琵琶湖文化館 the Museum Of Shiga Pref
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近江の文化財

 秋叢冷艶図(しゅうそうれいえんず) 内海吉堂筆 1幅 大正6年(1917) 本館蔵
 敦賀出身の画家・内海吉堂(うつみきちどう・1850~1923)は、近年、評価が高まる画家の一人です。令和5年(2023)敦賀市立博物館にて没後100年を記念した展覧会が開催され、改めてその作品や画業に注目が集まりました。吉堂は、安田老山等と同じく、明治時代前期に中国に渡り、その地の文人と交わり、伝統的な中国絵画の技法を習得しました。帰国後、日本各地を遊歴する中で、近江八幡や多賀に逗留し、近江商人の庇護を受けたことで、優れた絵画作品が近江に遺されました。
 当館にも、内海吉堂の優品が所蔵されています。大正6年に描かれた本作は、牽牛花(アサガオ)と黄蜀葵(トロロアオイ)など晩夏より初秋に咲く花々を描いた作品で、奇石や竹などの吉祥の画題も添えられます。輪郭線を用いない没骨法を中心に、鮮やかな彩色で描かれています。

 賛文も吉堂が作詩したもので、「幾種の幽芳は短籬を繞り、軽紅淡碧は各離披す。牽牛花は小秋に才老し、風雨は黄蜀葵を傾斜せん。」と書いています。意味は、「幾つかの美しい花が庭の籬(まがき)を廻り、淡い紅や碧の花が満開となっている。アサガオは初秋に少しずつ枯れていき、秋雨が黄蜀葵を打ち付けている」というもので、描かれた表面的な美しさの中にある季節の移ろいが表されています。


















 大正10年(1921)、八幡商人の西川庄六主催で吉堂の作品展が開催されています。その目録には、奥村源蔵所有の作品として、箱書に自署した本図の名称と同じ作品が展示されており、元は「富貴春風図」との対幅でした。作品や箱書から想像するに、吉堂の画業を支えた人々への御礼の気持ちが込められた作品といえるでしょう。


( 寺前 公基 )