月別アーカイブ: 6月 2017
近世絵画の名品たち
このホームページの収蔵品紹介コーナーでも多数取り上げているように、琵琶湖文化館には仏教美術や歴史的な資料以外にも、江戸時代の絵画(近世絵画)の名品を数多く収蔵しています。そのため、近世絵画の出陳の依頼や本やテレビで紹介したいとの相談をよく受けます。
今回もその一例で、江戸時代の美術を網羅的に紹介した河出書房新社の新刊『江戸の美術 大図鑑』(監修:狩野博幸氏・並木誠士氏・今橋理子氏)において、当館の近世絵画5点が紹介されています。
掲載されている作品は、復古大和絵の土佐派に学んだ菊池容斎(1788~1878)の「鯉遊之図」や琳派・酒井抱一の内弟子である鈴木其一(1796~1858)の「紅梅水鳥図」、近年、奇想の画家として大人気の曾我蕭白(1730~1781)の「叡山図」(滋賀県指定文化財)、紀州三大南画家と称された桑山玉洲(1746~1799)の「山水図」、そして大陸の写実的な画法を学んだ宋紫石(1715~1786)の「柳汀双禽図」です。
このように琵琶湖文化館では、近世画壇の各派・各画風の作品を幅広く収蔵しており、さらに近江ゆかりの画人、画題の作品も重層してあります。
上記の作品はホームページの収蔵品紹介ですべてご覧いただくことが出来ますが、江戸時代の美術史全体のなかでどのように位置づけられる画人なのか、作品なのか、この本を読むと一層わかりやすく理解することができます。
このような形での当館の近世絵画分野の公開活用についても、皆さんに是非、注目していただければと思います。
学芸員W
写真アーカイブ 番外編
以前のブログで、「湖上にお城ができるまで-写真アーカイブ」の一時休載をお伝えしましたが、2ヶ月が経った今回、「皆さまに紹介したい!」と思ったけれどコンセプトからすこ~し外れてしまうため、あきらめてしまった写真を1枚ご紹介しようと思います。
コチラの写真。はじめて見たとき「県庁が写っているけれど、どこの辺から撮影したものだろう?」と思っておりました。ですが、よ~~く目を凝らして見ると小さく”小舟入の常夜燈”が写っております。え?見えません?では、拡大してみますね。ほら、この通り!
江戸時代に小舟入(今の大津市中央4丁目)では石場と並び、草津・矢橋へ渡し舟を出していたそうです。“石場の常夜燈”は現在、文化館とびわ湖ホールの間にあるなぎさ公園の一角にあり(詳しくはコチラ)琵琶湖岸を歩く人々を見守っていますが、写真に写る“小舟入の常夜燈”は、湖岸道路(県道18号線)と京阪電車の線路が並走する南側、住宅街の中にひっそりと建っていてます。
ご紹介した写真は昭和30年代半ばに撮影されたもので、埋め立ての終わった打出浜 (現在の県警本部あたりでしょうか?) から、南側を撮影した写真のようです。今とは違って大きな道路もなく、高い建物もないため、県庁も顔をのぞかせています。
60年近くたった現在、湖岸沿いの歩道を歩きながら、南側を見ると、同じ場所とは思えないくらいに変わっています。様変わりした街の中に、200年たっても変わらない“常夜燈”があるのがとても不思議な感じがいたします。そして同時に古い写真に写っている今現在もあるものを見つけるとワクワクします。。。みなさまも懐かしい写真を片手にブラリと外に出てみてはいかがでしょうか?
