月別アーカイブ: 11月 2019

「湖東三山 金剛輪寺の名宝」展の工芸品

皆さん本展をご覧になって頂けましたか?金剛輪寺さまより当館がお預かりしている文化財の里帰り特別公開です。鈴鹿山脈に沿って南北に並ぶ西明寺、百済寺とともに「湖東三山」としても有名な天台の名刹。平安時代後半から鎌倉時代にかけて寺勢は隆盛をきわめ、この頃の文化財が数多く現存しています。本展では、その寺宝の数々が紹介されていますが、今日は、仏教工芸の文化財について、少しお話ししましょうか。

会場に入って先ず紹介されているのが「珠玉の工芸品」です。孔雀文磬、素文磬、金銅透彫華鬘、云々・・・待って帰らないでッ!!「難しい漢字に馴染みの薄いコトバでなんだかよくわからない」と諦めるのは未だ早い!「磬」や「華鬘」を何と読むのか、何であるのか、知っている人のほうが“稀”ではないでしょうか?「磬(けい)」や「華鬘(けまん)」は仏教工芸あるいは仏具に分類されます。純粋な金属工芸として鑑賞しても飽きることがなく、うっとりなんですよ~。

磬は法要に用いる楽器(梵音具:ぼんおんぐ)で、中央の撞座(つきざ)を叩いて音を鳴らします。出陳されている孔雀文磬(重文)も、撞座のあたりを中心に使用痕があるので、実際に使われていたことが分かります。どのような音が響いていたのでしょう?さて、磬に表された文様を見ていくと、撞座の左右に孔雀を配置しています。通常の孔雀文磬は左右対称の孔雀を表すことが多いのですが、こちらの磬をよ~く見てみると・・・、羽や脚の動きを左右で微妙に変えていますね。珍しい趣向を示しているものといえます。

一方華鬘は、仏堂内の柱や梁にかけて場を飾る装飾品(荘厳具:しょうごんぐ)として用いられます。金銅透彫華鬘(重文)は、銅板を切り透かす透彫(すかしぼり)したうえに線刻して、蓮華唐草文を表しています。同会場の特別展示室には現代に製作された復元模造がきらびやかなお姿で展示されています。こちらの華鬘の文様もじっくり見てみましょう!透彫は左右対称ですが、線刻は蓮の葉っぱのひるがえり方がちょっとだけ違います。う~ん、なかなか凝っていますね~。

出陳されている磬と華鬘、どちらも鎌倉時代を代表する金属工芸ですが、ぱっと見は左右対称のように見えるけれど、よく見ると少しだけ変えているのが分かって、「おもしろい!」と思える品だと思います。ぜひ展示室でじっくりご覧になってくださいね。

会場には、懸仏(かけぼとけ)や柄香炉(えごうろ)も展示されています。「へぇ~」「こんなのもあるの」と頭の片隅に置いていただけたなら、実際に寺院を訪れた時に「あっ、本当にある!」と気付く機会も増えると思いますよ。難しく考える前に、先ずは気軽にじっくりご鑑賞ください。
愛荘町立歴史文化博物館では、紅葉の見ごろを迎えた今週末、23(土)・24(日)は入館無料となります。また、12月1日(日)には、ギャラリートークもあります(13:30~)ので、ぜひ会場へ足をお運びくださいませ。

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あきつブログで楽しむ朝ドラ

突然ですが、皆さまは朝の連続テレビ小説「スカーレット」、ご覧になっていらっしゃいますか?11月からは、舞台が大阪から信楽へと戻り、滋賀県民としてはますます目が離せなくなってきましたね。ところで、多くの方は「信楽焼」と聞くと、「タヌキの置物」を思い浮かべるでしょう?確かに今、信楽の町を訪れると、道沿いにある陶器店の前に山のように並べられたカワイイ顔のタヌキの置物が、ニコニコと私たちを迎えてくれます。ところが、ドラマでは、どうもタヌキはそれほど登場しない。主人公の働き出した窯元にずらりと並んでいるのは「火鉢」ですし、お父さんが車に載せて運んでいるのも「火鉢」。「これってどういうこと???」と、ちょっと気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

信楽焼の歴史は古く鎌倉時代にまで遡りますが(主人公・喜美子が「旅のお伴に」と拾ったのは室町時代の壺らしきものの破片でしたね)、実はその中でタヌキの置物の歴史はまだまだ浅いのです。置物自体は明治・大正時代から作られていたのですが、戦後すぐの昭和26年、タヌキがお好きだったという昭和天皇の信楽行幸の際、タヌキの置物に日の丸の旗を持たせて歓迎したことがきっかけで有名になり、また、縁起ものとして喜ばれるようになり、全国へ広まったということです。

なるほど、ドラマは今、昭和30年代のはじめですか?確かに道沿いにポン!と置かれたリアルなお顔のタヌキも登場しますが、この頃はまだまだ本格的な「タヌキの時代」ではなかったようです。そして、「火鉢」というと、ほらあれです!このあきつブログを以前から読んで頂いている方は、きっと覚えていらっしゃるでしょう?今年1/282/5のブログでご紹介した信楽焼の火鉢のことを。信楽で明治時代から作られていた火鉢は、特に終戦後、全国へ飛ぶように売れ、それは「火鉢景気」と言われるほどだったそうです。ところが、昭和30年代に入って、火鉢は石油ストーブに取って代わられ、産地である信楽は苦しい時代を迎えることになります。ドラマは今まさにこの「火鉢の時代」に陰りが見え始めた頃なんですね。そんな背景を知っておくと、ドラマの展開がもっと楽しめること間違いなしデス。気になる方は、ぜひまた過去のブログを覗いてみて下さいネ!

