木造阿弥陀如来坐像 1躯 | 平安時代 |
(あみだにょらいざぞう) 日野町 長福寺所蔵 | 像高 43.7㎝ |
日野町の松尾に毘沙門堂という小堂があり、本像はその本尊として安置されてきた阿弥陀如来坐像です。寺院はすでに名称を残すのみとなっており、その来歴を知ることは出来ませんが、本像と、共に伝来する十一面観音像(重要文化財)の存在が、寺院を偲ぶよすがとなっています。
現在は両手の第一・二指を捻じた阿弥陀如来の姿ですが、両手首以下が後補になっており元々の尊名は分かりません。 頭・体の幹部は、右臂・左前膊袖口、脚部を含み、木心を右腰の外側に外した縦木一材から彫出しており、内刳りは施していません。また彩色などの痕跡も無いことから、素地像として造立されたものとみられます。頭部には螺髪を表さず、耳もおおよその形を作り出しているのみとなっています。脚部に対して、上半身がとても高く、体奥も浅く造形されています。穏やかに整えられた表現から、同寺の十一面観音立像と同時期の平安時代後期(12世紀)頃の制作と考えられます。 この阿弥陀如来坐像は近江では比較的珍しい、全身にノミ跡を残したいわゆる「鉈彫仏」です。ノミ跡は全身に及んでおり、頭部や着衣部は粗い跡を残すのみですが、面相や肉身部、また着衣部でも右肩の大衣や背面上半では、表面を平滑に整えた後に、わざわざ細いノミを丁寧に横方向に並べるように刻んでおり、とても装飾的な表現となっています。 近江の鉈彫では、湖東三山の一つである金剛輪寺の本尊・聖観音立像や櫟野寺の観音像などがよく知られていますが、本像も近江を代表する鉈彫像の一つと言えるでしょう。 ※木造十一面観音立像(長福寺) |
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Seated Amida Wood Height 43.7cm |