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「花湖さんの打出のコヅチ」第6回 ・・・鑑賞☆堪能

 秋晴れの滋賀県立美術館にて、「花湖さんの打出のコヅチ」第6回目の解説付鑑賞会を開催させていただきました。ご参加いただきましたみなさま、ありがとうございました!

 今回は美術館のロビーにて受付。目印は探訪ではお馴染みの、のぼり旗です♪受付テーブルを出すとすぐにたくさんの方に集まっていただけ、みなさまの熱気が伝わってきました。

 さて、「「千年の秘仏と近江の情景」展を楽しむ」と題した今回の解説付鑑賞会は、地域連携企画展を開催する展示室1での開催です。

美術館の山口真有香主任学芸員

 前半は、美術館の山口主任学芸員から、当館収蔵品も含めた絵画作品を中心にご紹介いただきました。近江の風景が描かれた「近江名所図」「近江八景図」には、時代の変遷を経て変わってしまった風景・今も変わらない風景を見つけることができます。

  

 
 

当館の和澄浩介主任学芸員

 後半は当館の和澄主任学芸員による仏像の解説です。 重要文化財の正福寺さまの大日如来坐像を、じっくり!詳しく!お話しいただく濃密な時間となりました。前回のコヅチでも登場した内容が中心でしたが、本物を前に説明を聞くと、とても分かりやすかったのではないでしょうか。そして正福寺さまの大日如来と、善水寺さまの不動明王坐像も見比べやすい!また、大日如来の美しさを堪能するかのように、解説後もじっくりとご鑑賞される方もいらっしゃいました。横顔や背中も・・・、うーん美しい~。

 「仏像が、美術品というだけでなく、また信仰の対象というだけでなく、歴史の証人なのである」、という和澄主任学芸員の指摘。山口主任学芸員からの「絵画作品にみる江戸時代から現代までのつながり」という指摘もあわせて、雄大な近江の歴史を思わせる講座と展覧会でした。

正福寺住職 山川正道様

 最後に正福寺のご住職様から、本講座へのご参加の感謝の言葉とともに、展覧会の経緯もお話しいただきました。今回お出ましいただいているご本尊・大日如来坐像は、通常は33年ごとに開扉される秘仏なので、再来年の本堂改修後に開扉され、その次の開扉は30年後!とのこと。今回は本当に貴重な機会ですね。

 
   
 

 本年度の「花湖さんの打出のコヅチ」はこれで最終回です。毎回、熱心に聴講されるみなさまの姿勢に身が引き締まる思いです。さて、来年度はどんな講座が待っているのか・・・!?楽しんでいただけるよう、スタッフ一同頑張っていきます!

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「花湖さんの打出のコヅチ」第5回 1つの仏像から・・・

 爽やかな秋晴れに恵まれた10月26日木曜日、開催しました滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第5回!今回は「秘仏 正福寺大日如来坐像と湖南・甲賀地域の仏像」と題し、当館の和澄主任学芸員が講師を務めさせていただきました。

 「文献資料が残っていない中で、ほとけさまから分かることがあるのですね」。こちらはアンケートにご記入いただいた参加者の感想です。
・・・まさしく!!講師も申しておりました。「今回、秘仏である大日如来さまにお出ましいただき、つぶさに拝見させていただく機会を得たことで、いろいろと見えてきたことがあります」と・・・。

 本像は、筒形の宝冠にふっくらとした下膨れのお顔、細い三日月形の目に突き出した唇、厚みのある躯体や煌びやかな臂釧(腕輪)などの特徴から、十世紀後半に造られたと考えられています。 では何故、
浄土宗寺院である正福寺さまに天台宗で重視される大日如来が伝わったのか
 ・・・謎でしたよね~。
近隣の善水寺(天台宗)さまに伝わる薬師如来坐像・不動明王坐像と比較してみると
 ・・・良くわかりましたよね~。
天台宗の勢力拡大と、講師曰く「延暦寺工房」(?!)的な仏師集団の作例からの比較
 ・・・興味深かった~。
正福寺・善水寺がある湖南市岩根山周辺は、比叡山と麓の坂本の関係に似ていたのではないかという指摘
 ・・・当時の都市計画まで?!想像が膨らみました~。

 講座に参加された方も、講師の考察に「まさしくそうだったのでは?!」と、思われたのではないでしょうか。一体だけでは確証が持てなかったことが、様々な作例と比較することで紐解かれる千年の歴史、調査の醍醐味がここにあると講師は言います。それもこれも、古い時代のほとけさまが今に伝わっているからこその奇跡です。長い歴史の中には戦乱や自然災害もあったでしょうに、これだけ多くのほとけさまが滋賀に残されていることを、私たちは誇りに思っていい!そんなことを考えた、充実の、あっという間の90分でした。 参加の皆さんのご感想です↓。

「現場をよく考えて説明して頂いたので臨場感がありました。」
「これからお寺でほとけさまを拝むときにはよく見せていただこうと思う。仏像を作っていた地域やその影響力の及ぶ所についても知ることができて興味深いと思った。」
「正福寺さまの大日如来像、拝見に行きたい」

 そう!これで終わりではない!!第6回の打出のコヅチでは、座学会場を抜け出し、展示会場での『特別鑑賞会』を実施します!本日朝8:30より電話受付を開始しました。が、募集40名のところを、アッという間に定員に達してしまいました!皆さんの熱意に感謝♡。
 残念ながら電話が間に合わなかったという方、大丈夫です。この座学に参加した方もそうでない方も、充分にほとけさまの魅力を堪能していただける展示となっております!ぜひお出掛けください♪

 ところでワタクシ、気になっているのでございますヨ。大日如来さまのお顔の特徴=ふっくら丸みのある下膨れのお顔に、(チュッと)突き出したような唇・・・ここここれは、当館のマスコットキャラクター:あきつ君もこの系統を引き継いで・・・いるのでは?・・・う~ん、ダイタンな考察・・・♥

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「花湖さんの打出のコヅチ」第4回 質問回答②

 9月28日、文化財講座:第4回「新県指定 弘誓寺本堂と近江の浄土宗建築」に参加された皆さん、お待たせいたしました~!アンケートにご記入いただきました、皆さんからのご質問について、その回答第2弾! 滋賀県文化財保護課建造物係さんが、めいっぱい(!!)ご協力くださいましたので、ご紹介します~♪

建築と石造美術、建築と庭園とのかかわりがあると思いますので教えてほしいです。本尊の向きや庫裏との位置関係のかかわりなど教えてほしいです。

庭園については、来客をもてなす庫裏の座敷に面して回遊式庭園が設けられています。石造物は、境内の主なものは、墓所に中世の宝篋印塔(供養塔)が一基ありますが、本堂や庫裏、その他の建造物とは明確な関わりは無いようです。
本堂および本尊は、共に西方浄土を向いており、ほぼ西面しています。庫裏と本堂は、境内の敷地形状から、ほぼ南北に横並びしています。

本堂内の間取りがなぜそうなのか。経文上或いは儀式上の必然があるのか

内陣の後門形式および凸型の平面構成については、先に回答した、本堂内で本尊の後ろを通り本尊の前を大きく回る礼拝方法があること、外陣の凹型の平面については、礼拝の際に、内陣正面部分と内陣両脇の脇陣とは、僧侶や縁者・参拝者等に着座する場所に決まりがあり、そうした浄土宗の礼拝(儀式)に適した平面構成(間取り)が、次第に出来上がったものと考えられます。

近江七弘誓寺で一番古いのはどのお寺?

近江七弘誓寺の各建立年代について、郡誌、市町村誌等を確認しましたが、建立年が不明のお寺もあり、明確に建立年代を並べてここが一番古いと断言するのは難しいようです。講義資料では那須与一の7人の子供が近江七弘誓寺を建立したとありますが、実際は那須与一が活躍した平安時代末よりも、後の江戸時代に建立された所も散見され、あくまで伝承の域を超えないのかもしれません。ただ「弘誓寺由緒書」によれば現在の東近江市瓜生津に那須与一の末孫の愚咄が弘誓寺を開いた後に移転、分立等で他の弘誓寺が建立されたようで、そこから考えると瓜生津の弘誓寺が最も古いと推察されます。

 いかがでしたか?皆さんの疑問や謎は解けましたか?実は、産休に入られた講師の代わりに、講師が所属する県文化財保護課建築係の方々が、「係として真剣にお答えしたい」と、追加の現地取材や資料調査を行うなどしてご対応下さいました。講師を務められた伊藤静香氏のお人柄(♪)と、建築係の皆さんのチームワークがあったからこそ成り立った、今回の【質疑応答全8問】でございました。ご協力いただいた皆さまに心より感謝申し上げます。本当に有り難うございました!

 皆さんの「学びたい」&「応えたい」の気持ちに影響されたコヅチ事務局・・・うずうず・・・結果、湖東を駆け巡り↓↓近江七弘誓寺を制覇してまいりました!ご利益ありそうな予感♡

※但し(!!)建造物の写真は“曇り”の日に撮る方が写りがいい!のだそうです・・・しくじった。。〔もう少し大きな画像で見たい人は➡ コチラ

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「花湖さんの打出のコヅチ」第4回 質問回答①

 9月28日、文化財講座:第4回「新県指定 弘誓寺本堂と近江の浄土宗建築」に参加された皆さま、お待たせいたしました!当日アンケートに記入された質問内容について、滋賀県文化財保護課建造物係さんが、回答にご協力くださいました(!感謝!)。
 さてさて、皆さんの気になるご質問は?その回答とは?コチラっ↓↓↓

浄土宗、浄土真宗の中世の遺構が全国的にほとんどないのはなぜでしょうか。

確かにそのような傾向はあるかと思いますが、県として明確に確認してはいません。もしあるとすれば、理由として次のようなことが考えられます。
 浄土宗、浄土真宗ともに鎌倉時代以降に興った新しい宗派で、主に一般庶民を対象とする宗派でもあったことから、滋賀県内であれば、中世にはまだ正式な寺院を構えるのではなく、地域の有力者の住居等を活動の場とすることが多かったと考えられ、たとえば天台宗のように、中世には既に大規模な構えの寺院を多く建立していた宗派と比較すると、建立された建造物の数や規模が異なることが理由の一つとして考えられます。

五箇荘金堂町の国指定重文弘誓寺と今回講座の弘誓寺とは建物の特徴や古い資料が多数残っている点は似ている。今回講座の弘誓寺も国指定重文になるよう働きかけをされるのでしょうか。

県内には他にも優れた建造物が多数所在しており、今回県指定となった弘誓寺本堂についても、それらと共に、機会を見て文化庁へ情報の提供を行っていきたいと考えています。

 

三つ並び仏壇形式から後門形式へと変化していった理由がもう少し詳しく知りたいです。

 

現在の浄土宗においては、本堂内で、本尊の後ろを通りながら内陣を回る礼拝があります。また僧侶の内陣への出仕は、外陣もしくは脇間からではなく、本尊の後ろからの出仕であり、こうした礼拝や儀式の方法の変化が、仏壇形式の変化に影響したことが考えられます。

 

後陣は何のためにできたのですか(使用目的は?)。

 

中世の本堂に見られる後陣は、元々は、内陣での宗教儀式の際に使用する仏具や什宝物等を保管したり、住職等が準備を行うために使われていたと考えられますが、後には、後陣にも仏像を安置し、宗教的空間として、内陣を補完する用途に用いられるようになったのではないかと考えられます。

 

宮殿を「くうでん」と読むのは宗教建築だから?

