カテゴリー別アーカイブ: 学芸業務
建設予定地イベント開催しました!みなさんに感謝♥
晴天に恵まれた10月5日(土)、「新しい琵琶湖文化館 建設予定地イベント」を開催しました。ご来場のみなさま、また準備をはじめ様々な形で関わってくださったみなさま、本当にありがとうございました!
このイベントの目玉は、「新しい琵琶湖文化館の建物の形にカラーコーンを並べる」という、とても”斬新”なもの(?!!)。イベント前日の10月4日(金)には、みなさまにご協力いただきながら、事前準備を行いました。
その模様をご紹介しますと、午前中は文化財保護課建造物係による、カラーコーンを並べる「基準点」を取る作業です。
そして午後はボランティアの方6名と文化財保護課職員の助けにより、建物の形にカラーコーンを並べていきました。
悪天候もあり、参加を取りやめた方もいらっしゃいましたが、次回はどうぞよろしくお願いします!
一夜明けると、秋晴れのイベント当日。この日は大津商工会議所さんが主催する「びわ湖オクトーバーフェスト2024」が、すぐ近くのなぎさ公園修景緑地でも開催されるということで、あわせてお楽しみいただけたのではないでしょうか?
カラーコーンのすぐ近くに設置したテント内では、新しい琵琶湖文化館に関するパネルをご覧いただけたほか、当館所蔵品をモチーフにした「しおり」を作るワークショップもお楽しみいただけました。
大人の方はもちろん、子どもちゃんたちがたくさん集まってくださいまして、ワークショップのコーナーはフル稼働!(途中、盛況すぎて材料が無くなり、慌てて調達に走りしました 🏃🏃🏃。 )誰でも楽しめるワークショップもあり、老若男女問わず幅広い方にご参加いただけたイベントになったような気がします。
イベントの参加者数は、なんと600人近く!たくさんの方がご来場された大イベントとなり、新しい琵琶湖文化館のことを知っていただけ、また期待やご意見などのお言葉を頂戴しました。
みなさま本当にありがとうございます!みなさまのご期待に沿えるような、魅力的な施設を作っていきたいと思いますので、どうぞこれからもご支援・ご協力をお願いいたします!
高校生にホンモノの文化財を体験してもらう授業
秋晴れの9月某日、県立守山北高校1年生の美術の時間に、文化財をテーマとした授業を実施しました。
講師は当館主任学芸員の和澄浩介。授業の舞台となったのは、当館寄託者でもある蜊江(つぶえ)神社さまです!蜊江神社は守山北高校から徒歩10分ほどのところにありますが、高校生が神社に足を運ぶことはなかなかない、とのこと。みなさんの高校からすぐ近くに、神仏習合の姿を見せるこんなすごい場所があるんですよ〜!
授業では、神仏習合や明治期の神仏分離のお話もしながら、神社と寺院の要素が入り混じる境内を巡りました。参拝時に軒下で鳴らすのは、神社では鈴・お寺では鰐口。その音の違いも聞いていただけたでしょうか?
境内を歩いた後は、社務所に場所を移して文化財のお話です。当館にご寄託いただいている文化財は写真をお見せしつつのお話ですが、なんと!今回は特別に!!神社で保管されている守山市指定文化財の女神像と化仏を、お見せいただきました。
火災にあったかと思われる少し痛々しい姿の像ではありますが、それが一層、この地に住まう人々が800年、900年という時を超えて大切に受け継いできたということを実感させます。長い歴史を有する文化財への想いや文化財を支えてきた人々への敬意が、和澄主任学芸員からアツ~く語られました。
高校生の目に、蜊江神社の文化財はどのように映ったでしょうか?少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです♪
あっという間に下半期・始まりました!
皆さんオドロキです。本日、10月1日、あっという間に、下半期に突入です。えぇ~っと・・・上半期の記憶が既に。。。(>_<)。。。月日が経つのは早い!
5月から始まり、会期が長い(!)と思っていた地域連携企画展「幕末を生きた人々の残像~公文書に残る直筆書簡」展。
9月26日に無事終了し、会場であった県立公文書館では、次なる企画展「湖国の宝が歩んできた道~文化財の危機と保護~」が始まった、とのことです。実はこの企画展にも当館から資料を貸し出しておりまして・・・。
それは何かと申しますと、昭和24年(1949)9月時点の「重要文化財保護法案要綱」という、とぉ~ても貴重な資料!
現「文化財保護法」は昭和25年(1950)5月の成立ですが、それ以前、試案の段階では、調査研究を重視し、国立博物館や重要文化財研究所の設立を明示するなど、現行法に比べてより具体的な内容が記されています。文化財保護の歴史を物語る大変貴重な資料です。是非、県立公文書館に、足をお運びください。
その他にも当館の収蔵品は、各地の展覧会にゾクゾク出品されております!↓↓〔収蔵品の公開情報はコチラをチェック〕
いやぁ・・・秋の展覧会シーズン、真っ盛りデスね!
更に!注目したいのが・・・
コチラ↓↓↓
10月5日に実施する新しい琵琶湖文化館の建設予定地イベントです!
・・・誰です?隣の「成瀬さん」のポスターが気になる、なんて言うヒトは?!そう、確かに気になる・・・(笑)。
こちらの写真は、JR膳所駅構内を激写したもの。(「成瀬さん」と当館のかかわりは、4月24日付けブログで紹介しております。)文化館も大注目の成瀬さんと、(ポスターとは言え)奇跡のコラボを果たした今回の建設予定地イベント♡これは成功させねばなりませんね!
お天気が少し心配ですが、着々と準備を進めておりますので、皆さまぜひ気軽にご参加ください! 建設予定地イベントは、10月5日11:00~17:00、大津市浜大津の大津港旅客ターミナル向かいで開催いたします! [詳しくはコチラ]
光る君へ紀行に登場!東近江を巡りたい♪
NHK大河ドラマ「光る君へ」、9月29日放送の第37回「波紋」では、見上愛さん演じる中宮彰子たちが『源氏物語』を豪華な冊子に製本していくシーンが印象的でしたね!色とりどり、装飾も様々な料紙が映っていましたが、中には紫色の和紙もありました。
その紫色関連として、ドラマ放送後の「光る君へ紀行」では、東近江市が紹介されました!紫色の染料作りのための植物、紫草(むらさき)が栽培されていたとされる地です。万葉の森船岡山」に設置されている、古代の蒲生野での遊猟が描かれたレリーフにも、白くてかわいらしい紫草の花が描かれているんですね♪
また、あわせて紹介されていた『万葉集』所載の額田王の歌「あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る」は、複雑な恋愛関係を思わせるので、まひろ(紫式部)と藤原道長との関係はどうなる!?とドキドキハラハラなドラマの内容とも少しリンクしていますね〜。
さて、自然と歴史が息づく「万葉の森船岡山」を訪れた後は、ガチャコン〔近江鉄道〕に乗って少し足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。五箇荘駅で降りて徒歩15分ほどで、地域連携企画展「滋賀限定!近江ゆかりの書画 ―古写経から近代の書まで―」が開催中の、観峰館に到着します🌟
展覧会では、奈良時代から昭和期までの書を中心にご覧いただくことができます。平安時代の古写経も展示していますので、ドラマの中の筆運びを思い出しながら、古写経の筆致をご覧いただくと楽しいのではないかと思います。
この秋は、ぜひ東近江へ!
「滋賀限定!近江ゆかりの書画」土曜講座開催されました!
現在、東近江市の観峰館で開催中の地域連携企画展「滋賀限定!近江ゆかりの書画-古写経から近代の書まで-」。本日は関連イベントの土曜講座が開催されました。
演題は「近江ゆかりの書跡を探る①-雲居希膺-」、講師は観峰館の寺前公基学芸員です。石敷きの雰囲気のある素敵な会場に、講師のソフトなお声が爽やかに響きました♪
・・・「雲居希膺」・・・
皆さん読めました?(笑)。雲居希膺(うんごきよう・1582~1659)は、伊予国上三谷(現・愛媛県伊予市)出身の臨済宗の高僧で、皆さんよくご存じの仙台藩主伊達政宗・忠宗の依頼により、松島・瑞巌寺を中興しています。
そのような高僧がなぜ滋賀に縁があるのか?実は、東近江地域には仙台藩の飛領地一万石があったから(!)なのですよ~。この事実だけでもオドロキ(!!)です。雲居希膺と縁のある東近江地域の寺院は、本展にも数多く出品いただいている徳昌寺さまの他に、石馬寺や瓦屋寺、千手寺などがあります。
雲居希膺と滋賀のかかわりを理解した上で、改めてその「書」を見てみると・・・何とも親しみのある特徴的な筆使い!柔らかくもあり、あたたかくもあり、そのお人柄が文字に現れているようです。
見る人を引きつける雲居希膺の書の魅力。何より本展・本講座の開催にあたり資料の調査・研究を重ねられた講師の寺前学芸員が語る、ソフトで熱い、その思いが、書の魅力を倍増させてくれた気がいたします。いやぁ知るって楽しい!
