月別アーカイブ: 6月 2026

琵琶湖の上で拓本(たくほん)~こんなお仕事もあります!~

 梅雨の晴れ間となった6月某日、ライフジャケットを着用し、長靴をはいた学芸員が舟に乗って出動しました!その行先は・・・。

 琵琶湖文化館の中池には、歌碑が建っています。 歌碑には、吉井勇(1886~1960)が書いた「うつしよの夢にうつつに見せしめぬ琵琶湖の上に浮かぶ美の城」の和歌が彫られています。歌の作者である吉井勇は、歌人として知られる他、脚本家や小説家など多彩な顔を持っている文化人です。歌碑は、昭和36年3月20日の開館時に銭高組より寄贈され、当日は除幕式が行われました。当館の情報誌の「浮城」という名前は、この歌碑から取られています。

 ところで、皆さんは「拓本(たくほん)」ってご存じでしょうか?拓本は、石などに刻まれた文字を墨を使って紙に写しとる、昔から伝わる技法です。難しそうと思われた方、いえいえ、お家でお金やコインの上に紙を置いて鉛筆で擦(こす)ったことはありませんか?それも拓本です。

 こういった大きなものを採る場合は、和紙を水で濡らしてタオルで貼り付け、表面が乾かない内に「練墨(ねりずみ)」という油を多く含んだ墨を付けていきます。

 
  墨を丁寧に少しずつ付けていくと、文字がみるみる浮かび上がってきます。た、楽しい!と、今月イチでテンションの上がる学芸員!!


 湖岸沿いを歩く人たちも「何やっているのだろう?」と思われたかもですが、気にせずどんどん墨を付けていき、紙がはがれる寸前までに取り終えることができました。
 本日の労働成果は拓本3枚!次回はぜひ全面を1枚の紙に収めたい・・・新たな野望を抱く学芸員なのでした(笑)。

 こうやって拓本を残しておくことは、石碑などが万が一失われた場合でも、大切な記録となります。このような、墨や紙以外は身近な道具で手軽にできる拓本の魅力を知っていただければ幸いです。

 今回採った拓本は、碑文に刻まれた文字の原本にあたる実際の掛軸とともに、お披露目される機会があるかもしれません。こうご期待!

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滋賀の文化財講座『花湖さんの打出のコヅチ』第2回 あこがれ八景

 6月17日に開催しました滋賀の文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」第2回。講師を務めたのは今年で3回目の登壇、当館で絵画担当の萬年香奈子(まんねんかなこ)学芸員です。「見やすいスライド」「聞き取り易い話し方」を心がけ、準備万端で臨んだ今回の講座。若手学芸員のひたむきな努力の成果が、皆さんにしっかり届いていれば嬉しいです♪

 
 さてさて、そんな講師が選んだ今回の講座タイトルは『「八景」とその絵画』。 ・・・でも、ちょっと待ってください。本講座は“滋賀”の文化財講座です。「八景」と言ったら、当然「近江八景」と思って参加された方も多かったのでは?・・・ところがどっこい! 講座は“驚き”がいっぱいの内容でした。

 まずは近江八景のルーツとなった、中国の「瀟湘(しょうしょう)八景」から始まり、日本各地に広まった数々の「八景」を作品とともに紹介。そして、お待ちかねの我が「近江八景」の特徴へと、1時間半の講座で見事にまとめ上げました♪


 中国で11世紀の書物に登場し、元祖「八景」とも言われる瀟湘八景。
・・・おやおや、これって近江八景にそっくりな情景じゃないですか!? もしかせずとも近江八景ってすごいのでは!?

