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なるほどミュージアム

みなさんはご覧になりましたか?25日(日)の夜にびわ湖放送のローカル番組で、「なるほどミュージアム滋賀」という番組を放送していました。 今回のテーマは「文化財」。なるほどこれは見ねばなるまい・・・と、テレビの前に陣取りチャンネルを合わせてみると、滋賀の文化財講座でもお馴染みの講師:県教委文化財保護課の井上優氏がスタジオゲストでお話されているではありませんか!番組内容も、滋賀県に住む私たちにとって、とても身近で面白い内容だったので、少し紹介しておきましょう。

先ずは冒頭に、滋賀県は国宝・重要文化財の指定件数が、東京、京都、奈良に次いで全国第4位!の多さであるというお話しから、その理由の一つとして日本の仏教の原点ともいえる天台宗総本山比叡山延暦寺さんの存在や、長浜で天災や戦火をくぐり抜けて守られてきた仏さまのレポート、県内のさまざまな仏像の見方や楽しみ方が、紹介されていました。
井上氏のコメントの中には、「滋賀には地域の皆さんに受け継がれてきた『守り伝える文化』がある。これが滋賀に文化財が多い理由の一つ」「その価値をみんなに知ってもらってそれを地域の活力に変えていかなければならない」と熱く語っておられたのが印象的でした。なるほどそのとぉり!!

そして番組内容とは別に、実はすごく気になったことがあります。それはスタジオのセットに用意された、ある2点。1つは仏像の彫刻模型で、番組の中でも「井上さんにそっくりですね」とイジられていたので、皆さんもお気付きになられたかと思います。こちらの模型は普段文化館でお預かりしており、「まさかのテレビ出演!」を、ちょっと微笑ましく見ておりました(笑)。もう1つは、後ろの棚に置かれていた水色が目立つ本・・・見たことある。。。 そう!あれは2014年に発行された「1冊でわかる滋賀の仏像 文化財鑑賞ハンドブック」(発行:サンライズ出版)です!このハンドブックは、県教委文化財保護課さんが企画・編集をされていますが、発刊に際しては当館も協力させていただいており、非常に思い入れのある1冊です。何より分かりやすい!仏像の“いろは”はもちろん、県内の様々な仏像が多数掲載されていますので、是非お手元に置いていただければと思います。

今回放送された番組「なるほどミュージアム滋賀」は、後日YouTubeで動画配信されるそうです。見逃した方は、是非チェックしてみてください。
筆:あきつ

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60年前の大津

当館は、滋賀県大津市にありますが、この大津市の市制120周年を記念した企画展が、大津市歴史博物館で開催されています。その名も「60年前の大津」展です。ん?120周年で60年?これは市制60周年を迎えた昭和33年(1958)当時の広報誌や市制60周年記念誌などを手掛かりに、昭和30年代の大津の古い写真や資料から、高度経済成長期を迎えて急速に変化する大津市の移り変わりを振り返る展示になっているのです。そう、昭和30年代といえば、当館が開館した(昭和36年)頃です。「文化館の写真もあったよ」との情報を得て、これは見逃してなるまい・・と会場へお邪魔させていただきました。

※このブログでは当時の雰囲気をお楽しみいただくため、当館が昭和36年以降に撮影した大津市内のモノクロ写真を紹介します。

展示室は、昭和レトロを感じさせる白黒の写真パネルがいっぱい。琵琶湖岸の埋め立てや山の手の開発、公共施設などの整備がどんどん進められていった時代。写真は、勢いというか、エネルギー溢れる当時の様子を伝えていました。写っている人々の顔もとてもハツラツとしています。そして・・・ありました文化館!あっちにもこっちにも!琵琶湖文化館のコーナーも作っていただいてましたが、街を見下ろす遠景写真の中にも、埋め立てが進む湖岸の風景にも、チラッとチョコッと文化館が写っているのですよ~ついつい身内贔屓な見方をしてしまいましたがね(笑)。そうなんですねぇ、文化館が建った時代ってこんなにも勢いがある時代だったのですね。でなければ、琵琶湖に浮かぶお城を作るという発想も出てこなかったでしょう。ましてやそれを実現するなんて!

入口近くにあったカラー写真には、開館したばかりの当館の5階展望閣から紺屋関(浜大津方面)を撮影した写真がありました。現在は見ることができない(残っていない)建物が写る貴重な写真であると、説明の一文に書かれていたと記憶しています。僕にとっては、一緒に写り込んだ当館の屋根にある石楠花のオブジェが、開館当時は『金色』だったことが、一番の驚きでした(文化館マニアでないとこの感動は理解しづらいかも??)。いや貴重な写真を見せていただきました。是非会場でこの写真を見付けて下さい。
ということで、同じアングルで撮影した現在の写真をご紹介。う~ん、背の高い建物が増えました。当時は三井寺さんまで撮影できたとか。。。でもこれはこれで、現在休館中となっている当館からの貴重な眺めです。

イマドキのtwitterやFacebookで、この会場に掲示されていた琵琶湖文化館の写真をアップして下さっている方もいらっしゃるようです。企画展は11月25日(日)まで開催されています。どこか懐かしい、タイムスリップをしたような時間を、是非会場でお楽しみ下さい。


筆:あきつ

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彫刻をじっくり見る

皆さんは、彫刻(仏像や神像など)をじっくりとご覧になったこと、ありますか?当館のウェブサイトをチェックしていただいている皆さんですので、「モチロン!」と即答?!元気なお返事が返ってくるものと信じておりますが(笑)、改めてその楽しみ方を伝授させていただきましょう。

僕が以前に学芸員さんから聞いた話ですが、例えば、彫刻を調査するとき、学芸員さんは先ず最初に何をする・・・のでしょうか?持ってみる?寸法を測る?写真を撮る?材質を分析する?う~ん、間違いではないのですが、先ずは「見る」!上から下から斜めから、とことん「見る」!ことから始めるのだそうです。コレすごく大事。。。ん?でもこれって一般に私たちが展覧会で展示されている仏像を鑑賞する時にも、出来たりしますよね?!
先ずは少し離れたところから仏像の全体の雰囲気をじっくり・・・続いて近くに寄って真正面から見た後は、中腰で下から少し見上げる感じで(そうすると仏さまと目線が合う)、ガラスケースに入っていたりすると難しいですが、可能であれば横からも後ろからもじっくりと・・・。

そう!仏像の見方のいい見本があります。当館の収蔵品紹介:彫刻の部で紹介している草津市の観音寺さまご所蔵の「木造阿弥陀如来立像」(重文)をご覧ください。まっすぐ立っておられると思っていたら、思いのほか前に乗り出すように意図して作られていたり、衣の一つ一つがとても繊細だったり、いろんな角度から見ることで、「へぇ~」「なるほどぉ~」と気付くことがたくさんあります。こちらの仏像は現在、東京の三井記念美術館で開催中の「仏像の姿(かたち)」展に出品中で、今頃は多くの仏像ファンを魅了していることかと存じます(!!)。とはいえ、この仏さまの像底(足の裏)まで見ることができるのは、当館のウェブサイトだけ?!是非チェックしてみてくださいね。光背もとてもきれいですよ。

また、とある学芸員さんは、こうも言ってました。「茶色く見えるお像でも、よぉ~く見ると、わずか~に彩色が残っている場合がある。そこから連想して、作られた当時の鮮やかな色彩を想像してみるのが面白い。きっとお参りに来られた方たちの度肝を抜いたに違いないでしょうね。むふふん」・・・えぇ~っと、ちょっとマニアックな見方ですが、これもアリです!あり有りデス!皆さんも楽しんでみてください。

この季節、普段見ることのできない文化財が、神社や寺院で特別公開されていることがあります。また11月は「関西文化の日」と称して、関西一円の美術館・博物館・資料館等の文化施設の入館料(原則として常設展)を無料で鑑賞できる機会があります(詳しくはコチラ)。文化の秋、芸術の秋ですよ。皆さんが自分なりの楽しみ方で、素晴らしい文化財たちと出会われることを願いつつ。。。

筆:あきつ

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揉み紙のご縁

「揉み紙をしておられた松田喜代次さんの作品を見せていただくことは出来ますか?」
先日、このような問い合わせのお電話をいただきました。当館は現在休館中であり、残念ながらこちらで見ていただくことは出来ないことをお伝えしましたが、なんだかこのまま電話を切ってしまうのが少し名残惜しく、「何故、作品を見たいと思ったのか」詳しくお伺いしてみることにしました。
すると、「自分は奈良で揉み紙のワークショップをしているが、色々と『揉み紙』のことを調べていると、どうしても松田喜代次さんに突き当たる。そこで松田さんが作られた作品を、実際に是非見てみたいと思った」とのこと。当館のウェブサイト収蔵品紹介に掲載している松田氏の作品を見て、お電話を下さったようなのです。

