月別アーカイブ: 10月 2015

あの方の側にある石碑

前回のブログで紹介しました「あの方」:井上敬之助氏(元治2年3月(1865)~昭和2年(1927)享年63歳)。今回は井上氏の銅像の側にある石碑について紹介します。
石碑には次のように書かれています。

20151027-4彰徳表
井上敬之助翁は慶応元年甲賀郡石部村
に生れ若年にして政治に志し明治二十三
年自由党の傘下に走せ県会議員に当選同
議長に挙げられ地方自治体の健全強化に
貢献同三十五年以来衆議院議員に当選す
ること六回出でては立憲政友会領袖とし
て重きをなし専心国家憲政の伸展民主政
治の確立に尽瘁入りては同県支部長とし
て党を統べ官僚政治の是正民意の暢達に
努力県民のための県政を推進その功績は
政治史上燦として不滅に輝
翁資性剛毅果断大政治家の風格を備え
事に処するや公明正大身を持するや清廉
潔白名利栄達眼中に無く憂国の至誠烈々
全身全霊を政治に捧げ昭和二年八月十日
六十三年の政治的生涯を閉じらる以来三
十有七星霜景仰の念追慕の情今さらなが
ら切郷党並びに各界の賛同を得て翁の銅
像を建立もって崇髙な遺徳偉大な業績を
永遠に顕彰するゆえんである
昭和三十七年四月吉日

この銅像は井上氏が亡くなってから35年後に建立されましたが、碑文からは氏への尊敬の念と偉業を称える強い気持ちがうかがえます。

僕は悩みました。最初はこの石碑を写真に撮って、何が書かれているのかを簡単に要約して皆さんに紹介するつもり・・・だったのですが、パソコンで文章を入力している内に「アツイ・・・この文章アツイわ」と何かしら影響されてしまったのです。これはヘタに要約するよりもこのままの原文を皆さんに見て貰った方がいいと。皆さんも是非この碑文をじっくりと見てみて下さい。言い回しが独特でリズムが難しい部分もありますが、この文章を書いた方の井上氏に対する心酔しきった感というか、氏を仰ぎ見る感じが文面からヒシヒシと伝わってきます。後進から見た井上敬之助氏が、いかに大きな存在であったかがわかります。この碑文に込められたチカラを通して、この時代のパワーというかエネルギーが感じられる、そんな気がします。

20151027銅像の足元には湯呑みが2つ置いてあり、時々花が供えられているのを見かけます。お参りされているのは氏に所縁のある方でしょうか。亡くなられてから88年、氏は今も変わらず鋭い眼差しで琵琶湖を眺めておいでです。その眼に今の世の中はどのように映っているのでしょうね。

郷土の偉大な先輩に・・・敬礼!

   筆:あきつ

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あの方はどなた?

皆さんご存知でしょうか?文化館の近くに、とある人物の銅像が建っていることを。先日「あの方を調べています」と、文化館をお訪ねいただいた老紳士がいらっしゃいました。この機会に是非皆さんにも知っておいていただきたい「あの方」を紹介します。

20151027写真を撮って参りました。この方は明治時代の政治家:井上敬之助氏でいらっしゃいます。元治2年(1865)甲賀郡石部村(現:湖南市石部)に生まれ、若くして政治家への道を志して自由党の傘下に入り、明治23年(1890)には、板垣退助が再興した愛国公党に参加しました。明治25年(1892)、27歳の時には県会議員に当選、以降5回当選という経歴を持ち、地方自治の健全強化に大きく貢献ました。
明治31年(1898)に自由党と進歩党が合流し憲政党が結成されると同党滋賀支部常議員に、更には憲政党が明治33年(1900)に立憲政友会(総裁伊藤博文)と改称した際には、政友会滋賀支部の結成に多大な尽力をしたとも言われています。そして、明治35年(1902)には衆議院議員に初当選、翌年も再選を果たすなど、政治家として大きな功績を残しています。
官僚政治の是正や民意の反映に努め全身全霊を政治に捧げたその姿から、滋賀県政の大御所として「其当時県に知事が二人いる」と言われたほどで、明治後期から昭和初期にかけての滋賀県の政治家を語る上で、忘れることのできない人物でもあります。