 

「宮殿」は神社本殿に多く用いられる名称ですが、その場合でも読み方は「くうでん」です。寺院では「厨子」を用いることが多いのですが、弘誓寺では「宮殿」とし「くうでん」と呼んでいるため、今回の指定に当たっては弘誓寺での呼称に従っています。

 素晴らしい!皆さんの勉強意欲がすばらしい!答えも分かりやすくてスバラシイ!皆さんの質問から更に理解が深まり、知識が増えて得した気分♡です♪有り難うございました!!

 おや?まだ質問が紹介されていない方が?いらっしゃる??
 ご安心ください!残りの質問はもう少しお時間をいただいて、 改めて紹介させていただきま~す!お楽しみに♪♪♪

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花湖さんの「打出のコヅチ」第3回を開催 聞けて良かったです!

  いつまで「残暑」と言わねばならぬやら・・。気温が30℃を超える厳しい暑さだった9/28(木)、滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第4回を開催しました。そうです皆さん!多くのリクエストをいただきながらも、なかなか取り上げる機会が少なかった「文化財建造物」についてのお話です!会場には、期待に胸をふくらませた♡多数の受講生の皆さんが、お越しくださいました。

 今回の講座は「新県指定 弘誓寺本堂と近江の浄土宗建築」と題し、滋賀県文化財保護課建造物係で活躍する伊藤静香技師が初登壇で熱弁を・・・アレ?講師の姿は??!

 そう、実はこのたび講師の都合により、こちらのメイン会場でも予め録画した内容でお届けいたしました。対面での講座を期待されていた方々には大変申し訳なく(事前アナウンスも不十分でした!!スミマセン!)、講師も大変残念がっていたのですが、何卒お許しいただきたく・・・。その分、内容は“すこぶる”充実!画像も多めに皆さんにお配りした資料は実に17頁『文化財建造物の面白さを少しでも知ってもらいたい』という講師の熱意の表れデス!「あぁこれ、きっと“生”でお話ししたかっただろうなぁ 」ということが、資料からも感じ取れました。

 昨年度新たに県指定となった東近江市・弘誓寺本堂。受講された皆さんは、「こんなにもいろいろな角度から調べて指定するのか」と驚かれたのではないでしょうか。残された資料や棟札、擬宝珠に刻まれた銘などを読み解き、お寺の沿革を調べることも調査の一環。(建造物だからと言って、図面だけの話ではない!!)外観はもとより、宗派によって異なる建物内部の形式なども、他のお寺の類例と比較することで、その特徴を更に精査し、弘誓寺の本堂は特に「棟札と豊富な資料により、建築年代が明確で造営の経過もわかり、浄土宗本堂の基本となる姿を伝えた代表的事例として学術的に価値が高い」ことが認められ、この度の指定に至ったとのこと。建立に携わった大工集団のお話も興味深かったです。

 参加された方のご感想を紹介すると、「建築様式のみならず、他寺院との比較、細かな彫刻などの紹介等、非常に興味深くお聞きしました」「丁寧に説明していただき大変わかりやすかったです」とのこと。(講師先生!良かったですね!) 中には「お話聞いて、滋賀にいいお寺がたくさんあるなぁと思い訪れたくありました。かわいい赤ちゃんに出会えてからまた復帰して下さいね」とのあたたかいお言葉も・・・。

 そう!実はこれが今回の録画講演となった理由デス!元気な赤ちゃんの誕生を楽しみに、元気なお母さんの復帰を心待ちに、しております♡

 そして皆さまには、今回特別に本講座への「質問」をアンケートにご記入いただいております。その回答は後日こちらのブログに掲載いたします~♪ ドキドキ。。。

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花湖さんの「打出のコヅチ」第3回を開催 タイトルの意図は?

講座の様子は 〔 Z-TV・ケーブルテレビ11ch 〕で
放送予定(9/1~9/3)

 8月30日、まだまだ残暑厳しい中、たくさんの方にご参加いただきました滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第3回!今回は、「世界に広がる「近江の文化財」」というテーマで、当館の田澤梓学芸員がお話させていただきました。

 皆さんは「日本の文化財が海外で収蔵されている」と聞いて、どのようなイメージを持っておられますか?よく耳にするのは「文化財の流出」という、あまりよろしくない印象の言葉・・。ですが、講師の田澤学芸員の考え方はとてもポジティブです。

 講座では主に工芸品について、過去の歴史から海外に渡った近江に縁ある文化財をスライドで紹介し、国内に現存する類例作品との比較が解説されました。

 スライドは、海外の名だたる美術館・博物館施設に収蔵されている画像を使用していましたが、「何なら自分が海を渡り、実物をこの目で調査したい!」との思いが、言葉の端々に・・・(笑)。行動力がウリの工芸担当学芸員です(笑笑)。

 興味深い内容に、受講の皆さんもメモを取る手に力が入ります。

 そして今回の講座でちょっと意外だったのが、海外の美術館・博物館が公開しているウェブサイトの収蔵品データベースの中に、日本の美術作品も多数掲示されているということ。私たちも簡単に見ることができます。受講された方の中には、おうちに帰ってからインターネットで検索された人もいらっしゃるかもしれませんね。アンケートでは「湖国の文化財が海外でも高く評価され収集されているのを知ることができた」「滋賀のものが帰ってきて展示されたらとてもうれしい」などの声が寄せられました。

  田澤学芸員は、海外に渡った文化財を「流出」というマイナスイメージではなく、「世界に広がる(世界にまで広がる!)近江の文化財」とポジティブに捉え、その魅力をさらに引き出したい、と言います。令和9年度に開館を予定している新しい文化館では、滋賀県内・日本国内・海外にある「近江の文化財」をつなぐデータベースの構築、更には学芸員や研究者をつなぐネットワークも新しい文化館の役割として貢献していきたい、との思いも語られました。

 さぁ、大変なことを宣言してしまいましたヨ?!(笑)。アンケートには「新しい文化館の開設をとても楽しみにしている」とのお声も!講師を含めた関係者一同、皆さまの期待に応えるべく、より一層邁進していく覚悟です。何卒皆さま、ご支援たまわりますよう、よろしくお願いいたします~。

【追記:受講の皆さまへ】
講座内でお話ししていた当館のブログ「文化館の江口君 海を渡る」。少し前の記事になりますが、気になる方は是非お読みください♪

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「花湖さんの打出のコヅチ」特別講座開催しました

 智証大師円珍関係文書が、ユネスコの「世界の記憶」に登録決定されたことを受けて、特別講座「智証大師円珍関係文書の世界」を7月27日(木)に開催しました。 連日の酷暑にもかかわらず、多くの方が聴講に来られました。

 今回の講師は、智証大師円珍の関係文書を歴代伝えて来た 三井寺の長吏・福家俊彦氏です。円珍の人となりや伝世されて来た関係文書のことを熱く語ってくださいました。

 智証大師円珍は814年に生まれ、その14年後に比叡山にあがり出家。その後、有徳の師に師事したり大峰山や葛城山で修行を積むなどしてめきめき頭角を現し、ついには延暦寺の座主、三井寺の初代長吏ともなった傑僧です。そのような円珍が天台教学と密教の神髄を求めて唐(当時の中国王朝)に旅立ったのが853年。その往路をみると、大宰府から出発して福州~杭州~蘇州~揚州~洛陽~長安となっています。現在とは異なり交通事情や治安が各段に悪い中よくこれほどの距離を踏破したものと思います。講師が言われるように、円珍は「感応力」「先見の明」「峻厳な学究」「聖俗との交り」を兼ね備えていたとのことですが、そのような自由闊達な精神の在り方が唐の国への大旅行を可能にし、多くの仏典をはじめ先進的な文物の招来を可能にしたようです。

 それでは、今回、ユネスコの「世界の記憶」に登録された智証大師円珍に関わりのある文書群とはとのようなものなのでしょうか。それらは、智証大師関係文書典籍46件・五部心観(曼荼羅絵)1件・円珍関係文書8件・円珍贈法印大和尚位並智証大師諡号勅書1件など56件で構成され、いずれも国宝に指定されています。

 中でも、中国国内(福州・温州)を通過するときに、使われた「通行手形」というべき「過所(かしょ)」が当時のまま残されていることが注目されます。幾多の王朝が興亡を繰り返した中国では、当時を知る一次資料がほとんどが失われていますが、円珍が持ち帰った 過所は唐の交通政策や社会状況を知ることができる貴重なものとなっています。

 講演の最後に、講師は一人の僧に関係する一連の文書が千年以上の時を超えて保存・伝えられて来たことは極めて稀で、偉大な師に関係する文書を残そうとする先人たちの 使命感やたゆまぬ努力にはただただ頭がさがると言われていました。さらに、現在のデジタル時代にあっては、記録や文書を保存・伝えていく過程には人が介在しないことが多く、将来の課題となることを指摘されたことが心に残りました。

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講座「花湖さんの打出のコヅチ」第2回 開催しました

熱心に聞き入る来聴の方々

 今年度第2回目となる滋賀の文化講座「海北友松の事績と檜図について」を6月22日に開催しました。当日は午前中まで強い風と雨が降りしきるあいにくの天候でしたが、多くの方に参加いただきました。会場は、知的好奇心に溢れる方々の熱気で一杯でした。

 本題に入る前に、講師から令和4年度の滋賀県指定有形文化財(美術工芸品)と指定制度の説明がありました。県指定有形文化財(美術工芸品)には、絵画、彫刻、工芸、書跡・典籍、古文書、考古資料、歴史資料の部があり、来聴の方々は県指定制度のあらましや、滋賀県に多くの文化財があることを知って認識を新たにされたようです。

 さて、今回のテーマは近江出身で安土桃山時代の巨匠として知られている絵師の海北友松(1533-1615)です。その生涯は実に波乱に富んでいます。戦国大名の浅井氏の家臣であった父や兄が相次いで戦死しますが、幸いにも友松は東福寺に入寺していたため難を逃れました。武家に生まれた友松らしい逸話として、本能寺の変の後に、明智光秀の重臣で友松と親しかった斎藤利三が処刑されますが、これを不憫に思った友松は刑場から利三の遺骸を奪い、親交のあった真如堂に葬ったという言い伝えがあります。やはりこの時代は歴史小説さながらの熱い時代とつくづく思います。

 講師の古川史隆氏(県文化財保護課兼琵琶湖文化館)は、海北友松の生涯を紹介した後、友松の画業に迫っていきます。友松は幼いころ、東福寺に入寺し、その後絵の才能を見いだされて狩野派に弟子入りしました。そこから才能が開花し、多くの名作を生みだします。今回は令和4年度滋賀県指定文化財となった「檜図屏風」に焦点を当て、絵画様式や制作年代を解説されました。土坡(どは)の描き方、樹幹の表現や金雲の緑の暈し(ぼかし)などの友松特有の描写について興味深い話をされていました。

 なかでも、絵に施された署名の字体と印章の変遷から、檜図の制作年代を慶長7年(1602)前後と推測する近年の研究史を紹介され、来聴者の方々も興味深そうに聴かれていました。古川講師、お疲れさまでした。

 さて、次回の講座は、7月27日(木)特別講座『「世界の記憶」智証大師円珍関係文書の世界』を開催します。定員140名での募集でしたが、受付4日目にして、既に定員に達してしまいました!現在はキャンセル待ちでの受付となっています。開催が楽しみですね。

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ユネスコ「世界の記憶」登録記念・特別講座開催します!