当館では、平成8年に特別陳列「滋賀県無形文化財 松田喜代次遺作展(松田喜代次の技-もみ紙の世界から-)」展を、平成18年に小企画展示「揉み紙と現代茶陶」展を開催。また、休館となってからは、平成26年に安土城考古博物館において「琵琶湖文化館秘蔵品で味わう 茶を魅る」展において、松田氏の作品を展示公開しました。
揉み紙は、金箔押し・型押し・型紙押し・砂子振り・泥引き・雲母引き・切箔押しなどの唐紙(からかみ)の技法の1つです。和紙に具を塗布して手で揉んで、紙の表面に揉み皺を付けます。唐紙の中でも顔料を引いた素朴な趣の揉み紙は茶人達に愛好され、茶席では掛物や風炉先屏風などに用いられました。松田氏は、昭和39年(1964)に滋賀県無形文化財「揉み紙」の技術保持者として認定された方で、伝統的な揉み紙の技法を受け継いだ最後の技術者とも言われています。

・・・そうなんです!松田氏の作品は本当に素晴らしいのです!既に紹介している『揉唐紙風炉先「渋水郷」』も、それはもう人間技とは思えないほど緻密に計算し尽くされたアートなんです!いえ、人の手だからこそ生み出された逸品!なのです。電話をいただいた方も、「魂が揺さぶられるほどに素敵!」と言っておられました(!!)。わかっていただけて、とても嬉しいです(!笑!)。
というわけで、せめて雰囲気だけでも・・・!と特別にご用意致しました。「渋水郷」と明治30年頃に滋賀県野洲の窯で焼かれた「小富士焼」の煎茶道具です。実物の素晴らしさをイメージしていただけると幸いです。

お電話の女性は、10月最初の日曜日に奈良でワークショップイベントを行うと言っておられました。皆さん楽しまれましたか?遠くても近くても、当館の作品を通じて、このようなご縁をいただいたことに感謝いたします。そうです!揉み紙の素晴らしさを多くの方に知っていただきましょう!当館も頑張ってまいりまーす!

筆:あきつ

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古文書を読めない人も

(タイトルから続きで)大丈夫!古文書(こもんじょ)を楽しめます!!
例えば、展覧会などで戦国武将の書状が展示してあっても「何をかいてあるのか分からないから」と、スルーをしてしまうアナタ!もったいないですよ!!突然ですが、古文書を読めなくても楽しめる「古文書の見方」をちょこっとお勉強したので、皆さんにも伝授させていただきましょう~!ポイントは「読み方」ではなく「見方」なんですが・・・ね!

『古文書』と聞いて苦手意識があるヒトは?(ハイッ!)ですよね~難しいですよね~読める気がしないですよね~。たった数百年前の字なのに何故?!とは思いますが、きっと戦国時代の人たちも、現在のスマホの絵文字は理解不能だと思います!(^^)!。それはさておき、、、古文書を勉強されている方は、字を読んで書かれている内容を解読して「なるほど面白い」となるのでしょうが、では読めないヒトはどうしましょう。。。そこを「見る」ことで楽しめたりするのですよ!

『古文書』とは、○○さんから●●さん宛てのお手紙です。皆さんもちょっと改まった縦書きのお手紙を書いたことがありませんか?なんとな~くルールのようなものがありましたよね?相手に失礼のないように色々と・・・うぅっ、就職活動の時に履歴書と一緒にご挨拶の一筆を送るのにとても気を使った思い出が。。。同じように、昔のお手紙(古文書)にもいろんな決まり事があり、それに則った書き方をしている(丁寧) か、外れた書き方をしている(手抜き?)かで、差出人の立ち位置(位や立場、上下関係)・思惑が分かるというのです。

例えば「花押(かおう)」の位置。花押は署名の代わりに書いた手書きサインのようなもので、殊に織田信長の花押:麒麟(きりん)の「麟」の字をかたどったデザインは有名です。花押を見れば「誰から」の手紙か一目でわかります。これが文章の最初にバーンと書かれていると「ワシじゃ、よう読めよ」と少し上から目線となり(?)、差出年月日の下に官職と花押が書かれていれば、丁寧に礼が尽くされたお手紙となります。
他にも、充所(あてどころ:宛先)は文章の一番最後に書きますが、年月日より下であれば薄礼、上に書かれていれば厚礼、中には充所すら書かれていない(意図して書いていない!)場合もあるようです。・・・コレって少し書く位置をズラすだけで、恐ろしく高圧的で失礼極まりない手紙が出来上がってしまうのでは?!・・・そこには身分や格の違い、上下関係を明確に伝える意図があったようです。恐るべし心理戦。。。
反対に、上位の人から作法に則った美しく丁寧な文書が下されれば、受け手側は「私たちのことを大事に考えて下さっている。おそれ多いことで、ははぁーっ(平伏)」となりますよね。文章を読まずとも、その体裁をみるだけで、大体のニュアンスというか、その文書の雰囲気が読めるのだそうです。こんな見方があったのか!!
是非一度お試し下さい。

誰から誰へ、書かれている内容と、体裁とのギャップを読み解くことができれば、もっとリアルな人間模様が楽しめそうです。その域に達するには・・・もう少しお勉強!

筆:あきつ

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県博協シンポジウム in 草津宿本陣

琵琶湖文化館も加盟している”県博協”こと滋賀県博物館協議会。この協議会には、県内の博物館・美術館など70館が加盟しており、連携して定期的に博物館活動に関する研修会や各種の活性化事業を実施しています。そんな活動の一環として、毎年広く一般に向けたイベントも行っています。
今年の10月28日には「道の国・近江」をテーマに、県内の街道沿いに所在する博物館施設等の専門家たちが一堂に集い、『道の国・近江の魅力発信!!~街道文化を今に伝える博物館~』と題し、近江の街道の歴史と魅力、さらに担当職員ならではの街道を活かした”地域づくり””まちづくり”について熱い議論が交わされます。

なおシンポジウム終了後は、会場である草津宿本陣の見学会も行われますので、あわせて街道文化の魅力をご堪能ください。参加は事前申込み制です。募集人数が限られていますので、お申込みはお早めに!

 【タイトル】 道の国・近江の魅力発信!!
        ~街道文化を今に伝える博物館~
 【会  場】 史跡草津宿本陣 西広間
        (草津市草津1丁目2-8)
 【日  時】 10月28日(日)
        14:00~15:30(13:30受付開始)
 【募集人数】 50名(要申込み 先着順)
 【申込み先】 史跡草津宿本陣
        TEL・FAX/077-561-6636
        メール/honjin@city.kusatsu.lg.jp
 【申込期間】 9月21日(金)~ 10月21日(日)

 ※参加には、史跡草津宿本陣入館料が必要となります。

お申込み・お問い合わせは史跡草津宿本陣となりますので、皆さま奮ってご参加ください。

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彼岸花

毎年、この時季によくぞ忘れずに咲くものだと感心するお花があります。皆さんの目にも留まりましたか?そう、ヒガンバナです。今年は猛暑だ酷暑だ台風だ!!と気候面では異例づくめの夏でしたが、このお花は自分が咲く時を、しかりと心得ているようです。
と、ここで僕の文化館的思考回路に何かが引っ掛かります。近頃のブログでは、季節を感じられる作品を、館蔵品の中から紹介するようにしています。その時に頭を悩ませるのは、「旧暦」と「新暦」の違いから起こる季節感のズレであることも、書いたと思います。旧暦の風習や行事を新暦で紹介すると、どうしても感覚的に違和感が残ります。では何故、ヒガンバナのイメージは「彼岸」からズレないのか???