・・・ですよね?皆さん?!きっと私たち、雲居希膺の『ファンクラブ』に入っちゃったかも・・・ですよね(笑)。参加いただきました皆さま、誠に有り難うございました♪
11/26の土曜講座では、「近江ゆかりの書を探る②-副島種臣-」が開催されます。こちら楽しみ!乞うご期待!!
井上敬之助像 旅立ち故郷へ
「琵琶湖に向かって凛々しく立つ、この方はどなた?」と、気になっていた人もいらっしゃるのではないでしょうか。
当館からほど近く、道を渡った川沿いに建つのは 、明治から昭和にかけて活躍した政治家・井上敬之助(1865~1927)の銅像です。
実は今日、当地から故郷の湖南市へ旅立って行かれました。
井上は、旧石部村(現・湖南市)出身の政治家で、27歳の時に県会議員に当選、以降5回当選という経歴を持ち、明治35年(1902)には衆議院議員に初当選、翌年も再選を果たすなど、政治家として大きな功績を残された方。官僚政治の是正や民意の反映に努め全身全霊を政治に捧げたその姿から、滋賀県政の大御所として「其当時県に知事が二人いる」と言われたほどで、明治後期から昭和初期にかけて、滋賀県の政治家を語る上で、忘れることのできない人物でもあります〔詳しくはコチラ〕。
この銅像は当館が開館した翌年の1962年に建立。建設にあたっては、服部岩吉滋賀県初代民選知事(1885~1965)が中心となって像の制作・建立を計画し、彫刻家として有名な森大造に制作を依頼、募金により200万円の建設費を集めて完成に至ったと伝わっています(建立者:井上敬之助顕彰会)。
以降、約60年にわたり当館とご縁のあった本像ですが、このたび、井上の出身地である湖南市が故郷への「帰郷」を強く希望されたこともあり、本日、移設のための作業が行われました。
移設先の湖南市では、10月6日に市制施行20周年の記念式典で除幕式を行い、その後、故郷である石部に再移設されるそうです。
琵琶湖に向かって凛々しく立つお姿も素敵でしたが、地元の皆さんにより近いところで、身近に親しんでもらえたなら、像主もきっとお喜びになることでしょう。
打出浜からまた一つ「昭和」が無くなりますが、どうぞ永くお元気で!大津での御勤めお疲れさまでした!
御帰郷、おめでとうございます!
滋賀の文化財講座『花湖さんの打出のコヅチ』第5回 文化財建物修理、3人の技師が熱く語りました!
あっという間に9月も半ばになりましたね。9/18(水)、滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第5回目を開催しました。今回は「建造物文化財修理の最前線―国宝延暦寺根本中堂・重文不動寺本堂を中心に―」と題して、滋賀県文化財保護課・建造物係のフレッシュな3人の技師にご登壇いただきました。
1番手の長谷川聡子技師は、国宝延暦寺根本中堂と、重要文化財延暦寺根本中堂の回廊の修理事業についてのお話です。柱の傷んだ部材だけを取り除き、新たな部材を継ぐ「柱の根継(ねつぎ)」の紹介では、「可能な限り残せる部分は再使用する」という考え方に、大規模文化財建造物修理の大変さ、厳密さを伺い知れました。
次に福吉直樹技師から、重要文化財不動寺本堂の修理事業について。大津市太神山(標高600m)の山頂付近にあるお堂、車で入れない山道を、ひたすら通われたのだとか。そのような難所で、修理の適切な時期を経過してしまった檜皮葺(ひわだぶき)屋根について、「なんとか持ちこたえてくれた」との言葉があり、長い時を経てきた建造物に寄り添う技師の思いが垣間見えました。
締めくくりは、坪田叡伴技師。文化財建造物の耐震診断についてのお話でした。「古い建物、弱っていて当たり前では?」そんな素朴な疑問を入口に、耐震診断の流れや耐震補強の実例が紹介されました。外観・内装・構造・使われ方など、文化財としてどの価値を優先するか、とても悩ましいテーマに関わるお話でした。
まとめでは「 修理に注目されがちですが、実は日常管理が文化財建造物の保存を支えている。そのためには、まず多くの方に文化財建造物を知っていただきたい。 」との熱い思いが語られました。滋賀県は重要文化財190件277棟、国宝22件23棟と、国指定の文化財建造物の件数が、全国で3番目に多いそうです。こうした文化財建造物を守るため、「まずは知る」、私達にもできることがありそう・・・です!
今回の講座、それぞれに内容の濃いお話で、ちょっと時間が足りませんでしたか・ね?
講師の皆さん有り難うございました!次回は1人1コマ、ご用意させていただきます??!(笑)。 アンケートには「若い技師さんの今後のさらなる活躍を期待!」とのお声が寄せられていますよ~。
そして今回の打出のコヅチ、第5回限定での新たな試みも実施しました。彦根のビバシティ平和堂でのサテライト配信です。商業施設での初の試みに、アタフタした場面もありましたが、できる限り多くの方に聞いていただきたいという思いで、これからも試行錯誤を重ね頑張っていきたいと思います!
ご参加いただきました皆さま、有り難うございました!
地域連携企画展 第2弾!いざ観峰館へ!着々準備中♪
9/21から始まる地域連携企画展「滋賀限定!近江ゆかりの書画-古写経から近代の書まで-」。いよいよ間近に迫ってまいりました。当館の収蔵品を会場の観峰館へ移送、そして展示作業が佳境となっています。
館での梱包作業。先ずは作品の状態チェックです。今回は1日で梱包→輸送を行うタイトスケジュールであったため、「成功の秘訣は8割方準備で決まる(!)」と豪語する当館の学芸員が、予め検品作業を済ませていたおかげで(?!誉めてあげて~!)、余裕をもって梱包することができたようです(笑)。 作品は無事、当館から旅立ちました。
そして本日、会場での展示作業です。こちらの写真にうっすら写る緑色の光のライン、これは展示する際に作品の高さを合わせたり、水平を測る“魔法の光”。(以前はテグス(糸)を使ったりしてましたが近頃は便利になりました(笑))。
それでもやはり、何だかんだ言っても、最後に頼りになるのは「人の手」です。我らが文化館学芸員も、展示ケースの中に入って奮闘中~頑張っておりますヨ♪
さてさて、どのような展覧会になりますか???開幕まであと1週間、乞うご期待です!
「滋賀限定!近江ゆかりの書画-古写経から近代の書まで-」は9/21(土)から、会場:観峰館(東近江市)にて開催です🌟
最初で最後の「建設予定地イベント」★ボランティアも募集中★
みなさま、すでにチェックしていただいているでしょうか?
新しい琵琶湖文化館の建設予定地イベントを・・・!