 ところ変わって、日本各地の八景。
・・・近江八景のほかに、こんなに様々なご当地「八景」があるなんて知らなかったー! でも、内容を詳しく見ると、元祖の要素を完全にコンプリートしている地域は少なく皆さんオリジナル感にあふれています。
・・・おやおや? となれば、元祖・瀟湘八景にそっくり(完璧にリスペクト)な近江八景は、やっぱりすごい!?日本にある八景の『代表』を自負させていただきま〜す♪

 滋賀県民は信じています。他府県の方に「日本を代表する八景は?」と問いかければ、全員が「近江八景!」と答えてくださることを・・・。今回、作品に表現された様々な「八景」があることを知り、さらにお国自慢の度合いが高まった滋賀県民です♡身近にあるいつもの風景が、実は美しくも歴史ある憧れの風景なのだということ。それが、私たちの誇りです🌟

【受講した皆さんのご感想 】
近江八景にモデルがあったとは思いませんでした。
実例が多く分かり易かった。テーマが興味深い。
古くから近江という地が人々のあこがれの地であったこともよく理解できた。
近江八景に描かれた風景が現在も大津に残っているのが誇らしい 。
水墨画や工芸品に近江八景が描かれているのは面白い。「憧れの風景」をいつでも見られるところに住んでいて幸せです。

講師を務めた萬年香奈子学芸員
(琵琶湖文化館)

 今回の講座を通して、地元・滋賀の素晴らしさを再認識していただけたようで、講師もホッと胸をなでおろしていました(笑)。

 なお、アンケートにお寄せいただいた疑問・質問には、後日、本ブログにてお答えする予定ですので、こちらもお楽しみに♪

 ちなみに今回の講座、なんと滋賀県から中国湖南省に派遣されている「滋賀県誘客経済促進センター」の所長さんや湖南師範大学の先生も、オンラインで視聴されていました。湖南省…そうです皆さん! 元祖八景「瀟湘八景」の発祥の地!本場の八景では今、一体どんな景色が広がっているのでしょうか??

 「八景」でつながり、「八景」をきっかけに、観光面でも更なるご縁で結ばれますよう、滋賀の魅力を現地から大いに発信していただきたい!

 ここで文化館学芸員は声を大にして言いたいと申しております。
   願わくは、「八景」の研究調査で現地に行きたいと!
 ・・・よしっ!世界にはばたけ! 近江八景!(と文化館学芸員!!)

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仏像撮影の舞台裏 in 聖衆来迎寺

  5月某日、徐々に夏へと近づく日差しを浴びて学芸員が向かった先は、大津市比叡辻の聖衆来迎寺。仏像の撮影という貴重なお仕事をしてきました!

 現場に到着したらまずは撮影する場所を考えます。像を移動させられるか、機材を全て置けるか、天井の高さは充分かなど、考慮すべき条件は色々あります。それらを踏まえて、限られた空間の中で撮影場所を吟味していくのです。ベストな場所が決まったら、機材をセッティングして早速撮影を……と、その前に大切な準備が待っています。

それは、毛筆を使って細部のほこりや汚れを丁寧に払う作業。写真うつりのためだけでなく、保存のためのお手入れという意味でも、万全の状態になっていただいてから撮影に臨みます。

 
 

 
 

 仏像の撮影で最も重要なのは、ずばり光の当て方。同じ仏像でも、光の角度によって表情や質感がガラッと変わってしまうのです。そこで私たちは、明るさを細かく調整しながら何枚もシャッターを切ります。さらに、像をぐるぐると動かして、正面、背面、斜め、顔のアップ、はたまた像底など、あらゆる角度からその姿を記録していきます。
 こうして入念に撮影した写真は、学術研究や書籍の図版として活用されていきます。鑑賞の面でも学術の面でも、仏像の魅力を最大限お伝えできる写真を目指して……数時間に渡る撮影、完了しました!

  さて、今回撮影させていただいた聖衆来迎寺さんは、毎年夏に「虫干会(むしぼしえ)」を開催して、寺宝を公開されています。以前もお伝えしましたが(4/27付ブログ)、今年はなんと私たち琵琶湖文化館の地域連携企画展とコラボレーションしちゃいます!

  聖衆来迎寺の歴史をめぐる、より充実した内容となるように準備を進めていますので、ぜひお見逃しなく!

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