある方はご注意くださいね。)
ホームページの改新
みなさん、お気付きになられましたか??収蔵品紹介の中でも特に当館の館蔵品を紹介する「浮城モノ語り」のサイトが、見やすくなりました![こちらをチェック!]
そもそもこのコーナー、休館となってから公開の機会が少なくなった館蔵品を、ホームページで積極的に紹介し、当館にあるコレクションの多様さを知っていただこう!と、平成26年度にスタートしたものです。現在は月1回の更新を心掛け、それも今まで継続してこられたおかげで、今回が記念すべき第50話となりました。
積み重ねとは大事なことですね。とは言え、第○話の回数が増えると、実は見えないところで更新に手を入れなければならない箇所が増え、本編の文章を書くより、更新作業の方が手間がかかる・・・という困った状態になり、更新の度に職員から(クレームにも似た)悲鳴が上がるようになりました。。。それならば!と50話突破を記念して、思い切ってこの「リニューアル」を決行したというわけなのです。どうですか?みなさん、見やすくなりました?画像を配置したことにより、「あ、これも見てみようかな」という気になっていただけた・・・ならば、このリニューアルは大成功?!ということに!・・・職場内では評判も上々なのですがね(笑)。
ホームページ画面の体裁を、「元(システム)」から改めるのには、作業にあたる「時間」と「勇気」が必要です。「勇気」コレすごく大事です。画面に反映させるために設定するコードは、英語表記に数字の羅列・・・解説書はカタカナばかりで、「お願い!頼むから日本語で説明を!」と攻略本にむかって何度悪態をついたかワカリマセン。それでも「もっと見やすく、使いやすくしなければ」と、改新のための勇気を持てたのは、昨年度末に発行した『研究紀要第34号』に「琵琶湖文化館におけるホームページの役割りについて」を、まとめたことがきっかけとなりました。
休館となった平成20年度以降、当館のホームページは、常に「休館中」であることを意識し、展示公開の機会が減った収蔵品紹介の充実、文化財情報の発信などを行ってきました。時には利便性やデザイン性を改め、閲覧して下さるみなさんを飽きさせない工夫を行い、より魅力的なホームページ作りへと、手を加えてきた結果です。また、その都度、更新の苦労をしてきた歴代職員さん達の顔を思い浮かべると、ここは「踏ん張りどころ」で「頑張りどころ」でした。まだまだ改変の余地はありますが、今後も「見やすく分かりやすい情報」を提供できるように、みんなで頑張っていきたいと思います。
と、早速、「ご意見・ご感想」に、この小さな(?)リニューアルに気付いて下さった方が、感想を送って下さいました。このような反応があるとすごく励まされます。有り難うございます。お気付きですか?「浮城モノ語り」各話の印刷ページに、使いやすく[印刷する]ボタンが追加されましたよ!是非プリントアウトして、お気に入りの【コレクション】に加えて下さいね~。
筆:あきつ
リアル!文化館のクジャク
突然ですが、みなさんはクジャクについて詳しく知っていますか?中国、東南アジア、南アジアを中心に生息していて、日本には中国から伝わったようです。異国からやってきた、羽を広げると美しくゴージャスな鳥に、当時の人もトリコになったのでしょうか?日本でも多くの画家が好んでクジャクの姿を描いています。当館の館蔵品の中にもクジャクを描いた作品があり「収蔵品紹介:絵画部門」では、2点をご紹介しています。そのうちのひとつ、江戸時代の画家・張月樵(ちょう げっしょう)が描いた「長春孔雀図」について。。。いきなりですがクイズです!!
クジャクは、頭部から頸部にかけての違いで2種類を見分けることができるそうです。インドクジャクは濃い青色、マクジャクは緑色のうろこ状の模様があるのだとか。。。では、この絵に描かれたクジャクは、”インドクジャク”?それとも”マクジャク”?さて、どちらでしょう?!
クジャクについて詳しくない私は、「えっ?違いなんて本当にあるの!?」と思ってしまいました。。。しかし、改めてこの絵を見ると、首のところが緑色のうろこ状で描かれているのを発見!つまり、正解はマクジャクなのです!