あきつブログをご覧のみなさまにはご承知のとおり、令和9年12月オープンを目指している新しい琵琶湖文化館ですが、実は令和7年3月頃に着工を予定しています!なので、この場所が空き地のようになっているのもそろそろ終わり。そこで着工前に、最初で最後の「建設予定地イベント(滋賀県HP)」をやろうじゃないか!というのが今回の企画です。
このイベントで、具体的に何をするのかといいますと…
①建設予定地の実地表示 カラーコーンで建物(1階)部分を示します。
②新しい文化館に関するパネルを掲示します。
③館蔵品をモチーフにした「しおり」作成ワークショップを開催します。
特に、①建設予定地の実地表示!デス。文化館の職員も、こんなことはやったことがありませんので、実際にカラーコーンを置くと、「こんな大きさの建物になるんだな~」「思ったより大きい!?(または小さい!?)」などなど、いろんな感想がでてくるのではないかと思います。
そして、並べるカラーコーンは、約100個を予定しております、が、少人数の職員だけでやろうとすると、なかなか大変な作業になりそうな予感がします。ですので、このあきつブログをお読みのみなさま、イベント準備作業をお手伝いいただけないでしょうか!?この作業は、建設予定地イベントの前日、
10月4日(金)13:30~
を予定しています。ぜひカラーコーン1個からでも、並べるお手伝いをいただけたら、とても、とっても!とぉ~っても!!!助かります。
ボランティアへのお申し込みやお問い合わせは、下記までお気軽にどうぞ。
滋賀県文化財保護課 文化財活用推進・新文化館開設準備室
メール:bunkatsu@pref.shiga.lg.jp
何卒よろしくお願いします!
当館源氏物語画帖で楽しむ「帚木」と「空蝉」
NHK大河ドラマ「光る君へ」。吉高由里子さん演じるまひろ(紫式部)が、『源氏物語』を執筆しています。9月8日放送の第34回「目覚め」では、『源氏物語』の「空蝉(うつせみ)」のきわどい場面が、宮中で様々に読まれているシーンが印象的でした。
当館所蔵の源氏物語画帖には、この「空蝉」も収録されています。前回のブログで予告したとおり、「帚木(ははきぎ)」とともに、その詞書と絵をご紹介します♪
まず、『源氏物語』第2帖の「帚木」。この帖の前半は、光源氏や親友の頭中将らが、どんな女性が良いかなどそれぞれの経験談を交えた女性談義を交わす、現代的に読むと「それってどうなん??」と言いたくなってしまうお話、「雨夜の品定め」です(源氏は終始聞き役)。
当館源氏物語画帖の「帚木」の詞書と絵は、左馬頭の経験談「浮気な女」です。ある殿上人が女房のもとにやってきて、笛を吹くと、家の中の女房も琴で応じ、さらに男がもう一曲と女に所望する・・・という場面での、女房の返歌です。
木枯に 吹きあはすめる 笛の音を ひきとどむべき ことの葉ぞなき
(木枯らしの音に合奏するような、おみごとな笛の音をひきとめるだけの琴はございません。憎らしいこと。)
「帚木」の絵は、4/8のブログでもご紹介しましたが、男女が合奏する様子が描かれています。
「帚木」帖の後半はというと、「雨夜の品定め」の翌日、中流の女性への興味を触発されていた源氏は、抑えがたい思いのままに受領階級の人妻・空蝉の寝所に忍びこみ・・・(以降自粛・・・)と展開し、次の「空蝉」帖へと続きます。
第3帖「空蝉」では、若い女を相手に碁を打っている空蝉の姿を源氏が垣間見て、空蝉のたしなみ深さを感じ・・・(ここに続くのが有名な人違いの場面ですが、またしても自粛・・・)。そんなこんなで、自分を拒み続ける空蝉への想いが高まる源氏が、空蝉に贈った歌がこの詞書です。
空蝉の 身をかへてける 木(こ)のもとに なほ人がらの なつかしきかな
(蝉が抜け殻を残して姿を変え、去ってしまった後の木の下で、もぬけの殻の衣を残していったあの人の気配をやはり懐かしく思っている)
「空蝉」の絵の方は、お話が少し戻り、源氏が蔀戸(しとみど)越しに碁を打つ空蝉を覗き見る場面です。空蝉は後ろ姿で描かれ、その空蝉の背後には源氏が描かれています。
(現代的に見るとストーカーぽくて、ちょっとコワイ…)。
(ドラマでは見上愛さん演じる中宮彰子が、「光る君が何をしたいかも分からぬ」と言っていましたが、同感です…)。
ドラマでは、まひろはロマンチックな思い出に浸りながら第5帖「若紫」を執筆していましたが、当館の源氏物語画帖には第4帖・第5帖はなく、次は第6帖「末摘花」です。次回以降もお楽しみに♪
当館の源氏物語画帖「桐壺」に注目!
NHK大河ドラマ「光る君へ」。吉高由里子さん演じるまひろ(紫式部)が、『源氏物語』をもりもり書いていますね!8月18日放送の第31回「月の下で」で『源氏物語』の第1帖「桐壺」を書き始め、第32回「誰がために書く」でそれが道長から一条天皇のもとに渡り、昨日放送の第33回「式部誕生」では第1帖を追記して、さらに第2帖「帚木」も完成。一条天皇からまひろへ、立腹交じりの称賛が伝えられました。まだまだ続くというこの物語。そりゃそうです、54帖あるうちのまだ2帖ですからね・・・!
さて、当館所蔵の源氏物語画帖には、10の詞書と絵がありますが、この中にドラマに登場した「桐壺(きりつぼ)」と「帚木(ははきぎ)」も収録されています。今回は、まずは「桐壺」について、どのように描かれているかな?と見ていきますと・・・、
宮城野の露吹きむすぶ風の音に小萩がもとを思ひこそやれ
(宮城野-宮中を吹き渡る風の音に涙がさそわれるにつけても、小萩-若君はどうしていることか思いやられます)
光源氏の母・更衣が世を去り、悲嘆する帝が、更衣の里へ送った手紙に添えられた歌です。手紙には、愛する更衣が亡くなった悲しみにくわえ、里にいる幼い若宮(光源氏)のことが心配であるため、宮中に来るようにと記されており、この後に光源氏は参内します。
場面変わって「桐壺」の絵画は、宮中で聡明さを見せる7歳の光源氏を、右大弁が七条朱雀にあった鴻臚館(外国使臣を接待し宿泊させるための官邸)に連れて行き、高麗の相人に占わせたところです。そこで、「帝位につけば国が乱れるが、朝廷の重鎮となって政治を補佐する人かと言えばそれも違う」と高麗人は不思議がります。
石張りの床に異国情緒を感じる屋敷の中、一段上がった畳の上に坐るのが光源氏。その傍らに右大弁がいて、高麗の相人は不思議がるように光源氏を見つめています。外にはお付きの人たちや、光源氏が乗って来た牛車も描かれています。
「桐壺」は光源氏の誕生から12歳までが、続く「帚木」には光源氏17歳の夏が書かれています。「帚木」についてはあきつブログでも登場したことがありますが、次回は改めて当館の源氏物語画帖のうち「帚木」の詞書と絵について、ご紹介できたらと思います♪
地域連携企画展 第2弾!図録作成中!!
皆さん、すでにチェックしていただいてますか?我らが地域連携企画展の第2弾「滋賀限定!近江ゆかりの書画―古写経から近代の書まで-」!今回の展覧会は、東近江市の観峰館(かんぽうかん)さんとタッグを組んで、9月21日からの開催です♪
観峰館は、日本屈指の「書」の博物館!館名のロゴもステキなのです🌟
[ 日本習字創立者:原田観峰氏 (1911 ~ 1995)筆 ]
書の文化にふれることができる博物館での展覧会。しかも滋賀限定!=開催地は東近江市=可能な限り地域性にあふれる作品で企画したい⇒と、先方学芸員さんから熱いオファーをいただき(笑)、ここに実現!!大津市にありながら県内の地域性を活かした連携展を、各地で開催してきた当館です。お・ま・か・せ・あれ!
1万点を超える当館の収蔵品の中で、「書跡・典籍・古文書」が占める割合は約3割・・・どれにします??東近江にゆかりのあるものと言えば、アレと、コレと、イロイロと♡。
し・か・も・です!今回の展覧会では、出品作品全てを網羅した『図録』を作成します☆
今日はその打ち合わせで観峰館の寺前学芸員がご来館!写真の配置や解説文の確認、色合わせなど、校正作業も佳境です。図録に掲載するため、新たに撮り直した作品も多く、気合いが入っておりますヨ!仕上がりを楽しみに♡会場で是非お手にとってみてくださいね~!
開催まで1ヶ月をきりました。観峰館と琵琶湖文化館の地域連携企画展「滋賀限定!近江ゆかりの書画-古写経から近代の書まで-」は、9月21日からの開催です。乞うご期待🌟!
