月別アーカイブ: 9月 2018

「花湖さんの打出のコヅチ」第4回 開催しました

おかげさまで、ますますご好評をいただいております「滋賀の文化財講座 花湖さんの打出のコヅチ」です。20日(木)には、第4回目の講座が開催され、雨が降るあいにくのお天気となったにもかかわらず、167名もの方にご参加いただきました。今回もまた多くの方にご来場いただきましたこと、改めてお礼申し上げます。

講座では、県教委文化財保護課の菅原和之氏を講師にお迎えし、「世界遺産・国宝延暦寺根本中堂の魅力と平成の大修理」というテーマでお話しいただきました。江戸時代(寛永19(1642)年)に完成した今の延暦寺根本中堂も、昭和29年の半解体修理からすでに60年以上経過し、傷みが目立ってきたため、平成28年度から10年をかけての大修理が行われています。今年度は、これまで2年かけて作られた根本中堂と回廊を覆う素屋根が完成し、建物の本格的な修理を開始するということで、これを機に延暦寺根本中堂の魅力・見どころと今回の修理についての詳しいお話を聞かせていただきました。

屋根や軒先、外装だけでなく、内部の柱足元など、普段は見えないところにも生じてきた腐朽や破損。写真や図面をふんだんに用いて、どんな様子なのかを詳しく丁寧にご説明いただいたので、大修理の必要性がとてもよくわかりましたね。また、長年の煤や埃で今は見えにくくなっている彫刻や天井絵などは、修理が終わって、再びその華やかな姿で現れるのが楽しみです。

ところで、滋賀県下屈指の大きな木造建築物である根本中堂を、工事のためにすっぽりと覆っている素屋根は、「スライド工法」という最新の工法で建てられたそうですが、この工法が取られたのはなんと!!滋賀県では初めてのことだとか。伝統的な技法で建てられた建造物と最新の建築技法の出会い。そういった所も今回の修理の見どころかも知れませんね。

延暦寺は世界遺産にも認定され、注目度も抜群のスポット。それを反映してのことでしょうか?講座終了後の質疑応答の時間にも、いつも以上に多くの方からのご質問を受けました。なかでも、「延暦寺がよく京都のお寺だと思われていることについてはどうですか?」というご質問に対して、講師からの「今回の工事を通じても、滋賀の誇るべき文化財であることを、前面に強く出してアピールしていきたい」というお答えに、参加された多くの方が納得の表情で、大きく頷いておられたのが印象的でした。

「平成の大修理」は、まだまだこれから続きます。滋賀の誇るべき国宝・重要文化財が、本来の輝きを取り戻していく過程を、皆で見守っていきたいですね。

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彼岸花

毎年、この時季によくぞ忘れずに咲くものだと感心するお花があります。皆さんの目にも留まりましたか?そう、ヒガンバナです。今年は猛暑だ酷暑だ台風だ!!と気候面では異例づくめの夏でしたが、このお花は自分が咲く時を、しかりと心得ているようです。
と、ここで僕の文化館的思考回路に何かが引っ掛かります。近頃のブログでは、季節を感じられる作品を、館蔵品の中から紹介するようにしています。その時に頭を悩ませるのは、「旧暦」と「新暦」の違いから起こる季節感のズレであることも、書いたと思います。旧暦の風習や行事を新暦で紹介すると、どうしても感覚的に違和感が残ります。では何故、ヒガンバナのイメージは「彼岸」からズレないのか???

