琵琶湖文化館 the Museum Of Shiga Pref
  • サイト内検索
収蔵品上部画像
  1. ホーム
  2.  > 近江の文化財
  3.  >> 収蔵品紹介
  4.  >>> 彫刻
  5.  >>>> 木造二天立像

近江の文化財

木造二天立像  2躯 近江八幡市指定文化財    平安時代
(もくぞうにてんりゅうぞう)      近江八幡市 光照寺所蔵 像高 持国天97.7㎝ 多聞天99.4㎝




※画像をクリックすると、拡大して見ることができます。
 

 持国天、増長天、広目天、多聞天から構成される四天王は、本尊の守護として多くの寺院で祀られています。この四天王のうちの二尊のみを抜き出して寺院の守護とした形式を二天と呼んでおり、堂内だけでなく仁王像のように門などにも安置されることがあります。
 光照寺の二天像(持国天・多聞天)は、同寺の本尊薬師如来坐像(重文)の守護として伝わりました。両像とも動きが小さく、控えめな忿怒相をあらわし、全体的に穏やかな作風を示します。このような特徴は平安時代後期頃のもので、仏敵を威嚇する武神としての性格の中に平安貴族好みの温和な雰囲気を感じることができます。また、持国天の小さくむき出した牙や腹にあらわされた鬼面、多聞天の胸にあらわされた波のような文様や太もものフリル状の飾りなどには繊細な意識がうかがえます。平安時代後期でも12世紀に造立された神将像は太造りで重々しい作風のものが多いですが、本像は腰高でスタイルが良く、軽やかな印象を受けます。このような特徴は11世紀の像によくみられるもので、当代の傑作として名高い国宝の広隆寺(京都府)十二神将像などが代表例です。本像も11世紀に遡る可能性があり、バランスの良い大らかなプロポーションと繊細な表現を兼ね備えた名品と言えます。

 なお、足元の邪鬼は造像当初のものを伝えており、失われやすい邪鬼が残っている点でも貴重です。持国天の邪鬼は、一部に明確に鑿跡を残した鉈彫りという表現がなされており、本体とは異なる荒々しい作風が見所です。

( 和澄 浩介 )