副島種臣(そえじまたねおみ・1828~1905)は肥後佐賀藩(佐賀県)出身の政治家です。幕末期に尊王攘夷運動に奔走し、維新後は外務卿に就任します。一時期下野しますが宮中に出仕して政府に復帰し、松方内閣の内務大臣などを勤めました。
政治家として近代史に名を残した一方で、「蒼海(そうかい)」と号する漢詩人・書家としても活躍し、その業績は日本書道史上でも高く評価されています。
副島の書は古典の学習を基礎にしながらも極めて多彩で、制作時期によっても大きく書風が異なります。本品は明治25年(1892)の作で、書家として最盛期を迎え充実した筆力をいかんなく発揮した、本格的な大作です。
書かれたのは副島が好んだ李白の詩「登金陵鳳凰台」で、一扇に二行ずつ、ときおり渇筆を交えながら大きな文字で、迫りくるほどダイナミックに表現しています。空間構成も計算し尽くしており、スケール大きく重厚な作品の魅力に、誰しもが圧倒されます。副島の代表作の一つといえるのではないでしょうか。
( 井上 優 )
※「副島種臣 書跡」は、令和6年(2024)9月21日から11月24日まで、(公財)日本習字教育財団観峰館にて開催の「滋賀限定!近江ゆかりの書画-古写経から近代の書まで-」に出展しています。