ちょこっと調べました。今年の秋のお彼岸は、現在の暦(新暦)で9/20~9/26、旧暦では8/11~8/17日となりますが・・・否!見るべきはそこではない!お彼岸は、春分・秋分の日を境に7日間。春分・秋分は昼と夜の長さが同じ日、太陽が真東から上って真西に沈む日なのです。それは新暦であろうが旧暦であろうが太陽の位置で見れば同じ日なのです。だから昔も今も、ヒガンバナは「お彼岸」に咲く花!なのですよ~。ちょこっとスッキリしました?!。

いつもならここで、文化館の収蔵品の中から見事なヒガンバナの作品をご紹介・・・したいところなのですが、実は文化館にある近世絵画の中に、ヒガンバナを描いた作品が見当たりません。ヒガンバナは別名:曼殊沙華(まんじゅしゃげ)とも言いますが、毒性があり、死人花(しびとばな)、地獄花(じごくばな)、幽霊花(ゆうれいばな)、などと呼ばれたり、「家に持ち帰ると火事になる」という迷信が今も残っています。これらのイメージから、縁起を担ぐ日本人の好みには合わなかったのかもしれません。例えどんなパトロンでも「御家が火事になる絵を描いてくれ」というオーダーはしなかったでしょうし、有名な絵師の作品でも売れなかったことでしょうね。

一方でヒガンバナは、ネズミやモグラ除けとして田のあぜ道などに人為的に植えられるなど、その活躍ぶりは見過ごせません。また、鮮やかな「赤」は、めでたい兆しとされることもあります。子どもの頃、彼岸花で首飾りを作るのが楽しみでした(作った後は絶対に「手を洗いや!」と叱られた・・・とか、大きな花束にして持って帰っても家の花瓶に飾って貰えなかった・・・ことなどは、今となってはかわいい思い出です)。なにより、私たちに季節を感じさせてくれる、とても繊細で綺麗なお花です。

そんなヒガンバナに思いを寄せて、今日9月20日は「彼岸の入り」でございます。

筆:あきつ

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「花湖さんの打出のコヅチ」第4回のご案内

記録的な猛暑となった今年の夏。涼を求めて山を目指した方もいらっしゃったのではないでしょうか?琵琶湖文化館のあるこちら大津で、高い山といえばもちろん、京都との境にそびえる比叡山。山へ登るルートはいくつかありますが、大津側からは、坂本からケーブルカーで登るのが比較的楽な行き方でしょうか?終点のケーブル延暦寺駅で降り、琵琶湖八景の一つにも選ばれた「比叡の樹林」の中へと続く山道をしばらく歩くと、平安時代の初めに最澄が開いた天台宗本山・延暦寺にたどり着きます。

この夏に、延暦寺を訪れた方はご覧になられたことでしょうが、ここは現在、平成の大修理が行われているところです。なかには、根本中堂と回廊をすっぽりと覆う、鉄骨造の真っ白な素屋根を見て、思わず引き返してしまったという方もいらっしゃったようですが。。。それはとても惜しい!実は今、この中には、「修学ステージ」なるものが設置されていて、伝統的な工法で行われている修理の様子が間近で観察できるようになっているんですよ。すでに8月1日から公開されていて、引き続き内部の参拝もできるとのことです。

さて、9月20日(木)に開催いたします「滋賀の文化財講座 花湖さんの打出のコヅチ」は、いよいよ皆さまからのご要望の多かった『建造物』のお話しとなります。建造物をテーマにするのは3年ぶり。今回は、滋賀県教委文化財保護課の菅原和之氏を講師にお迎えして、「世界遺産・国宝延暦寺根本中堂の魅力と平成の大修理」と題した、まさに“今でしょう!”という話題です。建造物がご専門で、今回の延暦寺の修理を担当されていらっしゃる方から、詳しいお話を直にお聞かせ頂ける貴重な機会ですよ!

また、今回の修理は、昭和29年の半解体修理から64年振りの修理だということですので、一生に一度あるかないかの機会かも知れません。現地を見てからお話を聞くか、お話を聞いてから見に行くか?ウ~ン、とっても悩ましいところですが。。。いずれにしても皆さま、今回の講座もお早目のお申込みをお忘れなく!

