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「花湖さんの打出のコヅチ」第3回 開催しました

 ここ最近はまるで梅雨に戻ったかのような雨続きでしたが 、この日は晴れてくれました!7月21日(木)、滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第3回の開催日です。講座メイン会場には、開催を心待ちにした 92名の方がお越しくださいました。

講師の矢田直樹氏

 今回講師にお迎えしたのは、県文化財保護課の矢田直樹氏です。 おやおやこれは・・・なんてステキ な青のハッピ姿でのご登壇です♡ オトコマエ度が一層上がっております↑ (笑)!何を隠そうこの方、「県下随一のお祭りオトコ」と言っても過言ではない?!どんなお話が聞けることやら・・・とても楽しみです♪
 
 講座のテーマは「民俗文化財の保存修理」です。文化財保護法によると「民俗文化財」とは、衣食住、生業、信仰、年中行事に関する風俗習慣、民俗芸能、民俗技術及びこれらに用いられる衣服、器具、家屋その他の物件で、我が国民の生活の推移の理解のため欠くことのできないものとされています。身近なものであればこそ、民俗文化財を継承していくための保存修理が大変重要となります。今回の講座はそんなお話です。

 保存修理の一例として、日野町にある馬見岡綿向神社の「祭礼渡御図絵馬(県指定)」について紹介されました。(※皆さん覚えていらっしゃいますか?平成30年度の打出のコヅチで紹介した“あの” 絵馬です。)
 約200年前に描かれた絵馬は、にかわの接着力が弱まったことで絵の具の剥落が見られ、修理にはにかわを挿して接着力を戻すという作業が行われました。縦206cm横422cmもある大きな絵馬を修理するのはとても大変で、剥落止めの作業だけでも一年かかったのだとか・・・調査も含めると2年の歳月をかけた大事業であったとのことです。
 修理完了後は、神社の建物などで保管することも考えられましたが、地域の繁栄を願って奉納された絵馬であるため、「地元の人達に見てもらうのが一番!」と、以前と同じように境内の絵馬殿に掲げられたそうです。とてもいいお話・・・心にグッときます。ヨッ!これぞ民俗文化財!!皆さんも文化財の在り方を考える、良いきっかけになったのではないでしょうか。

 また、近江の無形民俗文化財には曳山祭があります。祭りに使用される山車には、本体を造る建築・木工、塗装の漆工、飾り金具などの金工、幕の染織など様々な技法が用いられています。山車によっては、からくり人形の仕掛けがあったりもしますよね。講師のお話の中で「山車は“山 ”ひとつで、多様な工芸技術がある総合文化財」と言っておられたのがとても印象的でした。何だかとても日本人の魂に“響く”言葉だと思いませんか?
 後半では曳山の修理について、とてもよく分かる映像が紹介されました。 各分野の職人さん達が持てる技術を駆使して作業される姿や、文化財修理に対する熱い思いが伝わる映像です。こちらは滋賀県文化財保護課You Tubeチャンネルの「近江の曳山祭と曳山修理 祭りを支える技」で、ご覧いただく事ができますので、皆さんも是非チェックしてくださいね♪ 【ここまで曳山祭に特化した番組は全国でもとても珍しい、貴重映像が満載です!!】


 受講者の中には、曳山祭に直接関わっておられる方も参加されていたようで、「修理の様子は見ることができないので映像で見れて良かった」とのお声も寄せられました。

 民俗文化財には、少子高齢化や人口流出や、資金・原材料確保や修理技術の継承など、様々な課題があるそうです。使い続ける文化財として、また多様な素材や技術が使われている文化財を修理をすることで、民俗文化財としての価値を守りつつ、次世代に引き継ぐことになります。身近にある地域の文化を長く守り続けていく大変さと大切さを知る講義となりました。 ワッショイ!!

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