琵琶湖文化館 the Museum Of Shiga Pref
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近江の文化財

 洋犬図     波多野等有筆   2曲1隻     江戸時代   本館蔵

 犬を家で飼っているという方々は多いことでしょう。犬は最も早く人に飼育された動物で、すでに縄文時代には狩猟用に飼い馴らされ、家族の一員として扱われていました。それは犬を人と同じように手厚く葬った例が全国で多数見つかっていることからもわかります。
 現在は世界の様々な外国犬を見ることができますが、外国犬の渡来が盛んになるのは近世に入ってからのことです。主に中国やヨーロッパからで、座敷犬として小型のチンも人気がありましたが、当時ヨーロッパ人らが連れてきたグレイハウンド種のような大型の狩猟犬も珍重されました。当時は「 南蛮犬(なんばんけん) 」「唐犬」などと呼ばれ、徳川家康も狩猟用に多数の「南蛮犬」を飼っており、それに倣う大名家もあらわれ、勇猛で珍しい犬を飼い馴らすことは一種のステータスシンボルとなっていました。
 近世まで犬はほとんど放し飼いでしたが、やがて犬のペット化が進むに伴って、犬を首綱で引く場合や、家の中で飼う場合が多く見られるようになってきます。『南蛮屏風』に描かれている犬たちを見ると、南蛮人の連れている犬はすべて首綱でつながれています。こうした姿が大きく影響したものと思われます。
 図版は、室町時代の水墨画家 雪舟(せっしゅう )の流れをくむ 雲谷(うんこく)派の画人波多野等有(はたの とうゆう:1624~1677)の筆によるもので、二曲の金屏風に顔を後ろに向け、左前足をあげたポーズで鎖につながれる洋犬を描いています。このような図様の洋犬図は雲谷派や長谷川派の絵師の中に類例が見られます。例えば長谷川等彜(とうい)の「洋犬図屏風」を写したと思われるものに、酒井抱一の「洋犬図絵馬」、狩野玄徳の「洋犬図絵馬」などがあり、いずれも等有の洋犬図とほぼ一致し、このような図様の洋犬図が流行していたことがうかがえます。
 なお本図は、平成27年(2015)に東京の渋谷区立松涛美術館で開催された展覧会「いぬ・犬・イヌ展」に出品しました。

( 上野 良信 )