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花湖さんの打出のコヅチ特別講座「近江のなれずし製造技術」登録記念講演会 開催しました

3月も2週間が経ち、桜の開花予報がニュースで流れ始めました。文化館にある鉢植えの桜が、街中の桜よりも一足先にたくさん花開いた3月14日、滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」特別講座を開催しました。

例年この時期に「打出のコヅチ」を開催することが無く、毎年参加される熱心なファンの方なら「なぜ?この時期に??」と思われたのではないでしょうか。今回のコヅチは、2023年1月20日に、「近江のなれずし製造技術」が国の文化審議会から登録無形民俗文化財に登録するよう答申を受けたことで、登録記念の特別講座を開催することとなりました。急遽決まった記念講演…皆さんにお知らせする時間が短かったにも関わらず、会場には85名もの方にお越しいただきました。

専門学芸員 橋本道範先生
第1部の記念講演では、滋賀県立琵琶湖博物館の専門学芸員である橋本道範先生に「フナズシ研究最前線」というテーマで、お話していただきました。
寿司の原型「なれずし」は、古くからの食文化として知られています。現在最も有名なのが「ふなずし」ではないでしょうか。県内では、琵琶湖の固有種のニゴロブナが最もポピュラーです。4月~6月くらいの産卵期に漁獲されたものを仕込んだ後、夏に漬け込み、乳酸発酵させて冬に食べはじめます。これが昔からの伝統的な作り方だと誰もが思いますよね。ですが、元禄2年(1689年)の料理本「合類日用料理抄」に「江州鮒の鮨」という箇所に「寒(かん)の内ニ漬申候」との記述があるのだとか。これには、冬に獲れるフナは脂がのっていて美味しいとの話もあり、寒漬けの方がおいしいとされていたようです。子持ちのフナを夏に漬ける現在のふなずしとは違います。
お話からは、歴史的に見た「ふなずし」の多様性が見られ、古くから変わらないと思っていた「ふなずし」が時代によって変わるということに驚きました。

ふなずし1つでも多様性がある「なれずし」、、、他の種類を含めるとその多様性はもっと広がります。なんとも奥が深い!
講師の橋本先生は、江戸時代の書物のように寒い時期に漬け込んだり、玄米や更には糯米(もちごめ)を使用して漬け込むなど、様々な「なれずし」を試作されています。今後も新しい発見がありそうで、期待が膨らみます!

第2部は特別PR企画として設けられ、滋賀の食文化に関心を持った有志が集まる「滋賀の食事文化研究会」の方が、湖魚を使用した滋賀のなれずしについて、その活動内容ともにお話してくださいました。
県の水産課からは、手作りふなずしについて紹介されました。ふなずしを自分で作ろうと思うと、かなり難しそうですよね…ですが、県内には「ふなずし漬け方講習会」なるものがあり、各地で開催が拡大しています。(詳しくは滋賀県漁業協同組合連合会のサイトをご確認ください)この講演をきっかけに「近江のなれずし製造技術」に興味を持たれた方は、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。
3月の文化館はイベント満載!
「一月往ぬる二月逃げる三月去る」とはよく言ったもので、早くも3月の始まりです。まだまだ寒い日もありますが、暖かい日もあり、少しずつ春の訪れが近づいているのを実感します。

さて、3月と言えば、3月3日の「桃の節句」ですよね。ですが、今日は少し趣向を変えてコチラの絵をご紹介しようと思います。桃の木の下で3人の男性が、何かをしています。これは、平安時代の宮中行事「曲水(きょくすい)の宴(えん)」と言って、流水に酒杯を浮かべ、自分の前に流れ着くまでに詩を詠み楽しんでいる様子が描かれています。3月3日に行われたらしく、まさに今の時期にピッタリの絵です。
この絵は、月岡雪鼎筆の「十二カ月図屏風(文化館蔵)」の中の一扇(せん:屏風を構成する縦長の画面1枚。6枚の扇がつながって6曲の屏風)に描かれています。
「十二カ月図屏風」 は、滋賀県立安土城考古博物館で開催中の地域連携企画展「琵琶湖文化館収蔵品にみる四季」に出品しています。普段はなかなか見ることができない文化館の収蔵品を、多くの皆様に見ていただける貴重なチャンスです。雅な宮中文化に触れて、いつもと違う桃の節句を感じてみてください。

さらに、会場には「新しい文化館にメッセージを届けよう!」という特設ブースを設けて、皆さんから以下のような2つのメッセージを受け付けています。
【投票】「あなたが思う“新しい文化館でも見たい作
品”はどれですか?」
【募集】「新しい文化館での“展覧会へのご意見”を
お知らせください!」
しかも!3月12日までは、2つともメッセージを書いてくださった方に、特別にプレゼントも用意してあります!ぜひ、多くのメッセージをお寄せくださいね。また、ここでお寄せいただいたメッセージをもとに、3月19日に座談会「新しい文化館と収蔵品を語る」も開催します。気になった方は、コチラ(滋賀県立安土城考古博物館サイト)をチェックしてくださいね。

そして、もうひとつ忘れてはならないイベント『滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」特別講座』も、3月14日に開催となります。滋賀を代表する食文化である“なれずしの製造技法”が、国の登録無形民俗文化財に登録されるのを記念した講演会です。こちらも、ただいま絶賛参加者を募集中ですので、まだ予約をされていない方は、お早めにお申し込みくださいね。
3月もイベント満載の文化館ですが、皆様に楽しんでいただけるように、頑張っていきたいと思います。
緊急告知!花湖さんの打出のコヅチ特別講座開催決定!!
今年度予定されていた全6回の講座を10月に終えた「滋賀の文化財講座 花湖さんの打出のコヅチ」。参加者は、メイン・サテライト会場を含み延べ600人を超える人気講座となっています。たくさんの方にご支援いただき、本当に嬉しいかぎりです。
さて、当初予定の講座が終了して、早4カ月。コヅチファンの皆さんは、淋しい思いをされている方も多いのではないでしょうか。そんな方に耳よりな『緊急告知』です!
3月14日(火)に、滋賀の文化財講座 花湖さんの打出のコヅチ特別講座『「近江のなれずし製造技術」登録記念講演』の開催が決定いたしました!
今回実施する会場は、いつものメイン会場:コラボしが21(3階大会議室)のみとなります。時間は、午前9時30分(9時15分開場)からですので、くれぐれもお間違えの無いように!

「近江のなれずし製造技術」は、今年1月20日に、国の文化審議会から登録無形民俗文化財に登録するよう答申を受けました。今回の特別講座は、この登録を記念して実施するもので、「近江のなれずし製造技術」の解説をはじめ、草津市にある滋賀県立琵琶湖博物館の専門学芸員・橋本道範氏をお招きして、「フナズシ研究最前線」と題してお話していただきます。
滋賀の食文化を語るうえで欠かせない、“フナズシ” 等の「なれずし」ですが、詳しく知っているという方は、意外にも少ないのではないでしょうか? 講座を受けると「なれずし」を、より詳しく知ることができますよ。県水産課さんのPRタイムも特別に用意されていますので、こちらもお楽しみに。お申し込みは現在受付中です。 ぜひとも皆さん、なれずしの魅力に触れてみてくださいね。(詳しくはコチラ)
「花湖さんの打出のコヅチ」第6回 現地探訪 開催しました
10月27日、ついにこの日を迎えました。滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」現地探訪です。少し曇り空が広がるものの雨が降ることはなく、ウォーキングをするにもちょうど良い気候となりました。今回は、野洲市歴史民俗博物館(銅鐸博物館)で開催されている地域連携企画展「近江湖南に華開く宗教文化 -野洲・守山の神と仏-」に関連した探訪となっており、「野洲市御上神社とその周辺」 をテーマとして、定員いっぱいの40名の方たちと共に、御上神社と2つのお寺を訪ねました。

集合場所の御上神社の大鳥居前には、すでに受付開始時間5分前ですが、数名の参加者が、集まってこられました。皆さん、本当にこの講座を楽しみにしておられるのが伝わってまいります。今回講師を務めたのは、第4回でも講師を務めた琵琶湖文化館の和澄浩介主任学芸員です。野洲の地域連携企画展の担当も務めていますので、展覧会についてもお話いただきます。

旅の始まりとなる御上神社の歴史は古く、「古事記」や「日本霊異記」「延喜式」にも載っています。境内にある本殿は国宝に、拝殿・楼門・若宮社・三宮社は、それぞれ重要文化財になっています。本殿の屋根は、一般的な神社の造りの切妻造ではなく、仏教建築に使われる入母屋造になっており、礎石には蓮の形が刻まれています。蓮と言えば仏様が乗っているお花…まるで寺院のようです。「古文書ではなく現物そのものを通して神仏習合を知ることができる」貴重な神社です。
御上神社を後にした打出のコヅチ隊は、三上山を眺みながら北へ歩き出します。のどかな住宅街を1km程歩くと、次の目的地西林寺さんに到着します。ご住職に案内され本堂の中へ…。

こちらの本尊「阿弥陀三尊像」は、鎌倉時代の仏師快慶一派の作風が強いお像となっています。中尊の阿弥陀如来像は、野洲市歴史民俗博物館(銅鐸博物館)で開催されている地域連携企画展に展示されており、お寺では脇侍である観音菩薩像と勢至菩薩像を拝見させていただきました。両菩薩が、強い前傾姿勢をとっている形は、快慶の高弟・行快風の作品では滋賀県には他に例がなく貴重です。普段は見ることができない像を特別に間近で見られる機会…皆さん、じっくりと鑑賞していました。中には、もう一度列に並びなおし2回見ている方も…。そうですよね、、、コチラに向かってくるかのような前傾姿勢が圧倒的で思わず見入ってしいました。