 去る5月24日、嬉しい速報が飛び込んでまいりました。滋賀県で新たに2件、大津市の三井寺(園城寺)さまが所有される国宝2件が、「智証大師円珍関係文書典籍―日本・中国の文化交流史―」として、ユネスコ「世界の記憶」の一つに登録されました(国内で8例目)!これを受けて、滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」では特別講座を開催いたします!

 7月27日(木)14:00~ 「世界の記憶」智証大師円珍関係文書の世界

 講師には、三井寺の福家俊彦長吏をお迎えし、智証大師円珍(814~891年)が中国・唐に渡り密教の教えを日本にもたらしたその足跡と、今に伝わる貴重な古文書や典籍類について、特別にご講演いただきます。

 突然ですが問題です。国内でユネスコ「世界の記憶」に登録されたのは、今回が8例目。では前回(2017年(平成29 ))に国内で登録されたモノは何だったでしょう・か?・・・皆さん覚えておられます?!(ハイ!はい!!は~い!!!)

琵琶湖図〔部分〕円山応震筆(琵琶湖文化館蔵)
*2019年ユネスコ「世界の記憶」登録

答え:それは「朝鮮通信使に関する資料」です(※1)。17~19世紀の日韓の平和構築と文化交流の歴史を物語る資料として、日韓合わせて計333点(うち、日本所在資料は209点)が登録され、その中の一つとして、当館の「琵琶湖図」も登録されています。

 そのご縁もあって、ユネスコ「世界の記憶」にはとても敏感な当館♡。登録に関わるその苦労、その喜び、決して他人事ではゴザイマセン!県内の文化財が新たに登録されたことは、我らが滋賀県民にとっても大変嬉しいニュース♪何より、1100年以上も昔の資料(しかもその現物!)が、今に受け継がれているその奇跡!長きにわたって文化財の保護と継承に取り組んでこられた三井寺の皆様の御努力に、心から敬服いたします!
 この貴重な文化遺産が末永く受け継がれていくよう、私たちも勉強させていただく機会となりそうです。特別講座ではどのようなお話が聞けるのか、とても楽しみですね。講座へのお申し込みは6月23日からの受付です〔詳しくはコチラ〕。

檜図 海北友松筆(琵琶湖文化館蔵)

現在受付中の講座は、
「花湖さんの打出のコヅチ」第2回
  6月22日(木)14:00~
  海北友松の事績と檜図について

です。こちらは近江出身の絵師:海北友松(かいほうゆうしょう)の生涯と、後に安土・桃山時代の巨匠と言われた友松の作品について、令和4年度新たに県指定文化財となった檜図(当館所蔵)の魅力とともに、詳しく紹介します。どうぞお楽しみに〔申し込みはコチラ〕!

※1:同時に「 上野三碑 (こうずけさんぴ)」も登録されています。

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講座「花湖さんの打出のコヅチ」第1回 開催しました

 「毎回参加してきた最大の最高のお話しでした。有り難う。」
 「杉本哲郎氏と山元春挙のつながりを楽しく興味深く知ることができました。 」
 「タイトル通りに人間的なあまりにも人間的な経緯が如実に語られてました。 」
 「お話がわかりやすく感動しました。ありがとうございました。 」
 「「春江」印から哲郎の心を読み解く研究、すばらしいと思いました。」
 「なぞ解きの面白さ、杉本氏の心の動きがドラマの様に見ることができた。」
 「 涙がでました。ありがとうございました。 」

 いかがです皆さん?!これ、文化財講座に参加した方々の「ご感想」ですよ?!!この満足度の“高さ”が、当講座のウリでございます♪

 ということで、5/24に開催した滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」、 今年もテンション“高め♪”に始まりました !第1回の講師を務めたのは県文化財保護課・井上優(琵琶湖文化館副館長兼務)、今回は「杉本哲郎壁画「舎利供養」に秘められた師・春挙への想い」というテーマでお話しさせていただきました。

 こちらが、杉本哲郎 (1899~1985)氏が描いた「舎利供養」です。杉本は滋賀(大津)出身で、若くして山元春挙に弟子入りをし、15歳の時に「春江」の名を師から与えられました。しかしその後、春挙の門人団体・早苗会の幹部(兄弟子たち)と画法をめぐって対立、24歳の時に師の元を去り、「春江」の名を捨てて「哲郎」の名で活動します。一方で、「先生(春挙画伯)の真の後継者は僕」であるとインタビューに答えるなど、師に対する尊敬の念は晩年まで変わらずに持ち続けます。兄弟子たちとの確執は深まり、春挙の逝去に際して葬儀参列も阻まれる杉本。師に別れを告げられなかった深い悔恨、尊敬する師への敬意。その想いが50歳にして描き上げたこの巨大壁画に込められている・・・「杉本哲郎魂の傑作」と、講師は言います。

(スライドは杉本が産業文化館で壁画を描いている写真)

 壁画は当初「来迎図」として、県庁の隣にあった産業文化館(旧武徳殿)の壁に描かれました。来迎とは、阿弥陀仏が諸菩薩とともに死者を迎えに来て、極楽浄土へと導くことを意味します。ですので本来、観音・勢至菩薩が立ち並ぶその間(中央)には阿弥陀如来が描かれるべきところ、本図は舎利塔が描かれています。更にはその真下に長らく使わなかった「春江」号の印。これは杉本が、「春挙の真の後継者として、師を鎮魂供養する画墓」とすることを意図したのではないか、と講師は推察します。それこそがこの壁画が描かれた真の意味だと・・・。


 うぅ、皆さまドラマです(涙)。壮絶なドラマです!1時間半の講座があっという間で、講師が熱く語る言葉をとおして、画家・杉本哲郎の揺れ動く心を旅をしてきたかのような気分です。
 参加された皆さんも同じ思いだった?それが冒頭にご紹介した「感想」に表れているのではないでしょうか?
 

 このたびの講座、この大きな壁画の中のたった4cm四方に注目し、作者の深い想いを読み解いた講師の洞察力に、感想:「大満足」をあげてもいいですか?(笑)。熱弁お疲れさまでした!講師も語り尽くしてこの笑顔です(笑笑)。

 さて、次回の講座は、
  6/22(木)第2回「海北友松の事績と檜図について」
を開催します。更に!会場では『7/27(木)に特別講座』が予定されているとのアナウンスが・・!・・その内容とは?・・・➡【コチラをチェック!】!!

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皆さんお待ちかね♡「打出のコヅチ」受付開始

 今日は朝から電話がひっきりなしです! 皆さまお待たせいたしましたね~♡
 令和5年度滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」、第1回の参加申し込み、本日より受付開始です!! 【詳しくはコチラ】

  本講座は、平成20年(2008)から会場:コラボしが21にて開催している人気講座です。今年でなんと16年目!「継続は力なり」と申しますか、自ら”人気講座(気持ち的には人気講座) ” を名乗ってしまうほどのご支持を皆さんから頂いております。毎年この時期になると「今年もある?」「チラシはできた?」と、開催を待ち焦がれる人々からの問い合わせがあり、事務局としては嬉しい悲鳴(笑)。そんな皆さんの「学びたい熱意」に背中をグイグイ押され(!)、今年も5月から全6回の講座がスタートします!

 本講座は何と言っても多彩なテーマが魅力♡滋賀の文化財にまつわる最新情報や講師ご推薦のとっておき情報を、詳しく&わかりやすくご紹介。気軽にご参加いただくことができます。♪
 申し込みは、電話・Fax・メールにて受付!申し込みが簡単なインターネットの【受付フォーム】もご利用くださいね。 ※申込開始日の8:30からご利用いただけます。

  第1回 5月24日(水)14:00~15:30
  演題 杉本哲郎壁画「舎利供養」に秘められた師・春挙への想い

館内に設置されている巨大壁画「舎利供養」
(画像の一部を加工しています)

 当館にある巨大壁画「舎利供養」。長らく皆さんにご覧いただく機会がございませんでしたので、本作が当館内にあることをご存じない方もいらっしゃるかもしれません。
 昭和期の宗教画家・杉本哲郎が描いた代表作の一つですが、このたび講師を務める井上優副館長は「話したい、話さないといけないことがあり過ぎて時間が足りない!」と、今から少々焦っておられます・・・どうなることやら(笑)。乞うご期待!ですね♪  
(((おやっ?屋根から取り外した大トンボのモニュメントが写り込んでいますね???!!!! ))))
[[[そして怪しげな人影も?! →※大きさを分かっていただくための演出デス。]]]

 本講座は、一度参加すると次回も参加したくなる、リピーター率高めの文化財講座です。初めての方も何度か参加するうちに顔見知りが増え、きっと「常連さん」となること間違いなし♪気軽にご参加くださいませ~♪♪

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花湖さんの打出のコヅチ特別講座「近江のなれずし製造技術」登録記念講演会 開催しました

 3月も2週間が経ち、桜の開花予報がニュースで流れ始めました。文化館にある鉢植えの桜が、街中の桜よりも一足先にたくさん花開いた3月14日、滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」特別講座を開催しました。

 例年この時期に「打出のコヅチ」を開催することが無く、毎年参加される熱心なファンの方なら「なぜ?この時期に??」と思われたのではないでしょうか。今回のコヅチは、2023年1月20日に、「近江のなれずし製造技術」が国の文化審議会から登録無形民俗文化財に登録するよう答申を受けたことで、登録記念の特別講座を開催することとなりました。急遽決まった記念講演…皆さんにお知らせする時間が短かったにも関わらず、会場には85名もの方にお越しいただきました。

滋賀県立琵琶湖博物館
専門学芸員 橋本道範先生

 第1部の記念講演では、滋賀県立琵琶湖博物館の専門学芸員である橋本道範先生に「フナズシ研究最前線」というテーマで、お話していただきました。
  寿司の原型「なれずし」は、古くからの食文化として知られています。現在最も有名なのが「ふなずし」ではないでしょうか。県内では、琵琶湖の固有種のニゴロブナが最もポピュラーです。4月~6月くらいの産卵期に漁獲されたものを仕込んだ後、夏に漬け込み、乳酸発酵させて冬に食べはじめます。これが昔からの伝統的な作り方だと誰もが思いますよね。ですが、元禄2年(1689年)の料理本「合類日用料理抄」に「江州鮒の鮨」という箇所に「寒(かん)の内ニ漬申候」との記述があるのだとか。これには、冬に獲れるフナは脂がのっていて美味しいとの話もあり、寒漬けの方がおいしいとされていたようです。子持ちのフナを夏に漬ける現在のふなずしとは違います。
 お話からは、歴史的に見た「ふなずし」の多様性が見られ、古くから変わらないと思っていた「ふなずし」が時代によって変わるということに驚きました。

 ふなずし1つでも多様性がある「なれずし」、、、他の種類を含めるとその多様性はもっと広がります。なんとも奥が深い!
 講師の橋本先生は、江戸時代の書物のように寒い時期に漬け込んだり、玄米や更には糯米(もちごめ)を使用して漬け込むなど、様々な「なれずし」を試作されています。今後も新しい発見がありそうで、期待が膨らみます!