文化館には、火鉢以外にも信楽焼の資料を収蔵しています。そんな収蔵品のことも、また追々いろいろな形で、皆さまにご紹介出来たら良いな~と思っております。どうぞ楽しみにしていて下さいね。それでは、今日はここまで!

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刀剣界

当館が収蔵している文化財「大津事件」にかかわる資料の特別観覧ということで、東京からご来館がありました。取材に来られたのは、全国刀剣商業協同組合の嶋田氏です。組合の機関紙「刀剣界」に、近代国家日本の発展と大津事件の関連について、概要を紹介したいとのことでした。刀剣界が注目?!そうなると、アレですね?!そうです、アレです。大津事件関係資料の「サーベル」です。

全国刀剣商業協同組合さんは、内閣総理大臣認可の刀剣商および刀職者のための協同組合として活動されています。言うなれば刀剣のスペシャリスト。「刃先と峰の間にある鎬(しのぎ)のヤマが少し減っているので、自分で(研いで)手入れをしていたのかもしれませんね」「錆が付いて銘は読めませんが、これが歴史の価値なんですよね」「いやぁ素晴らしい感激です」等々。全国で数々の刀剣類をご覧になっている嶋田氏。研ぎ澄まされた刀剣、美術品的価値の高い刀剣をご覧になる機会も多いと思いますが、だからこそ歴史的価値にもご理解のある言葉をいただけて光栄でした。

聞けば、前日は少し興奮してしまって眠れなかったとのこと。当館に来る途中で、「大津事件の碑」(現:大津市京町)にも立ち寄って来たと言っておられました。今でも多くの方が訪れる歴史を物語る場所です。明治24(1891)年に起きた事件ですが、それを物語る文化財にふれ、その地を訪れた嶋田氏は、「滋賀には歴史が生きている」と素敵な言葉を残してくださいました。当館にとってなかなかご縁が薄かった刀剣業界の方とのいいご縁。機関紙「刀剣界」にどのように書いていただけるのか、1月の発行が楽しみです。

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「湖東三山 金剛輪寺の名宝」展とその周辺

地域連携企画展第2弾「湖東三山 金剛輪寺の名宝―滋賀県立琵琶湖文化館寄託品里帰り特別公開~」が始まって、早いもので2週間が経ちましたが、皆さまもうご覧いただけましたでしょうか?会場の愛荘町立歴史博物館は、紅葉の名所である金剛輪寺のまさにお膝元にありますので、「紅葉が見頃になったら行こうかな?」とお考えの方、今週末辺りからいよいよ見ごろを迎えますよ。行きドキです!しかも愛荘町立歴史博物館さんは、「関西文化の日」に協力されていますので、16(土)・17(日)・23(土)・24(日)は、入館無料でご鑑賞いただくことができます!紅葉狩りとともに、多くの方に企画展を存分に楽しんでいただければ幸いです。

さて、今回の企画展でご覧いただけるのは、平安時代から江戸時代にかけての工芸品・経典・絵画など、金剛輪寺に伝えられてきた寺宝の数々。その多くが重要文化財や県指定、町指定の文化財で、これらを見るだけでもお寺の長い歴史を感じることができますね。ところが、そもそもこのお寺の始まりはというと、なんと奈良時代にまで遡るそうです。伝承によると、聖武天皇の勅願により僧・行基(ぎょうき)が開いたのだとか。行基という人は、諸国をめぐり、橋を架けたり、堤防を築いたりという土木事業を行なったことで有名ですが、その背景には、当時の最先端技術を持っていた渡来人の力があったと言われています(行基自身も渡来系氏族の出身)。金剛輪寺のあたりは旧の秦荘町にあたりますが、秦荘の「秦」は、まさに古代にこの地域を本拠地としていた渡来系氏族「依知秦(えちはた)氏」に由来するとのこと。すると、行基がこの地に金剛輪寺を建てた背景にも依知秦氏の力があったのでしょうか。。。想像が膨らみます。

そして、この依知秦一族の祖先の墓と考えられているのが、愛荘町上蚊野から蚊野外の地にある古墳群です(金剛輪寺からは車で5分程のところ)。300基ほどもあったとされる大規模な古墳群は、終戦後の食糧難時代に行われた土地開墾などでほぼ消滅してしまいましたが、一部が「依知秦氏の里古墳公園」として残されています。実は、文化館には「秦荘・北蚊野古墳出土」と伝えられる須恵器の直口壺と金属製の馬具(雲珠:うず)が収蔵されてるんですよ。収納されていた紙箱には「昭和31年6月」の日付が記されていますので、当時県立産業文化館(文化館の前身です)の学芸員でいらっしゃった故・宇野茂樹先生が指揮されたという、昭和31年の滋賀県による調査の際に発見されたものでしょう。文化館と愛荘町(当時は秦荘町)のこんな頃からのご縁。ここにもちょっぴり長い歴史があったようです。

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湖岸のキレイを取り戻しました!