西林寺を出発し、次は三上山の方に1.5kmほど歩いて宝泉寺に向かいます。本尊「阿弥陀如来立像」は、平安時代後期の特徴があり、仏師の祖と呼ばれる定朝(じょうちょう)の作風を踏襲しています。1メートル弱くらいの阿弥陀如来立像で、温和な作風が平安時代後期の特徴をよくあらわしています。当初の光背は飛天光だった可能性があるそうですが、光背の附属と思われる宝泉寺の「飛天像」が展覧会に出展されています。ですが、実際見るとこの飛天は15cm程の像…この阿弥陀様には、大きいような…?講師のお話では「本尊と飛天像のサイズが合わないため、別の平安時代の阿弥陀像についていたのではないか」とのこと。なんと、、、別の阿弥陀様があったとは!その仏様、いったいどのようなお像だったのでしょう??…う~ん。気になってしまいます。
西林寺と宝泉寺のお像は、展覧会を開催するにあたり調査をした結果分かったものなのだとか。和澄学芸員からは「県内には古い良い仏像があり、まだまだ評価されていないままの文化財がいっぱいある。皆さんにその良さを知ってもらいたい」との話をされました。聞いている方、感嘆の声を上げ大きく頷いておられたのが印象的でした。ココにいる皆さんに、まだ知られていない“ 仏像の良さ ”が伝わっているの事を感じました。探訪に参加された方のお言葉にも「貴重な仏像を見せていただいて嬉しかった」や「湖南にこの様な場所があることを知ることができた」などあり、初めて知る仏像やお寺に興味を持たれた様子です。

多くの方にご参加いただいた、滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」も、この現地探訪をもって、本年度は無事にすべて終了致しました。皆さんから「来年も参加したい」との嬉しい声もいただいております。来年も、皆さんに楽しんでいただけるよう、スタッフ一同頑張っていきたいと思います。
「花湖さんの打出のコヅチ」第5回 開催しました

9月も半ばを過ぎて朝夕は過ごしやすくなりましたが、日中はまだまだ暑い日が続きます。この日(9/15)も残暑が厳しい日となりましたが、そんな中86名の方が会場に足を運んでくださいました。滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第5回、今年度の座学の最終回です。

今回は、「琵琶湖文化館収蔵品にみる四季と年中行事」をテーマに、琵琶湖文化館の田澤梓学芸員が登壇しました。文化館の収蔵品には、四季や年中行事が描かれている作品が多くあります。作品に見られる季節の情景や描かれ方についてお話しました。

ホームページでも紹介されている「十二ヵ月図」 (月岡雪鼎筆)は、六曲一双の屏風の中に、ひと月ごとの歳時や風俗が描かれています。このような絵は「月次絵(つきなみえ)」とよばれ、平安時代ごろからやまと絵の主題として描かれてきました。当館の「十二ヵ月図屏風」は江戸時代の作ですが、古典に取材し平安時代の月次絵の要素を取り入れていることを、わかりやすく解説されました。

次に紹介された「近江八景図」(吉田元陳筆)には、六曲一双の屏風に、粟津晴嵐、瀬田夕照、三井晩鐘、唐崎夜雨、矢橋帰帆、石山秋月、堅田落雁、比良暮雪の八景が描かれています。近江八景は、中国・湖南省にある洞庭湖の瀟湘八景の情景を近江にとり入れ、四季を追加したもの。皆さんご存知です?滋賀県と湖南省は、琵琶湖と洞庭湖のご縁がつながり、1983年から友好提携が結ばれているのですよ。講師からは「新しい文化館ができたら、近江八景と瀟湘八景、滋賀県と湖南省のつながりが分かる展示をしたい!」との野望が語られました。
紹介された作品は、どちらも繊細に描かれていて「実物を見たい!」と思った方も、おられるハズ。そんな方に朗報です。今年度冬季に滋賀県立安土城考古博物館で開催される地域連携企画展「琵琶湖文化館収蔵品にみる四季」に、この二つの屏風が出展されます。来年の2月頃の開催のため、まだすこし先ですが、皆さんぜひ楽しみにしててくださいね。

次回(10/27)は、いよいよ滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」の大トリ現地探訪となります。第4回で講師を務めた和澄学芸員を講師に、野洲市御上神社周辺を歩きます。こちらは、10月8日から始まる地域連携企画展「近江湖南に華開く宗教文化―野洲・守山の神と仏―」(会場:野洲市歴史民俗博物館)に関連した講座となっており、展覧会も合せてご覧になるとより楽しめます。ぜひ、コチラもよろしくお願いします。講座の申込みは、9月27日(火)午前8時30分より電話にて受付開始します。皆さんからのお申込みお待ちしております。
打出のコヅチ第4回 番外編 ~ご質問にお答えします~

滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」に参加してくださったから、アンケートを通してご質問を頂くことがあります。第2回・第3回に引き続き、第4回でも質問をいただきました。熱心な聴講生からのご質問。今回も早々に、講師を務めた和澄浩介学芸員に答えていただいたので、皆さんにもご紹介していきたいと思います。
(質問①)敏満寺区の銅造大日如来像は慶派の作風が見受けられる
とのことだが、慶派の金銅仏の作例はあるの?

テーマとなった「敏満寺区の銅造大日如来像」は、ブログでも紹介したとおり、慶派の作風が見られるそうです。慶派で代表的な仏師・運慶や快慶は、東大寺南大門の金剛力士立像などが有名です。確かに木造の仏像が多い印象があります。 他にも金銅製の仏像はあるのでしょうか?さて、その答えは…?
そもそも鎌倉時代の金銅仏は数が少ないですが、鎌倉時代前半までで慶派がかかわったと考えられている著名な像は以下のようなものがあります。
○法隆寺(奈良) 阿弥陀如来・観音菩薩像 重文
法隆寺金堂西の間に安置されています。運慶の四男康勝が原型を造り、貞永元年(1232)
に完成したことが光背銘文からわかります。常時拝観可能です。
○寿福寺(神奈川) 薬師如来坐像 重文
銘文はありませんが、建暦元年(1211)に北条政子が子の源実朝の病気平癒を願って鶴
岡八幡宮に安置した像であると考えられています。寄託先の鎌倉国宝館で展示されること
があります。
○大報恩寺(京都) 誕生釈迦仏立像 重文
大報恩寺には快慶の高弟行快が造った本尊釈迦如来、快慶と行快が造った十大弟子、慶
派の有力仏師定慶が造った六観音がのこされています。この誕生仏も行快の作風が顕著で
す。大報恩寺霊宝館で常時拝観可能です。
やはり多くの仏像を作った仏師の系統です。少ないとはいえ、金銅仏はあるようです。ご紹介いただいた仏像は拝観可能なものも多く、ぜひとも慶派の金銅仏見てみたいです。さらには、このような質問も…
(質問②)大仏殿様四天王が造り継がれてきたのは、図像(見本)があったから?

こちらは、講座内で紹介された「多賀町内の重源ゆかりの文化財」で、多賀大社から町内の真如寺に移された四天王像が、東大寺大仏殿の四天王に特有の形式(大仏殿様)であるという事が語られました。真如寺の四天王像は、江戸時代もので、東大寺大仏殿の四天王像よりも大分後になってから作られています。時代が違っても、大仏殿様がつくられたのは、やはり見本があるからなのでしょうか??さて、その答えは…
大仏殿四天王像のような由緒正しい仏像や霊験あらたかな仏像は図像が描かれ、後世にその形が伝わっていきます。残念ながら大仏殿様四天王像を描いた古い図像は現存していませんが、醍醐寺(京都)所蔵の弘安7年(1284)の年紀を有する「東大寺大仏殿図」という絵図に文字で四天王の姿が詳細に記されており、これが運慶たちが再興した大仏殿様四天王像が注目されるきっかけになりました。
なお図像があっても、まったく同じように写すわけではなく、時代やその時の状況を反映して変更を加えることがあります。運慶たちが再興した大仏殿四天王像も、焼失する前の姿からは若干変更を加えていたことが指摘されています。
やはり、見本となるものがあったのですね。時代を反映して、変更を加ても形をしっかりと受け継いでいくなんて…各時代の仏師たちのすごさも伝わります。
いかがでしたか?前回のブログでご紹介できなかった大仏殿様の四天王像などのお話しも含め、打出のコヅチ第4回をより深く知るきっかけとなりましたでしょうか。皆さんの知識欲のおかげで、仏像について詳しく学べる場となりました。これを機会に皆さま色々な仏像を見比べてみてはいかがでしょうか。
「花湖さんの打出のコヅチ」第4回 開催しました
8/18の大津市は前日夜から朝にかけて大雨が降りましたが、お昼には大雨がウソだったかのように晴れてきました。そんな中、滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第4回を開催。93名の方が会場に足を運んでくださいました。

今年度の文化財講座も後半戦。今回は「敏満寺区の銅造大日如来像と多賀町の文化財-令和3年度滋賀県新指定文化財紹介②-」と題し、琵琶湖文化館の和澄浩介主任学芸員が登壇。 昨年、新たに滋賀県指定文化財となった多賀町敏満寺区に所蔵の「銅造大日如来坐像」を中心にお話ししました。
敏満寺は、10世紀頃に創建されたとされ、鎌倉時代以降に栄えたそうですが、浅井長政・織田信長に焼かれ消失し廃寺となり、現在は地名としてのみ残っています。鎌倉時代初期に作られたこの像は、運慶・快慶をはじめとした平安時代末期から鎌倉時代初期の慶派の作風を取り入れているのだとか。運慶・快慶といえば、奈良・東大寺の仏像で有名です。講座では何故、奈良から離れた多賀の地に、ほぼ同時期の慶派の仏像があるのかが語られました。

「何故、慶派の仏像が多賀にあるのか?」 その秘密は、平家の焼き討ちで焼亡した東大寺の復興を担い、慶派を重用した僧侶・俊乗房重源(しゅんじょうぼうちょうげん)にあります。重源が行った作善(さぜん:善行)のリスト『南無阿弥陀仏作善集』には、重源が造立した仏像や創建・再興した寺院などが列記され、そこには敏満寺も記載されています。敏満寺の宝物を引き継いだ胡宮神社には、重源が敏満寺に施入した五輪塔とその寄進状が残っており、重要文化財に指定されています。また重源が敏満寺に送った書状も残っており、こちらには「東大寺東塔の再興供養に際して、敏満寺から法華経を読む童子を出す」よう要請する内容なのだとか。。。このことからも、敏満寺と重源には強い関わりがあったことがわかります。更に重源は、延命長寿を願って多賀大社に祈願したと伝わっており、多賀町内には重源ゆかりの文化財があるそうです。アンケートでは、「重源と胡宮神社の関係を初めて知った」「大日如来像だけでなく重源に興味を持ちました」「多賀に行きたくなった」との嬉しい感想をいただきました。一つの小さな仏像の形から東大寺や重源との関わりを知る、目からウロコのお話しに皆さん熱心にお話しを聞かれていました。あっという間の1時間30分となり、講座終了後には大きな拍手を頂きました。皆さん本当にありがとうございました。

