琵琶湖文化館 the Museum Of Shiga Pref
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近江の文化財

木造阿弥陀如来坐像     1躯 重要文化財    平安時代 
(もくぞう あみだにょらいざぞう)          高島市 洞照寺 像高 112.1cm

高島市朽木雲洞谷(くつきうとだに)洞照寺に伝来した半丈六の阿弥陀如来像です。洞照寺は、もとは現在の地から直線距離で約3kmほど北東の若狭街道(鯖街道・現国道367号線)沿いの野尻にあったとされます。野尻は朽木の中でももっとも栄えた市場に隣接し、朽木の盆地の出入り口の地です。この地は若狭と京都をつなぐ交通の要衝で、古くから開かれていました。

本像はなで肩で、奥行きの薄い体形や浅く等間隔に整えられた衣文(えもん)から、平安時代後期(12世紀)に造立されたと考えられます。小粒の螺髪(らほつ)や碗を伏せたような整った肉髻(にっけい)、上瞼にうねりの少ない伏し目がちな目などは、平等院鳳凰堂の本尊を造立した名仏師定朝(じょうちょう)の作風にならったものです。構造は前後二材からなる寄木造で、半丈六の堂々たる姿をあらわしています。

本像で特筆すべきは、光背と台座がほぼ造立当初の姿をとどめていることです。仏像の付属物である光背や台座は、本体と異なり、損傷が大きくなると修理せずに造り変えられることがほとんどです。このため、台座や光背も含めて造立当初のものがのこっている本像は非常に貴重です。本像の光背は、頂点に定印を組む胎蔵界(たいぞうかい)の大日如来、その左右下方に各6体の飛天を半肉彫り(レリーフ)であらわします。飛天は雲に乗っており、舞い上がった天衣が光背の縁を炎のように飾っています。台座は9段構成の豪華な蓮華座で、框(かまち)などの一部を除いて当初のものがのこります。飛天光背も9段の蓮華座も、定朝以降に流行した形式です。台座、光背を合わせると、2.5mに迫る大きさとなります。

本像のような大型の像が朽木の地に伝わった経緯は明らかではありませんが、古代以来の交通の要衝に規模の大きい寺院が建立され、その本尊格として造立されたものと考えられます。
 

( 和澄 浩介 )



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