日別アーカイブ: 2019年11月22日

「湖東三山 金剛輪寺の名宝」展の工芸品

皆さん本展をご覧になって頂けましたか?金剛輪寺さまより当館がお預かりしている文化財の里帰り特別公開です。鈴鹿山脈に沿って南北に並ぶ西明寺、百済寺とともに「湖東三山」としても有名な天台の名刹。平安時代後半から鎌倉時代にかけて寺勢は隆盛をきわめ、この頃の文化財が数多く現存しています。本展では、その寺宝の数々が紹介されていますが、今日は、仏教工芸の文化財について、少しお話ししましょうか。

会場に入って先ず紹介されているのが「珠玉の工芸品」です。孔雀文磬、素文磬、金銅透彫華鬘、云々・・・待って帰らないでッ!!「難しい漢字に馴染みの薄いコトバでなんだかよくわからない」と諦めるのは未だ早い!「磬」や「華鬘」を何と読むのか、何であるのか、知っている人のほうが“稀”ではないでしょうか?「磬(けい)」や「華鬘(けまん)」は仏教工芸あるいは仏具に分類されます。純粋な金属工芸として鑑賞しても飽きることがなく、うっとりなんですよ~。

磬は法要に用いる楽器(梵音具:ぼんおんぐ)で、中央の撞座(つきざ)を叩いて音を鳴らします。出陳されている孔雀文磬(重文)も、撞座のあたりを中心に使用痕があるので、実際に使われていたことが分かります。どのような音が響いていたのでしょう?さて、磬に表された文様を見ていくと、撞座の左右に孔雀を配置しています。通常の孔雀文磬は左右対称の孔雀を表すことが多いのですが、こちらの磬をよ~く見てみると・・・、羽や脚の動きを左右で微妙に変えていますね。珍しい趣向を示しているものといえます。

一方華鬘は、仏堂内の柱や梁にかけて場を飾る装飾品(荘厳具:しょうごんぐ)として用いられます。金銅透彫華鬘(重文)は、銅板を切り透かす透彫(すかしぼり)したうえに線刻して、蓮華唐草文を表しています。同会場の特別展示室には現代に製作された復元模造がきらびやかなお姿で展示されています。こちらの華鬘の文様もじっくり見てみましょう!透彫は左右対称ですが、線刻は蓮の葉っぱのひるがえり方がちょっとだけ違います。う~ん、なかなか凝っていますね~。

出陳されている磬と華鬘、どちらも鎌倉時代を代表する金属工芸ですが、ぱっと見は左右対称のように見えるけれど、よく見ると少しだけ変えているのが分かって、「おもしろい!」と思える品だと思います。ぜひ展示室でじっくりご覧になってくださいね。

会場には、懸仏(かけぼとけ)や柄香炉(えごうろ)も展示されています。「へぇ~」「こんなのもあるの」と頭の片隅に置いていただけたなら、実際に寺院を訪れた時に「あっ、本当にある!」と気付く機会も増えると思いますよ。難しく考える前に、先ずは気軽にじっくりご鑑賞ください。
愛荘町立歴史文化博物館では、紅葉の見ごろを迎えた今週末、23(土)・24(日)は入館無料となります。また、12月1日(日)には、ギャラリートークもあります(13:30~)ので、ぜひ会場へ足をお運びくださいませ。

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