大津/聖衆来迎寺の虫干し会と六道絵
本日8月16日、大津市比叡辻にある聖衆来迎寺さまでは、寺宝を一堂に並べての「虫干し会」が行われました。ここ数年コロナ禍で実施が見送られ、昨年は台風で中止となってしまったため、今年は実に5年ぶりの開催。楽しみにされていた方も多いのではないでしょうか。
普段当館がお預かりしている文化財も、この機会にあわせて”お里帰り”。 国宝の六道絵や、重要文化財の銅造薬師如来立像など、同寺に伝わる寺宝17件をお戻しさせていただきました。皆さんが楽しみにされている寺宝公開、当館としても陰ながらお手伝いができることを嬉しく思っています。
本堂と客殿(ともに重要文化財)でお披露目された寺宝の数々。ずらっと並べられた六道絵は特に圧巻!間近に鑑賞できるとあって、熱心に見入っておられるお客さまも多かったです。説明にあたっておられた檀家の方々も、嬉しそうに質問に答えておられましたよ。
5年ぶりの開催で、拝観する側も受け入れる側も、いつも以上にアツい気合いが入っていた今年の虫干し会。毎年恒例の行事がこうして復活し、無事開催されることが、とても有り難いことに感じられました。
そして、残念ながら本日拝観できなかったという皆さまに、朗報(♪)です。
聖衆来迎寺さま所蔵の六道絵が、8月17日放送テレビ朝日の『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』に登場します!番組制作にあたり、当館から六道絵の画像を提供させていただきましたので、放送されること、間違いゴザイマセン!
今回は「怖いけどタメになる!真夏の地獄SP 」という内容で、地獄の世界に魅せられた10歳の博士ちゃんが、学び溢れる地獄の世界を語ってくれるそうです。暑~い夏に涼む地獄の世界・・・これまた一興!放送が楽しみです♪全国の皆さんも六道絵を通じて、滋賀に伝わる文化財の凄さリアルさをご堪能ください!
文化館公式 X はじめました。
皆さまお待たせいたしました!本日、2024年8月8日(木)、旧暦7月5日[大安]。満を持して、琵琶湖文化館公式アカウントにて、X(えっくす・旧Twitter)を始めました🌟
☆ 琵琶湖文化館の取組
☆ 令和 9 年オープン予定の新しい琵琶湖文化館の情報
☆ 滋賀の文化財の魅力
などなど、随時“つぶやいて”まいりますので🌟フォローしていただけると、と~っても嬉しいです🌟
琵琶湖文化館X公式アカウント @ biwakobunkakan
これからも様々なかたちで、皆さんと繋がっていきたいと思っています。今後とも何卒ご贔屓に🌟🌟🌟
折しも、今日は「びわ湖大花火大会」の日。大津港沖で打ち上げられる約1万発の花火が、夜空を彩ります。
湖岸から見る花火とお城のシルエット=琵琶湖文化館。・・・皆さんが撮影される“激レアショット”の投稿も楽しみにしています♥。
和泉式部も打出浜に来ていた!
NHK大河ドラマ「光る君へ」、8月4日放送の第30回には、泉里香さん演じるあかね(和泉式部)が登場しました!現実と同じくドラマの中も猛暑のようで、水色のシースルーの着物で登場したあかねは、「何もかも脱いでしまいたい」と色香をふりまきます。。。和歌の才能も見せていましたね。
恋多き女性として知られている和泉式部。夫が居ながらにして、冷泉天皇の第三皇子・為尊親王と熱愛し、さらにその弟・敦道親王に求愛されます。その赤裸々な恋愛模様は『和泉式部日記』に記されていますが、ここに近江の地名を詠んだ歌が収録されているのをご存知ですか?
平安時代の貴族の間で流行していた石山詣ですが、和泉式部も日頃の思いを慰められたらと石山寺に7日ほど籠もります。敦道親王は童を使者として、和泉式部と文のやりとりをします。
(ちなみに童は都と石山を2往復!します。敦道親王は一度帰ってきた童に、「苦しくとも行け」と文を持たせてまた石山へ行かせます。。。)
このやりとりの中で詠まれた歌は何首かありますが、当館が所在する打出浜が詠まれたものをご紹介しますと…
【和泉式部】
山ながら憂きはたつとも都へはいつか打出の浜は見るべき
(お山に籠ったままでつらいことがありましょうとも、都への道は、いつ出で立って打出の浜を見て帰ることなどありましょうか)
【敦道親王】
憂きによりひたやごもりと思ふともあふみのうみは打ち出てを見よ
(つらいことがあってじっと山籠りをしようと思われたにしても、私に逢うために山を出て打出の浜から近江の湖を見て帰ってきてください)
※原文・現代語訳とも『日本古典文学全集』から引用。
熱烈なアプローチの甲斐もあって、和泉式部は石山寺から都へ戻ります。その道中にはもちろん打出浜も通ったことでしょう✨
これまで、紫式部、清少納言、藤原道綱母、そして和泉式部と、打出浜とのゆかりをご紹介してきました。こんなにたくさんの文学作品に出てくるなんて…、当館周辺の打出浜、平安文学の聖地と言っても過言ではないのでは!?と思う今日この頃です🌟🌟🌟
滋賀の文化財講座『花湖さんの打出のコヅチ』第3回 守ります!繋ぎます!
おとなり京都市では祇園祭前祭のハイライト、あでやかな山鉾巡行が行われた7/17(水)、琵琶湖畔では今年度第3回目の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」を開催しました。
突然ですが皆さんは、美術館や博物館に行って作品を鑑賞した時、何をお感じになりますか?率直に、その美しさ?はたまた秘められたエネルギッシュな何か?作品にかかわる経緯や歴史?等々、さまざまな角度から想像を膨らませておられることでしょう。祇園祭の山鉾も「動く美術館」といわれるくらい見事で大切な文化財ですね。
でも、ちょっと待ってください、よく考えると・・・何年、何十年、何百年も前の形あるものをこうして直に見る事ができるのは…そうです!現在まで受け継がれてきた“保存の力”=“人の力”を見過ごすわけにはマイリマセン!
ということで、今回の講座は一味違った角度から「文化財保存のしごと-「地域文化財のサポートセンター」実現に向けて」と題し、当館で保存科学分野を担当する武内里水学芸員がお話しをさせていただきました。
まずは、わたしたちが生活する身の周りにある『物質』が文化財にどう影響を与えているのか。温度・湿度・光・化学物質・虫や菌・動物・人間、災害等々・・・。それに「文化財」と一言で言っても、種類もさまざま、素材もさまざま、取り巻く環境もさまざま・・・!それぞれに想定できる影響はたくさんありました。例えば、展示会場などで、照明が暗いのは、作品の劣化を招く光をなるべく当てないため、湿度は60%を超えるとカビが発生しやすくなるのでそれを管理するため、といったことは皆さんもご存じの保存活動の一部です。
ここで皆さんにクイズです。こちらの写真➡
答えはヒメマルカツオブシムシ。美味しそう(?)な名前をしていますが、この幼虫が絹製品・毛織物などを食べてしまう犯人(!)デス。その他にイガやゴキ〇リなども文化財害虫です。でも皆さん、これらの虫はご家庭にもいらっしゃったっりします・のでご注意を!
