琵琶湖文化館 the Museum Of Shiga Pref
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近江の文化財

 地蔵菩薩像   1幅     江戸時代   本館蔵

 数多くの仏さまの中で、最も私たちに親しみがあるのが地蔵菩薩像ではないでしょうか。地蔵菩薩は「お地蔵さま」、「お地蔵さん」と親しみを込めて呼ばれています。また、お地蔵さまといえば、賽の河原で子供を鬼から守る話など、子供にまつわる仏として親しまれています。
 琵琶湖文化館には、地蔵菩薩が雲に乗って眼前に現れる姿を描いた一幅の絵が所蔵されています。その表情は柔和で見る者に安心感を与えます。あらためてお姿を見ると、頭は剃髪(ていはつ)で、袈裟(けさ)を身につけ、左手には宝珠(ほうじゅ)を持ち、右手には錫杖(しゃくじょう)を持っています。
 さて、地蔵菩薩の「地蔵」は、古代インドのバラモン教の中で、最も古い神様の一つである地神として登場します。この地神は、本来は女神なのですが、後に男神に変り、やがて仏教の中に取り入れられます。
 地蔵信仰は中国、朝鮮を経て奈良時代に日本に伝来し、末法思想として人々の不安が高まった平安時代の十世紀以降に注目されるようになります。
 天台宗の源信(942~1017)が記した極楽への往生を説く『往生要集』で、地蔵菩薩は阿弥陀仏の聖衆として、観音・文殊・弥勒・勢至菩薩とともに悪道におちいろうとする衆生を救い極楽浄土に導くものとして説かれるようになると、極楽往生を願う貴族層に地蔵信仰が広まりました。
 その後は民衆の信仰の中にとり入れられ、地蔵菩薩は民衆に寄り添う菩薩として受け入れられるようになります。地蔵菩薩は僧の姿をしているなど、その姿からも人々により身近に感じられる存在であったのです。
 現在でも路傍や四辻に安置されているお地蔵さまを見ないことはなく、そこには常に香華や供物がそなえられていて、参拝する足跡はたえません。地蔵菩薩のように日本の民衆社会にまで根を下ろした神仏は他にないと言えるでしょう。

( 稲田 素子 )