月別アーカイブ: 6月 2022

打出のコヅチ 番外編 ~ご質問にお答えします~

 前回のブログでご紹介した滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第2回。内容は延暦寺所蔵の「阿弥陀八大菩薩像」がメインでしたね。今日は、アンケートに書かれていたご質問内容 について、講師を務められた古川史隆氏にお尋ねしましたので、復習もかねて皆さんとお勉強したいと思います。

 (質問①) 高麗仏画が日本に伝わり7~800年経ているが、絹が虫あるいは劣化
       による
損傷がない。保存の工夫は、どうなのか。

 この仏画は14世紀頃の製作となりますので、確かにすでに700年近く経っています。ですが、スクリーンに映し出された図像は、阿弥陀様や菩薩様たちのお姿をはっきりと確認することができます。

 さて、長い歴史の中どのような保存がされていたのか、、、それは定期的な虫干しなのだとか。風通しによって空気を入れ替え、カビや虫の被害を防いでいるそうですよ。更には、50年・100年単位で修理を重ねることで、損傷の進行を防いでいるらしく、、、何とも長い年の間隔で、修理が繰り返し行われていたのですね。古いものを後世に残すということの大変さがわかります。そして、このような質問も…

 (質問②) 絹布に細密画を描くには「にじみ」も予想されるが認められない。
       どんな工夫があるのか?また、絹布のメッシュ数なども知りたい。

 ここ、これはまた専門的なご質問!詳しくみてみましょう。

 この作品の絵絹(えぎぬ)の組成(そせい)は、1平方センチメートル四方で、経糸(たていと)が約20本、緯糸(よこいと)が約30本とのこと。びっしり糸が詰まっているように見えても小さな隙間はできます。そこに絵を描いたら、たしかに滲んでしまいそうです。でも、ちゃんと対策があるのです。

 滲みの防止策は、絵絹に礬水(ドーサ)を塗布することが現在でも一般的なのだとか。礬水とは、獣の骨などから作られる「膠(にかわ)」と「明礬(みょうばん)」を混ぜたもので、絵が描かれる前の絵絹に塗布します。おそらく高麗仏画でも同様の処置が行われていたと考えられるそうです。絹に描くためには、こんなひと手間があったのですね。

 いかがでしたか?前回のブログは「阿弥陀八大菩薩像」の内容や表現方法を紹介しましたが、今回は文化財の保存方法・絹に絵を描く方法をご紹介しました。アンケートをきっかけに、こんなにも知識が深まるとは…「さすが、打出のコヅチ!」と言っていただきたい(笑)。

 皆さんにご記入いただいたアンケートは、毎回ドキドキしながら見せていただいております。アンケートをただのアンケートと思うべからず…。より良い文化財講座の開催につなげるべく、スタッフ一同、一生懸命取り組んでおります。

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「花湖さんの打出のコヅチ」第2回 開催しました

講座メイン会場:コラボしが21

 梅雨の晴れ間となった6月23日、滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第2回を開催しました。会場のコラボしが21には、何と定員を超える方々が…。実は、、、です。滋賀県では15日にコロナの警戒レベルが引き下げられたこともあり、講座の受付についても柔軟に対応させていただいておりました♪元々が210人座れる大会議室です。運営側として、これまでと同様に会場の感染症対策も怠りなく、参加の皆さんには変わらずマスクの着用をお願いした上で、今回110名の方々にご参加いたさきました。皆さん、ご協力ありがとうございました。

講師:古川史隆氏

 第2回は、「延暦寺の阿弥陀八大菩薩像について-令和3年度滋賀県新指定文化財紹介①-」というタイトルで、県文化財保護課・古川史隆氏(琵琶湖文化館兼務)がお話しいたしました。延暦寺所蔵の「絹本著色阿弥陀八大菩薩像」は、朝鮮半島の高麗時代に描かれた作品で、当時の仏教文化を物語る貴重な資料として、昨年度新しく滋賀県指定文化財となりました。現存する高麗仏画は、現在は160点近くが確認されており、日本には約110点が伝来しています。

 今回のテーマである「絹本著色阿弥陀八大菩薩像」は、法量が縦178.6cm横88.6cmと大きいもの。“絹本著色”とは、絹に色を付けて描かれたことを指しています。皆さん、この絵を描くときは「きっと大きな絹に描いたのだろう」って思いますよね。でも実はこの絵、5枚の絹を継いで一枚の絵とする“五副(ふく)一鋪(ぽ)” の絵になっており、その継ぎ方は大変珍しいそうです。仏画において、1枚の絵絹を使った一副一鋪や、3枚の絵絹を継いだ三副一鋪はよく見られるそうですが、五副一鋪はあまり例を見ない珍しい作なのだとか。

