日別アーカイブ: 2024年4月1日

ありがとう文化館のいきものたち!~洋犬から迦陵頻伽まで~

 本県の地域紙である『京都新聞』滋賀版で、4カ年にわたって「いきもので知る近江の文化財」と題する連載が行われていたことをご存じですか?。
 滋賀県文化財保護課が執筆を担当した本シリーズでは、文化財と関わるさまざまな「いきもの」について取り上げられました 。 動物、植物から想像上の生物に至るまで、バリエーション豊かな生きものと人間との関係について、近江の文化財を通して学んでいただけたことと思います。

 全104回の初回は令和3年7月25日、琵琶湖文化館所蔵「洋犬図」でした。その後、本館屋上にあった「大トンボ」、岸岱筆の「猛虎咆哮図」、円山応挙筆の「狗子図」などなど、文化館ゆかりの「いきもの」たちが多数登場。

 令和6年3月31日、連載の最終回を飾ったのも、西明寺蔵で文化館寄託の仏涅槃図と、文化館大壁画の舎利供養図に描かれた極楽の鳥「迦陵頻伽(かりょうびんが)」だったのです! 。

 迦陵頻伽は仏教における想像上の生物です。上半身が人で、下半身が鳥の体をしているということですから、今そこにいると思うとなかなかに怪しげな姿ですね。ちょっとしたホラーです。でも、安心してください(?)。現世で会うことはありません。浄土にしか生息していないからです。

  『仏説阿弥陀経』というお経をご存じですか。天台宗や浄土宗、浄土真宗などで日常的に用いられている大事な経典ですから、ご承知の方も多いでしょう。

 その中で、阿弥陀如来の極楽浄土に、きれいな声でさえずる色鮮やかな鳥たちがいると説かれます。孔雀(くじゃく)、鸚鵡(おうむ)、舎利(しゃり=九官鳥)らとともに、迦陵頻伽が出てきます。その名はサンスクリット語「カラヴィンカ」の音写であり、「妙なる声」を意味します。美しい声で鳴いて仏法を讃え、極楽の住人たちの信仰心を高めてくれるというわけです。
 したがって、極楽の鳥・迦陵頻伽が描かれるのは浄土を表現した絵画や工芸品が中心となります。昭和24年(1949)琵琶湖文化館の大壁画「舎利供養」も仏舎利を中心に描かれ、阿弥陀浄土をモチーフにしています。そこに描かれた迦陵頻伽はインド・中国の壁画の伝統にのっとりつつも、杉本哲郎(すぎもとてつろう・1872~1933)の闊達な運筆で生き生きとした姿に表現されています。令和9年に新・文化館がリオープンするときには、ぜひとも大壁画に描かれた「極楽の鳥」にも注目してください。

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 「いきもので知る近江の文化財」の連載は一区切りとなりましたが、近いうちに別の連載も企画されて・・・いるとか、いないとか?!琵琶湖文化館の作品や学芸員たちが引き続き連載に登場・・・するとか、しないとか??!・・・うふふっ・・・~お楽しみに♪♪♪

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