こうした文化財を脅かすモノたちから、どのようにして守るのか? これには、文化財が置かれている環境を「よく知る」=「普段からよく観察し(環境や物の)変化に早く気付くこと」が大切なのだと、講師は力を込めて言い切ります。早期発見→早期対策につなげる“地道な努力”=“人の力”が重要となるのです。
講座では、文化館での先輩学芸員たちの取り組み、環境モニタリングの記録、日々の観察活動から予防の実践まで、開館以来60年以上経つ琵琶湖文化館が、湖上にありながら文化財を適切に保管するために行ってきた様々な事例が紹介されました。
(約50年前に使われていたガスマスク➡
学芸員がこれを装着して燻蒸を行っていた時代もあったそうです。)
そして後半は、地域の文化財のサポートを担う琵琶湖文化館について。3年後の2027年12月には新しい琵琶湖文化館が誕生します!現在も着々と準備を進めているところで、建物は「令和9年(2027)3月竣工」、開館は「令和9年(2027)12月」を目指しています![滋賀県HP]
ん?3月竣工で、12月開館!?このブランクは・・・“躯体枯らし期間”の残りの期間です。水をたくさん使って打設したコンクリートからは水分が蒸発していきますが、一緒に文化財に有害な“アンモニア”も発生します。打設してから文化財を守るためには“養生期間がふた夏必要”なのです。
滋賀県は、国宝・重要文化財の指定件数が全国で4番目に多い、誇るべき文化の県と言えます。もしもの災害があった時に被災した文化財も臨時的に保管ができるよう、収蔵品とは分けた受け入れスペースも新しい文化館では計画されています。
文化財というみなさんとの共有財産を、今までどのようにお守りし、そしてこれからどのように引き継いでいこうとしているのか、琵琶湖文化館の秘められた「決意」が語られた今回の講座。受講後のアンケートには、
・博物館の学芸員さんの専門分野にいろいろ種類があること、“保存科学”を初めて知りました。内容も興味深かったです。
・積極的に文化財保存に向かっていらっしゃる姿勢が良くわかった。滋賀県民として応援し、うれしく思っています。
・自分に何ができるのか?という気持ちになりました。
・地域資料はその地域のたどってきた歴史、現在ある姿を形づくってきた来し方を示す大切なものです。それに対する考え方を伺い、大変ありがたく心強く思いました。
等々のお声が寄せられました。「私たちが滋賀の文化財を守る!」という学芸員の熱い思い・・・。これまでもこれからも、琵琶湖文化館の活動に対する皆さまのあたたかいご支援・ご協力を、心よりお願い申し上げます!
水面下・気になる・カモ♡
みなさん気付いておられます?当サイトのトップページにおきまして、とても気になる画像が追加されました。そう、それは新しい琵琶湖文化館のイメージ画像です♪
こちらを[ポチッ]としていただくと、滋賀県のウェブサイトにリンクし、令和9年12月に誕生する新しい琵琶湖文化館についての情報やイメージ画像など、最新情報をご覧いただくことが出来ます。
現在の琵琶湖文化館はド~ンとお城の形をしていますが、新しい琵琶湖文化館は「湖国の夢と滋賀の宝を未来に伝える希望の船」をコンセプトにイメージした外観になります。そして新旧の琵琶湖文化館をつなぐ我らが学芸員はと申しますと・・・現在、鴨の水かき状態(?!)で頑張っております(笑)!。建設に向けて、学芸員と滋賀県の担当者、建設・設計の業者とが協議を重ね、具体的な内容を詰める作業を進めているところです。
「このような設備が必要・可能?」「壁の素材はコレ?色は?」「来館者の動線イメージは?」などなど、宿題をもらいつつ課題を提出する・・・みたいな(?)攻防の日々です(笑)。悩みつつも前進あるのみ!令和7年3月頃には浜大津で建設が始まる予定です。それまで、なかなか皆さんには具体的な動きが伝わりにくい・・・期間ではございますが、水面下で鴨(学芸員)たちはフルスロットルで水を掻きかき、前進を続けておりますので、今しばらく新文化館の建設を楽しみに、お待ちいただければと思います。
そして、そんな学芸員を癒してくれるのが・・・本物のカモです(笑)。
時折、姿を見せるこのコたち。中には体の小さな子ガモの姿も♡。あまりに愛くるしさにこちらのテンションは↗↗↗。コチコチに固まった頭の緊張が一気にほぐれ、すごくリフレッシュ☆できるのです。・・・きっとこんな時間も必要(笑)。そしてまた、改めて頑張ろう・・・と思うのです。ご期待ください!
紫式部の和歌、越前から上京編
〈NHK大河ドラマ「光る君へ」と近江〉をテーマに、あきつブログをお届けしている学芸員、実は先日福井県へ行ってまいりました。越前市にある紫式部公園は、当館から直線距離で101キロ!平安時代には輿や船に乗って4、5日かかった京~越前の道のりは、大津からは名神高速道路を通るルートで片道2時間ほど。日帰り旅行できちゃいます。うーん、この1000年でかなり時間短縮されましたね~。
さて、6月23日放送の「光る君へ」はご覧になりましたか?吉高由里子さん演じるまひろ(紫式部)が、佐々木蔵之介さん演じる藤原宣孝との結婚を決めるため、越前から京に戻ってきました。その道中、琵琶湖を渡るシーンが短いながらもありましたね!
紫式部は、越前へ下向する際は琵琶湖の西岸を渡ったことをご紹介しましたが(6月3日付ブログ)、上京するときは琵琶湖の東側のルートを通ったようで、湖東の風景を詠んだ歌が自選歌集の『紫式部集』に収録されています。
名に高き 越の白山 ゆきなれて 伊吹の嶽を なにとこそ見ね
名高い越前の白山に行き、その雪を見慣れたので、伊吹山の雪などたいしたものとは思わない、という意味。
磯がくれ おなじ心に たづぞ鳴く なに思ひ出づる 人やたれぞも
磯の浜のものかげで、私と同じ気持ちで鶴が鳴いているが、何を思い出しているのだろう、誰を思い出しているのだろう、と現在の米原市磯で詠んだ歌。
おいつ島 しまもる神や いさむらん 浪もさわがぬ わらわべの浦
おいつ島を守っている神様が、静かにするよういさめたからだろうか、わらわべの浦は波も立たずきれいだ、という意味。「おいつ島」は沖島、奥津島(現在の奥津山)など、諸説あり。
もう6月も終わりということで、「光る君へ」も折り返しでしょうか。これからも、ドラマの中で紫式部が歩んでいく後半生を、近江というキーワードで辿っていきます!
公民館に出張!屏風に親しんでいただきました♪
先日、彦根市の稲枝地区公民館の「いなえ講座」にて、学芸員が出張してお話してきました。稲枝地区公民館さんは、「花湖さんの打出のコヅチ」でオンライン配信によるサテライト会場となっていただいており、初年度からずっと参加されている公民館です。今回の講座はオンライン配信だとちょっと無理そうな、対面ならではのワークショップもあわせたものでした。
テーマは「ミニ屏風をつくろう」。講師は武内学芸員です。屏風の役割や、その数え方について学んだ後、実際にミニ屏風を作る作業に進みました。
ミニ屏風作りでは、元気に活動する参加者の皆さんを見て、私たちも活力をもらいました。ただ、屏風の扇と扇をつなぐ「紙蝶番」を作る部分はなかなか難しく、手間取る方もいましたが、皆さん一生懸命に取り組んでくださいました。ミニ屏風の絵は、当館の館蔵品の中から選んでもらいました。お気に入りのミニ屏風が作れたでしょうか? この講座については、稲枝地区公民館のHPでもご紹介いただいています。より楽しい様子が分かるかと思いますので、ぜひチェックしてみてください。
また、このミニ屏風の作り方は、滋賀県文化財保護課のYouTubeでもご紹介しています。材料は100円ショップ等でも用意できるものなので、ぜひトライしてみてくださいね!
初公開の「動くあきつくん」も必見です♪
紫式部の和歌、越前下向の旅路編
NHK大河ドラマ「光る君へ」6月2日放送回の「光る君へ紀行」では、紫式部の越前への旅路が紹介されました!
「光る君へ紀行」の冒頭は、当館からほんの数メートル東から撮影した、琵琶湖の風景。そして高島市の白鬚神社や長浜市塩津の深坂古道が紹介されました!前回のブログでは、琵琶湖のシーンが短いんじゃないか!?なんて言って、本当にすみませんでした。。。今回は充実の琵琶湖の旅を放映してくださいました!ありがたき幸せ・・・!
紫式部は、京から旅立ち、逢坂の関を越えて打出浜から舟に乗り、琵琶湖の西岸を北上します。今回の「光る君へ紀行」では、現在の高島市の三尾が崎あたりで、都を恋しがるように詠んだ歌と、琵琶湖の北・塩津に上陸し険しい山道を行く中で、世の中を生きていくつらさと重ね合わせて詠んだ歌が紹介されました。
三尾の海に 網引く民の てまもなく 立ち居につけて 都恋しも
知りぬらむ ゆききにならす 塩津山 よにふる道は からきものぞと
またドラマの中では、越前の国府に到着したまひろが、素敵なデザインの和紙を手に取り、和歌を書き連ねるシーンが登場しました。この和歌は、琵琶湖を渡る不安を詠んだ内容と言われることが多いもの。ドラマではその前が日本海のシーンだったので、日本海に臨み詠んだともとれる描写です。
かきくもり 夕たつ浪の あらければ 浮きたる船ぞ しづ心なき
これらはいずれも、紫式部の晩年の自選歌集である『紫式部集』に収録されているものです。『紫式部集』は概ね年代順に配列されているようなので、少し読み進めれば越前から帰京する際の歌も・・・。帰りはどうやら別ルートのようです。
「光る君へ」では越前編が続くようですが、そのうちまた紫式部が詠んだ近江をご紹介できる予感がします♪お楽しみに~!