  第2部は特別PR企画として設けられ、滋賀の食文化に関心を持った有志が集まる「滋賀の食事文化研究会」の方が、湖魚を使用した滋賀のなれずしについて、その活動内容ともにお話してくださいました。
 県の水産課からは、手作りふなずしについて紹介されました。ふなずしを自分で作ろうと思うと、かなり難しそうですよね…ですが、県内には「ふなずし漬け方講習会」なるものがあり、各地で開催が拡大しています。(詳しくは滋賀県漁業協同組合連合会のサイトをご確認ください)この講演をきっかけに「近江のなれずし製造技術」に興味を持たれた方は、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

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3月の文化館はイベント満載!

 「一月往ぬる二月逃げる三月去る」とはよく言ったもので、早くも3月の始まりです。まだまだ寒い日もありますが、暖かい日もあり、少しずつ春の訪れが近づいているのを実感します。

 さて、3月と言えば、3月3日の「桃の節句」ですよね。ですが、今日は少し趣向を変えてコチラの絵をご紹介しようと思います。桃の木の下で3人の男性が、何かをしています。これは、平安時代の宮中行事「曲水(きょくすい)の宴(えん)」と言って、流水に酒杯を浮かべ、自分の前に流れ着くまでに詩を詠み楽しんでいる様子が描かれています。3月3日に行われたらしく、まさに今の時期にピッタリの絵です。
 この絵は、月岡雪鼎筆の「十二カ月図屏風(文化館蔵)」の中の一扇(せん:屏風を構成する縦長の画面1枚。6枚の扇がつながって6曲の屏風)に描かれています。
 「十二カ月図屏風」 は、滋賀県立安土城考古博物館で開催中の地域連携企画展「琵琶湖文化館収蔵品にみる四季」に出品しています。普段はなかなか見ることができない文化館の収蔵品を、多くの皆様に見ていただける貴重なチャンスです。雅な宮中文化に触れて、いつもと違う桃の節句を感じてみてください。

 さらに、会場には「新しい文化館にメッセージを届けよう!」という特設ブースを設けて、皆さんから以下のような2つのメッセージを受け付けています。

【投票】「あなたが思う“新しい文化館でも見たい作
     品”はどれですか?」
【募集】「新しい文化館での“展覧会へのご意見”を
     お知らせください!」

 しかも!3月12日までは、2つともメッセージを書いてくださった方に、特別にプレゼントも用意してあります!ぜひ、多くのメッセージをお寄せくださいね。また、ここでお寄せいただいたメッセージをもとに、3月19日に座談会「新しい文化館と収蔵品を語る」も開催します。気になった方は、コチラ(滋賀県立安土城考古博物館サイト)をチェックしてくださいね。

 そして、もうひとつ忘れてはならないイベント『滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」特別講座』も、3月14日に開催となります。滋賀を代表する食文化である“なれずしの製造技法”が、国の登録無形民俗文化財に登録されるのを記念した講演会です。こちらも、ただいま絶賛参加者を募集中ですので、まだ予約をされていない方は、お早めにお申し込みくださいね。

 3月もイベント満載の文化館ですが、皆様に楽しんでいただけるように、頑張っていきたいと思います。

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緊急告知!花湖さんの打出のコヅチ特別講座開催決定!!

 今年度予定されていた全6回の講座を10月に終えた「滋賀の文化財講座 花湖さんの打出のコヅチ」。参加者は、メイン・サテライト会場を含み延べ600人を超える人気講座となっています。たくさんの方にご支援いただき、本当に嬉しいかぎりです。

 さて、当初予定の講座が終了して、早4カ月。コヅチファンの皆さんは、淋しい思いをされている方も多いのではないでしょうか。そんな方に耳よりな『緊急告知』です!

 3月14日(火)に、滋賀の文化財講座 花湖さんの打出のコヅチ特別講座『「近江のなれずし製造技術」登録記念講演』の開催が決定いたしました!

 今回実施する会場は、いつものメイン会場:コラボしが21(3階大会議室)のみとなります。時間は、午前9時30分(9時15分開場)からですので、くれぐれもお間違えの無いように!


 「近江のなれずし製造技術」は、今年1月20日に、国の文化審議会から登録無形民俗文化財に登録するよう答申を受けました。今回の特別講座は、この登録を記念して実施するもので、「近江のなれずし製造技術」の解説をはじめ、草津市にある滋賀県立琵琶湖博物館の専門学芸員・橋本道範氏をお招きして、「フナズシ研究最前線」と題してお話していただきます。

 滋賀の食文化を語るうえで欠かせない、“フナズシ” 等の「なれずし」ですが、詳しく知っているという方は、意外にも少ないのではないでしょうか? 講座を受けると「なれずし」を、より詳しく知ることができますよ。県水産課さんのPRタイムも特別に用意されていますので、こちらもお楽しみに。お申し込みは現在受付中です。 ぜひとも皆さん、なれずしの魅力に触れてみてくださいね。(詳しくはコチラ

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「花湖さんの打出のコヅチ」第6回 現地探訪 開催しました

 10月27日、ついにこの日を迎えました。滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」現地探訪です。少し曇り空が広がるものの雨が降ることはなく、ウォーキングをするにもちょうど良い気候となりました。今回は、野洲市歴史民俗博物館(銅鐸博物館)で開催されている地域連携企画展「近江湖南に華開く宗教文化 -野洲・守山の神と仏-に関連した探訪となっており、「野洲市御上神社とその周辺」 をテーマとして、定員いっぱいの40名の方たちと共に、御上神社と2つのお寺を訪ねました。

 集合場所の御上神社の大鳥居前には、すでに受付開始時間5分前ですが、数名の参加者が、集まってこられました。皆さん、本当にこの講座を楽しみにしておられるのが伝わってまいります。今回講師を務めたのは、第4回でも講師を務めた琵琶湖文化館の和澄浩介主任学芸員です。野洲の地域連携企画展の担当も務めていますので、展覧会についてもお話いただきます。

入母屋造りの本殿と蓮形の礎石

 旅の始まりとなる御上神社の歴史は古く、「古事記」や「日本霊異記」「延喜式」にも載っています。境内にある本殿は国宝に、拝殿・楼門・若宮社・三宮社は、それぞれ重要文化財になっています。本殿の屋根は、一般的な神社の造りの切妻造ではなく、仏教建築に使われる入母屋造になっており、礎石には蓮の形が刻まれています。蓮と言えば仏様が乗っているお花…まるで寺院のようです。「古文書ではなく現物そのものを通して神仏習合を知ることができる」貴重な神社です。

 御上神社を後にした打出のコヅチ隊は、三上山を眺みながら北へ歩き出します。のどかな住宅街を1km程歩くと、次の目的地西林寺さんに到着します。ご住職に案内され本堂の中へ…。

 こちらの本尊「阿弥陀三尊像」は、鎌倉時代の仏師快慶一派の作風が強いお像となっています。中尊の阿弥陀如来像は、野洲市歴史民俗博物館(銅鐸博物館)で開催されている地域連携企画展に展示されており、お寺では脇侍である観音菩薩像と勢至菩薩像を拝見させていただきました。両菩薩が、強い前傾姿勢をとっている形は、快慶の高弟・行快風の作品では滋賀県には他に例がなく貴重です。普段は見ることができない像を特別に間近で見られる機会…皆さん、じっくりと鑑賞していました。中には、もう一度列に並びなおし2回見ている方も…。そうですよね、、、コチラに向かってくるかのような前傾姿勢が圧倒的で思わず見入ってしいました。

 西林寺を出発し、次は三上山の方に1.5kmほど歩いて宝泉寺に向かいます。本尊「阿弥陀如来立像」は、平安時代後期の特徴があり、仏師の祖と呼ばれる定朝(じょうちょう)の作風を踏襲しています。1メートル弱くらいの阿弥陀如来立像で、温和な作風が平安時代後期の特徴をよくあらわしています。当初の光背は飛天光だった可能性があるそうですが、光背の附属と思われる宝泉寺の「飛天像」が展覧会に出展されています。ですが、実際見るとこの飛天は15cm程の像…この阿弥陀様には、大きいような…?講師のお話では「本尊と飛天像のサイズが合わないため、別の平安時代の阿弥陀像についていたのではないか」とのこと。なんと、、、別の阿弥陀様があったとは!その仏様、いったいどのようなお像だったのでしょう??…う~ん。気になってしまいます。

 西林寺と宝泉寺のお像は、展覧会を開催するにあたり調査をした結果分かったものなのだとか。和澄学芸員からは「県内には古い良い仏像があり、まだまだ評価されていないままの文化財がいっぱいある。皆さんにその良さを知ってもらいたい」との話をされました。聞いている方、感嘆の声を上げ大きく頷いておられたのが印象的でした。ココにいる皆さんに、まだ知られていない“ 仏像の良さ ”が伝わっているの事を感じました。探訪に参加された方のお言葉にも「貴重な仏像を見せていただいて嬉しかった」や「湖南にこの様な場所があることを知ることができた」などあり、初めて知る仏像やお寺に興味を持たれた様子です。

 多くの方にご参加いただいた、滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」も、この現地探訪をもって、本年度は無事にすべて終了致しました。皆さんから「来年も参加したい」との嬉しい声もいただいております。来年も、皆さんに楽しんでいただけるよう、スタッフ一同頑張っていきたいと思います。

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「花湖さんの打出のコヅチ」第5回 開催しました

 9月も半ばを過ぎて朝夕は過ごしやすくなりましたが、日中はまだまだ暑い日が続きます。この日(9/15)も残暑が厳しい日となりましたが、そんな中86名の方が会場に足を運んでくださいました。滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第5回、今年度の座学の最終回です。

講師の田澤梓学芸員

 今回は、「琵琶湖文化館収蔵品にみる四季と年中行事」をテーマに、琵琶湖文化館の田澤梓学芸員が登壇しました。文化館の収蔵品には、四季や年中行事が描かれている作品が多くあります。作品に見られる季節の情景や描かれ方についてお話しました。