お申込みはこちらの専用フォームからどうぞ(電話・FAXでも受け付けております)。

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台風21号と琵琶湖の水位

9月4日、近畿を縦断した台風21号。近年の台風、滋賀では夜:寝ている間に通過することが多かったと記憶していますが、今回の台風は、昼間の明るい時間帯:午後から夕方にかけて、暴風雨をともなって足早に通り過ぎていきました。文化館でも午前中は琵琶湖の方:北東からの雨風を受け、午後からは南側の壁面に猛烈な雨風が吹き当たっていました。「台風が今どの辺りにいる」というのを実感できるくらいの雨風を、文化館で経験するのは僕にとっても久しぶりです。

「南からの吹付けが強いなぁ。館内見回って来ようかな・・」と事務所の窓の外に目を向けると、そこには不思議な光景が広がっていました。・・・ななななんと・・・琵琶湖の水位がゴッソリ下がっているではありませんか!中池にある歌碑、普段は水面下にあるコンクリート部分まで見えているではありませんかッ!(えっ?写真では分かり難い?スミマセン。これは一番雨風が強い時で、慌てて窓越しに撮影しているもので・・・。毎日見ているからこそ)これには僕もビックリ!思わず他の場所で作業をしていた職員さんを呼びに行き、「見て!滅多に見れんモンが見える!」と、その説明もいささかコーフン気味!!(笑)。ざっと見たところ普段より1m位は下がってます!いやぁ、不思議なことが起こるものデス。

←午後4時頃

台風の時によく耳にするのは、海の『高潮に注意』ですよね?でもここは湖・・・しかも高くない・・・水面が低くなるってどういうコト?・・・風が水面を押さえ込んでる?・・・台風が琵琶湖の水を吸い上げた?・・・とかッ??!
人間、あまりにも不思議なことにブチ当たると、頭の中はパニック状態になるらしいです・・・後から考えると支離滅裂(笑)。

←午後6時頃

琵琶湖の南湖で発生したこの不思議な現象のメカニズムを、後日新聞報道で詳しく知りました。詳細はコチラ(2018.9/8付 京都新聞)。要するに「台風の低気圧が北湖の水を引っ張る一方、南からの強風が湖水を北へ押し戻した」のが原因らしいのです。いやぁ摩訶不思議。台風に何度も襲撃されるのは御免ですが、このような不思議な現象を目の当たりに出来るのは、文化館が湖上に建っているからこそ気付けた変化で、何だか得した気分となりました。

文化館のテッペンにいる大トンボ君の目にはどのように映っていたのでしょうか。きっと琵琶湖に生じている様々な変化を、誰よりも感じているのかもしれません。

筆:あきつ

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重陽の節句

いきなりですが。。。中国では奇数は縁起の良い”陽”の数とされ、奇数の月と日が重なる日を「節句」と定めて邪気を祓う行事が行われていました。1月1日(元日=のち1月7日「七草の節句」に変更)、3月3日(桃の節句)、5月5日(端午の節句)、7月7日(七夕)といった節句はお馴染ですが、9月にもこのような月と日の数字が重なる節句があるのをご存知ですか?

「9」は奇数の中で一番大きな数です。その「9」が重なる9月9日を『重陽(ちょうよう)』と呼び、この頃は旧暦(新暦で今年は10/17)で菊の見ごろであることから「菊の節句」とも呼ばれ、菊に長寿を祈る日となりました。菊は優れた薬効を持つ植物として古くから知られ、古い中国の書物には、菊が群生している谷を下ってきた水を飲んだ村人たちが長寿になったという話があります。そんな菊の薬効と伝説は、平安時代に日本にもたらされ、季節の行事として定着していったのだとか。