県博協 総会 in 長浜
皆さんは、滋賀県博物館協議会(県博協)をご存知ですか。県博協は、美術館・資料館なども含め県内の博物館施設(歴史・芸術・民俗・産業・自然科学等)が相互の連絡を図り、博物館活動を通じて県民文化の振興に寄与するため、昭和57 (1982) 年12月に設立され、今年設立35周年を迎えます。
現在、加盟しているのは69館。「意外と多い」「そんなにあったっけ?」と思われる方、こちらのポスターをどこかで見かけたことありませんか?これは35周年を記念して県博協が作成したガイドマップです。各博物館施設の名称と、イチオシの作品が掲載されており、どこにどのような博物館があるのか一目でわかるようになっています。そうなのです。県内には美術館・博物館が、いろいろあるのですよ。
先日、この県博協の総会が開催され、昨年度の事業報告や今年度の事業計画の説明があり、続いて、今後の研修会の予定、各館の取り組みの紹介、その他意見交換などが行われました。加盟館が一堂に集まり、連携して活動していくための貴重な機会となりました。
その後、会場館である長浜市曳山博物館を見学させていただきましたが、展示されていた実物の曳山は想像以上の大きさ!・・・となると、「この曳山の出し入れは、展示室のどこから、どうするの?」とついつい博物館目線の疑問が・・・いろいろと勉強になりました。。。
長浜曳山祭の曳山行事が、ユネスコ無形文化遺産『全国の「山・鉾・屋台行事」(33件)』の内の一つとして登録されたこともあり、街全体も盛り上げムードでいっぱいでした。博物館だけでなく、自治体と地域で盛り上げていく連携の「うまさ」は、見習うべきところも多く、「さすが長浜市さん」と思いながら、帰途に着いたのは僕だけではないハズ・・・です。地域から県全体へ、盛り上がる滋賀県であればいいな、と思います。
筆:あきつ
平成29年度 第2回「打出のコヅチ」が開催されました!
梅雨入り宣言はとっくの昔にされたはずですが、このところとってもよいお天気が続いていて。。。会場の近くで満開となった紫陽花の花だけが、6月であることを思い出させてくれます。
会場というのは、「コラボしが21」のこと。昨日15日、滋賀の文化財講座「打出のコヅチ」第2回が、ここで行われました。少し汗ばむくらいの暑さの中、なんと173名もの方がお集まりくださったのです(新記録)!! 今回の講座のテーマは「究極の城 彦根城」。なんといってもこのタイトルですからね~。大勢の方のご参加は予想しておりましたものの。。。とうとうこれまでの講座の中で「究極の」参加者数となり、驚きと感動の一日となりました。
さて、彦根城は国宝・特別史跡にも指定されているということで、現地を訪れて、あの3層屋根の天守を見上げたことのある方も、たくさんいらっしゃることでしょう。ところが、今回の講師にお迎えした松下浩氏(滋賀県教育委員会文化財保護課)は、地上から見上げるのではなく、地図を用いるなどして、鳥のように(?)ひたすら空の上から、彦根城全体とその城下町を見下ろしてお話し下さいました。
確かに上からお城の全体を眺めてみると、そこに堀や石垣がどのように配置されていたのか、城の「縄張り」がよ~くわかりますよね。その上で、この彦根城と城下町がどのように造られ、拡張していったのかということを、関ケ原の合戦以後の徳川家と豊臣家の関係などの歴史的背景をも絡めながらご説明いただいたきました。この新たな視点からの解説で、彦根城という、軍事的要素と政治的要素が最高度に組み合わさった「究極の城」の魅力を、みなさまにじっくりと味わっていただくことができたのではないでしょうか?
講座後のアンケートにも、「丸ごと彦根城を知った気分」「今までただ眺めていたお城の全体に興味が深まった」「ゆっくり歩いて今回得たことを確かめてみたい」など、彦根城を中心とした今回の講座内容に関する感想をたくさんいただきました。さらにまた、「地域の文化財について理解することによって生活に満足感が増す」「(文化財の)保護や実態について考えることがなかったので、解説付きの講座を受講できるのはうれしい」など、「打出のコヅチ」全体についての嬉しいご感想もいただきました。どうもありがとうございました。みなさまのご意見・ご感想をもとに、打出のコヅチも「究極」を目指して行きたいなあ。。。と思っております。
次回は7月20日(木)、いよいよ当館の学芸員・渡邊勇祐が登場いたします。テーマは「日吉山王祭礼図を読み解く」。地域に残る文化財をじっくりと堪能できますよ。お申込みは電話・Fax・E-mailで琵琶湖文化館まで。次回もまた、多くの方のご参加をお待ちしております!