十二ヵ月図

 ホームページでも紹介されている「十二ヵ月図」 (月岡雪鼎筆)は、六曲一双の屏風の中に、ひと月ごとの歳時や風俗が描かれています。このような絵は「月次絵(つきなみえ)」とよばれ、平安時代ごろからやまと絵の主題として描かれてきました。当館の「十二ヵ月図屏風」は江戸時代の作ですが、古典に取材し平安時代の月次絵の要素を取り入れていることを、わかりやすく解説されました。

近江八景図

 次に紹介された「近江八景図」(吉田元陳筆)には、六曲一双の屏風に、粟津晴嵐、瀬田夕照、三井晩鐘、唐崎夜雨、矢橋帰帆、石山秋月、堅田落雁、比良暮雪の八景が描かれています。近江八景は、中国・湖南省にある洞庭湖の瀟湘八景の情景を近江にとり入れ、四季を追加したもの。皆さんご存知です?滋賀県と湖南省は、琵琶湖と洞庭湖のご縁がつながり、1983年から友好提携が結ばれているのですよ。講師からは「新しい文化館ができたら、近江八景と瀟湘八景、滋賀県と湖南省のつながりが分かる展示をしたい!」との野望が語られました。

 紹介された作品は、どちらも繊細に描かれていて「実物を見たい!」と思った方も、おられるハズ。そんな方に朗報です。今年度冬季に滋賀県立安土城考古博物館で開催される地域連携企画展「琵琶湖文化館収蔵品にみる四季」に、この二つの屏風が出展されます。来年の2月頃の開催のため、まだすこし先ですが、皆さんぜひ楽しみにしててくださいね。

 次回(10/27)は、いよいよ滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」の大トリ現地探訪となります。第4回で講師を務めた和澄学芸員を講師に、野洲市御上神社周辺を歩きます。こちらは、10月8日から始まる地域連携企画展「近江湖南に華開く宗教文化―野洲・守山の神と仏―」(会場:野洲市歴史民俗博物館)に関連した講座となっており、展覧会も合せてご覧になるとより楽しめます。ぜひ、コチラもよろしくお願いします。講座の申込みは、9月27日(火)午前8時30分より電話にて受付開始します。皆さんからのお申込みお待ちしております。

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打出のコヅチ第4回 番外編 ~ご質問にお答えします~

 滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」に参加してくださったから、アンケートを通してご質問を頂くことがあります。第2回第3回に引き続き、第4回でも質問をいただきました。熱心な聴講生からのご質問。今回も早々に、講師を務めた和澄浩介学芸員に答えていただいたので、皆さんにもご紹介していきたいと思います。

 (質問①)敏満寺区の銅造大日如来像は慶派の作風が見受けられる
      とのことだが、慶派の金銅仏の作例はあるの?

  テーマとなった「敏満寺区の銅造大日如来像」は、ブログでも紹介したとおり、慶派の作風が見られるそうです。慶派で代表的な仏師・運慶や快慶は、東大寺南大門の金剛力士立像などが有名です。確かに木造の仏像が多い印象があります。 他にも金銅製の仏像はあるのでしょうか?さて、その答えは…?

 そもそも鎌倉時代の金銅仏は数が少ないですが、鎌倉時代前半までで慶派がかかわったと考えられている著名な像は以下のようなものがあります。

○法隆寺(奈良) 阿弥陀如来・観音菩薩像 重文
 法隆寺金堂西の間に安置されています。運慶の四男康勝が原型を造り、貞永元年(1232)
 に完成したことが光背銘文からわかります。常時拝観可能です。

○寿福寺(神奈川) 薬師如来坐像 重文
 銘文はありませんが、建暦元年(1211)に北条政子が子の源実朝の病気平癒を願って鶴
 岡八幡宮に安置した像であると考えられています。寄託先の鎌倉国宝館で展示されること
 があります。

○大報恩寺(京都) 誕生釈迦仏立像 重文
 大報恩寺には快慶の高弟行快が造った本尊釈迦如来、快慶と行快が造った十大弟子、慶
 派の有力仏師定慶が造った六観音がのこされています。この誕生仏も行快の作風が顕著で
 す。大報恩寺霊宝館で常時拝観可能です。

 やはり多くの仏像を作った仏師の系統です。少ないとはいえ、金銅仏はあるようです。ご紹介いただいた仏像は拝観可能なものも多く、ぜひとも慶派の金銅仏見てみたいです。さらには、このような質問も…

 (質問②)大仏殿様四天王が造り継がれてきたのは、図像(見本)があったから?

スクリーンに映る四天王像

 こちらは、講座内で紹介された「多賀町内の重源ゆかりの文化財」で、多賀大社から町内の真如寺に移された四天王像が、東大寺大仏殿の四天王に特有の形式(大仏殿様)であるという事が語られました。真如寺の四天王像は、江戸時代もので、東大寺大仏殿の四天王像よりも大分後になってから作られています。時代が違っても、大仏殿様がつくられたのは、やはり見本があるからなのでしょうか??さて、その答えは…

 大仏殿四天王像のような由緒正しい仏像や霊験あらたかな仏像は図像が描かれ、後世にその形が伝わっていきます。残念ながら大仏殿様四天王像を描いた古い図像は現存していませんが、醍醐寺(京都)所蔵の弘安7年(1284)の年紀を有する「東大寺大仏殿図」という絵図に文字で四天王の姿が詳細に記されており、これが運慶たちが再興した大仏殿様四天王像が注目されるきっかけになりました。
 なお図像があっても、まったく同じように写すわけではなく、時代やその時の状況を反映して変更を加えることがあります。運慶たちが再興した大仏殿四天王像も、焼失する前の姿からは若干変更を加えていたことが指摘されています。

 やはり、見本となるものがあったのですね。時代を反映して、変更を加ても形をしっかりと受け継いでいくなんて…各時代の仏師たちのすごさも伝わります。

  いかがでしたか?前回のブログでご紹介できなかった大仏殿様の四天王像などのお話しも含め、打出のコヅチ第4回をより深く知るきっかけとなりましたでしょうか。皆さんの知識欲のおかげで、仏像について詳しく学べる場となりました。これを機会に皆さま色々な仏像を見比べてみてはいかがでしょうか。

カテゴリー: 文化財講座 | 打出のコヅチ第4回 番外編 ~ご質問にお答えします~ はコメントを受け付けていません

「花湖さんの打出のコヅチ」第4回 開催しました

 8/18の大津市は前日夜から朝にかけて大雨が降りましたが、お昼には大雨がウソだったかのように晴れてきました。そんな中、滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第4回を開催。93名の方が会場に足を運んでくださいました。

講師の和澄浩介学芸員

 今年度の文化財講座も後半戦。今回は「敏満寺区の銅造大日如来像と多賀町の文化財-令和3年度滋賀県新指定文化財紹介②-」と題し、琵琶湖文化館の和澄浩介主任学芸員が登壇。 昨年、新たに滋賀県指定文化財となった多賀町敏満寺区に所蔵の「銅造大日如来坐像」を中心にお話ししました。
 敏満寺は、10世紀頃に創建されたとされ、鎌倉時代以降に栄えたそうですが、浅井長政・織田信長に焼かれ消失し廃寺となり、現在は地名としてのみ残っています。鎌倉時代初期に作られたこの像は、運慶・快慶をはじめとした平安時代末期から鎌倉時代初期の慶派の作風を取り入れているのだとか。運慶・快慶といえば、奈良・東大寺の仏像で有名です。講座では何故、奈良から離れた多賀の地に、ほぼ同時期の慶派の仏像があるのかが語られました。

  「何故、慶派の仏像が多賀にあるのか?」 その秘密は、平家の焼き討ちで焼亡した東大寺の復興を担い、慶派を重用した僧侶・俊乗房重源(しゅんじょうぼうちょうげん)にあります。重源が行った作善(さぜん:善行)のリスト『南無阿弥陀仏作善集』には、重源が造立した仏像や創建・再興した寺院などが列記され、そこには敏満寺も記載されています。敏満寺の宝物を引き継いだ胡宮神社には、重源が敏満寺に施入した五輪塔とその寄進状が残っており、重要文化財に指定されています。また重源が敏満寺に送った書状も残っており、こちらには「東大寺東塔の再興供養に際して、敏満寺から法華経を読む童子を出す」よう要請する内容なのだとか。。。このことからも、敏満寺と重源には強い関わりがあったことがわかります。更に重源は、延命長寿を願って多賀大社に祈願したと伝わっており、多賀町内には重源ゆかりの文化財があるそうです。アンケートでは、「重源と胡宮神社の関係を初めて知った」「大日如来像だけでなく重源に興味を持ちました」「多賀に行きたくなった」との嬉しい感想をいただきました。一つの小さな仏像の形から東大寺や重源との関わりを知る、目からウロコのお話しに皆さん熱心にお話しを聞かれていました。あっという間の1時間30分となり、講座終了後には大きな拍手を頂きました。皆さん本当にありがとうございました。

 次回は、いよいよ 滋賀の文化財講座では最後の座学となります。第5回「琵琶湖文化館収蔵品にみる四季と年中行事」は、現在講座受付中です。それでは皆さま、また次回の講座でお待ちしております!!

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打出のコヅチ第3回 番外編 ~ご質問にお答えします~

 前回「第2回」の講座ブログでも紹介しました「打出のコヅチ番外編」!ご好評につき「第3回」についても、皆さんのアンケートに書かれた質問について、この場を借りてお答えすることといたしましょう♪「番外編」を楽しみにして下さっている受講者もいらっしゃるようです。「しっかりお答えせねば」と今回も力が入ります。いただいた質問について、講師を務められた矢田直樹氏にお尋ねましたので、皆さんにもご紹介したいと思います。

 (質問①)修理・新調を請け負う業者は、ほとんど滋賀県内にあるのですか?

 講座では曳山の修理について、滋賀県文化財保護課制作の「近江の曳山祭と曳山修理~祭りを支える技~」の映像を視聴しました。総合文化財と言われる山車の各部分を修理する職人さん達の姿が紹介されていましたね。木材で出来た車輪は木工職人、塗装には漆塗りの職人、飾り金具には彫金の職人、幕を織る職人と、様々な職人さんが関わっておられます。

You Tube「近江の曳山祭と曳山修理~祭りを支える技~」より

 動画で紹介された大津祭の曳山の一つ「月宮殿山(げっきゅうでんざん)」の前懸幕については、京都の株式会社龍村美術織物さんが手掛けられ、古い幕を織られた当時に近い状態で再現する“復元新調”が、滋賀県守山市の工場で行われました。幕など織物関係は、京都の会社が修理することが多いそうですが、一方で、滋賀県の文化財保存技術として、「曳山漆工品修理」や「曳山車輪鉄輪修理」が選定されていることから、漆塗りや、車輪の補強で付いている鉄輪の修理などは、県内の職人さんが担当されています。

 県内にはこうした曳山の修理や復元新調する技術を持つ職人さんが少なくなっているのが現状です。山車に使われる飾り金具は、これまで長浜の職人さんにお願いすることが多かったのですが、 先般お亡くなりになられたので、今後どうしていくか課題となっています。さらに車輪の復元新調は、県内の職人さんだけでなく、岐阜県高山市の職人さんにお願いすることもあるそうです。車輪を修理したり作ることができる職人さんが少なくなっているのが現状です。メンテナンスのことを考えると、近くに職人さんがいると安心なのですが、曳山の修理だけでは生計が成り立たないという事情もあります。矢田氏が仰るには「保存修理を通して、県内を中心に、伝統の技術を持つ職人さんの技術継承や後継者の育成を図っていきたい 」とのこと。 伝統を守ることが、一朝一夕ではかなわない時間のかかる、大変なことだとヒシヒシと伝わります。

 (質問②)祇園祭の山鉾と近江の曳山は、作りに大きいな違いがあるのですか?

