山本梅逸(やまもと ばいいつ)は江戸時代後期を代表する画家です(1783~1856)。生涯の友となる中林竹洞(なかばやし ちくどう)とともに絵を学び、京都に出てさらに研究を積み画家として大成しました。名古屋と京都を往復する間、近江に滞在することもしばしばで、梅逸を応援する裕福な商人もいて、梅逸の描く花鳥画、山水画は、当時の京都画壇を席巻していた円山四条派に、勝るとも劣らぬ写実性と流麗さをもつものとして、新鮮に受け入れられました。
本図は、嘉永元年(1848)、66歳の時の作品。山深い静寂の地に建つ草庵の周囲には、満開の梅の花が咲き乱れ、背後の岩山の間から滝が流れ落ちる。淡彩を用い、春の穏やかな風景がよく描かれている。
前景、中景、後景と三段階に山を積重ねてゆくことにより、その高さ、奥行きなどを表現しようとする。またその間に梅花や霞を配することにより、山の連なりを出すことに成功している。中国画の伝統を基に、日本的な山水画を完成させた梅逸の代表作の一つである。