お申込みはお済みでしょうか?「打出のコヅチ」第2回
天守が現存するということで有名な国宝・彦根城。今年は築城410年を迎え、さまざまなイベントが行われていますね。去る4日には、航空自衛隊ブルーインパルスによる展示飛行が催され、近世の城郭と現代の自衛隊との時空を越えた、地空にわたる見事なコラボレーションに、なんと5万人!!を越える観客が魅了されたということです。
ところで、空から見下ろすと、彦根城の堀や門が戦に備えてどのように配置されているのか、その「縄張り」がとてもよくわかるはずですよね。現代の防衛を司るパイロットさんの目には、いったいどのように映ったのでしょうか?ちょっと気になります。。。
さて、来たる6月15日(木)に開催いたします文化財講座「打出のコヅチ」第2回は、そんな彦根城の縄張りなどから見た、城と城下町の構造とそれらが築かれた歴史的背景についてのお話です。講師には、長年滋賀県を中心に城郭の研究に携わってこられた松下浩さん(滋賀県教育委員会文化財保護課)をお迎えいたします。
今回は大変人気の講座となっており、残席が少なくなってきております。参加を予定されていらっしゃる方は、どうぞお早目にご予約下さい。
講座のお申込みは、滋賀県立琵琶湖文化館(TEL 077-522-8179/FAX 077-522-9634/メールbiwakobunkakan@yacht.ocn.jp)まで、以下の内容をお伝えください。
①お名前
②お住まいの市町名
③連絡先(電話番号)
④参加回(他の回と合わせての申込みも可)
⑤講座のことを何で知ったか
それではみなさま、
会場でお待ちしておりま~す!
蟇(ヒキ)の訴え
先日、朝に湖岸道路を車で通る機会がありまして、その時にお巡りさんの苦労を目の当たりにしました。それは、琵琶湖の葦原から道路に飛び出してしまい、無残にも車に引かれてしまった大きなカエルのご遺体を、回収して下さっていたのです。
確かに、この時季ともなりますと、そこココに点々とご遺体が・・・「うわっ!」と思って避けるものの、対向車が来ていたら危いですし、その上雨でも降ろうものならツルっとタイヤが滑ってしまう惧れもあります。事前の危険回避・・・ご苦労様デス有り難うゴザイマス。。。
「お巡りさんも大変だなぁ~」と思いながらその後も運転していたのですが、僕の思考回路に何かが引っかかります。・・・大変なのはお巡りさんだけではなく、カエルさんの受難も見過ごせないのでは???!。広い道を渡ろうとしただけなのに・・・ごめんね。
と、ここで、カエルさんと会話モードになった途端、頭の中で、大きな蟇ガエルが僕を睨んできます。何だろう・・・あぁ、これは・・・。
当館の館蔵品「蟇図」です。咄嗟に僕の頭に浮かんだのはこの蟇ガエルです。この作品は、明治時代末から昭和20年代にかけて活躍した長浜出身の画家・清水節堂が描いたもの。筋骨隆々のガマガエル・・・どうですか、このリアル・・・。他に清水節堂が描いた作品では、米原市の徳源院所蔵の「幽霊図」が有名ですが、女性のオバケ(幽霊)が斬新な構図で描かれていて、それこそ夢に出てきそうなリアルさです。
文化館の「蟇図」のこの「睨み」も、一度見たら忘れられませんよね?!文化館にある近代の作品の中でも、目ガ離セナイ作品の一つです(笑)。
素人ですが僕は思うのです。真剣に向き合われた絵は素晴らしいと。おそらく清水節堂もじっくりと「蟇」と向き合われたのでしょう。今の私たちの生活とは違い、おそらく自然や生き物がもっと身近であって、興味がそそられる対象であったに違いありません。田畑に響くカエルの大合唱を聞いて「うるさいなテレビが聞こえん」なんて、文句を言うこともなかったでしょうし、「あぁ、潤いの季節の到来だ」と感じ入ったことだろう・・・と思います。