ちょこっと調べました。今年の秋のお彼岸は、現在の暦(新暦)で9/20~9/26、旧暦では8/11~8/17日となりますが・・・否!見るべきはそこではない!お彼岸は、春分・秋分の日を境に7日間。春分・秋分は昼と夜の長さが同じ日、太陽が真東から上って真西に沈む日なのです。それは新暦であろうが旧暦であろうが太陽の位置で見れば同じ日なのです。だから昔も今も、ヒガンバナは「お彼岸」に咲く花!なのですよ~。ちょこっとスッキリしました?!。

いつもならここで、文化館の収蔵品の中から見事なヒガンバナの作品をご紹介・・・したいところなのですが、実は文化館にある近世絵画の中に、ヒガンバナを描いた作品が見当たりません。ヒガンバナは別名:曼殊沙華(まんじゅしゃげ)とも言いますが、毒性があり、死人花(しびとばな)、地獄花(じごくばな)、幽霊花(ゆうれいばな)、などと呼ばれたり、「家に持ち帰ると火事になる」という迷信が今も残っています。これらのイメージから、縁起を担ぐ日本人の好みには合わなかったのかもしれません。例えどんなパトロンでも「御家が火事になる絵を描いてくれ」というオーダーはしなかったでしょうし、有名な絵師の作品でも売れなかったことでしょうね。

一方でヒガンバナは、ネズミやモグラ除けとして田のあぜ道などに人為的に植えられるなど、その活躍ぶりは見過ごせません。また、鮮やかな「赤」は、めでたい兆しとされることもあります。子どもの頃、彼岸花で首飾りを作るのが楽しみでした(作った後は絶対に「手を洗いや!」と叱られた・・・とか、大きな花束にして持って帰っても家の花瓶に飾って貰えなかった・・・ことなどは、今となってはかわいい思い出です)。なにより、私たちに季節を感じさせてくれる、とても繊細で綺麗なお花です。

そんなヒガンバナに思いを寄せて、今日9月20日は「彼岸の入り」でございます。

筆:あきつ

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台風21号と琵琶湖の水位

9月4日、近畿を縦断した台風21号。近年の台風、滋賀では夜:寝ている間に通過することが多かったと記憶していますが、今回の台風は、昼間の明るい時間帯:午後から夕方にかけて、暴風雨をともなって足早に通り過ぎていきました。文化館でも午前中は琵琶湖の方:北東からの雨風を受け、午後からは南側の壁面に猛烈な雨風が吹き当たっていました。「台風が今どの辺りにいる」というのを実感できるくらいの雨風を、文化館で経験するのは僕にとっても久しぶりです。

「南からの吹付けが強いなぁ。館内見回って来ようかな・・」と事務所の窓の外に目を向けると、そこには不思議な光景が広がっていました。・・・ななななんと・・・琵琶湖の水位がゴッソリ下がっているではありませんか!中池にある歌碑、普段は水面下にあるコンクリート部分まで見えているではありませんかッ!(えっ?写真では分かり難い?スミマセン。これは一番雨風が強い時で、慌てて窓越しに撮影しているもので・・・。毎日見ているからこそ)これには僕もビックリ!思わず他の場所で作業をしていた職員さんを呼びに行き、「見て!滅多に見れんモンが見える!」と、その説明もいささかコーフン気味!!(笑)。ざっと見たところ普段より1m位は下がってます!いやぁ、不思議なことが起こるものデス。

←午後4時頃

台風の時によく耳にするのは、海の『高潮に注意』ですよね?でもここは湖・・・しかも高くない・・・水面が低くなるってどういうコト?・・・風が水面を押さえ込んでる?・・・台風が琵琶湖の水を吸い上げた?・・・とかッ??!
人間、あまりにも不思議なことにブチ当たると、頭の中はパニック状態になるらしいです・・・後から考えると支離滅裂(笑)。

←午後6時頃

琵琶湖の南湖で発生したこの不思議な現象のメカニズムを、後日新聞報道で詳しく知りました。詳細はコチラ(2018.9/8付 京都新聞)。要するに「台風の低気圧が北湖の水を引っ張る一方、南からの強風が湖水を北へ押し戻した」のが原因らしいのです。いやぁ摩訶不思議。台風に何度も襲撃されるのは御免ですが、このような不思議な現象を目の当たりに出来るのは、文化館が湖上に建っているからこそ気付けた変化で、何だか得した気分となりました。

文化館のテッペンにいる大トンボ君の目にはどのように映っていたのでしょうか。きっと琵琶湖に生じている様々な変化を、誰よりも感じているのかもしれません。

筆:あきつ

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重陽の節句

いきなりですが。。。中国では奇数は縁起の良い”陽”の数とされ、奇数の月と日が重なる日を「節句」と定めて邪気を祓う行事が行われていました。1月1日(元日=のち1月7日「七草の節句」に変更)、3月3日(桃の節句)、5月5日(端午の節句)、7月7日(七夕)といった節句はお馴染ですが、9月にもこのような月と日の数字が重なる節句があるのをご存知ですか?

「9」は奇数の中で一番大きな数です。その「9」が重なる9月9日を『重陽(ちょうよう)』と呼び、この頃は旧暦(新暦で今年は10/17)で菊の見ごろであることから「菊の節句」とも呼ばれ、菊に長寿を祈る日となりました。菊は優れた薬効を持つ植物として古くから知られ、古い中国の書物には、菊が群生している谷を下ってきた水を飲んだ村人たちが長寿になったという話があります。そんな菊の薬効と伝説は、平安時代に日本にもたらされ、季節の行事として定着していったのだとか。

重陽の日には、菊の花を飾って愛でたり、酒に菊の花びらを浮かべた「菊酒」を飲んだりと、楽しみ方は色々とありますが、その内の一つに「菊の着せ綿」と呼ばれる風習があります。重陽の日の前日、菊の花に真綿をかぶせて一晩置くと、菊の香りと夜露がたっぷり染み込みます。翌朝、この綿で顔や肌を拭うと若やぐと言われたことから、若さを保ち長寿を願うとして、特に貴族の女性たちの間で、もてはやされたそうです。清少納言の『枕草子』や、紫式部の『紫式部日記』にもその様子が綴られています。そして、当館所蔵の月岡雪鼎(つきおか せってい)が描いた「十二月図」屏風にも九月にあたる部分に、この場面が描かれています。
手前に描かれている女性が、菊にかぶせた綿に手を触れている様子がうかがえますね。奥に見える高貴な着物を着た女性が、この綿で肌を拭うのでしょうか。。。菊花と描かれる女性たちの様子が喜々としていて、とても美しい作品です。

現代に生きる私たちにとって重陽は、五節句の内の一つでありながら、その風習に馴染み薄くなってしまっているように思われます。菊の季節はまだ少し先ですが、この機会に、大輪に咲く菊花に思いを馳せ、長寿を願ってみてはいかがでしょうか。

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収蔵品の他館への貸出し

8月も残りわずかとなりましたね。季節は間もなく秋、豊穣のシンボル:赤とんぼを街で見かけるようになりました(夏は山にいるそうです)。そんな秋の訪れを、当館でも感じる出来事があります。それは「赤とんぼ」が「あきつ君」のお友達だから?いえいえ、それだけではありません。当館は休館中ですが、他の博物館・美術館さんが、「秋の展覧会」に向けて収蔵品の借用に来られるため、その貸出業務の対応に「まもなく秋」を感じているのでございます。

ということで、今回、東京の三井記念美術館さんが彫刻の仏像8躯を集荷に来られた現場に潜入取材・・・僕:あきつがお邪魔させていただきました。
先ずは「前室」という部屋で、当館の学芸員と先方の学芸員さんが、仏さまの状態をチェックされます。大昔に作られた仏さまですから、決して状態が良いものばかりではありません。個々の仏さまによって注意点はさまざまです。気をつけないといけない箇所はどこか、修理されているところはないかなど、安全に輸送・展示をしていただくために、お互いの目で見て確認し、情報の伝達をするわけです。すべては安全のために。。。
そして梱包(こんぽう)です。梱包と言っても、引っ越しの荷物みたいに箱に入れるだけではありませんよ。仏さまには、どうしても木がもろくなってきている脆弱な箇所というのがあり、指先や耳たぶなど、か弱い部分は特に注意して薄葉紙(うすようし)で保護します。そして、それぞれの仏さまの大きさに合わせて作られた「特注品」とも言える木製の担架に、仏さまに横になっていただき、安定している丈夫な箇所でしっかりと固定をするのです。そうしてようやく箱に入れられる状態となります。

『以前はね、薄葉紙で保護した後、仏さまを晒(さらし)でグルグル巻きにして運んだものだよ』「ミイラ巻きというやつですね。それは開梱する時も大変でしたね」など、学芸員さんが交わされる会話を小耳に挟みつつ。。。
時代と共に輸送技術や輸送トラック、道路事情も良くなってよかったな~なんて思ったりしていました。おかげで仏さまも安心してトーキョーまで行けるのですもの。羨ましい!!

三井記念美術館さんの特別展「仏像の姿」では、当館の他にも近畿圏では京都や大阪、奈良、三重、岐阜などへも集荷に向かわれるそうです。僕の愛すべき滋賀の文化財が、東京の皆さんのお目にも留まりますように・・・。展覧会の成功を祈っていまーす!