当館周辺に、清少納言も(たぶん)来ていた!
青い空、青い琵琶湖と準構造船(※準構造船とは、丸木舟を船底にして、側板などの船材を加えた船)。NHK大河ドラマ「光る君へ」の5月26日放送回では、素敵な琵琶湖のシーンが登場しました。
しかし残念なことにこのシーンは30秒ほどと短く、琵琶湖ファンとしては、もう少し尺を取っても良かったのではないかと思ったりもしました(笑)。NHKさん、次回からはもう少し琵琶湖を長く映して・・・!?
さて、この回で印象的だったのが、ファーストサマーウイカさん演じるききょう(清少納言)が、『枕草子』を書き始める場面です。傷ついた中宮定子の癒しになるようにと、たった一人のためだけに文字を紡ぎ始める、エモーショナルな場面でした。 そういえば『枕草子』には琵琶湖関連の記述はどんなものがあったかな?と読んでみると、「海は」の段に琵琶湖が、「浜は」の段には当館が所在する「打出浜」が出てきます(下記は『日本古典文学全集』18を参照)。
16 海は
海は 水うみ(※琵琶湖 )。
与謝の海(※京都府の宮津湾の古名 )。
かはふちの海(※所在不明 )。
192 浜は
浜は 有度浜(※静岡県清水市)。
長浜(※三重県か )。
吹上の浜(※和歌山市 )。
打出の浜。
もろよせの浜(※兵庫県美方郡浜坂町諸寄 )。
千里の浜(※和歌山県日高郡南部町千里 )、ひろう思ひやらる。
清少納言も石山寺に訪れたようなので、当館周辺の打出浜にも訪れたのではないか、そして『枕草子』のこの記述につながったのではないかと想像します。
紫式部の越前への旅路で、打出浜から琵琶湖に渡ったことは紹介しましたが(前回のブログはコチラ)、清少納言もきっと打出浜に来て、琵琶湖を眺めたのだろうと思うと、千年の時を超えて人々を魅了する琵琶湖の偉大さを感じますね。
皆さまもぜひ、打出浜からの琵琶湖を、古典文学を通じて新たな視点で見つめなおしてみてはいかがでしょうか。
琵琶湖を渡った舟、実は当館にも
NHK大河ドラマ「光る君へ」、5月19日放送の第20回は、岸谷五朗さん演じる藤原為時が越前国の国司に任じられました。続く第21回「旅立ち」では、吉高由里子さん演じるまひろ(紫式部)とともに、越前へ向かうシーンがあるようです!次回予告の冒頭に琵琶湖を渡る場面が出てきたのを、あきつブログをご覧の皆さまは見逃さなかったのではないでしょうか。
この際に登場すると予想されるのが、打出浜から出航する舟。当館が所在する「打出浜」は、昔から京から琵琶湖に渡る際の発着地でした。『蜻蛉日記』の作者、藤原道綱母も石山詣に際して打出浜から舟に乗ったことはご紹介しましたが(過去のブログはこちら)、紫式部もここから越前へ旅立ったと考えられます。
では、紫式部が乗ったであろう舟とはどんなものだったのでしょう。確かなことは分かりませんが、琵琶湖を渡る舟といえば琵琶湖博物館の常設展示があり、また安土城考古博物館で縄文時代の舟に関する企画展(平成18年)があるなど、滋賀県内ではさまざまな時代の舟が展示されてきています。しかしご存知の方は少ないと思いますが、実は当館にも舟が収蔵されております!! それがコチラ↓! !
当館の舟は、長さ2.3メートル、幅は50センチほど。丸木舟か準構造船の底部の部材とみられ、野洲市須原の干拓地から出土したものです。琵琶湖の水運を伝える舟が打出浜に位置する当館にあると思うと、滋賀県の歴史がぐっと身近に感じられますね♪
ところで・・・番組の次回予告で、まひろたちが乗っていた舟が、めっちゃ立派に見えた・・・ のが、とても気になるノデスガ??(笑)。お天気のとっても良い日に撮影されたそうです。美しい琵琶湖の風景も楽しみですね。来週も必見です!
「光る君へ紀行」に当館も所蔵する〇〇が登場!
NHK大河ドラマ「光る君へ」では、登場人物たちが筆を使って文字を書くシーンがたくさん出てきます。
5月12日放送の第19回でも、吉高由里子さん演じるまひろ(紫式部)が『新楽府』を書き写すシーン、まひろの父の藤原為時が除目の申文を書くシーンがありました。そして、藤原道長が日記を書き始めたエピソードにも、筆の存在を感じさせます(その日記を広げたままにして妻の源倫子が覗き見るのもドキドキ♪)。
さて今回の「光る君へ紀行」では、道長直筆の日記である陽明文庫所蔵の国宝「御堂関白記」とともに、滋賀県高島市の筆づくりが紹介されました。番組では、安曇川の流れとともに、筆の制作・販売をする高島市の攀桂堂(はんけいどう)で、巻筆が作られる様子を放映。まさに毛を巻いて作っている様子が分かりましたが、一般的な作り方の筆との違いはご存知ですか?
現代の一般的な筆(水筆(すいひつ)と言います)は、筆先は毛(獣毛)のみで作られますが、巻筆は中心に芯となる毛を立て、その周りを和紙で巻き、さらに数回にわたって毛と紙を交互に巻き付けて作られます。こうした作り方の筆は中国から伝わり、正倉院には奈良時代の巻筆がのこります。江戸時代の末に水筆の製法が伝わってからは、巻筆の生産はごく少なくなっていったようです。
当館では、巻筆を作り続ける攀桂堂の14代目藤野雲平(1999年没、県指定無形文化財)の作を所蔵しています。2021年に高島市で開催した地域連携企画展でご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。まひろや道長も、こんな巻筆を使っていたのかなと想像すると楽しいですね。
ドラマでは、まひろが参内して一条天皇と中宮定子に拝謁し、「私には夢があります」と語る場面が印象的でした。一方でドラマ終盤は、藤原隆家が花山院に放った矢により長徳の変が引き起こされるという、かなり不穏な雰囲気・・・。次回以降の展開&滋賀の文化財の登場にも期待です!
藤原道綱母も文化館の近くに来ていた!