重陽の日には、菊の花を飾って愛でたり、酒に菊の花びらを浮かべた「菊酒」を飲んだりと、楽しみ方は色々とありますが、その内の一つに「菊の着せ綿」と呼ばれる風習があります。重陽の日の前日、菊の花に真綿をかぶせて一晩置くと、菊の香りと夜露がたっぷり染み込みます。翌朝、この綿で顔や肌を拭うと若やぐと言われたことから、若さを保ち長寿を願うとして、特に貴族の女性たちの間で、もてはやされたそうです。清少納言の『枕草子』や、紫式部の『紫式部日記』にもその様子が綴られています。そして、当館所蔵の月岡雪鼎(つきおか せってい)が描いた「十二月図」屏風にも九月にあたる部分に、この場面が描かれています。
手前に描かれている女性が、菊にかぶせた綿に手を触れている様子がうかがえますね。奥に見える高貴な着物を着た女性が、この綿で肌を拭うのでしょうか。。。菊花と描かれる女性たちの様子が喜々としていて、とても美しい作品です。

現代に生きる私たちにとって重陽は、五節句の内の一つでありながら、その風習に馴染み薄くなってしまっているように思われます。菊の季節はまだ少し先ですが、この機会に、大輪に咲く菊花に思いを馳せ、長寿を願ってみてはいかがでしょうか。

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ホームページ8月のアクセス数

今日は、8月のホームページアクセス数のご報告です。この一月もまた、1,890件とたくさんのご訪問をいただきました。毎月初め、ハラハラ、ドキドキしながらこの数字をチェックするのですが、今回はご覧いただいたページ数も増えていて、ますます嬉しい~です!!

実は、先月24日に、(公財)滋賀県文化財保護協会の主催で開催された「文化財の活用を通した地域資源化セミナー」に参加し、文化財や世界遺産・日本遺産などをめぐる昨今の状況をいろいろと学ばせていただいたところです。このセミナーには、文化財関係者の他にも、観光系のお仕事をされている方や、まちづくり部門の方々、一般事業者(企業)さんや学生さんなど、さまざまな分野から多くの方が参加されていたようで、こういった近年の幅広い方面からの文化財への関心の高まりが、当館ホームページのアクセス数の増加にもつながってきているのかしら?という前向きな思いを抱きつつ・・それぞれの分野が協力し合うことで滋賀の文化財を盛り上げていければいいなと思います。ということで、まずは、ホームページにご訪問いただいた皆さま、どうもありがとうございました!そして、これからも皆さまのご期待に応えて、内容の充実と、積極的な情報発信に努めていきま~す!

さて話は変わりますが、この8月は猛暑であったばかりでなく、台風の発生も例年になく多かったですね。前回(8月23・24日)の台風20号は、直撃はしていない滋賀県にも、人や建物、道路、農作物への被害といった爪痕を残して行きました(涙)。それでも台風の季節はまだまだこれから。昔から、立春から数えて210日(9/1頃)あるいは220日目を「二百十日」「二百二十日」といい、9月の上旬こそが大きな台風のよく来る時期です。この頃は、お米などが稔る季節でもあるため、九州~東北の各地で、風除けと五穀豊穣を祈っての「風祭り」が行われますが、滋賀県でも、甲賀市方面では「風没祭(かざごもり)」や「風籠り」といった行事が続けられているそうです。

ところで、新潟や福島の方では、「風祭り」で祀られる風の神様を「三郎」という名で呼んでいるとのこと。。。それを聞いて思い出したのですが、たしか近江にも「三郎」がいましたよね?ほら、伊吹山に住んでいた、あの怪力の大男「弥三郎」。この男、時々鬼のように暴れては村の人々を困らせていたので、とうとう佐々木頼綱という武士に討伐され。。。最後に正体が大蛇であったことが明かされたのです。が、それからまた何百年も経った元和7(1621)年に、山の木々をなぎ倒すような大風(弥三郎風)となって現れるという祟りを起こしたのだとか。。。ん~?とぐろを巻いた大蛇の弥三郎って、ひょっとして、台風(竜巻・つむじ風)の化身だったのではないでしょうか???

日本列島には、今もまた強い台風21号が接近してきています。今回も気を緩めずに、しっかりと備えをしておきましょう。そして、「風の(弥)三郎様」にも、もう大暴れをしないようにと、よ~くお願いしておきたいと思います。。。

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