銅像の建設にあたっては、滋賀県の初代民選知事であった服部岩吉氏が中心となって計画が進められ、彫刻家として有名な森 大造氏に制作が依頼されました。完成したのが昭和37年(1962)。文化館の開館が昭和36年ですから、その1年後にはもうこの場所にいらっしゃったことになります。制作当時、井上氏が亡くなってからすでに35年が経っており、一度も会ったことのない翁の像を作る命を受けた森氏は、かなりご苦労をなさった様子で、「資料を集めてもらつた所写真が二三枚という貧弱さであつたが、翁の性格なり風貌なりは服部氏の説明や20151027-6、当時各界の名士の感想文等を拝読して翁の偉大な広く重い人格を伺い知る事が出来た」と書籍「井上敬之助」の中で語っておられます(昭和37年4月発行)。森氏は、井上氏が生活しておられた石部町のお宅を訪ねて参考資料を見せて貰ったり、当時でもあまり見かけなくなったこのマントのような「フロックコート」をわざわざ借りてきて制作にあたるなど、井上氏の持っておられた個性の描写に力を注がれました。

その甲斐もあって、レトロな装いでありながら背筋をピンと伸ばして立つお姿は実に凛々しく、力強い眼差しからは断固たる決意とその人柄をうかがい知ることが出来ます。

なお、この銅像の側には井上氏を称える石碑が設置されています。コチラについてはまた次回ご紹介します~!

   筆:あきつ

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米原秘蔵の4ケ寺寺宝展2015

なんともソソられるタイトルの特別公開のお知らせです。
滋賀県米原市にある4ケ寺(大原観音寺・成菩提院・清瀧寺徳源院・蓮華寺)では、10/24(土)~11/15(日)の期間、各寺院の公開日に合わせて寺宝が特別公開されます。多くの文化財を所蔵されている寺院さんの寺宝展ですから、見応えたっぷりかと思われます!

軽く寺院の紹介をしておきますと、
〇大原観音寺(日本古寺百選):石田三成と豊臣秀吉の出会いの地。
鷹狩りで立ち寄った秀吉を三成が「三献の茶」でもてなした逸話が残る。
(公開は10/31.11/1.7.8の4日間のみ)
〇成菩提院:最澄が談議所を開いたのに始まりのちに比叡山延暦寺の別院となった古刹。
織田信長をはじめ、豊臣秀吉、小早川秀秋など数々の武将が宿営した。
(公開は10/24.25.31.11/1.3.7.8.14.15の9日間)
(※その上なんと!「11/21.22.23も特別公開します」とご住職から嬉しい情報が!※)
〇清瀧寺徳源院:中世、北近江を支配した京極氏の菩提寺。
34基の宝篋印塔が並ぶ京極家墓所は国の史跡。
(公開は10/31.11/1.3.7.8.14.15の7日間のみ)
〇蓮華寺:本尊は釈迦如来と阿弥陀如来の二尊。
「瞼の母」の「番場の忠太郎」の故郷として、忠太郎地蔵尊が建てられている。
(期間中毎日公開23日間)
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そもそもこの情報をゲットしたのは、文化館に寄託されている文化財がこの特別公開に併せて里帰りされたから・・・なのでございます。先日学芸員さんが、浄土曼荼羅図(重要文化財)と釈迦曼荼羅図を、お寺さまに届けて来られたのですが、特別公開を控えていろいろと忙しくご準備されていたそうですよ。紅葉シーズンにはまだ少し早いようですが、各寺院それぞれに趣きがありますので、これを機会に是非一度米原の地で「秘蔵」とのよい「お出会い」をして来て下さい。。。

注意すべきは公開日!各寺院さんによって公開日が異なりますので、スケジュール調整は念入りに・・・詳しくは米原観光協会さん(電話:0749-58-2227)にお問い合わせ下さいね。

   筆:あきつ

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文化館のRINPA!

