日別アーカイブ: 2023年6月20日

目張りされた収蔵庫の中で何が…!?

(きっちり目張り=これ大事!)

 きっちりとテープで目張りされた当館の収蔵庫扉・・・。一体、何があったのでしょうか??

 秘密の作業が行われているの?それとも、何かを封印したの?様々な文化財を保管している当館の収蔵庫。それだけに色々と想像を巡らせてしまいますね。

 この目張り、当館では年に2回程度見かけることがあります。以前にもこの「あきつブログ」で見たという方がいらっしゃるかも(ドキドキ…)。

 実はこの目張り、「文化財保存のしごと」の一場面なのです。この日は、専門の業者さんに来ていただき、収蔵庫内において、定期的な防虫・防カビ対策を行いました。

(モンスターではありませんよ~)

 薬剤散布前には、文化財にとって問題がない薬剤か、散布時に注意する場所はどこか、業者さんと学芸員でしっかり確認します。今回、背の高いほとけさまは、文化財を輸送する際に使う「薄葉紙」をお被りいただき、念のための安全を図ってもらいました。(ちなみに、使用する薬剤の特徴によって、養生が必要な素材や、程度は異なります。)
 そして、ここからはちょっと専門的なお話になりますが、養生ができたら、室内に液化二酸化炭素に薬剤を混ぜたものを噴霧します。すると二酸化炭素は気化し、薬剤成分のみが微粒子状になって空中散布されます。薬剤成分が空気中を沈降するのを待った後、室内の排気を行いますが、あの目張りは、排気までに噴霧したものが外に漏れ出ないようにする役割を果たしていたのです。

 虫やカビは厄介者ですが、意外と私たちに身近な存在です。だからこそ、虫やカビを完全にやっつけることよりも、文化財の置かれている環境をしっかりと把握し、予防の対策を行ったり、人の目で文化財の状態を確認したり、日常的な管理の中で異変に早く気付いたりするほうが、よほど大切なことなのです。

 築60年以上の当館ですが、長く安全に文化財を保管するため、これからも地道な努力を惜しまず、より良い保存環境維持に取り組んでいきたいと思います。

〔学芸員 I 〕

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