日別アーカイブ: 2018年4月27日
夢か現か 猿の面影
現代の桃源郷として人気を集めるMIHOミュージアムさんで、春季特別展「猿楽と面―大和・近江および白山の周辺から」が開催中です(会期は6月3日まで)。
タイトルにある「猿楽(さるがく)」というのは、何でしょうか?これは、奈良時代に中国より伝わった「散楽(さんがく)」に由来する、歌や踊りを伴う芸能のことで、平安時代・鎌倉時代から盛んになりました。皆さまは「能楽」というのをよくご存知だと思いますが、これの古い呼び方でもあります。念のため付け加えると、猿楽の演者はもちろん「人間さま」で、「お猿さん」とは関係がないそうです(笑)。
今回のMIHOさんの展示には、そんな猿楽に使われた面(「おもて」と言うそうです)が、なんと350点も!集められています。そしてその中に、普段は文化館でお預かりしている、滋賀各地の神社に古くから伝わる貴重な面も出品されている、というわけなのです(詳しくは「収蔵品公開情報」をご覧ください)。
展示室に入ると、そこには各地から集められた面がズラリと並び、まさに圧巻としか言いようがありません!それに、よく「無表情」という意味で「能面のよう」という言葉が使われますが、それが間違った使い方ではないかと思うほど、各々の面には表情があって、とっ~ても魅力的です。特に、色白+シワくちゃ=キュートな「翁」の面などを見ていると。。。「お猿さん」とは関係がないと言われても、どうにも「お猿さん」の顔に見えてきて仕方がない。。。本当に関係はないのかしらん?
人々が「猿楽」に熱狂したという室町時代。近江にも、多賀大社や日吉大社に属した猿楽座(役者のグループ)が6つもあったと伝えられます。なかでも大津・坂本の比叡(日吉)座は、犬王(道阿弥)という一世を風靡するような役者を輩出したとか!!日吉大社というと、そういえば、「神猿(まさる)」という神様のお使いがいて、「お猿さん」と縁の深い神社ですよね。そんな神社へ奉納する芸能の中で、猿を彷彿とさせる面を付け、物まね(猿真似?)などの芸を披露したなら、神様もきっとお楽しみになった違いない。だから、「猿楽」がもとは「散楽」であったのだとしても、そこにいつかの時点で、「お猿さま(=神様の化身)が楽しむもの」という意味も加わっていったのではないか???などと、またまた勝手な妄想を抱きながら、名残り惜しく展示室を去るのでありました。。。
それはさておき、GWも目前です。これからは新緑の美しい季節。信楽山中の、まさしく幽玄なる世界の中で、面に面と向き合って、静かに対話してみるのもおススメです。(会期中に展示替えがありますので、お目当ての作品のある方はご注意くださいね。)