筆:あきつ

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「伝えたい・残したい郷土の魅力~文化財かるた」絵札の絵

近頃、文化館近くの湖岸で、このようなかわいい親子の姿を見かけます。ほのぼの癒される和みの風景です。水草をいっぱい食べて、大きく育ってくれることを祈りつつ、道行く皆さんもあたたかく見守ってあげて下さいね~。

さて、ここからが本題です。みなさん覚えていらっしゃるでしょうか。ちょうど1年ほど前、滋賀県の教育委員会事務局文化財保護課さんが、ご当地かるたで滋賀県の「文化財かるた」の読み句を募集されてましたね。3,057句の応募の中から、44句が決定したことを、当ブログでも紹介させていただきました。そしてみなさん・・・今回、新たな「募集」が始まっていることをご存知ですか?!

今回募集されているのは、絵札の「絵」です!採用された44句の「読み句」にピッタリの「絵」を募集する!とのことです。これまた「読み句」より難易度が上がったような?(笑)!一般の部小中学生の部と分かれているようですので、みなさんふるってご応募下さい!

僕も絵が上手だったらな~、エントリーするんだけどな~。

俳句も絵も苦手な僕ですが、滋賀県の文化財や地域の魅力を再発見!するこのような取り組みは、是非とも応援したい!みなさん、個性あふれるユニークな絵札で、滋賀の文化財を盛り上げていきましょー!!

筆:あきつ

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お盆の行事、あれこれ

地域によって違いはありますが、滋賀では本日13日から16日あたりまで、お盆休みに入るところが多いようです。盆と正月は「地獄の釜の蓋も開く」といい、この時期ばかりは、大人も仕事を休んで実家に帰省したり、どこかに旅行したり…はたまた、お家でゆっくりと過ごすという方もいらっしゃるのではないでしょうか。大切な人と過ごす時間、故郷の思い出、ご先祖様への感謝の気持ち。お盆休みって特別ですよね。そして、この特別な期間には、特別な行事が、各地で行われています。

その中の民俗行事のひとつに「六斎念仏(ろくさいねんぶつ)」があります。これは、もともと毎月6回ある斎日に念仏を唱えていたものが、民衆の間に広まりお盆や彼岸の行事となったところが多いようです。鉦(かね)や太鼓を打ち鳴らし念仏踊りを踊る六斎念仏は、地域に伝わる民俗芸能としても注目されています。京都や若狭を中心に近畿の各地で行われていますが、滋賀県でも湖西の『真野の六斎念仏』『栗原の太鼓念仏』『針畑の六斎念仏』などが有名です。いずれも県選択無形民俗文化財に選定されていますが、後継者不足が深刻で、守っていきたい地域の誇りのうちの一つです。

また、文化館では、毎年お盆のこの時季に寄託品の一時返却をするお寺さまがあります。大津市比叡辻にある聖衆来迎寺さまでは、毎年8月16日に「虫干会(むしぼしえ)」が行われ、普段は見ることができない寺宝が特別に公開されます。文化館でお預かりしている文化財も、この時ばかりは里帰り。国宝「六道絵」を江戸時代に模写した掛軸15幅も公開され、数ある地獄の中の鬼たちの働きぶりが、この絵で見る事ができます。他にも重要文化財の「阿弥陀二十五菩薩来迎図」といった仏画や「堆朱香盒」をはじめとする工芸品などなど。当館はもとより、通常他館に寄託されている文化財も、この日に里帰りされて間近に鑑賞することが出来ますので、皆さまこの機会に是非訪れてみてはいかがでしょうか。

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作品と季節感

先月のことになります。七夕を前に、文化館で学芸員さんと交わしたとある「会話」の一部を紹介しましょう。
「七夕にちなんだ作品、館蔵品で何かないですか?夏っぽいイメージのものとか」
『○○と△△と□□があるよ』
「ナイスです!」
『七夕で彦星は牽牛(けんぎゅう)と呼ばれているから、牽牛つながりでアサガオは?』
「いい感じ!」
『でもアサガオは秋の季語だよ?!』「・・・・・」
この話題に聞き覚えのある人?!そうです。これは、7月5日付のブログ「七夕と朝顔と牽牛」で一部紹介した内容です。このブログでは作品として「牽牛花(けんぎゅうか)図」を紹介しましたが、実はこの時、別の作品が候補にあがっていました。それがコチラ、「秋叢冷艶(しゅうそうれいえん)図」です。ほら!こちらの作品にも可愛らしいアサガオが咲いています!
この作品は、明治から大正時代に活躍した内海吉堂という画家が描いた作品です。上の方で咲く淡く黄色い花は「黄蜀葵(おうしょくき)」と呼ばれるトロロアオイ、青いラッパの形をした花はご存じアサガオで「牽牛花(けんぎゅうか)」、下の方の可憐な淡紅色の花は「秋海棠(しゅうかいどう)」というベゴニア属の花が描かれています。中にはカマキリなどの昆虫もあしらわれており、とても賑やかな作品となっています。
どうしてこの作品が、7月の「牽牛花」を取り上げたブログで採用されなかったのか・・。皆さんお判りでしょうか?ズバリそれは季節感です。7月にアサガオを紹介するのは、現代の感覚からして「夏」のイメージとしてまだ許される・・・でも「秋」の季語。作品名にも『秋』が使われている。。。それに加え、トロロアオイも秋海棠も、開花の時期は8月頃からなのですよ!!ブログでは季節感を大切に、情報発信を心がけていますので、「この作品は未だ早い」・・・ということになりました。で、おめでたく(?)立秋も過ぎたことですし、本日、満を持してのご登場と相成りました。だってね、ブログで見た花が巷に咲いていて、「あぁコレかぁ~」という発見があった方が面白いじゃないですか?!ささやかな試みではありますが、文化館的「マメ知識」をお楽しみいただければ幸いです。

この時、文化館で交わされた数々の「会話」をご紹介しましょう。
『トロロアオイの花を見たことある?よく咲いてるよ』
「ハイビスカスみたい。見たことあるかも」
『オクラアオイっていう別名がある』
「本当に!ネットで調べたら食べられるって書いてある!」
「オクラ、だからネバネバ、納得!」
「ネバネバ、だからトロロ?なんと安直な!」
「(笑)(笑)(笑)」

・・・このように、「作品」について云々・・・とは違う、かけ離れたところで盛り上が(ってしま)った、とても愉快な職場です・・・あぁ楽しい(笑笑)。

筆:あきつ

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スマホ・デ・これなんぞ?

先日、お仕事で滋賀県埋蔵文化財センターへ行ってきました。こちらも夏のイベント真っ盛りで、ロビーでは「レトロ・レトロの展覧会2018 スマホ・デ・考古学」が開催されていました(~9月2日(日)まで)。

スマホ・デ・考古学?これなんぞや??と思っていたら、会場に設置されたQRコードをスマートフォンで読み取ると、更に詳しい情報が得られるという、何とも「今ドキ」の試みをされていました。中には「シジミちゃんねる」というかわいいタイトルで、キャラクターのシジミちゃん(むむむ?!ライバル出現??)が、愛嬌たっぷりに作品を紹介する動画を見ることができます。世間は夏休み・・・・これなら子どもさん達も、楽しくお勉強ができますね。

会場には他にも「これなんぞ??」と思われるものがいっぱい・・・。ぬぼ~っとしたこの方たちは一体ダレ?!何故ここにゲタがっ?!
考古学と一口に言えども、発掘される遺物は、時代も形も大きさも材質もさまざま・・・でも、昔の人々がこの土地で暮らし、生活していた証(あかし)なのですよね~そう考えると奥深い。。。なんだかとても不思議です。

ちなみに、会場に用意されているクイズに答えると、大津の粟津湖底遺跡(粟津貝塚)出土の貝殻がプレゼントされるそうです。大昔の人は、この貝(しじみ)をどのように食べたのかな?(僕の好きな佃煮ではなさそうな?!)ちょっぴりそんなことを考えながら、自分たちが住む地域のことを、もう少し勉強してみようかな・・・そんな機会となりました。

そして今日は、夏の一大イベント:びわ湖大花火大会が、大津市の湖岸で開催されます。文化館の近くには、湖岸の風を涼やかに感じながら花火を鑑賞できる「桟敷席」が用意されています。夕方にはグリーンの芝生の上にもイスが用意されていることでしょう。(文化館の周り一帯は有料観覧席です。)湖面に写る花火をスマホでパシャっ・・・。「いいね!」連発の花火大会です。是非いい思い出作りを~!