先月、滋賀にも被害をもたらした台風19号。当館の周辺には大量の水草(藻)が押し寄せました。
(←台風直後の様子)
その後、(10月29日のブログ「湖岸のキレイを取り戻せ」にも書きましたが)人海戦術で水面から藻を引き上げ、それらをコツコツ地道に乾燥させて処分する日々・・・まったく嘆かわしい1ケ月でした・・・。

しかし、その苦労が報われる日がとうとうやって来ました!本日、人海戦術による清掃作業の第2弾を決行。方々のご協力によりご覧の通り、こんなにキレイな琵琶湖を取り戻すことに成功いたしました!!(作業に没頭するあまり皆で頑張る姿を写真に撮り忘れたのが残念です(笑)。) いやぁ~水面に空が写ってとっても”映える”美しさです!褒めてホメて~!!

 
 
 

 

作業をしていると「大変やな」「ご苦労さん」「頑張ってな」と多くの方が声をかけて下さいます。「やってもやってもキリがない・・・」と、水草にまみれ半分泣きながら作業をする私達にとって、そのあたたかい一声が心の支え。おかげさまで、ようやくこのキレイを取り戻すことが出来ました。ご声援有り難うございました!!

水草を引き上げた後は、水気を切って早く乾燥させるため、石垣の上に少し広げた状態で乾かしています。もうしばらく、道行く方々にはあたたかい目で見守っていただければと思います。あとはお天気との戦い・・・これらを処分しきって作業は『完』となります。もう少し、あと少し、頑張りマス!

最後に衝撃写真を紹介しておきます。それがコレ。水面から引き上げたゴミのヤマです。ほとんどが缶ビール?!発泡酒?!・・・もうッ皆さんどれだけお酒が好きなんですかーッ!琵琶湖が泣いていますよ?!
善良なる心をお持ちの皆さんへ、マナーを守って楽しんでいただけると、琵琶湖はとても喜ぶと思います。。。よ?!

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10月のホームページアクセス数

昨日のことですが、朝、何気に琵琶湖の方を眺めると、南湖の真ん中あたりが黒胡麻を振り掛けたようになっているではありませんか!写真ではちょっと分かりにくいかもしれませんが、こんな感じ。。。そして、黒胡麻たちはみるみるうちに北から南へ、つまり文化館の方向へ押し寄せて来るのです。あれは一体何???その正体は、近づいてくるに従ってはっきりしてきました。散らばった黒胡麻のようなものは、どうやら水鳥の集団のようです。毎年さまざまな水鳥が北国から渡ってきて越冬し、琵琶湖は水鳥の楽園と化しますが、今年もいよいよそんな季節の到来なのですね。水鳥たちが、文化館周辺の湖岸へやってくるのも、もうすぐかしら?

さて、こうやって秋深まりつつある文化館周辺ですが。。。本題へ入りましょう!今日は10月のホームページアクセス数のご報告です。この一月に文化館ホームページをご訪問くださった数は、2007件となりました。またまた多くの方々にご覧頂いて、本当に感謝・感謝です!ところで、皆さま一体どんなページをご覧くださっているのでしょうか?気になりますよね~。そこで、いつもは検索キーワードなどご紹介することが多いのですが、今回はちょっと趣向を変えて、「収蔵品紹介」と「浮城モノ語り」への閲覧数ランキングを見てみましたよ。結果は、まず第1位が、収蔵品紹介の「山法師強訴図」。(←うんうん、なるほどね。)次に、第2位は、浮城モノ語りの第61話「古琵琶湖層群の化石」。(←これはちょっと意外!?)そして第3位は、収蔵品紹介の「堆朱香合」。(←10/1のブログで紹介したから?皆さんブログを熟読して頂いているという証拠ですか?)う~ん、なかなか、興味深い結果となりました。どうですか?10月の文化館のトレンド資料、皆さんも一度チェックしてみて下さいね。なお、現在これらの収蔵品を紹介するコンテンツの改良に取り組んでいます。更に見やすく、わかりやすく、ご紹介できればと思っていますので、どうぞご期待下さい。

最後に大事なお知らせです。本日11月1日から、いよいよ地域連携展第2弾「湖東三山 金剛輪寺の名宝-滋賀県立琵琶湖文化館寄託品里帰り特別公開-」が始まりました~!会場は、金剛輪寺のお膝元、愛荘町歴史文化博物館です。10/25のブログで準備の様子をちらっとお見せいたしましたが、いよいよ満を持しての公開初日です。明日から文化の日を含む3連休です。どこかへお出かけしようかな~とお考え中の方、ぜひ愛荘町まで足を運んでみて下さい。
それでは、11月も文化館ホームページをどうぞよろしく!

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