仏像や絵画など、日本には世界に誇る多彩な芸術作品がありますが、これらの制作にあたっては様々な流儀があります。それが「流派」です。江戸時代に誕生した「琳派」もその一つです。
そもそも「琳派」って?ここから少しお勉強。
江戸時代の始めの京都に本阿弥光悦と俵屋宗達というスーパーアーティストが現れます。彼らはこれまでの形式にとらわれない新しい作風を確立し、当時経済力をつけてきた京の町衆から絶大な支持を得ます。光悦は「寛永の三筆」といわれるほどの書家であり、陶芸や漆芸などにも秀でた人で、宗達は京都建仁寺の国宝「風神雷神図屏風」を描いたことでも有名です。
そこから時代が下ること100年、彼らをリスペクトするアーティストが現れます。それが尾形光琳・乾山兄弟です。二人は京都の雁金屋という当時のハイファッションを生み出した高級呉服屋に生まれ、恵まれた環境の下、宗達のような画風を目指し、絵画にとどまらず陶芸・漆芸・衣裳などの分野で次々に新しいものを生み出し、やがて光琳風が流行するようになります。
そして、江戸時代後期にふたたび、光悦・宗達・光琳・乾山たちに熱い思いを寄せるアーティストが現れます。それが酒井抱一です。抱一は江戸で生まれ育った人でありながら、京都で活躍した宗達や光琳たちの芸術活動に傾倒します。そして抱一は、ついに光琳風を「琳派」という一つの美術のスタイルにまで高めます。
あきつその他江戸時代を通じてダイナミックに展開する「琳派」ですが、日本にとどまらず、ジャポニズムとして西洋美術にも影響を与え、また現在でも琳派のオマージュ作品が作られるなど、その人気と影響力は絶大です。
琳派は今年で誕生400年を迎えました。これを記念して、現在京都国立博物館や京都国立近代美術館をはじめとして、あちこちの美術館で琳派の展覧会が催されています。

ちなみに琵琶湖文化館でも酒井抱一の作品「扇面散花鳥図」を所蔵しています。詳しくはコチラをご覧くださいませ!抱一の洒脱さが伝わるイッピンです。

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歴史を極める

51秋晴れの良い天気が続いています。絶好のお出かけ日和だった先週の土曜日、当館の学芸員さんは湖北にある米原市柏原宿歴史館へ出張されていました。お仕事の内容は、その名も「歴史を極める」というお題の講演会。依頼をいただいた米原市教育委員会さんでは、「少しでも多くの方々に歴史に親しみ、かつ極めていただきたい」とシリーズ講座「歴史を極める」を毎年開催されており、今年度のテーマ「和紙を極める」の中で、当館の学芸員さんにもお声が掛かったのでした。

開催日が近づくにつれて、学芸員さんは各方面に電話で確認したり「モノ」の手配をしたりと、忙しそうな中にもその段取りにスキがなく・・・ん?・・・モノ?・・・お話しに行かれるのではナイノデスカ?

そう、今回の講演会、学芸員さんが用意されたのは、参加して楽しい『体験型』の講演会。テーマは「古文書の形-和綴じ本をつくろう-」です。身内ながらうまいなぁ~と思います。そう思いません?このタイトル。僕は先ず「古文書の形」のカタそうな雰囲気に腰が引けそうになってしまいましたが、それを「つくろう」なんてひらがなで呼びかけられた日には・・・はいハイはいッ!参加しま~す!となっちゃいませんか?(笑)

当日は、そんな素直な人たち(笑)・・・いえいえ勉強熱心な人たち約25名が、実際に文化財の修理などに使われる和紙と針・糸を使って、楽しく和綴じ本作りを体験されたのでした。

・・・いいなぁ・・・うらやましいなぁ。僕も参加したかったです!これって日記帳なんかも作れますよね?日々の出来事を筆でサラサラと・・・くーっ格好いい!・・・我が国最初のとんぼ文学『あきつ日記』が世に出る日も近いかと思われます。。。