筆:あきつ

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大人もお勉強(電気講習会)

夏休みに入って一週間。学生のみなさん、宿題は、計画的に進んでいますか?連日猛暑が続くなかの勉強、、、本当にツライですよね。ワカリマス。。。でも、「大人は勉強しなくてもいいから、良いなぁ~」なんて思ったそこの君!大人でも勉強をすることはあるのです。

先日『電気講習会(入門編)』に参加してきました。文化館で使用している電気は、一般家庭用(低圧)とは違い、大きな施設や工場などで使われる高圧電力で賄われています。受電設備も大きく、そのため定期的に専門業者さんに、設備点検をお願いしていますが、日常館内で仕事をしている私たちにとっては、要チェックな設備の内の一つです。文化館に勤め出したころの私は「高圧受電って何?」と思うほどに電気についての知識がありませんでしたが、それでも施設管理の仕事をしているのに「このままではイカン」と思い、意を決しこの度参加してきました。しっかりと学ぶためには、わからない事はメモをしっかり取って。大事なところも、ちゃんとメモを…なんだか、ノートをとりながら授業を受けていた学生時代がよみがえってきました。

講習会は、さすがに専門用語が多く、わかりづらいところもありましたが、専門業者さんがどのような点に注意して点検してくれているのか、また設備を監視する最新技術など、初めて知ることも多い講習会でした。また、家庭でもおなじみの、ブレーカーや照明、電気コードなどの注意点も教えてくださいました。近年要注意となっている地震火災について、「本棚などが倒れ電気コードが損傷→その後停電が復旧→通電の瞬間にコードがショート→近くの燃えやすいものに着火→火災発生!」という事例や、「地震で物が散乱した状態で通電→ストーブの周りで火災発生!」という事態が起こり得るということで、身の引き締まる思いでした。

そして、宿題も出ましたよ。「大きな事故を未然に防ぐには、日常の点検が重要」で、電気設備に異常が無いか、日頃から確認をしましょうということでした。内容はひとつひとつは難しいことではなく、「異臭や異音がしないか」「電気プラグにホコリが付着していないか」など。ですが、継続して意識することが難しい。う~ん…この難題な宿題、頑張らなければ。。。エアコンなどの使用で、電気の使用が増える夏です。みなさまも、この宿題をぜひやってみてください。

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夏休み企画② 作品から広がる世界

当館の館蔵品の中には、近代絵画の作品で、このように元気に泳ぐ魚がいっぱい、楽し気でにぎやかな「湖魚図」という作品があります。作者は、吉田虎之助という人物で、明治元年(1868)現在の草津市志那町に生まれ、村長や国会議員も務めた政治家です。何故そのような人物がこの琵琶湖の魚の絵を描いたのか、不思議ではありませんか?僕は不思議に思いました。ということで、ちょこっと調べてみることに致しましょう。

吉田虎之助氏は、明治45年(1912)の第11回衆議院議員総選挙に当選した地元の名士であるとともに、実は、琵琶湖で淡水真珠をつくることに尽力した人物でもあります。琵琶湖における淡水真珠の養殖は明治43年から始まりましたが成功せず、三重県鳥羽の御木本真珠の元技師であった藤田昌世氏らと、当時近江水産組合長を務めていた吉田氏が協力し、大正14年から新たに草津市志那地先の平湖で実験を開始します。吉田氏は有志とともに、「淡水真珠養殖研究会」を設立し事業化を進め、昭和5年(1930)にイケチョウガイで商品価値のある真珠養殖に成功すると、製品が出荷されるようになりました。昭和10年には吉田氏ら研究会のメンバーを中心に「淡水真珠養殖株式会社(翌年琵琶湖真珠株式会社と改称)」が設立されています。その後、日中戦争や第二次世界大戦が勃発したため、昭和17年(1942)に琵琶湖真珠株式会社は解散してしまいますが、その後も「琵琶湖産の淡水真珠を」という夢を抱いた人たちの手により、県内各地で幾度となく淡水真珠の養殖が行われました。

もうお気付きですね?吉田虎之助という人物は、滋賀県において琵琶湖という偉大な資源に目を向け、地域振興を試みた人なのです。そのような人物ですから、琵琶湖に慣れ親しみ、琵琶湖に住む生き物たちにも人一倍関心を持っておられたに違いありません。それをこの掛け軸が、物語っているように思えてきませんか?

「湖魚図」は、昭和38年(1963)、水族館を併設した県内唯一の博物館であった当館に、寄贈されたものです。もう一度作品をよく見てみると、魚一つ一つには名前が記されています。
地元滋賀で呼ばれている魚の名称、細部にわたるリアルな描写、これはまるで琵琶湖の『お魚図鑑』のようです(拡大画像はコチラ)
決して画家として有名な方の作品ではないですが、一つの作品から広がる世界、滋賀県の重要な歴史の一端を、垣間見た気がします。いやぁ~、大人になっても『調べる』って面白い!

ということで、少年少女、若人よ! Be Ambitious(大志を抱け)!子どもの頃に抱いた興味が、自分の人生にどう影響するかなんて、誰にもわかりません。もしかして一大事業を成し遂げるキッカケが、この夏休みにあるかもしれないのです!是非、いい出会いを、そしていい経験を~♪

筆:あきつ

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夏休み企画① 夏の友(宿題対策)に

太陽サンサン、湖岸の遊歩道でもセミの大合唱、いよいよ夏本番。県内の学校ももうすぐ夏休みですね。「いいなぁ夏休み・・・」と、つい羨ましく思ってしまう大人:社会人・・・です。
しか~し!子ども達も楽しいコトばかりではない!そう!夏休みの宿題!これ大問題!!

ということで、てっとり早く夏休みの宿題を片付けましょう~♪県内の博物館施設や資料館などでは、夏休みに合わせたイベントがたくさん企画されています。そのうちの一つ、滋賀県立安土城考古博物館さんの催しをご紹介しましょう。

博物館内にある発掘調査の「整理室」では、7月21日(土)・22日(日)に、「あの遺跡は今!」という催しが開催されます。県内から出土した考古資料について、発掘の専門家さんにいろんなお話を直に「きいて」、土器や瓦などの遺物に直接「ふれて」、体験できるプログラムが用意されているそうです。スマホを使って更に詳しく自分で調べることも出来るとか・・・。なにナニ?『王様でGO!』というコーナーでは、ペーパークラフトで、出土した古代の王冠を作ることができると?!夏休みの宿題、一つクリア!ですね~。

また、企画展では「寺と城-近江の瓦-」が、21日(土)から開催され、各時代の近江の瓦が一堂に展示されます。・・・たかがカワラと侮るべからず!時代によってその特徴は様々・・・安土城など織田・豊臣期の城郭瓦なども展示されるので、戦国好きにはタマラナイ!歴史の勉強にもなり、じっくりと調べ上げれば夏休みの課題にもぴったりです!ちなみにこの展覧会には、当館から寄託品も含めて、
飛鳥時代:崇福寺跡出土の軒丸瓦と軒平瓦
     東光寺遺跡出土の軒丸瓦(日本で2点しかないうちの1点!珍しい文様!)
奈良時代:紫香楽宮跡(甲賀寺跡)出土の軒丸瓦
が出品されていますので、こちらもお見逃しなく!(詳しくはコチラ:収蔵品公開情報)

いぃなぁ若者は・・・興味広がることいっぱいですね!大人も負けずに!暑さニモ負ケズに!夏を楽しみませう!!