次回は、いよいよ 滋賀の文化財講座では最後の座学となります。第5回「琵琶湖文化館収蔵品にみる四季と年中行事」は、現在講座受付中です。それでは皆さま、また次回の講座でお待ちしております!!
打出のコヅチ第3回 番外編 ~ご質問にお答えします~

前回「第2回」の講座ブログでも紹介しました「打出のコヅチ番外編」!ご好評につき「第3回」についても、皆さんのアンケートに書かれた質問について、この場を借りてお答えすることといたしましょう♪「番外編」を楽しみにして下さっている受講者もいらっしゃるようです。「しっかりお答えせねば」と今回も力が入ります。いただいた質問について、講師を務められた矢田直樹氏にお尋ねましたので、皆さんにもご紹介したいと思います。
(質問①)修理・新調を請け負う業者は、ほとんど滋賀県内にあるのですか?
講座では曳山の修理について、滋賀県文化財保護課制作の「近江の曳山祭と曳山修理~祭りを支える技~」の映像を視聴しました。総合文化財と言われる山車の各部分を修理する職人さん達の姿が紹介されていましたね。木材で出来た車輪は木工職人、塗装には漆塗りの職人、飾り金具には彫金の職人、幕を織る職人と、様々な職人さんが関わっておられます。

動画で紹介された大津祭の曳山の一つ「月宮殿山(げっきゅうでんざん)」の前懸幕については、京都の株式会社龍村美術織物さんが手掛けられ、古い幕を織られた当時に近い状態で再現する“復元新調”が、滋賀県守山市の工場で行われました。幕など織物関係は、京都の会社が修理することが多いそうですが、一方で、滋賀県の文化財保存技術として、「曳山漆工品修理」や「曳山車輪鉄輪修理」が選定されていることから、漆塗りや、車輪の補強で付いている鉄輪の修理などは、県内の職人さんが担当されています。
県内にはこうした曳山の修理や復元新調する技術を持つ職人さんが少なくなっているのが現状です。山車に使われる飾り金具は、これまで長浜の職人さんにお願いすることが多かったのですが、 先般お亡くなりになられたので、今後どうしていくか課題となっています。さらに車輪の復元新調は、県内の職人さんだけでなく、岐阜県高山市の職人さんにお願いすることもあるそうです。車輪を修理したり作ることができる職人さんが少なくなっているのが現状です。メンテナンスのことを考えると、近くに職人さんがいると安心なのですが、曳山の修理だけでは生計が成り立たないという事情もあります。矢田氏が仰るには「保存修理を通して、県内を中心に、伝統の技術を持つ職人さんの技術継承や後継者の育成を図っていきたい 」とのこと。 伝統を守ることが、一朝一夕ではかなわない時間のかかる、大変なことだとヒシヒシと伝わります。
(質問②)祇園祭の山鉾と近江の曳山は、作りに大きいな違いがあるのですか?
今年3年振りに、山鉾巡行が行われた京都・祇園祭。ニュースで数々の山鉾をご覧になった方も多いのではないでしょうか。絢爛豪華な山鉾が圧巻でしたよね。ご質問は「“祇園祭”と“近江の曳山”との違い」についてですが、“近江の曳山”とひとことで言っても、大津祭や長浜曳山祭、日野祭、水口祭、米原曳山祭と、県内には様々な曳山祭があります。それぞれに個性があり、同じものはありません。

例えば、長浜や米原の曳山には歌舞伎舞台があり、祇園祭の山鉾とは大きく異なります。山車の車輪にも違いがあり、 祇園祭の山鉾が四輪であるのに対して大津祭は三輪です。また、大津や日野や水口は、祇園祭の山鉾のように御所車の形ですが、米原と長浜の曳山は、直径90cmはある大きな丸太を使った車輪です。同じ県内の曳山でもここまで違うとは…!
今回上げた例は、ほんの一部です。皆さんもそれぞれの曳山の違い見つけてみてくださいね。
さて今回、アンケート通して、より深く民俗文化財のことを知ることができました。ブログスペースの関係上、全てのご質問にお答えすることは出来ませんが、この「番外編」をきっかけに、皆さんの興味の幅が広がればいいな~と思っています♪
「花湖さんの打出のコヅチ」第3回 開催しました
ここ最近はまるで梅雨に戻ったかのような雨続きでしたが 、この日は晴れてくれました!7月21日(木)、滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第3回の開催日です。講座メイン会場には、開催を心待ちにした 92名の方がお越しくださいました。

今回講師にお迎えしたのは、県文化財保護課の矢田直樹氏です。 おやおやこれは・・・なんてステキ な青のハッピ姿でのご登壇です♡ オトコマエ度が一層上がっております↑ (笑)!何を隠そうこの方、「県下随一のお祭りオトコ」と言っても過言ではない?!どんなお話が聞けることやら・・・とても楽しみです♪
講座のテーマは「民俗文化財の保存修理」です。文化財保護法によると「民俗文化財」とは、衣食住、生業、信仰、年中行事に関する風俗習慣、民俗芸能、民俗技術及びこれらに用いられる衣服、器具、家屋その他の物件で、我が国民の生活の推移の理解のため欠くことのできないものとされています。身近なものであればこそ、民俗文化財を継承していくための保存修理が大変重要となります。今回の講座はそんなお話です。

保存修理の一例として、日野町にある馬見岡綿向神社の「祭礼渡御図絵馬(県指定)」について紹介されました。(※皆さん覚えていらっしゃいますか?平成30年度の打出のコヅチで紹介した“あの” 絵馬です。)
約200年前に描かれた絵馬は、にかわの接着力が弱まったことで絵の具の剥落が見られ、修理にはにかわを挿して接着力を戻すという作業が行われました。縦206cm横422cmもある大きな絵馬を修理するのはとても大変で、剥落止めの作業だけでも一年かかったのだとか・・・調査も含めると2年の歳月をかけた大事業であったとのことです。
修理完了後は、神社の建物などで保管することも考えられましたが、地域の繁栄を願って奉納された絵馬であるため、「地元の人達に見てもらうのが一番!」と、以前と同じように境内の絵馬殿に掲げられたそうです。とてもいいお話・・・心にグッときます。ヨッ!これぞ民俗文化財!!皆さんも文化財の在り方を考える、良いきっかけになったのではないでしょうか。

また、近江の無形民俗文化財には曳山祭があります。祭りに使用される山車には、本体を造る建築・木工、塗装の漆工、飾り金具などの金工、幕の染織など様々な技法が用いられています。山車によっては、からくり人形の仕掛けがあったりもしますよね。講師のお話の中で「山車は“山 ”ひとつで、多様な工芸技術がある総合文化財」と言っておられたのがとても印象的でした。何だかとても日本人の魂に“響く”言葉だと思いませんか?
後半では曳山の修理について、とてもよく分かる映像が紹介されました。 各分野の職人さん達が持てる技術を駆使して作業される姿や、文化財修理に対する熱い思いが伝わる映像です。こちらは滋賀県文化財保護課You Tubeチャンネルの「近江の曳山祭と曳山修理 祭りを支える技」で、ご覧いただく事ができますので、皆さんも是非チェックしてくださいね♪ 【ここまで曳山祭に特化した番組は全国でもとても珍しい、貴重映像が満載です!!】

受講者の中には、曳山祭に直接関わっておられる方も参加されていたようで、「修理の様子は見ることができないので映像で見れて良かった」とのお声も寄せられました。
民俗文化財には、少子高齢化や人口流出や、資金・原材料確保や修理技術の継承など、様々な課題があるそうです。使い続ける文化財として、また多様な素材や技術が使われている文化財を修理をすることで、民俗文化財としての価値を守りつつ、次世代に引き継ぐことになります。身近にある地域の文化を長く守り続けていく大変さと大切さを知る講義となりました。 ワッショイ!!
打出のコヅチ 番外編 ~ご質問にお答えします~
前回のブログでご紹介した滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第2回。内容は延暦寺所蔵の「阿弥陀八大菩薩像」がメインでしたね。今日は、アンケートに書かれていたご質問内容 について、講師を務められた古川史隆氏にお尋ねしましたので、復習もかねて皆さんとお勉強したいと思います。
(質問①) 高麗仏画が日本に伝わり7~800年経ているが、絹が虫あるいは劣化
による 損傷がない。保存の工夫は、どうなのか。

この仏画は14世紀頃の製作となりますので、確かにすでに700年近く経っています。ですが、スクリーンに映し出された図像は、阿弥陀様や菩薩様たちのお姿をはっきりと確認することができます。
さて、長い歴史の中どのような保存がされていたのか、、、それは定期的な虫干しなのだとか。風通しによって空気を入れ替え、カビや虫の被害を防いでいるそうですよ。更には、50年・100年単位で修理を重ねることで、損傷の進行を防いでいるらしく、、、何とも長い年の間隔で、修理が繰り返し行われていたのですね。古いものを後世に残すということの大変さがわかります。そして、このような質問も…
(質問②) 絹布に細密画を描くには「にじみ」も予想されるが認められない。
どんな工夫があるのか?また、絹布のメッシュ数なども知りたい。
ここ、これはまた専門的なご質問!詳しくみてみましょう。

この作品の絵絹(えぎぬ)の組成(そせい)は、1平方センチメートル四方で、経糸(たていと)が約20本、緯糸(よこいと)が約30本とのこと。びっしり糸が詰まっているように見えても小さな隙間はできます。そこに絵を描いたら、たしかに滲んでしまいそうです。でも、ちゃんと対策があるのです。
滲みの防止策は、絵絹に礬水(ドーサ)を塗布することが現在でも一般的なのだとか。礬水とは、獣の骨などから作られる「膠(にかわ)」と「明礬(みょうばん)」を混ぜたもので、絵が描かれる前の絵絹に塗布します。おそらく高麗仏画でも同様の処置が行われていたと考えられるそうです。絹に描くためには、こんなひと手間があったのですね。