 「阿弥陀八大菩薩」の図像は、中国・日本に作例はなく、華厳信仰と阿弥陀信仰が融合した高麗独自の信仰を反映した図像との説があります。 更に特徴的なところは、通常なら阿弥陀八大菩薩像の最前列に配置される観音菩薩・勢至菩薩と第三列に配置される地蔵菩薩・弥勒菩薩が入れ替っていることです。明確な理由はわかりませんが、特殊な信仰形態に基づくもの考えられているのだとか。この絵には、願主の意図が込められているようで、「仏画」とは、実は種類豊富で奥深いものなのだと、今回改めて思いました 。

 高麗仏画は、今まで中国画(唐絵)とされていたため、研究が始められたのは戦後のことで、ここ数十年で研究の進展・成果が目覚ましいのだとか。参加された方からも「高麗仏画というものを初めて知った」との声もあり、あまり知られてこなかった高麗仏画が、今後更に研究されることで多くの方に知ってもらえるようになれば嬉しいですね。

 1時間30分の講座もあっという間。コロナ禍で皆さんからの質問をお断りしているのですが、アンケートを手渡してくださった方から「質問があったのでアンケートに書かせていただきました」とのこと。「おや。これはしっかりと講師の方にお伝えせねば!」と、早速質問を古川氏にお伝えしました。その質問と回答は??それは次回このブログでご紹介します。

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信楽焼 燈籠

 滋賀県立陶芸の森陶芸館で(6/9まで)開催されていた「ジャパン・スタイル-信楽・クラフトデザインのあゆみ」展。文化館として、どうしても気になる展覧会でした。というのもコチラのちらしにご注目ください。左上に掲載されているかわいいコ。ちょっと見た感じでは “宇宙基地?”みたい形をしていますが、実はこれあかりを灯す燈籠なんです。そして同じ形をした燈籠が当館にも・・・あるのでございまする!!

 皆さん覚えておられます?以前、あきつブログ「面会させてください・・・感動の親子対面?!」でも登場した窯業技術試験場さん。あの時は「服部岩吉胸像」の石膏型と完成品の焼物のご対面でしたね。
 窯業技術試験場は昭和2年(1927)に「滋賀県立窯業試験場」として建設されていますので、当館より少し年上・・・「従兄の兄貴」的な存在です。当館の前身である産業文化館の頃からお付き合いがあり、地場産業である信楽焼の展覧会を開催するなどタッグを組んで滋賀を盛り上げて来た歴史があります。その窯業技術試験場さんがこの度陶芸の森近くに移転されることとなり、その記念展が開催されました。

 ということで、先ずは昭和の面影を遺す窯業技術試験場さんへ! 対応していただいたのは、陶磁器のデザインなどを担当されている高畑氏。実は、信楽を舞台とした NHK連続テレビ小説「スカーレット」 の撮影に、全面協力されていた方なんですよ~。
 件の燈籠は、クラフトデザインの先駆者として活躍した日根野作三氏が手掛けたデザイン(1959)です。今回の展覧会のために、高畑氏が当時の資料を元に再現を試み、3回挑戦した中で、これは!と思うものを展覧会に出品したとのこと。 確かに敷地内のお庭には、試作品のコたちが・・・こんな苦労もされていたとは!

 普段身近な歴史・文化財とは異なる世界を拝見し、驚きの連続でした。移転のための引越し作業で大変お忙しくされている中で、親切にご対応いただき、本当に有り難うございました!

 その後、展覧会を開催されている陶芸の森陶芸館さんへ。会場入口に・・・ドドンっとありました!お目当ての燈籠!こうして改めて眺めてみても、とっても素敵なデザインです♡。
 企画担当された鈎(まがり)学芸員さんは、「この展覧会をきっかけに日根野作三氏のことや当時の作品について、いろいろな情報が集まってきた。これも成果です。展覧会を企画した甲斐がありました。」と、嬉しそうに話してくださいました。まさにその通り!!展覧会開催の意義が、改めて心に響きます。
 会場内にはその他にも、「スカーレット」で感じたような、昭和の活気に満ち溢れた時代のモノ作りの勢いとでも言いましょうか、自由でありながらも計算し尽くされた愛らしいデザインの作品たちを、たくさん拝見することができました。また、それらを改めて“今”の時代に見つめ直し活かすことで、信楽焼の新たな可能性が・・・更に広がりそうな素敵な予感♡がしましたよ。
***展覧会が終わってからのブログですみません!皆さんも見たかったですよね?!***

 さて、このお話しには、まだまだ続きがありそうです。そんな気配がプンプンしておりますよ♡。また皆さんにご報告できれば・・・楽しいことになりそうです♪

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蛍図で心のヨユウ

「まもなく梅雨入りかぁ」と、どんよりとした曇り空にため息をついてしまいがちなこの季節。・・・いえいえ、自然豊かな滋賀県の初夏は、それだけではございませんよ?!ちゃんとお楽しみがありますよ?!!
 そうです、ほたる♡の季節です!早い地域では5月下旬に「ほたるの乱舞」が地域ニュースとなっていましたね。明るくなが~く光って見えるゲンジボタルは、ちょうど今頃?!