筆:あきつ

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七夕と朝顔と牽牛(けんぎゅう)

ささの葉さ~らさら~♪もうすぐ七夕ですね。短冊にお願い事を書いて笹の葉に飾る・・・夜空の織姫さまと彦星さまが、年に1度だけ会えるというロマンチックなお話は、子ども心にウキウキする行事の一つでもありました。空を見上げて、天の川を挟んで織姫(織女星、こと座のベガ)と彦星(牽牛星、わし座のアルタイル)を探す・・・まだ純粋であった頃の淡い思い出。。。が、しかし!夜空を見上げてもなかなか見ることが出来なかった!という苦い思い出があるのは、僕だけではないはずデス!!
それもそのはず・・・大人になるとよくわかる。織姫と彦星が出会うというお話ができた頃に使われていた暦は旧暦(太陰暦)で、旧暦の7月7日は、現在の暦では8月のお盆の頃にあたります。ちなみに今年の新暦7月7日は旧暦で5月24日・・・このズレが、七夕の夜の星空観察を楽しめない原因の一つだったのですね~。道理でキラキラのお星さまに会える確率も少なく、梅雨だ!雨だ!台風だ!!と、織姫と彦星の劇的な再会を阻むヤカラが多いワケです。(でもコレをお子さまに説明して理解してもらうのはムズカシイ・・・)そういえば、お盆の頃の夜空はとてもキレイに星が見えますね。。。

そもそも「七夕」とは、五節句の一つで、五節句はもともと唐の時代の中国から伝わったものです。織姫=織女は機(はた:織物)を織る乙女のことですが、彦星の牽牛(けんぎゅう)は、「牛を牽(ひ)く」という意味があります。そして、この『牽牛』という名前を付けられた花が、あります。牽牛花、それが「アサガオ」です。中国でアサガオの種子「牽牛子(けんごし)」は、古くから生薬として重宝され、高価であり、その対価にウシが取引されたという故事が残されているそうです。あら、なんだかちょっとリアルなオトナの話になっちゃった(笑)。

七夕を前に、文化館で学芸員さんと交わしたとある「会話」の一部を紹介しましょう。
「七夕にちなんだ作品、館蔵品で何かないですか?夏っぽいイメージのものとか」
『○○と△△と□□があるよ』
「ナイスです!」
『七夕で彦星は牽牛と呼ばれているから、牽牛つながりでアサガオなんてどう?』
「いい感じ!」
『でもアサガオは秋の季語だよ?!』
「・・・」

あぁ、こんなところにも季節のズレが!・・・この話、実はまだまだ続きます。それはまたいずれ、ご紹介することといたしましょう。。。

お庭のアサガオが咲くのはまだもう少し先?かな?!大人になっても子ども心のロマンチックを忘れずに・・・アサガオの開花を楽しみに待つことといたしましょう。

筆:あきつ

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滋賀県博物館協議会総会 ヤンマーミュージアムにて

先日、平成30年度滋賀県博物館協議会(県博協)総会が、長浜市のヤンマーミュージアムで行われました。
県博協は、県内の博物館施設(美術館・資料館なども含む)相互の連絡を図り、博物館活動を通じて県民文化の振興に寄与するために、公私の別・規模・分野などさまざまな特色ある博物館が協力して活動しており、現在70館が加盟しています。総会では、昨年実施された「県博協創立35周年記念事業」の報告や、今年度実施の広報計画、学芸員の研修事業、活性化事業などの予定が報告されました。加盟館が一堂に会するこの総会では、各館の取り組みなども紹介され、刺激を受けることも多く、大変貴重な機会となっています。

そして総会終了後には、会場館となったヤンマーミュージアムの館内を見学させていただくこととなりました。参加していた加盟館からは思わずこんなつぶやきも・・・「滋賀県にこんな施設があった?!知らんかったわ~ビックリや!」(笑)。それもそのはず、5年前に開館したばかりの新しい施設の中は、今ドキの体験型ミュージアム!屋上にはビオトープ、館内では大きなディーゼルエンジンが実際に動いたり、本物のショベルカーを操作出来たりと、大人も子どもも楽しめる工夫が随所に盛り込まれていました。これまで「見せる」展示を行ってきた既存館にとっては衝撃の展示内容・・・まさしく「滋賀県にこんな施設があったのか?!」状態です。ともあれ、働いておられるスタッフの皆さんの笑顔がステキで、県内にこのように元気(!)なミュージアムがあることは良い刺激となり、県全体のレベルアップにもつながれば、と思います。

ところでヤンマーさんといえば、その創始者である山岡孫吉さんは、昭和36(1961)年、琵琶湖文化館開館式の式典で、テープカットをして下さった来賓の一人です。そのご縁で文化館的には、山岡氏の生い立ち、偉業、功績を称えた「山岡孫吉記念室」の展示が、一番グッとくるものがありました。良いご縁を結んでいただき、ありがとうございました。

筆:あきつ

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観音さまを知る講座

季節は梅雨時です。空気はドヨ~ン・・・気持ちもドヨ~ン。。。いまいちパッとしない日々が続きますが、こんな時には知的好奇心に磨きをかけましょう~。
ということで、今回紹介するのは、「観音さま」にまつわる講座です。数多くの観音さまが伝わる近江。観音さまは、地域に密着したもっとも親しみやすいほとけさまの一つとして、仏教絵画や仏像彫刻など様々な形で人々に信仰され、守り伝えられてきました。今回の講座では、『近江に広がる観音様の景色-古美術から探る観音信仰の諸相-』をタイトルに、3人の講師が様々な角度からお話をされます。

① 6月23日(土) 描かれた観音様 滋賀県立琵琶湖文化館 渡邊勇祐
② 7月 7日(土) 湖北の観音様 長浜市立長浜城歴史博物館 秀平文忠氏
③ 7月21日(土) 観音信仰の諸相 滋賀県立安土城考古博物館 山下立氏

この講座は、龍谷大学が市民向けに開催している生涯学習講座(RECコミュニティカレッジ)の一つとして、瀬田キャンパスのRECホールで開講されます(受講料必要)。WEBでの募集は終了となっていますが、電話でのお申し込みは受け付けておられるそうです。気になる方は、龍谷エクステンションセンター滋賀:077-543-7848にお問い合わせ下さい。(講座ナンバー「SB12」とお伝えください。)

梅雨時の雨にも負ケズ、恵みの雨と感謝して、観音さまのように微笑みをたたえて毎日を過ごしたいものですね。

筆:あきつ

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紫陽花づくし

今週初めに、東北でも梅雨入りをして、梅雨入り宣言のない北海道をのぞいて日本列島は本格的に梅雨の季節となりました。梅雨の花の代表ともいえる紫陽花たちも、「待ってました!」と言わんばかりに、そこかしこで咲きだしたのを見かけるようになりました。
文化館の近くでも、青・白・紫と色とりどりの紫陽花が咲いて、道行く人々の目を楽しませています。ちなみに紫陽花は土壌の酸性度によってその花の色を変えるそうですが、文化館の敷地内には、こんな鮮やかな赤色の紫陽花が咲いています。様々な色をつける紫陽花はまさに七変化!です。

さて、生花ばかりではありません。当館に所蔵されている紫陽花も多種多様に表現され、七変化に磨きをかけます。まずは、江戸時代に描かれた「花卉図」。こちらは6曲1双の屏風で、一面一面に数々の草花が描かれ、その中に大輪の紫陽花が描かれています。屏風の中心に白にも薄青くも見える花は、どこか瑞々しく感じます。
そして、こちらの湖東焼の鉢にも紫陽花が描かれています。先ほどの屏風とは違って、側面に控えめに一輪の紫陽花が描かれています。濃い紫色の蕾と白い萼片が描かれていて、これはガクアジサイなのでしょうか?現在よく見かけるセイヨウアジサイとは少し違うのがわかります。
最後は、滋賀県出身の谷口幸珉の「金銅製紫陽花文壷」です。一見するとどこに紫陽花があるの?と思いますが、何と金色のところをよく見ると、小さな萼片たちが密集して描かれた紫陽花模様であることがわかります。前二作と違って、紫陽花を幾何学的な模様として使った作品です。
 紫陽花ひとつをとっても、作者によってまったく違う表現に変わります。皆さまもこの時期だけの楽しみとして、紫陽花の七変化を見付けてみてくださいね。

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ホタルのヒカリ

5月下旬頃から、県内で「今年もホタル乱舞」のなんとも季節感あふれる情報が飛び交っています。1年でわずかの期間にしか見ることができない、この貴重な体験を「見逃してはなるまい!」と、仕事帰りに近所の小川へ見に行ってきました。
その日は、雨が降り出す前の蒸しっとした空気で、風もなく、絶好のホタル鑑賞日和。。。時間も狙い通りの午後8時! (見頃は夜の7:30~9:00頃なのだそうです)、川の緩やかな流れのところにホタルはいました!しかもたくさん!ホタルは、ゆ~ったり、の~んびり、明るく点滅を繰り返していたので、ゲンジボタルかな?子どもの頃から、ホタルは結構当たり前に見られるものだと思っていましたが(世間的には田舎と呼ばれる地域に住んでいます)、皆さんの近くではどうですか?