そう考えると、この「蟇図」の蟇ガエルも、「おう、また会ったな」と言ってくれているような気がしてくるから不思議です。・・・そうですね、車の運転、気を付けよう。。。
筆:あきつ
18,736
この数字、皆さん何の数字だと思われますか?実はコレ、昨年度、当館のHPをのぞいて下さった皆さんのHPアクセス数の合計です。
この時期ともなりますと、監査や理事会、評議員会などが行われ、昨年度の事業報告とともに様々な数字が活動成果として報告されます。HPのアクセス数もその一つ。休館中でありながら、年間18,736件、月平均にすると1,561件のアクセスをいただいたことは、当館の誇りでもあり、休館後8年が経っていながら、尚且つ皆さんに注目していただいている『証』だと、思っております。正直、顔がニヤける数字です(笑)。有り難うございます!これを励みに頑張ってまいります。
毎月ごとのアクセス数は、このブログでも報告していますが、年間合計にすると、結果がその成果として見えてくるから不思議です。ちょっと見方を変えるだけで新たな発見が・・・!そんな見方も出来るものだと、これからも滋賀の文化財に興味を持っていただいけるよう、情報発信を続けていきたいと思います。
筆:あきつ
ホームページ5月のアクセス数
衣替えはかつて、6月1日と決まっていたものですが、最近は5月でも気温が30℃を越えることが珍しくなくなって、世間はこの日を待たずに早々とサマーな様の夏仕様です。
文化館も、5月としてはちょっぴりアツ~イ気分に包まれました。というのは?まず5月18日から、いよいよ今年度の文化財講座「打出のコヅチ」が始まりました!第1回目から113名と、たくさんのご参加を頂いて、実はちょっとビックリ。なんだか今年も嬉しい悲鳴をあげることになりそうな予感です(ウフッ)。また、今回初めて県外で展示されることになった、海北友松筆「檜図」も、大変多くの方にご覧いただけたようです。。。とにかく、この5月としては異常な暑さをも吹き飛ばす、嬉しい嬉しいひと月となりました。
さてさて、気になる5月のホームページアクセス数は、1,365件。こちらも順調に伸びてきております!! ユーザー数、ページビュー数、平均ページビュー数も共に増え、ますます良い兆しを感じております。ご訪問いただいたみなさま、どうもありがとうございました。
検索キーワードで7位に踊り出たのが「藤本鉄石」。藤本鉄石は、幕末の備前出身の尊王攘夷派の志士で、天誅組の総裁となり大和五条で挙兵するも、戦いに破れ戦死したという人物であります。実はこの方、武術だけでなく、和歌や書画にも優れた才能を持っていた方だそう。そのことをよく示す、文化館収蔵の鉄石の作品「山水図」について「収蔵品紹介」のコーナーに詳しい説明がありますので、ぜひ一度ご覧くださいね。
きっかけはいろいろでしょうが、こうして検索して下さって、文化館の収蔵品に注目していただけるのは本当に嬉しいことです。みなさんに注目していただいて、改めてその作品を見直すこともしばしば。。。今後また、まだまだ紹介していない収蔵品の数々を、「浮城モノ語り」(最新号はこちら)や、いろいろな機会に取り上げていきますので、どうぞご期待下さい。文化館の活動についても、ホームページなどを通じて逐次お知らせしていきます。こちらもどうぞチェックお忘れなきよう!
それでは、6月もまた、文化館HPをどうぞよろしくお願いいたします。