 今年3年振りに、山鉾巡行が行われた京都・祇園祭。ニュースで数々の山鉾をご覧になった方も多いのではないでしょうか。絢爛豪華な山鉾が圧巻でしたよね。ご質問は「“祇園祭”と“近江の曳山”との違い」についてですが、“近江の曳山”とひとことで言っても、大津祭や長浜曳山祭、日野祭、水口祭、米原曳山祭と、県内には様々な曳山祭があります。それぞれに個性があり、同じものはありません。

 例えば、長浜や米原の曳山には歌舞伎舞台があり、祇園祭の山鉾とは大きく異なります。山車の車輪にも違いがあり、 祇園祭の山鉾が四輪であるのに対して大津祭は三輪です。また、大津や日野や水口は、祇園祭の山鉾のように御所車の形ですが、米原と長浜の曳山は、直径90cmはある大きな丸太を使った車輪です。同じ県内の曳山でもここまで違うとは…!

 今回上げた例は、ほんの一部です。皆さんもそれぞれの曳山の違い見つけてみてくださいね。

 さて今回、アンケート通して、より深く民俗文化財のことを知ることができました。ブログスペースの関係上、全てのご質問にお答えすることは出来ませんが、この「番外編」をきっかけに、皆さんの興味の幅が広がればいいな~と思っています♪

カテゴリー: 文化財講座 | 打出のコヅチ第3回 番外編 ~ご質問にお答えします~ はコメントを受け付けていません

「花湖さんの打出のコヅチ」第3回 開催しました

 ここ最近はまるで梅雨に戻ったかのような雨続きでしたが 、この日は晴れてくれました!7月21日(木)、滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第3回の開催日です。講座メイン会場には、開催を心待ちにした 92名の方がお越しくださいました。

講師の矢田直樹氏

 今回講師にお迎えしたのは、県文化財保護課の矢田直樹氏です。 おやおやこれは・・・なんてステキ な青のハッピ姿でのご登壇です♡ オトコマエ度が一層上がっております↑ (笑)!何を隠そうこの方、「県下随一のお祭りオトコ」と言っても過言ではない?!どんなお話が聞けることやら・・・とても楽しみです♪
 
 講座のテーマは「民俗文化財の保存修理」です。文化財保護法によると「民俗文化財」とは、衣食住、生業、信仰、年中行事に関する風俗習慣、民俗芸能、民俗技術及びこれらに用いられる衣服、器具、家屋その他の物件で、我が国民の生活の推移の理解のため欠くことのできないものとされています。身近なものであればこそ、民俗文化財を継承していくための保存修理が大変重要となります。今回の講座はそんなお話です。

 保存修理の一例として、日野町にある馬見岡綿向神社の「祭礼渡御図絵馬(県指定)」について紹介されました。(※皆さん覚えていらっしゃいますか?平成30年度の打出のコヅチで紹介した“あの” 絵馬です。)
 約200年前に描かれた絵馬は、にかわの接着力が弱まったことで絵の具の剥落が見られ、修理にはにかわを挿して接着力を戻すという作業が行われました。縦206cm横422cmもある大きな絵馬を修理するのはとても大変で、剥落止めの作業だけでも一年かかったのだとか・・・調査も含めると2年の歳月をかけた大事業であったとのことです。
 修理完了後は、神社の建物などで保管することも考えられましたが、地域の繁栄を願って奉納された絵馬であるため、「地元の人達に見てもらうのが一番!」と、以前と同じように境内の絵馬殿に掲げられたそうです。とてもいいお話・・・心にグッときます。ヨッ!これぞ民俗文化財!!皆さんも文化財の在り方を考える、良いきっかけになったのではないでしょうか。

 また、近江の無形民俗文化財には曳山祭があります。祭りに使用される山車には、本体を造る建築・木工、塗装の漆工、飾り金具などの金工、幕の染織など様々な技法が用いられています。山車によっては、からくり人形の仕掛けがあったりもしますよね。講師のお話の中で「山車は“山 ”ひとつで、多様な工芸技術がある総合文化財」と言っておられたのがとても印象的でした。何だかとても日本人の魂に“響く”言葉だと思いませんか?
 後半では曳山の修理について、とてもよく分かる映像が紹介されました。 各分野の職人さん達が持てる技術を駆使して作業される姿や、文化財修理に対する熱い思いが伝わる映像です。こちらは滋賀県文化財保護課You Tubeチャンネルの「近江の曳山祭と曳山修理 祭りを支える技」で、ご覧いただく事ができますので、皆さんも是非チェックしてくださいね♪ 【ここまで曳山祭に特化した番組は全国でもとても珍しい、貴重映像が満載です!!】


 受講者の中には、曳山祭に直接関わっておられる方も参加されていたようで、「修理の様子は見ることができないので映像で見れて良かった」とのお声も寄せられました。

 民俗文化財には、少子高齢化や人口流出や、資金・原材料確保や修理技術の継承など、様々な課題があるそうです。使い続ける文化財として、また多様な素材や技術が使われている文化財を修理をすることで、民俗文化財としての価値を守りつつ、次世代に引き継ぐことになります。身近にある地域の文化を長く守り続けていく大変さと大切さを知る講義となりました。 ワッショイ!!

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打出のコヅチ 番外編 ~ご質問にお答えします~

 前回のブログでご紹介した滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第2回。内容は延暦寺所蔵の「阿弥陀八大菩薩像」がメインでしたね。今日は、アンケートに書かれていたご質問内容 について、講師を務められた古川史隆氏にお尋ねしましたので、復習もかねて皆さんとお勉強したいと思います。

 (質問①) 高麗仏画が日本に伝わり7~800年経ているが、絹が虫あるいは劣化
       による
損傷がない。保存の工夫は、どうなのか。

 この仏画は14世紀頃の製作となりますので、確かにすでに700年近く経っています。ですが、スクリーンに映し出された図像は、阿弥陀様や菩薩様たちのお姿をはっきりと確認することができます。

 さて、長い歴史の中どのような保存がされていたのか、、、それは定期的な虫干しなのだとか。風通しによって空気を入れ替え、カビや虫の被害を防いでいるそうですよ。更には、50年・100年単位で修理を重ねることで、損傷の進行を防いでいるらしく、、、何とも長い年の間隔で、修理が繰り返し行われていたのですね。古いものを後世に残すということの大変さがわかります。そして、このような質問も…

 (質問②) 絹布に細密画を描くには「にじみ」も予想されるが認められない。
       どんな工夫があるのか?また、絹布のメッシュ数なども知りたい。

 ここ、これはまた専門的なご質問!詳しくみてみましょう。

 この作品の絵絹(えぎぬ)の組成(そせい)は、1平方センチメートル四方で、経糸(たていと)が約20本、緯糸(よこいと)が約30本とのこと。びっしり糸が詰まっているように見えても小さな隙間はできます。そこに絵を描いたら、たしかに滲んでしまいそうです。でも、ちゃんと対策があるのです。

 滲みの防止策は、絵絹に礬水(ドーサ)を塗布することが現在でも一般的なのだとか。礬水とは、獣の骨などから作られる「膠(にかわ)」と「明礬(みょうばん)」を混ぜたもので、絵が描かれる前の絵絹に塗布します。おそらく高麗仏画でも同様の処置が行われていたと考えられるそうです。絹に描くためには、こんなひと手間があったのですね。

 いかがでしたか?前回のブログは「阿弥陀八大菩薩像」の内容や表現方法を紹介しましたが、今回は文化財の保存方法・絹に絵を描く方法をご紹介しました。アンケートをきっかけに、こんなにも知識が深まるとは…「さすが、打出のコヅチ!」と言っていただきたい(笑)。

 皆さんにご記入いただいたアンケートは、毎回ドキドキしながら見せていただいております。アンケートをただのアンケートと思うべからず…。より良い文化財講座の開催につなげるべく、スタッフ一同、一生懸命取り組んでおります。

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「花湖さんの打出のコヅチ」第2回 開催しました

講座メイン会場:コラボしが21

 梅雨の晴れ間となった6月23日、滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第2回を開催しました。会場のコラボしが21には、何と定員を超える方々が…。実は、、、です。滋賀県では15日にコロナの警戒レベルが引き下げられたこともあり、講座の受付についても柔軟に対応させていただいておりました♪元々が210人座れる大会議室です。運営側として、これまでと同様に会場の感染症対策も怠りなく、参加の皆さんには変わらずマスクの着用をお願いした上で、今回110名の方々にご参加いたさきました。皆さん、ご協力ありがとうございました。

講師:古川史隆氏

 第2回は、「延暦寺の阿弥陀八大菩薩像について-令和3年度滋賀県新指定文化財紹介①-」というタイトルで、県文化財保護課・古川史隆氏(琵琶湖文化館兼務)がお話しいたしました。延暦寺所蔵の「絹本著色阿弥陀八大菩薩像」は、朝鮮半島の高麗時代に描かれた作品で、当時の仏教文化を物語る貴重な資料として、昨年度新しく滋賀県指定文化財となりました。現存する高麗仏画は、現在は160点近くが確認されており、日本には約110点が伝来しています。

 今回のテーマである「絹本著色阿弥陀八大菩薩像」は、法量が縦178.6cm横88.6cmと大きいもの。“絹本著色”とは、絹に色を付けて描かれたことを指しています。皆さん、この絵を描くときは「きっと大きな絹に描いたのだろう」って思いますよね。でも実はこの絵、5枚の絹を継いで一枚の絵とする“五副(ふく)一鋪(ぽ)” の絵になっており、その継ぎ方は大変珍しいそうです。仏画において、1枚の絵絹を使った一副一鋪や、3枚の絵絹を継いだ三副一鋪はよく見られるそうですが、五副一鋪はあまり例を見ない珍しい作なのだとか。

 「阿弥陀八大菩薩」の図像は、中国・日本に作例はなく、華厳信仰と阿弥陀信仰が融合した高麗独自の信仰を反映した図像との説があります。 更に特徴的なところは、通常なら阿弥陀八大菩薩像の最前列に配置される観音菩薩・勢至菩薩と第三列に配置される地蔵菩薩・弥勒菩薩が入れ替っていることです。明確な理由はわかりませんが、特殊な信仰形態に基づくもの考えられているのだとか。この絵には、願主の意図が込められているようで、「仏画」とは、実は種類豊富で奥深いものなのだと、今回改めて思いました 。

