仏教の中には唯識思想というものがあります。これは、全ての事象は心のはたらきによって作り出されもので、心のほかに対象物は存在しない、という考え方です。成唯識論とは唐の世親(せしん)が説いた唯識三十論頌(じゅ)の注釈書であり、日本へは奈良時代に将来されました。
この経典は、奈良興福寺(こうふくじ)において出版されたもので、墨痕鮮やかな文字が整然と並んでいますが、実はこの文字は印刷された経典で春日版(かすがばん)と呼ばれています。本品は多少傷んではいるものの、表紙が出版された当初のまま残されているという点で特に注目されます(ただしひもは後補)。また、経文全体には江戸時代の区切り点などが施され、文字の脇にはアクセントを示す声点が打たれ、読み仮名も付されていることから、この経典は実際に声を出して読まれてきた経典であることがわかり、僧侶の勉強の姿を垣間見ることができます。
この経典は、平成17年(2005)に県内の個人から文化館に寄贈されました。
この経典は、奈良興福寺(こうふくじ)において出版されたもので、墨痕鮮やかな文字が整然と並んでいますが、実はこの文字は印刷された経典で春日版(かすがばん)と呼ばれています。本品は多少傷んではいるものの、表紙が出版された当初のまま残されているという点で特に注目されます(ただしひもは後補)。また、経文全体には江戸時代の区切り点などが施され、文字の脇にはアクセントを示す声点が打たれ、読み仮名も付されていることから、この経典は実際に声を出して読まれてきた経典であることがわかり、僧侶の勉強の姿を垣間見ることができます。
この経典は、平成17年(2005)に県内の個人から文化館に寄贈されました。