種類の違いはさておき、こんなにも緻密にかつリアルにクジャクを描くことができるなんて、張月樵さんってスゴイ!と思いました。
この凄技絵画、見てみたいと思われました?実は、東京・府中市美術館で開催されている展覧会「リアル 最大の奇抜」に、ただ今出品中です(5月6日まで)。是非とも、このリアルを会場でご堪能ください!
収蔵品の他館への貸出しという機会ではありますが、遠く関東の地で、当館の作品が皆さまのお目にとまり、新たなご縁となりましたら幸いです。
文化財の保存環境②
先日、当館における文化財の保存環境、特に温湿度についてのお話をこのブログで紹介させていただきました。
皆さんの中には、「琵琶湖の上で大丈夫?湿度が高いのでは?」と、心配される方もいらっしゃるかもしれません。ということで、連載させていただきます。
文化財の保存環境について、湿度から言えば、特にカビの予防には、60%以下に保つことが理想とされていますが、木製品や漆器などの工芸品などには、乾燥しすぎるとひび割れの原因となるため、50%以上が望ましいと言われています。温度についても、高温になると施設内の絶対湿度(空気中の水分量)が高くなるため、注意が必要となります。
琵琶湖文化館は湖の上に建つ・・・湿度が心配・・・。まさしくそれは、昭和36年の開館当初から、危惧されていたことであり、そのために一日3回、展示室と収蔵庫の温湿度を計測し、当時は月末に文化財保護委員会(現:文化庁)への報告が必要であったと聞いています。観測を継続した結果、展示・保存環境に問題のない湿度が、安定的に維持されている施設であることが証明され、現在の収蔵環境に至っています。
当館はコンクリート製の建物ですが、文化財を保管する収蔵庫は、調湿機能が得られるよう木材で仕立てられ(木は周囲の温度や湿度に合わせて空気中の水分を吸ったり吐いたりして調整してくれます)、保存環境をより安定した状態に保つための工夫が施されています。また、屏風、彫刻、掛軸・経典類、考古資料・陶器などの工芸品、といったように、種類(素材)毎に保管する部屋を分けることで、きめ細かな湿度管理をし易くしています。
文化財にとってより良い環境を保つために出来ることを。皆で力を合わせて文化財を守っていきたいと思います。
筆:あきつ
文化財の保存環境
皆さんは、展覧会の会場でこのような物体を見た記憶はございませんか?一般の人にはあまり見えないよう、展示ケースの奥の方にコソ~っと置いてあるので、気付かれないかもしれません。大きさは約8cmほど、画面はデジタル表示でアンテナのような物がついています。実はコレ、文化財の保存環境を維持する上で、非常に重要な役割を果たしています。
文化財にとって、とても厄介なのは、素材を食い荒らすシミやチャタテムシなどの「文化財害虫」と、資料の劣化を早めてしまう「温湿度」です。温湿度が急激に変化すると、文化財の素材によっては伸び縮みが起こったりして、劣化の元にもなりますし、ある一定の温湿度が続くと、カビや虫が発生しやすくなったりもします。そこで登場するのが、このゲーム機(?)のような物体。「データロガー」というアイテムで、展示ケースや収蔵庫の中の温度と湿度変化を記録し、急激な変化が起きていないか、その見張り番として活躍します。
当館で今まで使っていたデータロガーは、旧式のパソコンでしかデータを取得することができず、現在使用しているパソコンとの互換性がとれなくなってきたため、新バージョンを導入することになりました。正常に作動するかどうか、新旧を並べて確認をしてみたところ、そこはさすがにおNew。感度は今までより更に向上しているようで、安心して見張りをお任せしていくことになりました。
このデータロガーは、数分毎にデータが記録できるように設定されています。定期的に記録を確認しますが、当館では1日の中での急激な気温変化は見られず、湿度についても一般的に博物館において基準値とされる50~60%を概ね維持するなど、文化財の保存環境として皆さまに安心していただける数値を得ています。