いかがでしたか?前回のブログは「阿弥陀八大菩薩像」の内容や表現方法を紹介しましたが、今回は文化財の保存方法・絹に絵を描く方法をご紹介しました。アンケートをきっかけに、こんなにも知識が深まるとは…「さすが、打出のコヅチ!」と言っていただきたい(笑)。
皆さんにご記入いただいたアンケートは、毎回ドキドキしながら見せていただいております。アンケートをただのアンケートと思うべからず…。より良い文化財講座の開催につなげるべく、スタッフ一同、一生懸命取り組んでおります。
「花湖さんの打出のコヅチ」第2回 開催しました

梅雨の晴れ間となった6月23日、滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第2回を開催しました。会場のコラボしが21には、何と定員を超える方々が…。実は、、、です。滋賀県では15日にコロナの警戒レベルが引き下げられたこともあり、講座の受付についても柔軟に対応させていただいておりました♪元々が210人座れる大会議室です。運営側として、これまでと同様に会場の感染症対策も怠りなく、参加の皆さんには変わらずマスクの着用をお願いした上で、今回110名の方々にご参加いたさきました。皆さん、ご協力ありがとうございました。

第2回は、「延暦寺の阿弥陀八大菩薩像について-令和3年度滋賀県新指定文化財紹介①-」というタイトルで、県文化財保護課・古川史隆氏(琵琶湖文化館兼務)がお話しいたしました。延暦寺所蔵の「絹本著色阿弥陀八大菩薩像」は、朝鮮半島の高麗時代に描かれた作品で、当時の仏教文化を物語る貴重な資料として、昨年度新しく滋賀県指定文化財となりました。現存する高麗仏画は、現在は160点近くが確認されており、日本には約110点が伝来しています。

今回のテーマである「絹本著色阿弥陀八大菩薩像」は、法量が縦178.6cm横88.6cmと大きいもの。“絹本著色”とは、絹に色を付けて描かれたことを指しています。皆さん、この絵を描くときは「きっと大きな絹に描いたのだろう」って思いますよね。でも実はこの絵、5枚の絹を継いで一枚の絵とする“五副(ふく)一鋪(ぽ)” の絵になっており、その継ぎ方は大変珍しいそうです。仏画において、1枚の絵絹を使った一副一鋪や、3枚の絵絹を継いだ三副一鋪はよく見られるそうですが、五副一鋪はあまり例を見ない珍しい作なのだとか。
「阿弥陀八大菩薩」の図像は、中国・日本に作例はなく、華厳信仰と阿弥陀信仰が融合した高麗独自の信仰を反映した図像との説があります。 更に特徴的なところは、通常なら阿弥陀八大菩薩像の最前列に配置される観音菩薩・勢至菩薩と第三列に配置される地蔵菩薩・弥勒菩薩が入れ替っていることです。明確な理由はわかりませんが、特殊な信仰形態に基づくもの考えられているのだとか。この絵には、願主の意図が込められているようで、「仏画」とは、実は種類豊富で奥深いものなのだと、今回改めて思いました 。

高麗仏画は、今まで中国画(唐絵)とされていたため、研究が始められたのは戦後のことで、ここ数十年で研究の進展・成果が目覚ましいのだとか。参加された方からも「高麗仏画というものを初めて知った」との声もあり、あまり知られてこなかった高麗仏画が、今後更に研究されることで多くの方に知ってもらえるようになれば嬉しいですね。
1時間30分の講座もあっという間。コロナ禍で皆さんからの質問をお断りしているのですが、アンケートを手渡してくださった方から「質問があったのでアンケートに書かせていただきました」とのこと。「おや。これはしっかりと講師の方にお伝えせねば!」と、早速質問を古川氏にお伝えしました。その質問と回答は??それは次回このブログでご紹介します。
令和4年度「花湖さんの打出のコヅチ」第1回 開催しました
皆さん待望のこの日がやってまいりました! 5月25日(水)「滋賀の文化財講座 花湖さんの打出のコヅチ」、今年度第1回目の開催日です。会場には、事前に申し込みいただいた100名の方がお越し下さいました。幸先の良いスタート♪これも講座を楽しみに待っていてくださる皆さまのおかげです。

今回の講師は県文化財保護課・井上優(琵琶湖文化館副館長兼務)で 「滋賀県の誕生と県政150年」というテーマで、お話しいたしました。
2022年は滋賀県政150年を迎える年です。講座で紹介された歴史資料「滋賀県行政文書」は、県政150年の歴史を物語る基礎資料で、滋賀県指定文化財になっています。今年度“滋賀の文化財講座”の初回を飾るのに相応しいテーマなのです。

「滋賀県行政文書」は、書類を綴じた本のような体裁にした「簿冊(ぼさつ)」の形になっていて、その数9,068冊。一括して、県指定文化財として県庁に保管されています。
その内容は滋賀県の前身・大津県庁発足の明治時代(慶応4年含む)から、昭和初期(昭和20年)までの文書となっており、この文書を紐解けば近代滋賀県の歴史がわかるのです。その中には今では信じられない滋賀県の姿もあります。明治9年から明治14年にかけて、滋賀県は敦賀県を合併しており、この5年間は、現在は“海なし県”でお馴染みの滋賀が、なんと“海あり県”だったのだとか。この事実には、会場からも驚きの声が聞かれました。ちなみに、この時期の文書には、福井県である敦賀の行政文書も含まれているそうです。
行政文書は、滋賀県立公文書館でのみ閲覧が可能です(利用申請が必要)。閲覧方法等詳しくは、公文書館のホームページをご覧ください。また公文書館では、企画展示や公開講演会なども行っているそうです。この講座で気になった方は、行ってみてくださいね。

そして、県政150年を語る上で忘れてはならない出来事といえば、明治24年に起こった「大津事件」です。当館にその関係資料が収蔵されていることは文化館ファンの方なら、よくご存じですよね?!講座では、事件後を中心に当時の生々しい調書や、事件後の県と国についてより詳しく解説しながら語られました。事件のあらましなどは、教科書などでご存知の方もおられますが、事件のその後については、知らないという方が多かったようで、アンケートを拝見していると「大津事件を詳しく知ることができて良かった」といったお声もありました。

平成20年度より、会場[コラボしが21]で始まった「滋賀の文化財講座」は、今年で15年目を迎え、参加人数は延べ7,000人を突破致しました。本講座は、皆さまの知りたい・学びたいという気持ちに支えられております。
これからも、滋賀の文化財をとりまく魅力あふれる情報を、“ 打出のコヅチ ”のひと振りが皆さまの期待に応えられますよう、頑張ってまいりますので、今後ともどうぞよろしくお願いたします。
いよいよ始まる“アレ”と思いがけない出会い
さぁ!いよいよアレ始まります! 4/1付けのブログでお伝えしていたアレとは、、、そう。滋賀の文化財講座花湖さんの打出のコヅチです。4月になってから、多くのお問い合わせがあり、情報解禁したのが、4月後半だったにも関わらず、4月のホームページアクセスで一番の人気となりました。

まだ新型コロナが心配なため、今年もメイン会場(コラボしが21)の人数を100人に抑えての開催となりますが、各市町のご協力もあり、全6カ所のサテライト会場を設けております。こちらも是非ともご利用くださいね。会場によって開催する回が異なりますのでご注意ください。
初回は、5月25日(水)「滋賀県の誕生と県政150年」をテーマに、滋賀県文化財保護課兼琵琶湖文化館副館長の井上優がお話しさせていただきます。メイン会場の予約は若干名となっています。ご参加を検討されている方はお早めに。。。(※定員となった場合は、キャンセル待ちでの受付として対応させていただきます。)
さて皆さん、ゴールデンウィークはどこかに出かけられましたか?今年は、3年振りに規制の無い大型連休となり、ニュースでも連日各地の観光地の様子が映しだされていました。関西では、琵琶湖畔で寛ぐ親子連れや、観光客でにぎわった京都清水寺の様子が映し出されていました。

連休中に京都に行く機会があったのですが、思いがけず京都御所で“岸岱の虎”と出会いました。“岸岱の虎”といえば、館蔵品の「巌上咆哮猛虎図」です。寅年の今年、文化館の新年の挨拶でもご紹介しました。この虎を描いた岸岱が京都御所内にある「諸大夫(しょだいぶ)の間」に同じく虎を描いているのです。「諸大夫の間」は、正式に参内した人の控えの間で、身分に応じて「桜の間」「鶴の間」「虎の間」へと通されたそうです。一番位が高い人が通された「虎の間」です。コチラの襖に岸岱の虎図がありました。建物内に入ることは残念ながら出来ず、外から襖を見る形となるのですが、館蔵品の猛々しい虎とは違い、少し落ち着いた感じが見て取れます。遠目からでもわかる隆起した虎の体つきが「巌上咆哮猛虎図」にそっくりで岸岱の虎と実感しました。