  どうしてこの時季、こんなにもホタルのことが気になるのかというと、6/12付け京都新聞さんの地域面「いきもので知る 近江の文化財シリーズ㉟」にも掲載されましたね~当館の収蔵品「蛍図」!このホタル図のことをこの時季どうしても考えてしまう・・・(かなりマニアック(笑))。
 静けさを称えたホタルたち。江戸時代の絵画ですからね、音がないのは当たり前・・・ですが、夕闇の凛とした静寂の中に、静かに舞うホタルをうっとり眺める、そんな儚い空間と時間の余裕が「あぁ~現代にはないなぁ~」と、何故だか考えてしまうわけですよ。ふっと立ち止まってみるわけですよ我が人生。皆さんはそんなことありません?
ちょこっと“せわしない“時代の、心の余裕を、我がDNAは欲しているのです!!
 ・・・というのは言い過ぎかもしれませんが、夕暮れ時のお散歩には、そんな心を癒してくれる、『リッチ (贅沢)な時間 』 が待っているのかもしれませんヨ♡

  ところで、皆さんはご存じでしたか?ゲンジボタルは、生息地を含めて全国10カ所で国の天然記念物に指定されています。そのうちの2カ所がなんと滋賀県!米原市の息長(おきなが)地域と長岡地域です。特に長岡地域はホタルの発生地として唯一「特別天然記念物」に指定されています。

ということでチェックしてきました!長岡地域を流れる天野川沿いのホタル観賞エリア!

・・・すすすみません!!特別な機能も何もないフツーのカメラで撮影した結果、その凄さをこの写真ではお伝えしきれまセン。。。申し訳ない!

(同じ写真を、ちょっと明るく加工してみました・・・。)
 舞ってましたよ~。たくさん飛んでましたよ~。「ほ・ほ・ほ~たるこい」おじいちゃんと手をつないでこの唄を歌ってたお孫さん。このおだやかな時間が世代を超えて共有されることで、貴重なホタルの生息地は、これからも末永く守られることでしょう♪

 

  そんなことをしんみり考えた午後8時半・・・
 奇跡の出会いがありました・・・。
 ***この写真、何が起こっているか分かります~♡???

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梅雨の訪れと6月のお知らせ

歌碑の上のカモ

  今日から6月です。そろそろ梅雨の到来のハズですが、雲が広がる空になっても、雨が続くということもなく。。。 文化館前の吉井勇の歌碑の上で、の~んびりと雲間から覗く太陽を浴びているカモを見ていると、梅雨入りにはまだもう少しかかりそう??…な気がしてきますね。

ですが、この時期の紫陽花を見ていると、青々とした葉っぱになり、花を咲かせ始めています。キレイに色づいて、ぼんぼりの様なお花を見せてくれるまでは、あともうチョット。その頃には季節がまた一歩、前進していることでしょう。

 5月の文化館は、「滋賀の文化財講座 花湖さんの打出のコヅチ」がスタート。おかげさまで、今年で15年目を迎えたこの講座、先月のホームページのなかでも、一番のアクセスをいただくほど大人気なのです。初回は25日に開催し(詳しくはコチラ)、皆さまからのアンケートでも「満足」とのご回答をいただきました。あらためてご意見・ご感想を拝見していると、他県から滋賀に移住してこられた方がおられ「滋賀県のことを知る機会ができました」とのこと、、県内に生まれ育ったという方からは「滋賀県の成り立ちを知らず、勉強になった」などのご意見も。。この講座を通して、多くの方に滋賀県のことをを知ってもらえたようで、とっても嬉しいです。

 次回「延暦寺の阿弥陀八大菩薩像について」は、6月23日(木)に開催します。“ 阿弥陀八大菩薩像 ”は 朝鮮半島を統一した高麗王朝の時代に描かれ、高麗時代の仏教文化を物語る貴重な資料として昨年度の滋賀県指定文化財に指定されました。県文化財保護課(文化館兼務)の古川氏 が作品を紹介しながら、その魅力について、お話します。5/24から受付募集していますが、若干お席が残っていますので、お早めにお申し込みくださいね。(お申し込みはコチラから)

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