日常管理の点検もさることながら、年間を通じて蓄積されるデータを分析することで、施設としての特徴や各展示ケースの特質などを把握します。
文化財の適切な保存環境を維持するためには、その「時」だけの対応では不十分といえます。年間を通じたモニタリング、館独自の経験値からくる予測と対応。それらをうまく調整し、管理していくことが必要となるのです。
これからも、文化財に負担をかけないよう、適切な保存環境を維持できるように、努めてまいりたいと思います。
筆:あきつ
浅井長政像
滋賀の湖北地域に桜が咲くころ~~。毎年この時季に当館では、長浜市の旧湖北町で行われる戦国大名:浅井長政氏の法要のため、お預かりしている絹本著色「浅井長政像」(滋賀県指定文化財)を一時返却にうかがっています。
あきつブログ読者の常連さんの中には、「また今年もその話題?」と思う方がいらっしゃるかもしれません・・・ので、今年は少し角度を変えて(?!)ご紹介します~。
当館がお預かりしている「浅井長政像」は、ホームページの収蔵品紹介:絵画部門の中で紹介していますが、画面上部に書かれている「賛」によると、長政の一周忌を経て作られた、いわゆる本尊とされる御像です。今から約400年余り前から時代を経て、人々に守り伝えられてきた作品です。[詳しくはコチラ]
一方で、この掛軸が製作された当時の様子はどうであったか・・・というのも少し気になるところ。実は、ちょうど今、滋賀県立安土城考古博物館さんの企画展「収蔵品で語る城郭と考古」展で、この掛軸の復元資料が8日まで展示されています(会期:残りわずか!)。
展示されている作品は、平成8年に作られた復元模写で、元々の掛軸の表面観察や赤外線写真、他の画像からの研究等により、当時の姿が鮮やかに再現されています。会場で見た時には「お~っと!見た事のあるこの御方は、当館でお預かりしている長政さま!なんて鮮やかな!」と驚いて足を止めてしまいました。
タイムスリップとはこんな感じ?(笑)。
永い時を経て、人々に拝まれ供養されてきた長政像は、ふっくらとした面持ちながら叡智と威厳をたたえているかのようです。現代に蘇った長政像は、28歳で亡くなった若武者の精悍さと清々しさが感じられます。どちらも後世に長く残ってほしい作品です。
筆:あきつ
ホームページ3月のアクセス数
琵琶湖文化館は、本日(4/2)より新年度の開始です。今年は桜前線も、3月後半からの急激な気温の上昇で、足早に駆け抜けているようですね。予定を早めて、この土日にお花見に行かれた方も多いのではないでしょうか?文化館の建つ打出浜の今日の様子は?ほら、こんな感じ!満開の桜に囲まれて、心地よい新年度のスタートです。
さて、まずはご報告。当館ホームページへのアクセス数ですが、3月は1,397件のご訪問を頂くことができました。アクセス数のほか、ユーザー数、ページビュー数、平均サイト滞在時間なども2月より増えましたよ。本格的な春となり、ユーザーのみなさまも活動開始!といったところでしょうか?嬉しいことです。ちなみに、平成29年度、1年間のアクセス数は16,409件、のべ9,642名の方にご訪問いただくことができました。みなさま、どうもありがとうございました!!
先月はまた、安土城考古博物館で開催いたしました「世界記憶遺産『朝鮮通信使に関する記録』登録記念展」を18日に無事終えることができ、会期中には2,119名もの方にお越しいただくことができました。こちらの方も、足を運んでいただいた皆さま、どうもありがとうございました。
そうそう、3月末には文化財講座「打出のコヅチ」プレ講座(5月17日開催)のチラシも出来上がりました。さっそく県内の図書館・博物館等へも発送させていただきましたので、お見かけになったら、ぜひお手に取ってご覧くださいませ。もちろん、ただいま受講のお申込み受付中です!
それでは皆さま、今年度も琵琶湖文化館をどうぞよろしくお願いいたします。