実は、当館の館蔵品の中にも「蛍図」という作品があります。作者の塩川文麟(しおかわ ぶんりん)は、江戸時代末期から明治時代初期にかけて活躍した日本画家です。雨に煙った風景や暮かけてぼんやりした風景を得意としていたようで、もしかしたらこの夏が始まる前の空気感も得意だったかもしれませんね。

現代なら、ホタルが発する淡い光を、「蛍光色」で表現できる絵の具やマジックはたくさんあります。しかし、この「蛍図」は、絹地全体に薄墨を施して夜景の雰囲気をつくり、ホタルにのみ彩色が施されています。ちょっとアップにしてみるとこんな感じ→。
ホタルの頭の部分に赤い絵の具を、発光する光は淡い黄色を彩色することで表現されています。水墨画の中に描かれることにより、ホタルの儚さがより感じられるようです。

ホタルの見頃も、桜のように南から北へ北上するそうです=ホタル前線!そろそろ季節は、光の点滅が早いヘイケボタルにバトンタッチ?滋賀ではまだまだホタルを楽しめそうです。

筆:あきつ

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夢か現か 猿の面影

現代の桃源郷として人気を集めるMIHOミュージアムさんで、春季特別展「猿楽と面―大和・近江および白山の周辺から」が開催中です(会期は6月3日まで)。
タイトルにある「猿楽(さるがく)」というのは、何でしょうか?これは、奈良時代に中国より伝わった「散楽(さんがく)」に由来する、歌や踊りを伴う芸能のことで、平安時代・鎌倉時代から盛んになりました。皆さまは「能楽」というのをよくご存知だと思いますが、これの古い呼び方でもあります。念のため付け加えると、猿楽の演者はもちろん「人間さま」で、「お猿さん」とは関係がないそうです(笑)。

今回のMIHOさんの展示には、そんな猿楽に使われた面(「おもて」と言うそうです)が、なんと350点も!集められています。そしてその中に、普段は文化館でお預かりしている、滋賀各地の神社に古くから伝わる貴重な面も出品されている、というわけなのです(詳しくは「収蔵品公開情報」をご覧ください)。

展示室に入ると、そこには各地から集められた面がズラリと並び、まさに圧巻としか言いようがありません!それに、よく「無表情」という意味で「能面のよう」という言葉が使われますが、それが間違った使い方ではないかと思うほど、各々の面には表情があって、とっ~ても魅力的です。特に、色白+シワくちゃ=キュートな「翁」の面などを見ていると。。。「お猿さん」とは関係がないと言われても、どうにも「お猿さん」の顔に見えてきて仕方がない。。。本当に関係はないのかしらん?

人々が「猿楽」に熱狂したという室町時代。近江にも、多賀大社や日吉大社に属した猿楽座(役者のグループ)が6つもあったと伝えられます。なかでも大津・坂本の比叡(日吉)座は、犬王(道阿弥)という一世を風靡するような役者を輩出したとか!!日吉大社というと、そういえば、「神猿(まさる)」という神様のお使いがいて、「お猿さん」と縁の深い神社ですよね。そんな神社へ奉納する芸能の中で、猿を彷彿とさせる面を付け、物まね(猿真似?)などの芸を披露したなら、神様もきっとお楽しみになった違いない。だから、「猿楽」がもとは「散楽」であったのだとしても、そこにいつかの時点で、「お猿さま(=神様の化身)が楽しむもの」という意味も加わっていったのではないか???などと、またまた勝手な妄想を抱きながら、名残り惜しく展示室を去るのでありました。。。

それはさておき、GWも目前です。これからは新緑の美しい季節。信楽山中の、まさしく幽玄なる世界の中で、面に面と向き合って、静かに対話してみるのもおススメです。(会期中に展示替えがありますので、お目当ての作品のある方はご注意くださいね。)

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ホームページの改新

みなさん、お気付きになられましたか??収蔵品紹介の中でも特に当館の館蔵品を紹介する「浮城モノ語り」のサイトが、見やすくなりました![こちらをチェック!]
そもそもこのコーナー、休館となってから公開の機会が少なくなった館蔵品を、ホームページで積極的に紹介し、当館にあるコレクションの多様さを知っていただこう!と、平成26年度にスタートしたものです。現在は月1回の更新を心掛け、それも今まで継続してこられたおかげで、今回が記念すべき第50話となりました。
積み重ねとは大事なことですね。とは言え、第○話の回数が増えると、実は見えないところで更新に手を入れなければならない箇所が増え、本編の文章を書くより、更新作業の方が手間がかかる・・・という困った状態になり、更新の度に職員から(クレームにも似た)悲鳴が上がるようになりました。。。それならば!と50話突破を記念して、思い切ってこの「リニューアル」を決行したというわけなのです。どうですか?みなさん、見やすくなりました?画像を配置したことにより、「あ、これも見てみようかな」という気になっていただけた・・・ならば、このリニューアルは大成功?!ということに!・・・職場内では評判も上々なのですがね(笑)。
ホームページ画面の体裁を、「元(システム)」から改めるのには、作業にあたる「時間」と「勇気」が必要です。「勇気」コレすごく大事です。画面に反映させるために設定するコードは、英語表記に数字の羅列・・・解説書はカタカナばかりで、「お願い!頼むから日本語で説明を!」と攻略本にむかって何度悪態をついたかワカリマセン。それでも「もっと見やすく、使いやすくしなければ」と、改新のための勇気を持てたのは、昨年度末に発行した『研究紀要第34号』に「琵琶湖文化館におけるホームページの役割りについて」を、まとめたことがきっかけとなりました。
休館となった平成20年度以降、当館のホームページは、常に「休館中」であることを意識し、展示公開の機会が減った収蔵品紹介の充実、文化財情報の発信などを行ってきました。時には利便性やデザイン性を改め、閲覧して下さるみなさんを飽きさせない工夫を行い、より魅力的なホームページ作りへと、手を加えてきた結果です。また、その都度、更新の苦労をしてきた歴代職員さん達の顔を思い浮かべると、ここは「踏ん張りどころ」で「頑張りどころ」でした。まだまだ改変の余地はありますが、今後も「見やすく分かりやすい情報」を提供できるように、みんなで頑張っていきたいと思います。

と、早速、「ご意見・ご感想」に、この小さな(?)リニューアルに気付いて下さった方が、感想を送って下さいました。このような反応があるとすごく励まされます。有り難うございます。お気付きですか?「浮城モノ語り」各話の印刷ページに、使いやすく[印刷する]ボタンが追加されましたよ!是非プリントアウトして、お気に入りの【コレクション】に加えて下さいね~。

筆:あきつ

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リアル!文化館のクジャク

突然ですが、みなさんはクジャクについて詳しく知っていますか?中国、東南アジア、南アジアを中心に生息していて、日本には中国から伝わったようです。異国からやってきた、羽を広げると美しくゴージャスな鳥に、当時の人もトリコになったのでしょうか?日本でも多くの画家が好んでクジャクの姿を描いています。当館の館蔵品の中にもクジャクを描いた作品があり「収蔵品紹介:絵画部門」では、2点をご紹介しています。そのうちのひとつ、江戸時代の画家・張月樵(ちょう げっしょう)が描いた「長春孔雀図」について。。。いきなりですがクイズです!!

クジャクは、頭部から頸部にかけての違いで2種類を見分けることができるそうです。インドクジャクは濃い青色、マクジャクは緑色のうろこ状の模様があるのだとか。。。では、この絵に描かれたクジャクは、”インドクジャク”?それとも”マクジャク”?さて、どちらでしょう?!
クジャクについて詳しくない私は、「えっ?違いなんて本当にあるの!?」と思ってしまいました。。。しかし、改めてこの絵を見ると、首のところが緑色のうろこ状で描かれているのを発見!つまり、正解はマクジャクなのです!

種類の違いはさておき、こんなにも緻密にかつリアルにクジャクを描くことができるなんて、張月樵さんってスゴイ!と思いました。

この凄技絵画、見てみたいと思われました?実は、東京・府中市美術館で開催されている展覧会「リアル 最大の奇抜」に、ただ今出品中です(5月6日まで)。是非とも、このリアルを会場でご堪能ください!

