琵琶湖文化館 the Museum Of Shiga Pref
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近江の文化財

 服部岩吉胸像     森大造 作     近・現代(昭和期)     本館蔵

服部岩吉(はっとりいわきち:1885~1965)は大正から昭和期にかけて活躍した政治家です。滋賀県栗太郡御園村(現栗東市)の出身で、実家は酒造業を営んでいました。父(栗太郡会議員、金勝村会議員を務めた)も同じ名前であったため、二代目服部岩吉と呼ばれる場合があります。

戦前には立憲政友会に属して滋賀県会議員、代議士などを務め、戦後は厚生政務次官、初代民選滋賀県知事として、湖国における政党政治をリードし続けます。滋賀県における農林水産業の発展や文化・観光の振興、文化財保護行政の推進などに大きな役割を果たしました。滋賀会館や滋賀県立産業文化館、滋賀県立短期大学などの創設は、服部知事の政策に基づくものです。琵琶湖文化館の創案者でもあり、昭和36年の開館時にはテープカットを行っています。「江南」の号をもつ文化人でもあり、書画や短歌などを趣味としました。

胸像は滋賀県出身の彫刻家・森大造(もりだいぞう:1900~1988)の作品。石膏で塑型されたものです。滋賀県坂田郡醒井村上丹生(現米原市)出身の森は、東京美術学校彫刻科を卒業して昭和6年(1931)に帝展に初入選し、官展を中心に活躍しましたが、昭和25年以後は「創型会」や「仏教美術協会」などの創立に参加して、それらの団体を中心に作品発表を行うようになります。
また、高村光雲系の関野聖雲に師事したことなどから、肖像彫刻の名手でもありました。琵琶湖文化館前の井上敬之助立像、彦根駅前の井伊直政騎馬像、彦根市金亀公園の井伊直弼立像などは銅像として今なお県民に親しまれているところです。琵琶湖文化館には他にも、森大造が制作した中江藤樹坐像や杉浦重剛坐像など歴史的人物の木彫像を所蔵しています。

本作は石膏像で、おそらく銅像の原型として制作されたものと考えられます。政治的な信念を大切にし、清廉実直で曲がったことを嫌った服部について、世人は本名をもじって「ガン吉」とあだ名しました。そうした真面目で一徹な側面と、他方では率直で親しみやすく、多くの人から愛された人柄の両面を巧みに表現しています。写真などと比べてみても、晩年の像主を活写していて写実性の高い作品です。
結局、本作を原型とする銅像が設置されることはありませんでしたが、滋賀会館前に建立された「滋賀県民の歌碑」の中に、森大造が別途原型制作した、服部岩吉のレリーフ胸像がはめ込まれて、現在は滋賀県庁前庭に移築されています。

(井上優)