琵琶湖文化館 the Museum Of Shiga Pref
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近江の文化財

絹本著色鳥禽図       1幅 江戸時代
(けんぽんちゃくしょくちょうきんず)
本館蔵
法量 縦120.0 cm× 横43.3 cm

 近年、大ブレークしている伊藤若冲(1716~1800)は、江戸時代中期に京都・錦市場の青物問屋の子として生まれました。画家としてのデビューは比較的遅く、家業のかたわら30歳ごろから絵を描き始めたとも言われています。そして、40歳で弟に家督を譲って、隠居した後に本格的な作画活動を始め、以後45年間を画家として生き、長寿を全うしました。
 多くの画家が先人の絵を模写することから始めたように、若冲もまた当時画壇の主流であった狩野派の絵から多くを学びました。ところが、「絵から学ぶだけでは、絵を超えることはできない」と思い至り、眼前の対象を描き、真の姿を表現しようと、自宅の庭で数十羽の鶏を飼い、その生態をひたすら観察し続けたのです。その結果、鶏だけでなく、草木や岩に至るまで、対象を自在に描けるようになりました。そして、42歳ごろから「動植綵絵」に着手し、10年の歳月を費やして全30幅の大作を完成させました。この作品は、あふれるばかりの生命力と目の覚めるような極彩色が一つの宇宙を構成しており、若冲の代表作となっています。

 近年、若冲研究の進展により、30歳代の初期の作品もいくつか見いだされてきました。本図の「鳥禽図」もその一つです。画面の上部から屈曲した松の枝が垂れ下がり、突き出た奇形の岩上に尾羽を長く垂れた一羽の色鮮やかな錦鶏が止まっています。華やかな色彩を重ねる羽毛は全体的にやや平面的ですが、濃淡を微妙に使い分けて丹念に描かれています。このような図様は、「動植綵絵」のひとつ「雪中錦鶏図」に先行するもので、早くから動植物に対する鋭い観察眼が備わっていたことがわかります。
 本図に若冲の署名はなく、「藤女釣印」と「若冲居士」の二つの印章が捺されています。

( 上野 良信 ) 

※「鳥禽図」は、令和3年(2021)2月6日から3月21日まで、県立安土城考古博物館で開催された、地域連携企画展「琵琶湖文化館の『博物誌』―浮城万華鏡の世界へ、ようこそ!―」に出展されました。



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