収蔵品の他館への貸出しという機会ではありますが、遠く関東の地で、当館の作品が皆さまのお目にとまり、新たなご縁となりましたら幸いです。

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文化財の保存環境②

先日、当館における文化財の保存環境、特に温湿度についてのお話をこのブログで紹介させていただきました。
皆さんの中には、「琵琶湖の上で大丈夫?湿度が高いのでは?」と、心配される方もいらっしゃるかもしれません。ということで、連載させていただきます。

文化財の保存環境について、湿度から言えば、特にカビの予防には、60%以下に保つことが理想とされていますが、木製品や漆器などの工芸品などには、乾燥しすぎるとひび割れの原因となるため、50%以上が望ましいと言われています。温度についても、高温になると施設内の絶対湿度(空気中の水分量)が高くなるため、注意が必要となります。

琵琶湖文化館は湖の上に建つ・・・湿度が心配・・・。まさしくそれは、昭和36年の開館当初から、危惧されていたことであり、そのために一日3回、展示室と収蔵庫の温湿度を計測し、当時は月末に文化財保護委員会(現:文化庁)への報告が必要であったと聞いています。観測を継続した結果、展示・保存環境に問題のない湿度が、安定的に維持されている施設であることが証明され、現在の収蔵環境に至っています。

当館はコンクリート製の建物ですが、文化財を保管する収蔵庫は、調湿機能が得られるよう木材で仕立てられ(木は周囲の温度や湿度に合わせて空気中の水分を吸ったり吐いたりして調整してくれます)、保存環境をより安定した状態に保つための工夫が施されています。また、屏風、彫刻、掛軸・経典類、考古資料・陶器などの工芸品、といったように、種類(素材)毎に保管する部屋を分けることで、きめ細かな湿度管理をし易くしています。

文化財にとってより良い環境を保つために出来ることを。皆で力を合わせて文化財を守っていきたいと思います。

筆:あきつ

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文化財の保存環境

皆さんは、展覧会の会場でこのような物体を見た記憶はございませんか?一般の人にはあまり見えないよう、展示ケースの奥の方にコソ~っと置いてあるので、気付かれないかもしれません。大きさは約8cmほど、画面はデジタル表示でアンテナのような物がついています。実はコレ、文化財の保存環境を維持する上で、非常に重要な役割を果たしています。
文化財にとって、とても厄介なのは、素材を食い荒らすシミやチャタテムシなどの「文化財害虫」と、資料の劣化を早めてしまう「温湿度」です。温湿度が急激に変化すると、文化財の素材によっては伸び縮みが起こったりして、劣化の元にもなりますし、ある一定の温湿度が続くと、カビや虫が発生しやすくなったりもします。そこで登場するのが、このゲーム機(?)のような物体。「データロガー」というアイテムで、展示ケースや収蔵庫の中の温度と湿度変化を記録し、急激な変化が起きていないか、その見張り番として活躍します。

当館で今まで使っていたデータロガーは、旧式のパソコンでしかデータを取得することができず、現在使用しているパソコンとの互換性がとれなくなってきたため、新バージョンを導入することになりました。正常に作動するかどうか、新旧を並べて確認をしてみたところ、そこはさすがにおNew。感度は今までより更に向上しているようで、安心して見張りをお任せしていくことになりました。
このデータロガーは、数分毎にデータが記録できるように設定されています。定期的に記録を確認しますが、当館では1日の中での急激な気温変化は見られず、湿度についても一般的に博物館において基準値とされる50~60%を概ね維持するなど、文化財の保存環境として皆さまに安心していただける数値を得ています。
日常管理の点検もさることながら、年間を通じて蓄積されるデータを分析することで、施設としての特徴や各展示ケースの特質などを把握します。

文化財の適切な保存環境を維持するためには、その「時」だけの対応では不十分といえます。年間を通じたモニタリング、館独自の経験値からくる予測と対応。それらをうまく調整し、管理していくことが必要となるのです。
これからも、文化財に負担をかけないよう、適切な保存環境を維持できるように、努めてまいりたいと思います。

筆:あきつ

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浅井長政像

滋賀の湖北地域に桜が咲くころ~~。毎年この時季に当館では、長浜市の旧湖北町で行われる戦国大名:浅井長政氏の法要のため、お預かりしている絹本著色「浅井長政像」(滋賀県指定文化財)を一時返却にうかがっています。
あきつブログ読者の常連さんの中には、「また今年もその話題?」と思う方がいらっしゃるかもしれません・・・ので、今年は少し角度を変えて(?!)ご紹介します~。

当館がお預かりしている「浅井長政像」は、ホームページの収蔵品紹介:絵画部門の中で紹介していますが、画面上部に書かれている「賛」によると、長政の一周忌を経て作られた、いわゆる本尊とされる御像です。今から約400年余り前から時代を経て、人々に守り伝えられてきた作品です。[詳しくはコチラ]

一方で、この掛軸が製作された当時の様子はどうであったか・・・というのも少し気になるところ。実は、ちょうど今、滋賀県立安土城考古博物館さんの企画展「収蔵品で語る城郭と考古」展で、この掛軸の復元資料が8日まで展示されています(会期:残りわずか!)。
展示されている作品は、平成8年に作られた復元模写で、元々の掛軸の表面観察や赤外線写真、他の画像からの研究等により、当時の姿が鮮やかに再現されています。会場で見た時には「お~っと!見た事のあるこの御方は、当館でお預かりしている長政さま!なんて鮮やかな!」と驚いて足を止めてしまいました。
タイムスリップとはこんな感じ?(笑)。

永い時を経て、人々に拝まれ供養されてきた長政像は、ふっくらとした面持ちながら叡智と威厳をたたえているかのようです。現代に蘇った長政像は、28歳で亡くなった若武者の精悍さと清々しさが感じられます。どちらも後世に長く残ってほしい作品です。

筆:あきつ

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湖上にお城ができるまで

当館のホームページの「湖上にお城ができるまで-写真アーカイブ-」のコーナー、皆さん楽しんでいただけましたか?昭和35年4月の起工式から36年3月の開館を迎えるまでの文化館が建設されていく様子を、懐かしい写真でご紹介させていただきました。ホームページ上では約1年半をかけていきましたが、先日ようやく開館式までたどり着き、ここで一つの区切りを迎えることとなりました。

写真の更新には様々な苦労がありました。「この写真を紹介したいけれど、前に紹介したものと似ているな~」とか、「次の写真とつなげるにはどうしたらいいかしら?」など、建設の流れを、臨場感たっぷりに伝えるにはどうしたらいいか、たくさんの写真を前に試行錯誤の日々でした。現在、文化館の表通りの掲示板に開館式の様子をポスターで貼り出していますが、立ち止まって写真を見て行かれる方も多く「ここまで紹介できて良かったな~」と改めて思います。

実は、紹介しきれなかった所もたくさんありました。例えば開館当日の前庭は、整備が間に合わず更地のままの状態でステージをこしらえ、オープニングイベントを行っています。
その後に、約一年をかけて前庭は整備されましたが、その様子もちゃんと写真におさめられています。樹が植えられた時の写真や、700人もの人が休憩できるパラソル休憩所の写真、駐車場が整備さたれ写真など。。。 “湖上にお城”ができてからも、まだまだ琵琶湖文化館はつくられていたのです。

昭和40年代には、ブランコや滑り台、シーソーなどの遊具も設置され、娯楽施設があまりなかった時代に、文化館の前庭は安心して子どもたちを遊ばせることができる場所だったそうです。建物は約1年の工事でしたが、前庭を含めると、時間をかけて皆さんの楽しめる施設に整えられていったのだと、写真を整理していてしみじみと思いました。

機会があればまた、文化館開館後の懐かしい写真なども紹介出来ればと思っています。皆さま、お付き合い下さり、どうもありがとうございました!

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「打出のコヅチ」開催直前 プレ講座のお知らせ

毎年ご好評をいただいております滋賀の文化財講座「打出のコヅチ」。おかげさまで、平成29年度に10周年を迎えることができました。そこで、これまで講座を支えてくださった皆様への感謝の気持ちを込めて!今年は特別に「打出のコヅチ」開催直前プレ講座(日時:5月17日(木)13:30~、会場:コラボしが21)を開催させていただくことになりました。講師は、コヅチでおなじみの、滋賀県教育委員会文化財保護課・井上優氏です!

井上氏には今回、「神社本殿から、木の経典を発見!‐東近江市松尾神社法華経‐」と題して、東近江市にある松尾神社で、平成26年(2014年)に発見された南北朝時代の「こけら経」についてお話していただきます。

仏教の経典(お経)は、紙に書かれているものが多いのですが、紙ではなく薄い板材に一行ずつ書写する「こけら経」というものもあります。松尾神社の「こけら経」は、神社の本殿から発見されたものとして全国唯一の事例となります。
この貴重な資料をもとに、神仏習合の信仰資料としての「こけら経」について、発見の経緯やその特徴および歴史的な意義などを含めて、いつものように、楽しい&詳しい&わかりやすい!と三拍子揃ったお話を聞かせていただけることと思います。

プレ講座のことが気になった方、講座内容・申込方法など詳しくはこちらをご覧くださいね。また、6月からの「打出のコヅチ」本講座の方も、ただいま申込受付中です。講座各回の内容についても、講座・イベント情報コーナー「打出のコヅチ」に詳しく掲載いたしましたので、ぜひご覧ください。プレ講座と本講座、併せてお申込み頂くこともできます。それでは、多くの方のご参加をお待ちしております。お申込みはどうぞお早めに!

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