 高麗仏画は、今まで中国画(唐絵)とされていたため、研究が始められたのは戦後のことで、ここ数十年で研究の進展・成果が目覚ましいのだとか。参加された方からも「高麗仏画というものを初めて知った」との声もあり、あまり知られてこなかった高麗仏画が、今後更に研究されることで多くの方に知ってもらえるようになれば嬉しいですね。

 1時間30分の講座もあっという間。コロナ禍で皆さんからの質問をお断りしているのですが、アンケートを手渡してくださった方から「質問があったのでアンケートに書かせていただきました」とのこと。「おや。これはしっかりと講師の方にお伝えせねば!」と、早速質問を古川氏にお伝えしました。その質問と回答は??それは次回このブログでご紹介します。

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令和4年度「花湖さんの打出のコヅチ」第1回 開催しました

 皆さん待望のこの日がやってまいりました! 5月25日(水)「滋賀の文化財講座 花湖さんの打出のコヅチ」、今年度第1回目の開催日です。会場には、事前に申し込みいただいた100名の方がお越し下さいました。幸先の良いスタート♪これも講座を楽しみに待っていてくださる皆さまのおかげです。

講師:井上優

 今回の講師は県文化財保護課・井上優(琵琶湖文化館副館長兼務)で 「滋賀県の誕生と県政150年」というテーマで、お話しいたしました。
 2022年は滋賀県政150年を迎える年です。講座で紹介された歴史資料「滋賀県行政文書」は、県政150年の歴史を物語る基礎資料で、滋賀県指定文化財になっています。今年度“滋賀の文化財講座”の初回を飾るのに相応しいテーマなのです。

会場の様子

 「滋賀県行政文書」は、書類を綴じた本のような体裁にした「簿冊(ぼさつ)」の形になっていて、その数9,068冊。一括して、県指定文化財として県庁に保管されています。
 その内容は滋賀県の前身・大津県庁発足の明治時代(慶応4年含む)から、昭和初期(昭和20年)までの文書となっており、この文書を紐解けば近代滋賀県の歴史がわかるのです。その中には今では信じられない滋賀県の姿もあります。明治9年から明治14年にかけて、滋賀県は敦賀県を合併しており、この5年間は、現在は“海なし県”でお馴染みの滋賀が、なんと“海あり県”だったのだとか。この事実には、会場からも驚きの声が聞かれました。ちなみに、この時期の文書には、福井県である敦賀の行政文書も含まれているそうです。

 行政文書は、滋賀県立公文書館でのみ閲覧が可能です(利用申請が必要)。閲覧方法等詳しくは、公文書館のホームページをご覧ください。また公文書館では、企画展示や公開講演会なども行っているそうです。この講座で気になった方は、行ってみてくださいね。

スクリーンに映し出される大津事件の概要

 そして、県政150年を語る上で忘れてはならない出来事といえば、明治24年に起こった「大津事件」です。当館にその関係資料が収蔵されていることは文化館ファンの方なら、よくご存じですよね?!講座では、事件後を中心に当時の生々しい調書や、事件後の県と国についてより詳しく解説しながら語られました。事件のあらましなどは、教科書などでご存知の方もおられますが、事件のその後については、知らないという方が多かったようで、アンケートを拝見していると「大津事件を詳しく知ることができて良かった」といったお声もありました。

 平成20年度より、会場[コラボしが21]で始まった「滋賀の文化財講座」は、今年で15年目を迎え、参加人数は延べ7,000人を突破致しました。本講座は、皆さまの知りたい・学びたいという気持ちに支えられております。
 これからも、滋賀の文化財をとりまく魅力あふれる情報を、“ 打出のコヅチ ”のひと振りが皆さまの期待に応えられますよう、頑張ってまいりますので、今後ともどうぞよろしくお願いたします。

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いよいよ始まる“アレ”と思いがけない出会い

 さぁ!いよいよアレ始まります! 4/1付けのブログでお伝えしていたアレとは、、、そう。滋賀の文化財講座花湖さんの打出のコヅチです。4月になってから、多くのお問い合わせがあり、情報解禁したのが、4月後半だったにも関わらず、4月のホームページアクセスで一番の人気となりました。

 まだ新型コロナが心配なため、今年もメイン会場(コラボしが21)の人数を100人に抑えての開催となりますが、各市町のご協力もあり、全6カ所のサテライト会場を設けております。こちらも是非ともご利用くださいね。会場によって開催する回が異なりますのでご注意ください。
 初回は、5月25日(水)「滋賀県の誕生と県政150年」をテーマに、滋賀県文化財保護課兼琵琶湖文化館副館長の井上優がお話しさせていただきます。メイン会場の予約は若干名となっています。ご参加を検討されている方はお早めに。。。(※定員となった場合は、キャンセル待ちでの受付として対応させていただきます。)

 さて皆さん、ゴールデンウィークはどこかに出かけられましたか?今年は、3年振りに規制の無い大型連休となり、ニュースでも連日各地の観光地の様子が映しだされていました。関西では、琵琶湖畔で寛ぐ親子連れや、観光客でにぎわった京都清水寺の様子が映し出されていました。

諸大夫の間 矢印部分が「虎の間」

 連休中に京都に行く機会があったのですが、思いがけず京都御所で“岸岱の虎”と出会いました。“岸岱の虎”といえば、館蔵品の「巌上咆哮猛虎図」です。寅年の今年、文化館の新年の挨拶でもご紹介しました。この虎を描いた岸岱が京都御所内にある「諸大夫(しょだいぶ)の間」に同じく虎を描いているのです。「諸大夫の間」は、正式に参内した人の控えの間で、身分に応じて「桜の間」「鶴の間」「虎の間」へと通されたそうです。一番位が高い人が通された「虎の間」です。コチラの襖に岸岱の虎図がありました。建物内に入ることは残念ながら出来ず、外から襖を見る形となるのですが、館蔵品の猛々しい虎とは違い、少し落ち着いた感じが見て取れます。遠目からでもわかる隆起した虎の体つきが「巌上咆哮猛虎図」にそっくりで岸岱の虎と実感しました。

 連休中の出会いに思わず嬉しくなりました。京都御所は、一年を通じて公開されており、誰でも無料で見学することができます。皆さんも是非、文化館の虎との違いを見てみてくださいね。

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「花湖さんの打出のコヅチ」第5回 開催しました

秋も深まった11/11(木)、滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第5回を開催しました。本来は9月開催予定でしたが、新型コロナ感染拡大の影響により2カ月遅れでの開催。その間に第6回の現地探訪が行われたため、今回が今年度最後の文化財講座となりました。会場には、この講座をずっと心待ちにして下さっていた89名の方々が受講されました。

今回は「建造物のさまざまな屋根技法」をテーマとして、県文化財保護課の菅原和之氏にお話しいただきました。 ひとことで“屋根”と言っても、その形や素材は様々。講座では、歴史的建造物の屋根の形状・葺き材とその技法について、スライドの豊富な写真とともに、ひとつひとつ丁寧に説明していただきました。屋根の形状は、切妻造、寄棟造、宝形造、入母屋造など多様にあり、素材も檜皮(ひわだ)や杮(こけら)、とち、茅、瓦、銅板と様々です。茅葺きでお馴染みの茅材は草の総称であるため、地域によって使用するものが異なるそうです。琵琶湖岸ではヨシですが、山間部ではススキを使用するという、同じ滋賀県でも違いがあるのが印象的でした。形と素材の組み合わせは自由なため、建造物に求める用途や使用年数、地域ごとの気候や資材入手等の条件によって組み合わせが検討されるとのお話には、その奥深さに感嘆するばかり。皆さんからも「屋根について詳しく知る機会がなかったので知ることができてよかった」とのお声を頂きました。

会場には「屋根技法について」の文化財保護課の出張展示が設けられました。詳しく書かれたパネルの他に、講座で紹介された屋根葺き材の檜皮や杮の実物、葺き方の模型なども展示されました。熱心に見入る人たち・・・普段は間近で見る事ができない屋根の葺き方がよく分かり、講座の内容もより理解が深まったのではないでしょうか。

今年度の打出のコヅチは、本講座を持ちまして全てが終了いたしました。新型コロナに悩まされながらも、全6回を無事に開催できたこと、深く感謝いたします。サテライト会場でご参加いただいた皆さんも有り難うございました。アンケートに「このコロナ禍で開催してくれてありがとう」と書いてくださった、そのあたたかいお言葉にも感謝です!
滋賀の文化財について、学びの機会を皆さんとともに・・・今後とも「打出のコヅチ」をよろしくお願いいたしま~す♪

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「花湖さんの打出のコヅチ」第6回現地探訪 開催しました。

さわやかな秋晴れとなった10月28日(木)「花湖さんの打出のコヅチ」第6回現地探訪を実施しました。今回は「渋沢栄一ゆかりの藤樹神社とその周辺」をテーマに、高島市安曇川町を訪ね、近江聖人と呼ばれた中江藤樹と渋沢栄一について、県文化財保護課(琵琶湖文化館兼務)の井上優氏に詳しく案内していただきました。

集合場所の藤樹神社に集結した40名の“打出のコヅチ隊”。藤樹神社はその名の通り、中江藤樹を祀った神社で、1922年の創建、来年100年目を迎える新しい神社です。ここでは特別に宮司さんからお話しいただきました。地元をはじめ、中江藤樹を慕った多くの人々によって建てられた歴史について、なかでも近代日本を支えた著名人、渋沢栄一や大隈重信、東郷平八郎などから多額の寄付があったことが紹介されると、皆さんからはどよめきが(笑)。興味深いお話を聞かせていただきました。
その後、お隣の高島市藤樹の里文化芸術会館へ移動。ここは、現在好評開催中の「渋沢栄一と中江藤樹・熊沢蕃山」展の第1会場となっています。コヅチ隊もここで展覧会を見学しましたが、ただ見るだけではありません。渋沢栄一たち近代日本を支えた偉人と中江藤樹の関係について展示を見ながら探っていくのです。会場には、滋賀県内に残る渋沢栄一の書4点すべてが一堂に会しており、皆さん普段はあまり見ることができない貴重な作品を、講師の解説とともに熱心に見て下さっていました(嬉)。
第2会場となる近江聖人中江藤樹記念館では、共に企画展を担当して下さった記念館学芸員・早川さんが中江藤樹や高島市の文化財について、詳しくお話をして下さいました。文化館の収蔵品の中でも重量級の高島硯は、その大きさに皆さん驚いておられましたヨ。そしてこちらの左の写真(←)。皆さんなんだか熱心に展示ケースを覗き込んでいます。実は、ここには中江藤樹の真筆で、彼の教えである「致良知」を大きく書かれた掛軸が展示されています。普段は学芸員の方でも滅多に見ることができない(!)ものだそうで、現在、展覧会に合わせて特別に公開されています。この貴重な機会に皆さんの目はくぎ付けです。