あきつブログ読者でNHK大河ドラマ「光る君へ」をご覧の皆さまは、きっと待ちに待った回だったのではないでしょうか。4月14日放送の第15回です。
4/8付のブログでご紹介したとおり、吉高由里子さん演じるまひろ(紫式部)たちが、石山寺に出かけます。まひろは石山寺参籠中に財前直見さん演じる藤原寧子(藤原道綱母)に出会い、『蜻蛉日記』の感想を実感たっぷりに伝えて親交を深めます。うーん、紫式部が石山寺で道綱母に出会い『蜻蛉日記』執筆のモチベーションを聞いたことが、『源氏物語』創作のきっかけになるという描写、素敵ですね♪
さてこの『蜻蛉日記』には、道綱母が京から石山寺へ参詣する旅程も記されています。ここに文化館が所在する「打出浜」の地名が出てきますので、往復の道のりをそれぞれご紹介します。
行きは、夜明けごろに家を出て、逢坂の関を越えて近江に入り、打出浜には死ぬほど疲れ果ててたどり着きます(「打出の浜に死にかへりていたりたれば」)。打出浜から舟に乗って瀬田川を渡り、夕方には石山寺に到着したようです。
道綱母は夫の兼家の不実に悩んで石山詣を思い立ったので、かなりのメンタル不調での旅路です。。。京から近江に歩いて来るのはそれなりに大変だったでしょうし、行きは琵琶湖を楽しんでいる様子はありません。
石山寺では泣いて過ごしましたが、滞在が癒しとなっていたようで、帰りは琵琶湖を眺めながらの航行。暗いなか石山寺を出て舟に乗り、瀬田の唐橋のあたりで夜明けを迎えます。ほのぼのとした夜明けの風景を見ながらも、何もかもしみじみと心にしみて悲しい・・・、帰りもやっぱりメンタル不調ですが、打出浜からは車に乗り、京には昼前に着いたとのことです。
当館周辺の打出浜に道綱母が来て、琵琶湖を眺めていたと思うと感慨深いですね。「光る君へ紀行」(番組HPにリンク)では当館近くの常夜灯も映りましたし(ただし弘化2年(1845)建立、この場所には平成17年(2005)移設)、平安時代の人々の石山詣に思いを馳せつつ、近江を巡ってみてはいかがでしょうか。
来週の大河ドラマに石山寺が登場!&横笛奏楽姿にも期待★
NHK大河ドラマ「光る君へ」。先日放送された次回予告を見てワクワクしている方も多いのではないでしょうか。
4月14日放送予定の第15回「おごれる者たち」の次回予告は、「もうすぐ石山寺ですよ」というセリフからスタート。吉高由里子さん演じるまひろ(紫式部)の一行が、石山詣をするようです!石山寺でのロケ実施はなかったとのことですが、今も昔も風光明媚な石山寺が、ドラマの世界観にどう映し出されるのか、楽しみでなりません。
さて、石山寺の登場も楽しみですが、次週では楽器演奏シーンにも目が離せない予感がします。次回予告を見ていると、これまで子役だった一条天皇が成長した姿でお出まし。そして横笛を吹くシーンがあるようです。平安時代の貴族たちは、男性は主に横笛などの管楽器、女性は琵琶(まひろが弾く琵琶に注目したブログはコチラ)や琴といった弦楽器をたしなんでいたといいます。とりわけ一条天皇は実際に横笛の名手であったことが知られ、様々な日記や記録に記されています。
そんな楽器演奏の場面が描かれた品を当館の所蔵品から探してみますと・・・、「源氏物語図」の1ページにありました!「帚木(ははきぎ)」の「雨世の品定め 浮気な女」です。男性が横笛を吹くと、御簾の中から女性が琴を弾いて応える図は、まさに大河ドラマの世界みたい♪
「光る君へ」で描かれるシーンが、当館所蔵品ともさまざまにつながりがあると考えると、ますますドラマへの期待が高まりますね。来週は必見です!
ありがとう文化館のいきものたち!~洋犬から迦陵頻伽まで~
本県の地域紙である『京都新聞』滋賀版で、4カ年にわたって「いきもので知る近江の文化財」と題する連載が行われていたことをご存じですか?。
滋賀県文化財保護課が執筆を担当した本シリーズでは、文化財と関わるさまざまな「いきもの」について取り上げられました 。 動物、植物から想像上の生物に至るまで、バリエーション豊かな生きものと人間との関係について、近江の文化財を通して学んでいただけたことと思います。
全104回の初回は令和3年7月25日、琵琶湖文化館所蔵の「洋犬図」でした。その後、本館屋上にあった「大トンボ」、岸岱筆の「猛虎咆哮図」、円山応挙筆の「狗子図」などなど、文化館ゆかりの「いきもの」たちが多数登場。
令和6年3月31日、連載の最終回を飾ったのも、西明寺蔵で文化館寄託の仏涅槃図と、文化館大壁画の舎利供養図に描かれた極楽の鳥「迦陵頻伽(かりょうびんが)」だったのです! 。
迦陵頻伽は仏教における想像上の生物です。上半身が人で、下半身が鳥の体をしているということですから、今そこにいると思うとなかなかに怪しげな姿ですね。ちょっとしたホラーです。でも、安心してください(?)。現世で会うことはありません。浄土にしか生息していないからです。
『仏説阿弥陀経』というお経をご存じですか。天台宗や浄土宗、浄土真宗などで日常的に用いられている大事な経典ですから、ご承知の方も多いでしょう。
その中で、阿弥陀如来の極楽浄土に、きれいな声でさえずる色鮮やかな鳥たちがいると説かれます。孔雀(くじゃく)、鸚鵡(おうむ)、舎利(しゃり=九官鳥)らとともに、迦陵頻伽が出てきます。その名はサンスクリット語「カラヴィンカ」の音写であり、「妙なる声」を意味します。美しい声で鳴いて仏法を讃え、極楽の住人たちの信仰心を高めてくれるというわけです。
したがって、極楽の鳥・迦陵頻伽が描かれるのは浄土を表現した絵画や工芸品が中心となります。昭和24年(1949)琵琶湖文化館の大壁画「舎利供養」も仏舎利を中心に描かれ、阿弥陀浄土をモチーフにしています。そこに描かれた迦陵頻伽はインド・中国の壁画の伝統にのっとりつつも、杉本哲郎(すぎもとてつろう・1872~1933)の闊達な運筆で生き生きとした姿に表現されています。令和9年に新・文化館がリオープンするときには、ぜひとも大壁画に描かれた「極楽の鳥」にも注目してください。
*********************
「いきもので知る近江の文化財」の連載は一区切りとなりましたが、近いうちに別の連載も企画されて・・・いるとか、いないとか?!琵琶湖文化館の作品や学芸員たちが引き続き連載に登場・・・するとか、しないとか??!・・・うふふっ・・・~お楽しみに♪♪♪
歴史探偵あらわる・大津事件
2月某日、とある来訪がありました。その方たちは、事件で凶器となった重要物品であるとか、血に染まったハンカチであるとか、その他関係資料もろもろ、時間をかけて丹念に調査をされておりました。対応した学芸員は「ドキドキした・・・」と申しております。平穏な文化館でいったい何が・・・?!
カンのいい方はもうお分かりですね?実はコレ、当館が所蔵する「大津事件関係資料」を取材に来られていたのです。
大津事件は、1891年(明治24年)、訪日中のロシア皇太子ニコライが、遊覧先の大津で、警備にあたっていた巡査・津田三蔵にサーベルで切りつけられ負傷を負った事件です。
世界を揺るがす大事件は、司法権の独立や三権分立、領事裁判権の撤廃など、日本の近代を語る上で、“激動”のきっかけとなった事件・・・としても有名です。
今回撮影に来られたのは、NHKの放送番組「歴史探偵」クルーの皆さん。熱心に話を聞き、時に鋭い質問を投げかける、その話術の巧みさ・・・さすがは皆さん名探偵?!(笑)♪
番組では、探偵社の所長(?)を務める俳優・佐藤二郎さん方々の名推理により、歴史のナゾが新たに解き明かされます??!気になる放送日は・・・↓
令和6年4月3日(水)22:00~ NHK総合
「歴史探偵 日露戦争 知られざる開戦のメカニズム-」
です!
なぜ、日本とロシアは戦うことになったのか?すれ違う両国、開戦への世論の高まり・・・大津事件は歴史にどのような影響を及ぼしたのか・・・番組をお見逃しなく!!
「大津事件関係資料」は、事件で凶器となったサーベルやニコライの血をぬぐったハンカチ、津田の取り調べ調書などが、滋賀県指定の文化財となっています。
歴史の生き証人である文化財、歴史の謎解く文化財・・・皆さんが事件の目撃者です。番組をお楽しみください。
親子で体験「ミニ屏風をつくろう!」守り人!
現在、安土城考古博物館で開催中の地域連携企画展「近江の文化財を継ぐ-修理・複製・復元-」。3月24日には関連イベントとして親子で参加するワークショップ「ミニ屏風をつくろう!」が開催されました。
初めに展示室で実際の屏風をご覧いただき、屏風の構造などをご説明。イマドキのご家庭では「もしかして屏風を知らないってことも・・・?」という一抹の不安がありましたが、参加の皆さんは「知っている」「家にある」とのご回答♡スタッフ一同ほっと胸を撫でおろしました(笑)。 先ずは第一関門クリア(!)です!
別室に移動し、いよいよここからが本番! 作りたい屏風の絵柄を選んでいただきました。当館の収蔵品の中から、おススメのワンコ(犬)やお祭り、光源氏なみの男性とお姫さまが登場するやまと絵、などを用意していたのですが・・・意外にも(?!)子どもたちが選んだのは、近江八景を描いたシックなもの!・・・皆さん「通」ですね・・・母なる湖/琵琶湖に関係する絵柄を選ぶとは、さすがです♪
組み合わせる下地の模様を決めていざ実践!