連休中の出会いに思わず嬉しくなりました。京都御所は、一年を通じて公開されており、誰でも無料で見学することができます。皆さんも是非、文化館の虎との違いを見てみてくださいね。
「花湖さんの打出のコヅチ」第5回 開催しました
秋も深まった11/11(木)、滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第5回を開催しました。本来は9月開催予定でしたが、新型コロナ感染拡大の影響により2カ月遅れでの開催。その間に第6回の現地探訪が行われたため、今回が今年度最後の文化財講座となりました。会場には、この講座をずっと心待ちにして下さっていた89名の方々が受講されました。
今回は「建造物のさまざまな屋根技法」をテーマとして、県文化財保護課の菅原和之氏にお話しいただきました。 ひとことで“屋根”と言っても、その形や素材は様々。講座では、歴史的建造物の屋根の形状・葺き材とその技法について、スライドの豊富な写真とともに、ひとつひとつ丁寧に説明していただきました。屋根の形状は、切妻造、寄棟造、宝形造、入母屋造など多様にあり、素材も檜皮(ひわだ)や
杮(こけら)、とち、茅、瓦、銅板と様々です。茅葺きでお馴染みの茅材は草の総称であるため、地域によって使用するものが異なるそうです。琵琶湖岸ではヨシですが、山間部ではススキを使用するという、同じ滋賀県でも違いがあるのが印象的でした。形と素材の組み合わせは自由なため、建造物に求める用途や使用年数、地域ごとの気候や資材入手等の条件によって組み合わせが検討されるとのお話には、その奥深さに感嘆するばかり。皆さんからも「屋根について詳しく知る機会がなかったので知ることができてよかった」とのお声を頂きました。
会場には「屋根技法について」の文化財保護課の出張展示が設けられました。詳しく書かれたパネルの他に、講座で紹介された屋根葺き材の檜皮や杮の実物、葺き方の模型なども展示されました。熱心に見入る人たち・・・普段は間近で見る事ができない屋根の葺き方がよく分かり、講座の内容もより理解が深まったのではないでしょうか。
今年度の打出のコヅチは、本講座を持ちまして全てが終了いたしました。新型コロナに悩まされながらも、全6回を無事に開催できたこと、深く感謝いたします。サテライト会場でご参加いただいた皆さんも有り難うございました。アンケートに「このコロナ禍で開催してくれてありがとう」と書いてくださった、そのあたたかいお言葉にも感謝です!
滋賀の文化財について、学びの機会を皆さんとともに・・・今後とも「打出のコヅチ」をよろしくお願いいたしま~す♪
「花湖さんの打出のコヅチ」第6回現地探訪 開催しました。
さわやかな秋晴れとなった10月28日(木)「花湖さんの打出のコヅチ」第6回現地探訪を実施しました。今回は「渋沢栄一ゆかりの藤樹神社とその周辺」をテーマに、高島市安曇川町を訪ね、近江聖人と呼ばれた中江藤樹と渋沢栄一について、県文化財保護課(琵琶湖文化館兼務)の井上優氏に詳しく案内していただきました。
集合場所の藤樹神社に集結した40名の“打出のコヅチ隊”。藤樹神社はその名の通り、中江藤樹を祀った神社で、1922年の創建、来年100年目を迎える新しい神社です。ここでは特別に宮司さんからお話しいただきました。地元をはじめ、中江藤樹を慕った多くの人々によって建てられた歴史について、なかでも近代日本を支えた著名人、渋沢栄一や大隈重信、東郷平八郎などから多額の寄付があったことが紹介されると、皆さんからはどよめきが(笑)。興味深いお話を聞かせていただきました。
その後、お隣の高島市藤樹の里文化芸術会館へ移動。ここは、現在好評開催中の「渋沢栄一と中江藤樹・熊沢蕃山」展の第1会場となっています。コヅチ隊もここで展覧会を見学しましたが、ただ見るだけではありません。渋沢栄一たち近代日本を支えた偉人と中江藤樹の関係について展示を見ながら探っていくのです。会場には、滋賀県内に残る渋沢栄一の書4点すべてが一堂に会しており、皆さん普段はあまり見ることができない貴重な作品を、講師の解説とともに熱心に見て下さっていました(嬉)。
第2会場となる近江聖人中江藤樹記念館では、共に企画展を担当して下さった記念館学芸員・早川さんが中江藤樹や高島市の文化財について、詳しくお話をして下さいました。文化館の収蔵品の中でも重量級の高島硯は、その大きさに皆さん驚いておられましたヨ。
そしてこちらの左の写真(←)。皆さんなんだか熱心に展示ケースを覗き込んでいます。実は、ここには中江藤樹の真筆で、彼の教えである「致良知」を大きく書かれた掛軸が展示されています。普段は学芸員の方でも滅多に見ることができない(!)ものだそうで、現在、展覧会に合わせて特別に公開されています。この貴重な機会に皆さんの目はくぎ付けです。
当初はこの記念館で現地探訪は終了する予定だったのですが・・・なんと!近くにある「藤樹書院跡」を管理する良知館さんが、急遽我らがコヅチ隊の見学を受け入れてくださることになり!ココからは、オプショナルツアーとして、藤樹書院跡へ向かうことになりました。時間の都合が付かなかった方ゴメンなさい!
「藤樹書院跡」は中江藤樹の住居兼講堂跡で、国の指定を受けてから来年100年を迎えます。現在の建物は明治時代に再建されたものですが、内部には中江藤樹の神主(しんしゅ:儒教における位牌)があり、藤樹先生を身近に感じながら、地元の方の説明に耳を傾けました。説明をして下さった方が、終始「藤樹先生」とおっしゃっていたのが印象的で、今でも皆さんから慕われ、親しまれる存在であることを実感致しました。
今回のツアーは、現地探訪始まって以来「一番歩く距離が短い」ツアーとなりました(笑)。県内に住んでいても、あまり知らなかった中江藤樹のことを詳しく知ることができる良い旅となりました。
「花湖さんの打出のコヅチ」第4回 開催しました。
10月11日(月)滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第4回を開催しました。本来は8月に開催の予定が、新型コロナウイルスの感染拡大によりやむなく延期となり、講座の再開は約3ヶ月振りとなります。ようやく再開できました。
当日は10月とは思えない暑さの中、定員いっぱいの100名の方が会場にお越しくださいました。受付でも開催を待ちわびた皆さんの今か今かという気持ちがヒシヒシと伝わります。
第4回は「仏教美術にみる死生観」をテーマに、琵琶湖文化館の学芸員・和澄浩介が登壇いたしました。実はこの回、滋賀県が行っている「死生懇話会」とのコラボ企画となっています。「死生懇話会」とは、誰もが避けられない「死」について、行政として真正面から考えることで、「生」をより一層充実させる施策につなげる契機として令和2年度から滋賀県が懇話会を設置していました。
講座では仏教美術を通して、昔の人の死生観について語られました。中でも、古代の仏像の死生観には現代とは違った考え方でした。皆さん“仏像”とは「死」に対して造られている感じがしませんか?ですが、奈良・法隆寺金堂の釈迦三尊は聖徳太子の病気平癒を願って造られ、薬師寺金堂の薬師如来は、天武天皇が妻の病気平癒を祈願して造られたもの。どちらも人を生かそうとして造られた仏像なのです。
他にも、平安時代後期以降には仏像に故人の遺物などを納めて仏と一体となることを意図する考えに方に。例として挙げられた、愛知・瀧山寺の聖観音立像は、源頼朝の従弟が頼朝の三回忌に造らせた像で、頼朝の歯を像内に納めたそう。スクリーン映し出された、X線写真には確かに人の歯が写っていました。講師の口から「頼朝の歯」との説明を受け、教科書にも登場する歴史上の人物の死生に、会場内からは思わず「おお!」との声が多く上がっていました。県内にも東近江市・善勝寺に、三回忌を迎えた故人の遺骨を納めた貴重な仏像があるということです。
各時代の仏教美術から、それぞれの死生観を伺うことができました。色々な考え方から現代に生きる私たちにも何かヒントがあるかかもしれません。盛沢山な内容に充実した1時間半となりました。
次回の打出のコヅチは、10月28日(木)開催の第6回現地探訪となります。延期となった第5回が、11月11日(木)開催となるため、第4回の次が第6回となってしまってます。すこしややこしいですが、申し込みをされた皆様、楽しみにしていて下さいね。
「花湖さんの打出のコヅチ」第4回 開催延期について
暦の上では立秋が過ぎ、台風が過ぎ、空気が少し入れ替わったように思います。季節の挨拶状が「暑中見舞い」から「残暑見舞い」に変わる時期ではございますが、この度「滋賀の文化財講座 花湖さんの打出のコヅチ」を楽しみにして下さっている皆さまへ「お詫び状」を送らねばなりません。。。
8/6付けでお知らせしていますとおり、当初8/26(木)に開催予定であった[第4回 仏教美術にみる「死生観」]につきまして、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、やむなく開催を延期させていただくこととなりました。
講座メイン会場(コラボしが21)⇒10/11(月) 14:00~15:30
先にお申込みいただいていた方には、変更の旨、当館より個別に連絡をさせていただいているところでございます。※受講を電話で申し込まれた方!文化館からの着信(077-522-8179)に出て下さい!!オネガイシマス!)
なお、サテライト会場[彦根市稲枝地区公民館・近江八幡市総合福祉センター/ひまわり館・湖南市共同福祉施設/サンライフ甲西]へお申込みいただいておりました方々には、各会場担当より「中止」の連絡が届いているかと思います。この点に関しては、当方の都合により苦渋の判断で「中止」とさせていただきました。受講を楽しみにしていただいていた方々には、大変申し訳なく、心苦しい限りです。
※メイン会場の受付は、既に定員に達しているため、「キャンセル待ち」をご希望の方は、誠に恐縮ですが、電話にてお申込みいただければ幸いです。
私どもといたしましても、このままではサテライト会場にお申込みいただいていた方々にあまりにも申し訳なく、『なんとか受講していただくことができないか』と、現在、対策を検討しております。後日、何らかの形でご案内できるかと思います(頑張ります!)ので、吉報をしばしお待ちいただければ幸いです。当館HPを欠かさずチェックしてくださいね。
この度の新型コロナの感染拡大という不測の事態に、主催側も慌てふためいております。暗中模索ではありますが、より良い形で講座を開催できるよう、鋭意努力してまいりますので、受講の皆さまにはご理解ご協力賜りますよう、お願い申し上げます。
皆さん、何としてもこの感染拡大を8月中に抑え込みましょう!秋以降の楽しみのために!今が我慢・試練の時と思って、皆で乗り越えましょう!健康が一番!!
