カテゴリー別アーカイブ: 学芸業務

滋賀県立美術館・リニューアルオープン!

みなさ~ん!大津市瀬田にある美術館さんが、いよいよリニューアルオープンされますよぉ!!
滋賀においては県立の人文科学系博物館5館のうち、2館(当館と近代美術館)が永らく休館となり、みなさまにおかれましては、大変「モノタリナイ」思いをなさっていたのではないでしょうか?
このたび「滋賀県立近代美術館」さんが「滋賀県立美術館」として、6月27日(日)に、再開館されます!

美術館さんのコンセプトは「かわる かかわる ミュージアム」!今までの近現代美術に限らず、滋賀ゆかりの美術・工芸や、自由な発想のアール・ブリュットなど、展覧会の内容も実に幅広いラインナップです。

私たち文化館としても、今後さまざまなカタチで協力・連携し合い、滋賀の魅力を発信していきます。「かわる かかわる」ですね♪

館内においては、展示室で皆さんによりよくご鑑賞いただけるよう、様々な工夫を凝らしてバージョンアップ(!)されたと、聞いております。
更には、新たにキッズスペースやファミリールームなどが新設されたとも・・・。ゆったりと「リビングルームのような美術館」を意識したくつろぎ空間♡とても楽しみです♪

もともとワークショップや体験イベントなども充実していた美術館さんですから、そちらの方も期待大♡知的好奇心をくすぐられること間違いなしです!作品から得られるパワーのようなもの、学び、気付き、それらを五感で感じられるのもアートの魅力♪
心に響く感動を、さぁ魂を揺さぶられに行きましょう!

滋賀県立美術館さんがある大津市瀬田の「びわこ文化公園」は、豊かな自然に囲まれた癒しスポットです。県立図書館や県埋蔵文化財センターなど学びの施設があり、子どもたちは広場で元気にアスレチック遊具も楽しめます♪

不肖ながら文化館のあきつ(こちらは今しばらく休館中)、大津の湖岸から応援させていただきます!新しくリニューアルされる「滋賀県立美術館」さんが、たくさんの人々に愛され、親しまれるスポットとなりますよ~に!
そうです!滋賀でみんなで元気になろう!

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研究紀要 37号

野山の新緑が目に眩しい季節となってきましたね。この時期、年度末にまとめられた研究紀要や事業報告などが、各機関や施設から続々と届きます。これらの報告書には、各専門分野の詳しい調査成果や、さまざまな論文、最新の調査技術などについて、参考となる情報がいっぱい詰まっています。かく云う当館の「研究紀要 第37号」にも・・・!
金勝寺所蔵 独鈷杵および五鈷杵の科学的調査報告
近江に伝わる奈良期の四分律刪繁補闕行事抄について
-聖衆来迎寺と西教寺の伝来本-
[資料紹介]龍福寺(甲賀氏甲賀町滝)所蔵 木造四天王立像

うぅ、ちょっと難しいですか?あきつブログ的に紹介しますとですね・・・

①は、昨年度新たに滋賀県指定有形文化財に指定された独鈷杵と五鈷杵について、蛍光X線、X線CT装置による調査を実施したその最新報告です。金剛杵について、今までにこのような調査はほとんどされていなかったため、内部の構造や成分について、大きな成果が得られました。
〔あきつブログ的には、五鈷杵の握る部分にある鬼のお顔が・・・キュート!!〕

②先ずはその難しい読み方から(笑)!「四分律刪繁補闕行事抄(しぶんりつさんぱんほけつぎょうじしょう)」。これまでおそらくは奈良時代の古写経の一部(断簡)・・・とされていたものが、全国的に珍しい奈良時代の「四分律刪繁補闕行事抄」の書写本であったことが判明。とても貴重な発見でその伝来も気になるところです。
〔あきつブログ的には、近年のデジタル化で、難しい昔のお経までもがインターネットで検索できる時代になった・・・コトに驚きデス。僕も調べてみたい!!〕

③昨年、甲賀市歴史文化財課との共同調査で、龍福寺の四天王立像が平安時代にまで遡る古像であることが判明。
〔あきつブログ的には、後世に施されたブ厚い色彩の下に、平安時代特有の穏やかな表現が隠されていたとは・・・さすが全国屈指の文化財王国:滋賀。その素顔も是非拝見させていただきたいな~今後の調査に期待!!〕

ということで!「新たな発見がいっぱい」の研究紀要になっています。この発見を皆さんにご紹介できる機会を現在模索中~~~ご期待ください。

発刊して思うコト:全くの偶然ですが、今回の紀要に掲載した①②③すべてが天台系のお寺さまの文化財。これは何かのご縁であるに違いないと、コッソリ深読みしています。そういえば今年は、天台宗の開祖である伝教大師最澄が亡くなって1200年。さまざまなご縁に紡がれて・・・いるように思えるのは僕だけでしょうか。。。?