あぁっでもその前に!習字のお稽古が必要デス!(泣)

   筆:あきつ

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「千年の美」つたえびと養成講座のご案内

今年度の滋賀の文化財講座「打出のコヅチ」は9月をもって終了しましたが、まだまだ勉強したいと思っている方に朗報です!
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前年度に引き続き、滋賀県教育委員会事務局文化財保護課さんから『「千年の美」つたえびと養成講座』開催についてのお知らせが届きました。この講座は、滋賀県に伝承されてきた「千年の美」とも言うべき文化財(仏教美術、神道美術等)の魅力を学び、また受講者自らが「つたえびと」となって発信していただくことを目的とした講座です。
今年度は、仏教美術(彫刻)の研究者や仏像・仏画修理の技術者等を講師に迎え、計4回の開催が予定されています。

【内容・日程等】
第1回 近江路の観音像(仏教彫刻史特論1)
平成27年10月12日(月・祝)午後1:30~3:00
講師:高梨純次氏(MIHO MUSEUM参事 仏教美術史研究者)

第2回 仏像の修理
平成27年11月23日(月・祝)午後1:30~3:00
講師:高橋利明氏(楽浪文化財修理所代表 仏師)

第3回 近江の仏画の流れ(仏教絵画史総論)
平成27年12月19日(土)午後1:30~3:00
講師:古川史隆氏(滋賀県教育委員会事務局文化財保護課主査)

第4回 屏風・掛軸・巻子の形と構造-屏風をつくってみよう
平成28年2月14日(日)午後1:30~3:00
講師:佐味義之氏(株式会社坂田墨珠堂 文化財修理技術者)

【会  場】コラボしが21(大津市打出浜2-1)3階大会議室
【募集人員】各200名  *受講料無料、事前申込み制
【主  催】滋賀県教育委員会
【申込み先】滋賀県教育委員会事務局文化財保護課(美術工芸・民俗係)
       電話077-528-4672   FAX 077-528-4956
       〒520-8577 大津市京町四丁目1-1 メールアドレス ma07@pref.shiga.lg.jp

文化財ファンの方は必見ですね。第1回開催日まであまり日がありませんので、受講希望の方はお申込みをお早めに!

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ホームページ9月のアクセス数

巷では秋の匂い~金木犀のあま~い香りが鼻をくすぐります。車を運転していても、窓から入ってくる金木犀と無花果の匂いだけは何故かわかるあきつです。皆さん元気にお過ごしですか?

さぁ、今日も元気にホームページのアクセス数についてのご報告です。9月は1,611件のアクセスをいただきました!皆さまいつもご贔屓いただき有り難うございます~。

若干アクセスの伸び率が下降線をたどっておりますが、マイヤーガーデン滋賀特別展が終了し、海外からのアクセスが減少した事と、滋賀の文化財講座「打出のコヅチ」が終了した事が影響しているかと分析致します。・・・大丈夫ダイジョウブ。休館中という現状ではイタ仕方ない。。。しかし!平均サイト滞在時間は、ググンと伸びて約2倍!むしろ前向きに、皆さんとのコミュニケーションツール、これからのホームページ運営が大切であると心得ます。皆さんどうぞお付き合い下さいませ。

検索キーワードでは、おやおや?人のお名前が上がってますね。一人は西川吉輔。幕末維新期を駆け抜けた近江八幡出身の勤王家です。先日、とある新聞の「おうみ歴史人物伝」というコーナーに紹介されていましたから、これがヒットに繋がっているのかもしれません。当館のホームページ収蔵品紹介:書跡・典籍部門には、情熱的なその人柄も知りえるような『西川吉輔の書簡』231紹介していますので、是非こちらも参考になさって下さいね。

他には・・・何故か当館の学芸員さんのお名前が・・・9月の「打出のコヅチ」で講師を務めさせていただきましたからね。シリアス&ユーモアを併せ持つ頼りになる学芸員さんですヨ?!

さてさて、10月はどんな月になるのやら。楽しみです!

   筆:あきつ

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