講師を務めた岩﨑学芸員の手ほどきを受け、ハサミやノリを使って工作をすすめる子どもたち。ちょっぴり緊張ぎみです(笑)。
作る過程で一番『肝心』なトコロは、屏風と屏風をつなぐ「蝶番(ちょうつがい)」!・・・と言っても金具ではないですよ?!本物の屏風と同じように「和紙」でつなぎます。和紙を貼って、ひっくり返して、上下を交互に貼り付けて・・・(ここでは説明を端折りマスが)、こうすることで、屏風は前にも後ろにも開くことが出来ます。うまく合わせられるかキンチョ~の瞬間・・・この難関を乗り越えれば、あとはサクサク♡選んだ下地と絵柄を貼って、ミニ屏風の完成です♪
今回のワークショップで「屏風づくり」を企画したのは、「文化財を守り伝える、そのためには、モノの素材や構造・仕組みを理解しておくことがとても大切」ということを、知っていただきたかった・・・ためです。
使った材料はホームセンターなどで手に入る発泡スチレンボードですが、和紙でつなぐことで本物と同じように開いたり閉じたりすることができました。
参加した子どもたち、次に屏風を見る時には、描かれた絵より何より、先ず合わせ部分(紙蝶番)に目がいってしまうコトでしょう!(笑)。「あれ、紙でくっついていて、どっちにも開くんやで」と、お友達にも教えてあげてくださいね!
最後に、楮(こうぞ)やミツマタなど、原料が異なる手漉き和紙の“触り比べ”をしていただきました。「実はお札にも和紙が使われている」との説明に、とてもびっくりした様子の子どもたち。改めて質感を確かめていましたね~(笑)。伝統を受け継ぐ日本の技を、最も身近に感じて貰えた瞬間かもしれません(笑笑)。
ご参加いただきました皆さま、ありがとうございました♪。今までとは違った視点で、文化財を見ていただくことができたなら・・・皆さんはきっと「文化財の守り人」です!
~約100年ぶりの再発見~西郷隆盛の自筆書簡が滋賀にあった!
こうも連日、喜ばしい記事を掲載してもいいのでしょうか・・・いいのです!皆さんしばしお付き合いください!!
今日のニュースは特別・驚きますよ~。なんとあの西郷隆盛が書いた直筆の書簡が滋賀で(再)発見されました!
コトの発端は昨年秋、とある個人の方から当館に、文化財を寄託されたことから始まります。お品を見せていただいたところ、不思議なことを言い出す人がおりました。
「アレ?おかしい??自分、どこかで見た記憶がある・・・」
「 いつですか?」
「 小学生の頃・・・」
「 ?」
なんとも奇妙な会話を交した数日後・・・
「 やばい、モノホン(本物)の可能性がある。
ちょっと詳しく調べる!見た気がしたはずやわ」
「 いったい何を?」
「 西郷隆盛が書いた手紙」
「 ・・・!!!・・・」
少し説明させていただくと、この「!(ビックリマーク)」3連発には様々な意味が含まれます・・・↓
①えッ?西郷隆盛!
②小学生でも知っている明治維新の立役者の「書」がなぜ滋賀に?!!
③・・・小学生の頃見た記憶が、ってアナタそんな頃から墨で書かれた達筆文字・読めたのですかーッ?!・・・それが記憶に残っている、とはどんな小学生ですかーッ!!!
突っ込みドコロ満載の会話のあと、副館長の動きは素早かった・・・そう、このたび発見の書簡を確認したのは当館の井上優副館長。感受性豊かな少年期を過ごし、大人になられた副館長の専門は「書跡・典籍/古文書」などの文化財です。いろいろ納得できました(笑)
前置きが長くなりましたね。 書簡について、その真贋や内容を調査鑑定したところ、アメリカ滞在中の大久保利通にあてた西郷自筆の書簡原本であることが、判明しました。昭和2年(1927)に紹介されながら所在不明となっていた重要史料の再発見です!
【収蔵品紹介】西郷隆盛書簡
➡リンク
【琵琶湖文化館研究紀要第40号】
再発見した西郷隆盛書簡とその伝来について➡リンク
この書簡は、琵琶湖文化館地域連携企画展として、令和6年5月27日より滋賀県公文書館において特別公開する予定です。
皆さんおまちかね、毎年恒例の “あの講座” でも、 詳しいお話を聞くことができるかもしれません?!(→聞けます!!)
約100年ぶりに滋賀で見つかった逸品に・・・みなさんソワソワしてくださ~い♪♪
滋賀県に新たな指定文化財・誕生!
今日も・うれしいニュースが飛び込んできました!本日、令和6年3月19日、有形文化財5件(絵画1件、彫刻1件、工芸品1件、歴史資料1件、考古資料1件)、史跡1件が、新たに滋賀県指定の文化財等になりました!
〇絹本著色六道絵 中谷求馬筆
天道幅に白雲洞貞幹行年七十六歳写の款記がある
15幅 [大津市・聖衆来迎寺所有/琵琶湖文化館寄託]
〇木造神像 (男神坐像1 女神像1 女神坐像1 女神坐像1)
4躯 [甲賀市甲南町・矢川神社所有]
〇金銅七宝装神輿 1基 [長浜市・常喜町所有]
〇成菩提院制札 4枚 [米原市・成菩提院所有]
一、永禄十一年八月日織田信長 禁制1枚
一、天正十年十二月日丹羽長秀・ 羽柴秀吉連署禁制1枚
一、慶長五年九月日小早川秀秋禁制 1枚
一、慶長五年九月日小早川秀秋禁 制案 1枚
附、禁札箱(元禄十三庚辰秊三月吉祥日の銘がある)一合
〇春日北窯跡出土品 1,627点 [滋賀県所有]
〇春日北窯跡(甲賀市水口町) 1件 [滋賀県所有]
以上の6件です!!いやぁおめでたい!! 何をこんなにコーフンしているのかと言いますと・・・当館にも少なからずご縁のある品が2件・・・新たに指定されております~。お気付きですか?
先ず一つ目は、六道絵。聖衆来迎寺さまから当館にご寄託いただいております。こちらは同寺に伝来する国宝・六道絵15 幅の模本(もほん:模写して作ったもの)ですが、江戸時代後期の文政6 年(1823)に近江国坂田郡今村(現長浜市今町)出身の絵師、中谷求馬(なかたに もとめ:1748~1832)によって描かれました。当館では国宝・六道絵と区別して「文政本」と呼んでいます。
ここで皆さんに思い出していただきたいのが、先日のギャラリートークでの一コマです。会場で、当館の岩﨑学芸員は言いました。複製された作品には、時として「オリジナル(原本)と同じくらいに伝わる情報がある」と〔3/11付けブログ〕 。
経年とともに劣化するオリジナルの情報を今にとどめるという意味では、代替品はむしろ後世にとってはかけがえのない文化財となり得る・・・あの時、“何か”を必死に伝えようとした学芸員の表情・・・まさしく!この度の新指定のことではないでしょうか??!我らが学芸員、見事な伏線回収(!)でゴザイマス(笑)。
皆さま、模本をモホンと侮るなかれ・です!!本図は、原本のきわめて正確な模本であり、原本で確認し難い図様を把握することができる絶好の資料として評価されました。
そして、もう一つは成菩提院制札です。そう、昨年11月に実施した地域連携企画展「成菩提院 寺宝展」の会場でも展示されていた制札です。講演会では、柏原宿歴史館の谷口徹氏に詳しくお話をうかがいましたね〔11/6付けブログ〕。織田信長や丹羽長秀、羽柴秀吉、小早川秀秋らの花押が鮮明に残っていたあの制札。県内では、紙に書かれた古文書の「禁制」は相当数存在するものの、木札の形で保管され、かつ保存状態の良い中世の「制札」はめずらしく、戦乱に巻き込まれた戦国期近江の歴史を力強く語る歴史資料として、このたび指定されました。
ご縁のあった作品の価値が改めて再認識される喜び♡滋賀県の、滋賀県らしさが際立つ新指定文化財でございます♪