琵琶湖文化館 the Museum Of Shiga Pref
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近江の文化財

堆朱香合(ついしゅこうごう)  2合 室町時代   (法量) その1 直径: 11.1cm  高: 4.6cm
大津市 聖衆来迎寺所蔵           その2  直径: 11.2cm  高: 4.7cm

 坂本の聖衆来迎寺に伝来した堆朱の香合2合です。ともに中央に大振りな牡丹とみられる花を表し、その周囲には、葉が埋め尽くす意匠が表されています。花の形態や葉の形などには違いを見せており、対としての対比を意識したものとみられます。

 堆朱は、中国において唐・宋代ごろから始まった漆芸技法の一つで、中国では「剔紅(てきこう)」と呼ばれました。素地の上に、油を混入した漆を何層も重ね、乾燥させた後、文様を彫り表したもので、立体的な表現が特徴です。本品のように草花を表したものの他、鳥獣や、飛天の姿をあらわしたものなどがあります。

 本品は、木製の素地の上に、えんじ色の漆層を重ね、さらに朱漆を何層も塗り重ねた後、草花を彫り出しています。蓋と身の口縁には、それぞれ一条の段をもうけています。また、刳り上げた底面と香合内部には、黒漆が塗られています。

 底面には、針書で、その1には「張成造」と、その2には「楊茂造」の銘記が施されています。これは、中国・元代に活躍した彫漆師の名で、後世の堆朱師に尊崇されました。本品の針書銘も、前代名工の作品に仮託したものとみられます。

 県内では数少ない漆芸工芸品の逸品です。

 
 Incense Box
 Wood Lacquered by Urushi
 Muromachi period
 A. Width 11.1 cm  Height 4.6 cm
 B. Width 11.2 cm  Height 4.7 cm
 Shojyuraigou-ji, Ootu,Shiga