日別アーカイブ: 2015年11月27日

工房お訪ね日記②

さて、不定期に継続中の工房お訪ね日記。今回は文化財の修理工房で見せていただいた「ノリ」についてご紹介です。

行った時は、掛軸の解体修理をされていましたので、ここでは「古糊(ふるのり)」についての豆知識をご紹介します。古糊は小麦粉のでんぷんから作った糊(新糊)を10年ほど寝かせて熟成させたものが「古糊」と言われます。20151125壷に保管されていた古糊は、まるでバターの様でしたが、匂いでみると酸っぱくなってしまった甘酒?の様な発酵が進んだ独特の匂いがしました。でもこれが重要な役割をはたします。
古糊は、時間をかけて寝かすことで粘り気が弱くなり、乾燥後の強張りが少なくなるという特性があります。掛軸や巻物などはクルクルと巻いて保管するので、貼った後もしなやかでないと、折れが入ったり絵の具がひび割れたりしてしまうので、肌裏打ち以外は敢えて古糊を使うのだそうです。
古糊に対して作り立ての糊は「新糊(しんのり)」と呼ばれますが、新糊は主に屏風など、パリッとピシッとスキッとハキッと貼る作業の時に使われます。同じノリでも使い分けが必要なのですね。なるほどでございます。

20151125-2作業の中で実はこの糊、私たちが日常使うノリとしての使い方とはまるで使い方が違うとうかがいました。概念が違うとでも申しましょうか。合成糊は、あくまでくっつける「接着剤」としての機能を求めますが、こちらの糊はそれ自体の接着力は弱いのだそうです。だから裏から水を吹いただけできれいに剥がせるのですね~。

ちなみに、糊は自前で「ダイカンの頃に作る」そうです。「エッ?体感で作る?!」もうテンション上がっちゃって日本語がうまく聞き取れてマセン。要するに二十四節気の大寒(この時期の水は、雑菌が少なく長期保存に向いているとされる)の頃に作るということです。聞き間違いにご用心。。。煮詰める作業はとても大変らしく、体力も使うとのこと。そこで尋ねてしまったのが「アンコ作るより大変ですか?」・・・質問が所帯じみているのがタマにキズ・・・。曰く、「餡子作るより大変」なのだそうです。。。そうして職人さん自らの手で作り上げた糊はまさしく「秘伝」の糊となり、きっとよい「お仕事」をしてくれる相棒となるのでしょうね。これがないと仕事にならないとも言っておられました。

では次回はこのノリを使った紙の貼り付けの様子をご紹介します~。

   筆:あきつ

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