梨子地に蓮弁が散る意匠をあしらった厨子の中に、阿弥陀如来立像を納めた念持仏厨子です。この阿弥陀如来像は、
日本で数少ない銀でできた仏像です。記録によれば、東大寺の阿弥陀堂に安置されていた阿弥陀如来像は銀で作られていたといいます。また東大寺法華堂の不空羂索観音像の宝冠にも銀製の阿弥陀化仏があり、阿弥陀如来像を銀で作る伝統があったことを知ることが出来ます。
浄厳院の阿弥陀如来像は像高7.8㎝のとても小さな像ですが、頭髪は清涼寺式釈迦如来のように螺旋状に巻き込んでおり、面相もはっきりと造形されて破綻が見られません。また躰部は立体感のある表現で、着衣の衣文などにも小ささを感じさせない精巧な造形がみられます。台座蓮肉部も銀でできており、多数の瓔珞があしらわれています。
阿弥陀如来像の制作は鎌倉時代、厨子は室町時代の制作と考えられます。本像のような特異な作品が伝来しているのも、近江における仏教美術の幅の広さを象徴しています。
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