当初はこの記念館で現地探訪は終了する予定だったのですが・・・なんと!近くにある「藤樹書院跡」を管理する良知館さんが、急遽我らがコヅチ隊の見学を受け入れてくださることになり!ココからは、オプショナルツアーとして、藤樹書院跡へ向かうことになりました。時間の都合が付かなかった方ゴメンなさい!
「藤樹書院跡」は中江藤樹の住居兼講堂跡で、国の指定を受けてから来年100年を迎えます。現在の建物は明治時代に再建されたものですが、内部には中江藤樹の神主(しんしゅ:儒教における位牌)があり、藤樹先生を身近に感じながら、地元の方の説明に耳を傾けました。説明をして下さった方が、終始「藤樹先生」とおっしゃっていたのが印象的で、今でも皆さんから慕われ、親しまれる存在であることを実感致しました。

今回のツアーは、現地探訪始まって以来「一番歩く距離が短い」ツアーとなりました(笑)。県内に住んでいても、あまり知らなかった中江藤樹のことを詳しく知ることができる良い旅となりました。

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「花湖さんの打出のコヅチ」第4回 開催しました。

10月11日(月)滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第4回を開催しました。本来は8月に開催の予定が、新型コロナウイルスの感染拡大によりやむなく延期となり、講座の再開は約3ヶ月振りとなります。ようやく再開できました。
当日は10月とは思えない暑さの中、定員いっぱいの100名の方が会場にお越しくださいました。受付でも開催を待ちわびた皆さんの今か今かという気持ちがヒシヒシと伝わります。

第4回は「仏教美術にみる死生観」をテーマに、琵琶湖文化館の学芸員・和澄浩介が登壇いたしました。実はこの回、滋賀県が行っている「死生懇話会」とのコラボ企画となっています。「死生懇話会」とは、誰もが避けられない「死」について、行政として真正面から考えることで、「生」をより一層充実させる施策につなげる契機として令和2年度から滋賀県が懇話会を設置していました。
講座では仏教美術を通して、昔の人の死生観について語られました。中でも、古代の仏像の死生観には現代とは違った考え方でした。皆さん“仏像”とは「死」に対して造られている感じがしませんか?ですが、奈良・法隆寺金堂の釈迦三尊は聖徳太子の病気平癒を願って造られ、薬師寺金堂の薬師如来は、天武天皇が妻の病気平癒を祈願して造られたもの。どちらも人を生かそうとして造られた仏像なのです。
他にも、平安時代後期以降には仏像に故人の遺物などを納めて仏と一体となることを意図する考えに方に。例として挙げられた、愛知・瀧山寺の聖観音立像は、源頼朝の従弟が頼朝の三回忌に造らせた像で、頼朝の歯を像内に納めたそう。スクリーン映し出された、X線写真には確かに人の歯が写っていました。講師の口から「頼朝の歯」との説明を受け、教科書にも登場する歴史上の人物の死生に、会場内からは思わず「おお!」との声が多く上がっていました。県内にも東近江市・善勝寺に、三回忌を迎えた故人の遺骨を納めた貴重な仏像があるということです。
各時代の仏教美術から、それぞれの死生観を伺うことができました。色々な考え方から現代に生きる私たちにも何かヒントがあるかかもしれません。盛沢山な内容に充実した1時間半となりました。

次回の打出のコヅチは、10月28日(木)開催の第6回現地探訪となります。延期となった第5回が、11月11日(木)開催となるため、第4回の次が第6回となってしまってます。すこしややこしいですが、申し込みをされた皆様、楽しみにしていて下さいね。

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「花湖さんの打出のコヅチ」第4回 開催延期について

暦の上では立秋が過ぎ、台風が過ぎ、空気が少し入れ替わったように思います。季節の挨拶状が「暑中見舞い」から「残暑見舞い」に変わる時期ではございますが、この度「滋賀の文化財講座 花湖さんの打出のコヅチ」を楽しみにして下さっている皆さまへ「お詫び状」を送らねばなりません。。。

8/6付けでお知らせしていますとおり、当初8/26(木)に開催予定であった[第4回 仏教美術にみる「死生観」]につきまして、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、やむなく開催を延期させていただくこととなりました。

講座メイン会場(コラボしが21)⇒10/11(月) 14:00~15:30

先にお申込みいただいていた方には、変更の旨、当館より個別に連絡をさせていただいているところでございます。※受講を電話で申し込まれた方!文化館からの着信(077-522-8179)に出て下さい!!オネガイシマス!)

なお、サテライト会場[彦根市稲枝地区公民館・近江八幡市総合福祉センター/ひまわり館・湖南市共同福祉施設/サンライフ甲西]へお申込みいただいておりました方々には、各会場担当より「中止」の連絡が届いているかと思います。この点に関しては、当方の都合により苦渋の判断で「中止」とさせていただきました。受講を楽しみにしていただいていた方々には、大変申し訳なく、心苦しい限りです。
※メイン会場の受付は、既に定員に達しているため、「キャンセル待ち」をご希望の方は、誠に恐縮ですが、電話にてお申込みいただければ幸いです。

私どもといたしましても、このままではサテライト会場にお申込みいただいていた方々にあまりにも申し訳なく、『なんとか受講していただくことができないか』と、現在、対策を検討しております。後日、何らかの形でご案内できるかと思います(頑張ります!)ので、吉報をしばしお待ちいただければ幸いです。当館HPを欠かさずチェックしてくださいね。

この度の新型コロナの感染拡大という不測の事態に、主催側も慌てふためいております。暗中模索ではありますが、より良い形で講座を開催できるよう、鋭意努力してまいりますので、
受講の皆さまにはご理解ご協力賜りますよう、お願い申し上げます。

皆さん、何としてもこの感染拡大を8月中に抑え込みましょう!秋以降の楽しみのために!今が我慢・試練の時と思って、皆で乗り越えましょう!健康が一番!!

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「花湖さんの打出のコヅチ」第1回 開催しました。

5月27日(木)梅雨の雨というには、少し激しい雨模様のなか、はじまりました今年度初の滋賀の文化財講座 花湖さんの打出のコヅチ。100名の定員のところ、事前に申込みのあった90名の方が受講されました。今年も、昨年に引き続きコロナ禍での開催。来場の皆さまには、入口で検温にご協力いただき、受付もスムーズにスタートしました。

第1回は「芦浦観音寺の王会図屏風について-令和2年度滋賀県新指定文化財紹介-」というタイトルで、県文化財保護課(琵琶湖文化館兼務)・古川氏に登壇いただきました。
芦浦観音寺さまの所蔵で現在、文化館でお預かりしている王会図屏風は、令和3年2月新たに県指定文化財になった作品で、まさにコヅチの初回を飾るトップバッターにふさわしいホットな話題となりました。

「王会図(おうかいず)」とは、中国唐時代に誕生した画題で、本場中国では、唐代の太宗に対する朝貢の図を「王会図」といい、朝貢全般の図を「職貢図(しょくこうず)」と呼ばれるそうです。この二つが混同し、同一の作品に対して、二つの名称が使用されるのだとか。そして、中国では「職貢図」が10点程残っていて、「王会図」と呼ばれるものは現存しないそうです。日本における「王会図」も、わずかにしか残っておらず、現存作例は、戦国武将が天下統一を競っている16世紀末に集中しているのだとか。これは、絵を注文した人が、中国全土を統一した太宗と来朝者を、自分と服属する戦国大名に重ね合わせ天下統一を示したのではと説明されていました。日本に来て新たな解釈となった「王会図」。時代が反映されていて、とても面白いと思いませんか。

そして、芦浦観音寺の王会図屏風には、時を経て変わったことが。それは…っと、コレは、ただ今「クイズチャレンジ」で問題になっているのでした。なので、ココではちょっとヒミツにさせてください(気になった方は、ぜひクイズを考えてみてください)。会場でこの話が講師の口から話された時、驚きの声を上げた方がおられましたよ。日本の建具って奥が深い!

今年の文化財講座は、大津の本会場(コラボしが21)とは別に、各自治体の協力のもと、オンライン配信によるサテライト会場での受講も可能となりました。会場となった彦根市稲枝地区公民館さん、草津市常盤まちづくりセンターさん。受講された方からは、「初めて目にする文化財でした。」「滋賀の文化財のすばらしさ、今さらながらの学びです。」「人数等ちょうどよい」等の感想も寄せられました。これを機会に多くの方に滋賀の文化財の魅力に触れていただければ幸いです。(詳しくはコチラ

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令和3年度 滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」開催決定!

皆さん気になってますよね~。3月にお問い合わせの電話をいただいた方も、4月に入ってからネットのキーワード検索でチェックしていただいている方も、直接当館に訪ねて来られた方たちも!!!・・・開催を楽しみにして下さる全ての皆さまへ、お待たせ致しました・・・。
本年度も開催いたします!滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」全6回!!
コロナ禍での開催は心配することも多く、実施について何度も話し合いを重ねた結果、「こちら側の体制をしっかり整えた上で、会場の定員を昨年と同様に」してであれば実施は可能!との判断に至りました。何より、昨年参加された皆さんがとても協力的 (感謝!!)で、「また楽しみにしてるわ」と声かけられたその言葉に支えられてきた私たちです。今、ここに、コヅチ14年目の開催に向けての一歩を踏み出します!あとは前進あるのみ!

【基本情報】
講座のメイン会場は、昨年と同じ大津市打出浜の「コラボしが21 3階大会議室」。募集定員は100名で、座席を1つずつ空けて着席していただく会場です。大きなスクリーンを見ながら、講師が皆さんにお話させていただきます。

【昨年と違うところ】コロナ対策
〇今年はオンライン配信によるサテライト会場での受講が可能です。
各市町さんの協力により、少人数の会場で受講できます。(資料はメイン会場と同じものを配布。スクリーンにはメイン会場と同じ内容が映し出され、講師の音声が届きます。)
※各会場で実施する回が異なりますのでご注意を!
・彦根市)稲枝地区公民館①②③④⑤
・近江八幡市)桐原コミュニティセンター②
・近江八幡市)総合福祉センター[ひまわり館]③④⑤
・草津市)常盤まちづくりセンター①
・湖南市)共同福祉施設[サンライフ甲西]③④⑤
・多賀町)多賀町立博物館②③⑤

〇開催時間は半時間ずらして14:00~15:30まで。(机の消毒等、会場準備のため)
昨年は準備でバタバタでしたからね。受付開始も13:30~となりましたので、密になることなく入場していただくことができます。
〇受講の申し込み受付開始日を設定、各回のお申込み。
昨年、定員を減らしたこともあり、受講できなかった方が多数いらっしゃったため、今年はコロナの状況を見極めつつ、公平に、各回約1ケ月前からの受付とさせていただきます。(こちらで言うのもなんですが「人気講座」ですので)毎回ドキドキしながらご応募下さい(笑)!

ということで!第1回は5/27(木)、昨年度に新しく県指定文化財となった「芦浦観音寺の王会図屏風」についての講座です。受付開始は4/27(火)8:30から!皆さまのご参加を心よりお待ち致しております!!【詳しくはコチラ!】

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