「花湖さんの打出のコヅチ」第1回 開催しました。
5月27日(木)梅雨の雨というには、少し激しい雨模様のなか、はじまりました今年度初の滋賀の文化財講座 花湖さんの打出のコヅチ。100名の定員のところ、事前に申込みのあった90名の方が受講されました。今年も、昨年に引き続きコロナ禍での開催。来場の皆さまには、入口で検温にご協力いただき、受付もスムーズにスタートしました。
第1回は「芦浦観音寺の王会図屏風について-令和2年度滋賀県新指定文化財紹介-」というタイトルで、県文化財保護課(琵琶湖文化館兼務)・古川氏に登壇いただきました。
芦浦観音寺さまの所蔵で現在、文化館でお預かりしている王会図屏風は、令和3年2月新たに県指定文化財になった作品で、まさにコヅチの初回を飾るトップバッターにふさわしいホットな話題となりました。
「王会図(おうかいず)」とは、中国唐時代に誕生した画題で、本場中国では、唐代の太宗に対する朝貢の図を「王会図」といい、朝貢全般の図を「職貢図(しょくこうず)」と呼ばれるそうです。この二つが混同し、同一の作品に対して、二つの名称が使用されるのだとか。そして、中国では「職貢図」が10点程残っていて、「王会図」と呼ばれるものは現存しないそうです。日本における「王会図」も、わずかにしか残っておらず、現存作例は、戦国武将が天下統一を競っている16世紀末に集中しているのだとか。これは、絵を注文した人が、中国全土を統一した太宗と来朝者を、自分と服属する戦国大名に重ね合わせ天下統一を示したのではと説明されていました。日本に来て新たな解釈となった「王会図」。時代が反映されていて、とても面白いと思いませんか。
そして、芦浦観音寺の王会図屏風には、時を経て変わったことが。それは…っと、コレは、ただ今「クイズチャレンジ」で問題になっているのでした。なので、ココではちょっとヒミツにさせてください(気になった方は、ぜひクイズを考えてみてください)。会場でこの話が講師の口から話された時、驚きの声を上げた方がおられましたよ。日本の建具って奥が深い!
今年の文化財講座は、大津の本会場(コラボしが21)とは別に、各自治体の協力のもと、オンライン配信によるサテライト会場での受講も可能となりました。会場となった彦根市稲枝地区公民館さん、草津市常盤まちづくりセンターさん。受講された方からは、「初めて目にする文化財でした。」「滋賀の文化財のすばらしさ、今さらながらの学びです。」「人数等ちょうどよい」等の感想も寄せられました。これを機会に多くの方に滋賀の文化財の魅力に触れていただければ幸いです。(詳しくはコチラ)
令和3年度 滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」開催決定!
皆さん気になってますよね~。3月にお問い合わせの電話をいただいた方も、4月に入ってからネットのキーワード検索でチェックしていただいている方も、直接当館に訪ねて来られた方たちも!!!・・・開催を楽しみにして下さる全ての皆さまへ、お待たせ致しました・・・。
本年度も開催いたします!滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」全6回!!
コロナ禍での開催は心配することも多く、実施について何度も話し合いを重ねた結果、「こちら側の体制をしっかり整えた上で、会場の定員を昨年と同様に」してであれば実施は可能!との判断に至りました。何より、昨年参加された皆さんがとても協力的 (感謝!!)で、「また楽しみにしてるわ」と声かけられたその言葉に支えられてきた私たちです。今、ここに、コヅチ14年目の開催に向けての一歩を踏み出します!あとは前進あるのみ!
【基本情報】
講座のメイン会場は、昨年と同じ大津市打出浜の「コラボしが21 3階大会議室」。募集定員は100名で、座席を1つずつ空けて着席していただく会場です。大きなスクリーンを見ながら、講師が皆さんにお話させていただきます。
【昨年と違うところ】コロナ対策
〇今年はオンライン配信によるサテライト会場での受講が可能です。
各市町さんの協力により、少人数の会場で受講できます。(資料はメイン会場と同じものを配布。スクリーンにはメイン会場と同じ内容が映し出され、講師の音声が届きます。)
※各会場で実施する回が異なりますのでご注意を!
・彦根市)稲枝地区公民館①②③④⑤
・近江八幡市)桐原コミュニティセンター②
・近江八幡市)総合福祉センター[ひまわり館]③④⑤
・草津市)常盤まちづくりセンター①
・湖南市)共同福祉施設[サンライフ甲西]③④⑤
・多賀町)多賀町立博物館②③⑤
〇開催時間は半時間ずらして14:00~15:30まで。(机の消毒等、会場準備のため)
昨年は準備でバタバタでしたからね。受付開始も13:30~となりましたので、密になることなく入場していただくことができます。
〇受講の申し込み受付開始日を設定、各回のお申込み。
昨年、定員を減らしたこともあり、受講できなかった方が多数いらっしゃったため、今年はコロナの状況を見極めつつ、公平に、各回約1ケ月前からの受付とさせていただきます。(こちらで言うのもなんですが「人気講座」ですので)毎回ドキドキしながらご応募下さい(笑)!
ということで!第1回は5/27(木)、昨年度に新しく県指定文化財となった「芦浦観音寺の王会図屏風」についての講座です。受付開始は4/27(火)8:30から!皆さまのご参加を心よりお待ち致しております!!【詳しくはコチラ!】
「花湖さんの打出のコヅチ」第6回 開催しました
日差しが暖かく、冬のお出かけ日和となった12月10日(木)、滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第6回を開催しました。今年度最後の回は何と!定員ピッタリの100名の方にご参加いただきました。まさに満員御礼!受付時のソーシャルディスタンスも守って頂いて有り難うございました!
今回のコヅチは、「神と仏の融合「本地垂迹」と仏像・神像」をテーマに、神仏が融合した不思議な世界について、当館の和澄浩介主任学芸員がお話しさせていただきました。
皆さま、“神仏習合”というと、「神と仏が一緒になっている」というイメージではありませんか?冒頭の平安時代初期の古文書を引用した説明では、神が仏に帰依してパワーアップするという、お話が出てきました。実はこの頃は、まだ神様が仏様にはなっていないのです。会場からは、思わず出てしまったのでしょうか…?「へぇ~」という声が。。。
10世紀後半になると、「真理の世界の仏が姿を変えて、現世に現れた姿が神」という、神と仏が一体となった、本地垂迹の考え方が出てくるそうです。法華経の教えから来たものだそうで、法華経を根本経典とする天台宗が本地垂迹を推進したと考えられるのだとか。天台宗の延暦寺と、仏教聖地の比叡山を守護する日吉大社がある滋賀県は、本地垂迹を進めやすかったのだそうです。後半には、具体的に県内の仏像・神像が数多く紹介され、近江では神仏習合が盛んだったことが改めてわかりました。
また、今回は、滋賀県立近代美術館さんが主催する「滋賀近美よもやま講座 月刊学芸員」とのコラボレーション企画ということもあり、打出のコヅチ初のサテライト会場を設けての開催となりました。インターネットを使って、本会場の講座を、近代美術館と同じびわこ文化公園内にある滋賀県埋蔵文化財センターの会場でも、同じように視聴できる画期的な取り組みです。会場に来られた8人の方にも、広い研修室で、ゆったりと受講していただくことができました。
今回をもって、今年度の文化財講座は終了となります。新型コロナ感染拡大防止のため、机は講座が始まる前と後にアルコール消毒、受付用の飛沫ガードを手作りするなど、スタッフも試行錯誤、手探りでの開催となりました。苦労も多かった分「開催してくれてありがとう」と皆さまからいただいた言葉が心に響きました。
無事に全6回を終えられたのは、ひとえに皆さまのご協力のおかげと感謝しております。参加いただいた皆さま、本当に有り難うございました。
文化財講座 コヅチサテライト!
滋賀の文化財講座「花子さんの打出のコヅチ」からのお知らせです。本年度は、新型コロナウィルスの影響で、募集定員を例年より縮小して開催してまいりました。早々に満員御礼となってしまい、泣く泣く受講をあきらめた方もいらっしゃったかと思います。申し訳ない。。。そのコヅチも残すところあと1回、12/10(木)が最後となります・・・・・が。
ちょっと待ったぁ~!諦めないで下さい!!「打出のコヅチ」始まって以来の特別企画、サテライト会場で、初の“リモート講座”が実現します!
これは、滋賀県立近代美術館が実施されている「滋賀近美よもやま講座 月刊学芸員」とのコラボ企画により実現!サテライト会場となるのは、滋賀県埋蔵文化財センターさん(大津市瀬田:びわこ文化公園内)の研修室、定員20名さま“限定”のリモート講座です。
講師は、いつもの会場:コラボしが21大会議室でお話しさせていただきますが、同日同時刻、同じ内容を、別会場でスクリーンにてご覧いただく趣向です。
(←このために秘かに行われていた実証実験。。。首尾は上々、クリアな映像で講座をお楽しみいただけるよう、準備万端、整いましてございマス☆)
参加ご希望の方は、必ず事前に[しがネット受付サービス]にてお申込み下さい。問い合わせは県立近代美術館(電話077-543-2111)まで。定員も少なめですからね、お申込みはお急ぎを!(事前申込:12月9日(水)までの先着順です。)
実施日:12/10(木)13:30~15:00
講座内容:神と仏の融合「本地垂迹」と仏像・神像
講師:和澄浩介・琵琶湖文化館(近代美術館兼務)主任学芸員
←こんなお顔の講師が、大画面で、みなさんの参加をお待ちいたしております!!
「花湖さんの打出のコヅチ」第5回 現地探訪 開催しました
11月5日スッキリとした秋晴れ!行ってまいりました「打出のコヅチ」現地探訪!今回は講座でもお馴染み:井上優氏(県文化財保護課・琵琶湖文化館)の案内で、地域連携企画展を開催している栗東歴史民俗博物館を目指して、栗東市内の旧東海道を探訪してきました。
集合場所の手原駅に集まった38名の“打出のコヅチ隊”の皆さん。資料をお渡しするとき、皆さんの「これから始まるワクワク感」が直に伝わってきましたよ!早速、手原駅の駅舎と名前の由来について、講師が事前に準備してくださった説明書のスケッチブックを見ながらお話を聞き、いざ探訪のはじまりです!
手原駅を出発したコヅチ隊は、東海道を石部宿方面に向かいます。江戸時代の栗東は、東海道と中山道の二大街道が通る交通の要で、日本中から旅人と物資が行き交う繁華な地でした。
当時を思わせる街並みを、随所に講師の解説を聞きながら歩いていきます。
