琵琶湖文化館 the Museum Of Shiga Pref
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近江の文化財

天部形立像  1躯 守山市指定文化財 奈良時代 
(てんぶぎょうりゅうぞう)            守山市 蜊江神社 総高 74.3cm

守山市笠原町に鎮座する蜊江神社(つぶえじんじゃ)は、野洲川の洪水で神輿が流された際に蜊(タニシ)が神輿を背負って守ったと伝える神社です。蜊江神社には多くの文化財が現存しますが、その多くが仏教関係のものであり、当社が神仏習合の影響を強く受けていたことを物語っています。現在も境内には地蔵院、毘沙門堂が立ち並び、神仏分離を経た現在では貴重な社景を残しています。

ここに紹介する天部形立像は蜊江神社に伝わる文化財の中でも最も古いもので、近江の文化史上でも非常に重要な像です。本像は損傷が激しく原形をとどめる部分が少ないですが、その服装などから吉祥天であると考えられます。上半身は襟がV字の衣を着け、その衣の上から下半身にまとった裳と一緒にベルト(もしくは帯)で締めています。注目されるのは、下半身に左右三本ずつ紐のようなものが出た前掛け状の布を着けることです。これは蔽膝(へいしつ)と呼ばれる装身具で、吉祥天など女性の仏が身に着けるものです。また、構造上特徴的なのは、足から下の台座、さらに葺軸(ふきじく)と呼ばれる台座の下から伸びた棒状の部分まで一木から彫り出される点です。これは唐招提寺(奈良県)木彫群などに代表される奈良時代の木彫像に共通の技法です。これらのことから本像は、全国的にも非常に類例の少ない奈良時代の木彫の吉祥天像と考えられます。

奈良時代の吉祥天像は、国家安泰などを祈願する吉祥悔過(けか)と呼ばれる国家的な法要の本尊として造立されることが多くありました。本像が蜊江神社に伝わった経緯は明らかではありませんが、当地域と都である奈良との関係を窺わせます。

 

( 和澄 浩介 )



※写真をクリックすると、拡大画像を見ることができます。

※「天部形立像」は令和4年(2022)10月8日から11月27日まで、野洲市歴史民俗博物館(銅鐸博物館)で開催された、地域連携企画展「近江湖南に華開く宗教文化 ー野洲・守山の神と仏ー」に出展されました。