琵琶湖文化館 the Museum Of Shiga Pref
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近江の文化財

紙本著色近江八景図 吉田元陳筆    6曲1双 江戸後期・18世紀後半
(しほんちゃくしょく おうみはっけいず よしだげんちん ひつ)
  本館蔵
   法量 (各) 縦 155.5 × 横363.0 cm
 
 

 湖南地域の高台から琵琶湖南部を望んだ景観に、近江八景を示唆するモチーフを描き込んだ作品です。
 琵琶湖南部周辺の八つの勝景を指して「近江八景」と言います。一般的に知られているのは、比良暮雪・堅田落雁・唐崎夜雨・三井晩鐘・矢橋帰帆・粟津晴嵐・石山秋月・瀬田夕照の八つで、能書家としても知られる公家・近衛信尹(このえ のぶただ・1565~1614)が江戸時代初期に選定したものが始まりと考えられています。近江八景は中国・瀟湘八景(しょうしょう はっけい)になぞらえて名付けられたものであり、瀟湘八景への憧れから、琵琶湖の周辺地域、すなわち「近江」の地に見出された景観です。
 本作に描かれる近江八景は以下の通りです。

【右隻】
  石山秋月…第一・二扇 石山寺と月
  瀬田夕照…第二・三・四扇 瀬田の唐橋と夕暮れ時の家々
  矢橋帰帆…第五・六扇 矢橋港とそこに戻る帆船
  粟津晴嵐…第五・六扇 膳所城から瀬田の唐橋へ続く松並木



【左隻】
  三井晩鐘…第三・四扇 三井寺の境内にある鐘楼
  唐崎夜雨…第五・六扇 雨が降る唐崎の松
  堅田落雁…第六扇 堅田浮御堂と飛来する雁の群れ
  比良暮雪…第六扇 雪が積もる比良山



 右隻の右下端と左隻の左下端に、「法眼元陳筆」の款記と「守清」の印章があることから、江戸時代中期に活動した絵師・吉田元陳(よしだ げんちん・生年不詳~1795)の作であることが判明します。吉田元陳は、諱を守清といい、京都の豪商・角倉(すみのくら)氏の縁者と伝わります。狩野派の絵師・鶴澤探鯨(つるさわ たんげい・1687~1769)に師事し、画業に秀でていたため、法橋位、続いて法眼位に叙せられました。現・京都市東山区の清水寺近辺に居住し、寛政7年(1795)11月21日に死去、東山区の金戒光明寺に葬られました。『古画備考』によると、寛政2年(1790)に行われた御所造営の際に、円山応挙や長澤芦雪らとともに襖絵などの制作を担当する絵師を勤めています。

( 萬年 香奈子 )