街道を思わせるのは、建物だけではありません。左の写真は「肩替えの松」と言って、駕籠かきをしていた雲助が、肩を交代させた休憩場です。そろそろ私たちもココで休憩…とは参りません!まだまだ探訪は始まったばかり。次に向かって更に歩きます。
栗東地域には、宿場はありませんでしたが、宿場と宿場の中間地点にある休憩所「立場(たてば)」があり、名物茶屋や薬屋などが軒を連ねたのだとか。その中のひとつ「旧和中散本舗(大角家)」は「梅ノ木立場」の薬屋でした。春、秋の特別公開以外は非公開とされているところ、我らがコヅチ隊、特別に見学させていただくことができました。江戸時代の木製の製薬機や、本陣に利用された立派な座敷と庭。見るところが盛沢山!参加した皆さんも隅々まで、興味深そうに見ておられましたよ。
その後一行は、近くの福正寺地蔵堂(法界寺)へ移動し、重要文化財に指定されている木造地蔵菩薩立像を拝観しました。頭部がやや尖った特徴的なお顔立ち。講師の丁寧な説明にじっくりと耳を傾けました。
そして最終目的地である「栗東歴史民俗博物館」へ。到着した時の皆さんの笑顔、疲れを感じながらもとても良い表情をされていましたよ(笑)。
疲れていても知識欲が溢れるコヅチ隊。現在開催中の「栗太郡の神・仏 祈りのかがやき 」の説明や、通史展示に特別出品されている「田中家資料」についての解説を熱心に聞いておられました。
栗東歴史民俗博物館は今年開館30周年。その記念すべき開館に元学芸員として立ち会った講師:井上氏が案内した今回の現地探訪。『栗東愛』あふれる盛りだくさんの内容となりました(終了予定時間を1時間オーバーとなったのもご愛嬌?!)。参加者からは「栗東の豊かな文化財を深く学ぶことができた、現地講座ならでは」と喜びのお声も頂戴し、改めて栗東のこと、滋賀のことを知る、良い探訪となりました。
「花湖さんの打出のコヅチ」第4回 開催しました
秋晴れがさわやかに感じられた10月21日(水)、滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」の第4回が開催され、会場のコラボしが21には、85名もの方々がお越しくださいました。
今回は「成菩提院の「釈迦諸尊集会図」と中国・南宋時代の仏画-滋賀県新指定文化財の紹介-」と題しまして、昨年(2019年)に新しく県の指定文化財となった、米原市・成菩提院様ご所蔵の釈迦諸尊集会図(文化館寄託)について、打出のコヅチの講師陣でお馴染みの古川史隆氏(県文化財保護課・琵琶湖文化館)が登壇いたしました。
県指定文化財とは、県にとって重要な文化財(国指定を除く)を指定したものです。この根拠となるのが滋賀県文化財保護条例です。同条例は昭和31年に公布されましたが、実は近畿2府4県では2番目の早さで、京都・奈良よりも早いのだとか。ちょっと意外デス!
「釈迦諸尊集会図」は中国・南宋時代(13世紀末)に港町の寧波(ニンポー)で描かれた、掛け軸仕立ての仏画で、釈迦如来と文殊菩薩・普賢菩薩を中心とした多くの仏が、一幅に描かれています。お一人お一人が丁寧に描きこまれていて、スクリーンに映る拡大写真に皆さま見入っておられました。日本で描かれた平面性の強い仏画とは違い、立体感のある描きこみが、南宋時代の寧波仏画の特徴となっているそうです。文化館のホームページでは作品の詳細部分の画像を見ることができますので、ぜひコチラもチェックしてくださいね。
講座では、この釈迦諸尊集会図だけでなく、その他の南宋時代の絵画も多数紹介されました。そのなかで、県内の寧波仏画も紹介されました。寧波で描かれたものが、海を渡ってこの滋賀に来たことに運命めいたものを感じます。ですが、何故日本に来て、どう使用されたかはまだ詳しいことは分かっていないそうです。700年以上経っていても未だ謎がある寧波仏画。。。絵画の様式だけでなくその経緯もすごく気になります!
会場では、今年も県立図書館さんが講座関連図書を出張展示しに来てくださいました。参加した皆さまも、興味深そうに本を手に取っておられました。南宋時代の寧波仏画に興味を持って「調べてみたい!」と思った方は、ぜひ図書館にも足をお運びください。
さて、次回(11/5)は、いよいよ会場を飛び出して現地探訪です。県保護課の井上優氏を講師に栗東市を歩きます。地域連携企画展「栗太郡の神・仏 祈りのかがやき」の会場となっている栗東歴史民俗博物館の開館当初のエピソードなどに触れながら展示の見どころを解説します。お楽しみに!
「花湖さんの打出のコヅチ」第2回 開催しました
夏まっ盛りの8月6日(木)、滋賀の文化財講座「花湖さんの打ち出のコヅチ」第2回を開催いたしました。 コロナ感染予防の対策に、前回以上に注意を払いつつ、皆さまをお待ちし当日、炎天下に負けず83名の方が会場に来てくださいました。お暑いなかありがとうございます!
第2回は「打出のコヅチ」始まって以来、初の文化庁からの特別講師:文化財調査官の菊池理予氏を講師にお招きして「染織を消えて支える青花紙」というタイトルでお話しをしていただきました。 この時季に澄んだコバルトブルーの花を咲かせるアオバナ。栽培が盛んな草津市では市の花となっていて、水道マンホールの蓋もアオバナがデザインされるほど身近なものとなっています。
このアオバナの花を絞って和紙にしみ込ませたものが、“青花紙”です。おもに友禅染などの下絵に使われ、現在は草津市で生産されているだけなのだとか。講座の冒頭「この会場に来るまでにアオバナを見た方は?」との問いかけに数名の方が、手をあげられました。菊池氏がおっしゃるには「他県では、手があがらない」とのこと。。。滋賀ならではのエピソードにちょっと嬉しくなりました。 講座では、染物など青花紙に関わる歴史が紹介された後、青花紙を作る工程を、菊池氏が調査のために撮影された動画で紹介していただきました。その過酷さを知ると、会場からも溜息が…。「過酷な作業のため“伝統を守るためにも生産を続けてくださいとは”言えない」という菊池氏の言葉がとても印象的でした。青花紙の生産農家は、2年前までは3軒あったそうですが、現在では1軒のみとなっています。生産が減った理由には、農家の過酷な作業のほかにも、下絵を使わなくても友禅染ができるプリンタの存在や、合成青花といった代用品の存在があるそうです。講座終了後のアンケートを読んでも、伝統の技の存続を危惧する感想が多くありました。 しかし、菊池氏の調査では、染織工房では青花紙と合成青花を用途によって、うまく使い分けておられるのだとか。職人さんのこだわりに支えられ華やかな友禅染の下にあり、出来上がったら消えてしまう青花紙。ですが、その存在は大きなものであり、守り伝えていきたい伝統の技なのです。
草津市では、青花紙の生産技術を後世に残して伝えるために広報普及活動に取り組まれています。今回の講座では、草津市が作ったチラシを資料とともに入れました。本講座がきっかけとなり、青花紙のことについて少しでも興味をもってもらえたら、ぜひ 草津市立草津宿街道交流館内にある「草津あおばな会 青花紙保存部会」にもアクセスしてみてください。
「花湖さんの打出のコヅチ」第1回 開催しました
連日雨が降り続き、外出するのも”おっくう“になりがちな日々が続きますが、この日ばかりは違いました。 7月9日(木)、毎年恒例の「アレ」に参加したくてウズウズしていた皆さんが、大津市打出浜のコラボしが21 にお越し下さった日。そうです。滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」の開催日。今年はコロナ対策で定員を100名に絞らせていただいたところ、事前にお申し込みをいただいた98名の方が受講されました。
第1回は「これぞ逸品ですぞ!!-琵琶湖文化館蔵考古資料から-」というタイトルで、講師には、県文化財保護課の仲川氏をお迎えしました。仲川氏は、昨年文化館の兼務職員として在籍されたご縁があり、文化館の考古資料についても詳しいということで、今回の講師を務めていただきました。
あまり知られていない琵琶湖文化館の考古資料について、遺物が出土した遺跡の当時の状況や関連する文献の記述、文化館に寄贈された経緯などを、幅広くご紹介下さいました。考古資料においては、その経歴(来歴)が命。「発掘され今に至る経緯が詳細にわかっていることが、とても重要で価値があること」なのだと力説されました。一方で講座の後半では琵琶湖文化館の長い歴史の中で、どうにもその来歴がはっきりとわからないもの・・・謎がナゾを呼ぶ(?!)瓦のお話を、たっぷりと語っていただきました。
今回の講座では、「休館中で見ることができない文化財のお話」・・・というのではなく、「展示されていても知りえないお話」を、皆さんにたくさん聞いていただくことが出来たと思います。
今年度第1回目を終えて、反省点もありました。スクリーンが不鮮明であったとのご指摘について、残念な思いをされたこと、深くお詫びいたします。次回改善に向けて努力いたします。心配していたコロナ対策については、皆さんのご協力の甲斐あって、トラブルなく無事に開催することができました。
当初から定員オーバーとなることが想定され、皆さんに「止む無く欠席する場合はご連絡を」とお願いしていたところ、当日の朝にも行けなくなったことをお申し出下さった方がいらっしゃいました。そこは大丈夫、スタッフの腕の見せどころで、急遽キャンセル待ちをされていた方に連絡をとり、喜んで来ていただくことができました。そして皆さんが「マスクの持参・着用」をしっかりと守り、手指の消毒、3密の回避などにもご協力いただけました。何より、こちらが用意した「講座参加記録票(問診票)」の記入・回収に、全員の方がご協力くださいましたこと、本当に感謝いたしております。
コロナ禍でもルールを守って楽しもうとされている方々がいらっしゃいます。その期待に応えるために、これからも頑張って楽しい企画をご用意させていただきますね。ご参加有り難うございました。
ささやかながら、参加者プレゼントとして「アマビエアキツ」の護符(?)を、お持ち帰りいただきました。どうぞ皆さんが、毎日健康で健やかに過ごせますように!
満員御礼!打出のコヅチ
皆さまに、重大なお知らせがあります。滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」、参加の申し込みを受け付けてから3週間…で、全6回の講座全てで定員に達しました!キャンセル待ちを希望される方もいらっしゃるなど、まさに満員御礼!たくさんのご応募有難うございました。
新型コロナの影響で、今年度の開催が危ぶまれる中、「受付はまだ?」と3回もお電話をいただいた、熱心なコヅチファンの方がいらっしゃいました。休館以降、13年続いている文化財講座です。開催を楽しみにして下さっていた皆さんからの「待ってました!」の声に、どれほど励まされることか・・・。継続はチカラなり!デス‼!多くの皆さんにご支持をいただき、スタッフ一同心を込めて、楽しい講座を準備させていただきます!
そして、ごめんなさい。定員となって、残念ながらお断りしてしまった皆さま、本当に申し訳ございません。例年は募集定員200名のところ、今年は100名とさせていただいたため、大変悔しい思いをされたことと思います。電話口でお断りするのがとても心苦しく辛かった。。。新型コロナめ・・・是非またの機会にご参加くださいね!
さて、第1回目を受講いただく皆さまにお願いがございます。まずは、体調を万全に整えて、当日を迎えて下さいませ!日頃から、手洗いうがいは大事ですよ~。そして私たちスタッフは、万全の体制で皆さんをお迎えできるよう、頑張って準備しますね!
講座は7月9日、開催まで2週間をきりました。琵琶湖文化館が収蔵する考古資料について、県文化財保護課の仲川靖氏にお話しいただきます。普段はなかなか聞けない「これぞ逸品!」のお話をお楽しみに!コロナに負けない!打出のコヅチ!!
お待たせいたしました!「打ち出のコヅチ」開催
「まだかまだか」と、首をなが~くして待っていてくださった皆さま、大変長らくお待たせいたしました。令和2年度滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」の開催が決定いたしました。参加受付も始めております。
大津市打出浜から繰り出す「打出のコヅチ」の一振りが、無尽蔵ともいうべき滋賀の宝を魅力的に紹介するこの講座。ありがたいことに、毎年たくさんの方にご参加いただいており、それをパワーのみなもとに、今年も充実した内容で皆さまにお届けいたします。
第1回の7月9日(木)を皮切りに、5回の座学に加えて1回の現地探訪を含む、全6回の講座となっています。記念すべき第1回は、「これぞ逸品ですぞ!!-琵琶湖文化館蔵考古資料から―」と題し、琵琶湖文化館の館蔵品について、滋賀県文化財保護課・仲川靖氏にお話しいただきます。文化館には、仏像や絵画だけではなく、実は考古資料もたくさん収蔵されていることを、ご存じですか?休館中で、なかなか皆さんに紹介する機会が少ないのですが、今回は特に、石製品と瓦に注目したお話です。講師曰く、「すごくマニアックな逸品を」とのこと。めったに聞けないディープな世界?!これはもう必見・必聴の回です!
各講座の詳しい内容や、申込方法は講座・イベントを見てくださいね。各回とも、専門講師の先生方が詳しくはもちろん、楽しくお話ししてくださいます。全ての講座を受けるも良し、気になる講座を受けるも良し。。。心待ちにしてくださった方も、このブログを読んで「参加してみようかな」と思った方も、ぜひとも、皆さまご参加くださいませ。
今年は、新型コロナウイルスの感染拡大の心配が続きますが、新型コロナに負けない元気で、開催したいと思います。皆さまの参加をお待ちしてま~す!
「花湖さんの打出のコヅチ」第6回 現地探訪 開催しました
10月17日、絶好のウォーキング日和、実施いたしました現地探訪。今回は、受付定員MAX60名の皆さんとスタッフ7名が、「幻の坂本城をさぐる」ということで、明智光秀が築いた城があったとされる大津市下阪本とその周辺を探訪してきました。
集合場所の京阪松ノ馬場駅「花湖さんの打出のコヅチ隊」の幟旗の元に集まったのは、参加申込みの電話受付が3時間で定員に達するという激戦を勝ち抜かれた幸運な方たちです(お断りした方ごめんなさい!)。驚くなかれ、その内約9割の方が、今回の探訪の予習回とも言える第5回の講座を受講されてのご参加です。とても勉強熱心な、生粋の歴史好きの方々が街中を歩くとこんな感じになります(笑)。先頭を行くのが講師:松下浩氏(県教委文化財保護課)です。
幻の坂本城、現在は、琵琶湖中に石垣の痕跡が残るだけで、城の遺構はほとんど残っていませんが、私たちが巡り歩いたのはこのようなトコロ・・・。
さぁ~て皆さん、どこで何を見ているのか、お分かりデスカ?先生の話を聞きながら歩くと、ただの水路と思っていたのがタダモノではナイ不思議。。。ナルホドな~と思う訳です。戸津説法で有名な東南寺さんにも行きましたが、今回重要なのはお寺と坂本城の位置関係が江戸時代の文献に示されている事実・・・。文化館的お寺探訪とは一味違います(笑)。
本丸の位置はどの説をとっても先ず間違いないそうです。(坂本城址公園には明智光秀像が建っていますが、ここが主郭跡ではないので要注意(笑)。)今は某企業の所有地となっていますが、坂本城には舟入場があり、直接琵琶湖へ出ることができる、よく考えられたナイスなお城だったそうです(この日見れたのはその舟入場の石垣が水面に1つだけポコッと・・・水位が低い時にもう一度見てみたい!)。ただ、城下の縄張りについては、近年の発掘成果や文献などから、まだまだ検証すべき点が多いとのこと。今回の探訪は、今まで坂本城には本丸・二の丸・三の丸、内堀・中堀・外堀があると考えられてきたことが、「実はそうではないのではないか」という新説を巡る探訪でした。タマネギ状に堀で明確に区切られた城下ではなく、中堀を埋めたと言われる北国街道は当時も町中にあって、惣構で囲われた中に城主に属する武士や町人が楽しく暮らしていたのではないか、という先生のお話が印象的でした。
最後に訪れた平成30年度大津市教委発掘調査地点の隣では、今年度も発掘調査が続けられていました。坂本城址に関わる新たな発見があるといいですね。
参加された方からは、「謎を解くようで面白かった。タ○リの番組みたい」「今後も現地説明を続けてもらいたい」などのお声も頂戴しました。有り難うございました。松下氏も最後に言っておられました。「坂本城址を辿ろうと思ってもなかなか辿れない」。謎に満ちたお城だからこそ、「さぐる」楽しみがあるのですね。
道々、庭先に植えておられる金木犀の甘い香り。私たちが住む当たり前の風景の中に、歴史の謎と魅力が存在する滋賀県とはなんていいところなのでしょう(他府県の方に羨ましがられますよ?!)。その”贅沢さ”に感謝いたします。毎年金木犀の咲くころに、思い出したい今回の探訪でした。
10/17「花湖さんの打出のコヅチ」現地探訪 開催します
いよいよ明日となりました。滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第6回現地探訪です!!お申込みいただいた方には、「天候の関係等で中止の場合は、前日にお電話でご連絡差し上げます」とお伝えしておりましたため、心配されていた方もいらっしゃったかも知れませんが、天気予報によると、明日は”暑すぎず、寒すぎず”の「探訪日和」となりそうですので。。。予定通り開催いたしま~す!!(参加予約受付は終了しております。)
今年度講座の最終回となります第6回は、いつもの打出浜を飛び出して、大津市下阪本方面へと赴きます。下阪本は、第5回の講座「明智光秀の幻の名城 坂本城」で学んだ、明智光秀の築いた坂本城があったところ。現在は、琵琶湖中に石垣の痕跡が残るだけで、城の遺構はほとんど残っていませんが、前回の講師・松下浩氏(県教委文化財保護課)に依りますと、現地に残る水路(堀)や道の痕跡を丹念に辿っていくと、往時の坂本城とその城下町の姿が浮かび上がってくる、ということでした。「百聞は一見に如かず」のこの機会、ご自身の目でしかとお確かめ下さいませ。
そして、ご参加される皆さま、明日の準備はもうお済みですか?今回は、京阪松ノ馬場駅を出発点として、湖岸方面へ往復約3Kmほどの行程を、徒歩で周ります。無駄に疲れないように、歩きやすい靴&服装でお越し下さいね。また、お飲み物などは必要に応じて各自でお持ちいただくと良いかと思います。”おやつ”につきましては、昨年と同様に上限はございません(笑)。その他、詳しくはこちらでご確認下さい。
明日17日(木)は、13:00から受付、京阪松ノ馬場駅でお待ちしております。目印は「花湖さんの打出のコヅチ隊」の白い幟旗ですよ!13:30には出発しますので、遅れないようにお願いします。
では、また明日!
「花湖さんの打出のコヅチ」第5回 開催しました
「暑さ寒さも彼岸まで」と言いますが、今日は秋の彼岸の入り。昨日あたりからもう、日中もずいぶんと過ごしやすくなって来ました。昨日(9/19)は、滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第5回を開催いたしましたが、お天気にも恵まれ、今年度最多数の198名の方にご参加いただくことができました。なかには、これまでに開催した5回の講座に全回出席という方が、なんと22名もいらっしゃいましたよ!!素晴らし~い!!コラボしが21を会場にした座学の方はこれで最終回となりましたが、ご参加いただいた皆さま、本当にどうもありがとうございました。
さて、昨日の講座では、講師に松下浩氏(県教育委員会文化財保護課)をお迎えし、「明智光秀の幻の名城 坂本城」というタイトルでお話いただきました。坂本城は、元亀2年(1571)の信長による延暦寺焼き討ちの際の戦功により、志賀郡を与えられた明智光秀によって、延暦寺のお膝元であった坂本の地に築かれた城。ただ、残念なことに、城を描いた絵図などはこれまで見つかっておらず、その復元には、数少ない文献や現地に残された地名や道路・溝跡、そして近年の発掘調査の成果などをつなぎ合わせていくしかないようです。。。
しかし、今回、松下氏はわずかに残された資料を丹念に見直し、また現地に赴いて城の痕跡を辿るなかで、街道と城の関係を鍵に、坂本城の縄張りについての画期的な新説を発表されるに至りました!いや~、何事も諦めてはいけないということですね。歴史の研究においては、先入観にとらわれず、素直な気持ちで史料・資料と向き合うことで、新たな道が開けるのだ!ということを、身をもってお示し頂いたという感じです。あっぱれ、松下節!!
講座終了後には、参加された方々から、「新説が聞けて良かった」「北国街道付替えなし説は大変興味深い」「地図や資料がわかりやすい」「土地勘のない者にも説明が丁寧でわかりやすい」「毎回新しい発見があり楽しい」などのお声を頂きました。今回も、多くの方々にご満足いただけたようで何よりです。
また、今回も滋賀県立図書館さんが、講座関連図書の出張展示に来てくださいました。松下氏の御著書を集めた特別コーナーを作っていただいたのは、サプライズ!だったかも!?県立図書館さん、どうもありがとうございました。
次回(10/17)は、いよいよ打出浜を飛び出しての現地探訪となります。今回に引き続き松下浩氏に講師をお願いして、講座で学んだ坂本城とその周辺をご案内いただきます。ご参加されます方には、今回スクリーンで見た坂本城とその周辺を、ご自分の目と足でしっかりと確認していただけると嬉しいです。楽しみにお待ちください。