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祝)新指定 滋賀県指定文化財

皆さん、今日の新聞紙面等で、もうご覧になりましたか?16日、滋賀県では、新たに「県指定有形文化財」に6件が追加された、というおめでたいニュースです。豪華な金色の屏風に異国風の人々が描かれている写真が、ひときわ目を惹くあの記事です。写真を見て「おやっ?これは?」「どこかで見たような?」と思われた方、その記憶はすばらしい!

今回新たに指定された「紙本金地著色王会図(おうかいず)六曲屏風」(草津市・観音寺蔵)は、ちょうど1年前に開催した地域連携企画展「安土・桃山時代の近江展-琵琶湖文化館の収蔵品を中心に-」で、展示させていただいた作品ですよ~。(展覧会チラシにも部分ですが使わせていただきました!) あの時の、エキゾチックで豪華な屏風絵を、覚えておられる方もいらっしゃると思います。会場でもひと際目立っていましたね~。桃山時代に狩野派の絵師により描かれた、あの作品が、新たに県指定。。。とっても嬉しいニュースです。

それともう1件。こちらは確実に記憶の中に残っていて欲しい。つい、4カ月前の地域連携企画展「栗太郡の神・仏 祈りのかがやき 」に出陳されていた銅独鈷杵と銅五鈷杵(栗東市・金勝寺蔵)です。重厚な作風が特徴の鎌倉時代の優品です。(こちらも展覧会チラシに使わせていただいてます!)

いやぁ、なんだかすごくテンション上がる新指定♪今回新たに”県民の宝“となったのは、以下のとおりです。

有形文化財
【絵画】紙本金地著色王会図(おうかいず)六曲屏風:観音寺(草津市)
【彫刻】木造菩薩立像:松禅院(大津市)
    木造地蔵菩薩立像:松禅院(大津市)
【工芸品】銅独鈷杵、銅五鈷杵:金勝寺(栗東市)
【書跡典籍】四分律(しぶんりつ)刪繁(さんぱん)補闕(ほけつ)行事鈔(しょう)断簡
      :聖衆来迎寺(大津市)
【考古資料】桜生(さくらばさま)七号墳出土品:滋賀県
民俗文化財
【有形民俗文化財】東草野(ひがしくさの)の竹刀製造用具及び製品:米原市
         朝宮(あさみや)三所(さんしょ)神社の座建物(ざたてもの)附(つけ
          たり) 朝宮三所神社文書:三所神社(甲賀市)
記念物
【名勝】赤田氏庭園:個人(長浜市)※追加指定

今年も豊作でした♪。毎年思うのです。それぞれ事前に入念な調査があっての指定文化財。その労力・苦労にも敬意を払いつつ、新指定を喜びたいと思います。

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年末年始「#おうちミュージアムへ初詣」

あっという間に年の瀬です。今年は振り返っても振り返っても「新型コロナの影響で云々・・・」というワードが世の中を飛び交い、新年への年越しもやはり新型コロナの影響で・・・と言わなければいけないような状況です。
ということで!北海道博物館さんの呼びかけで全国各地のミュージアムが参加して始まった、おうちでインターネットで楽しめる「おうちミュージアム」を皆さんご存じですか?(モチロン当館も参加中!)。年末年始の特別企画、名付けて「#おうちミュージアムへ初詣」です。

いろいろと外出しづらくなっている昨今、おうちでゆったり遊んだり、楽しく学んだり、各館工夫のとっておき企画が目白押しです。

そうですね~「初詣に出雲大社に行ってみたい!」と思ったあなたは、島根県立古代出雲歴史博物館さんのサイトをのぞいてみては?島根のお祭りや神楽など、さまざまな動画が公開されていますよ~。北海道博物館さんでは・・・なななんと!北海道名物「いももちを作ろう!」ですと?!おうちで作って旅気分~このお正月、おせち料理にこっそり追加してみては?滋賀県の近くでは・・・京都国立博物館さんなどはいかがでしょうか?おやっ?!京博さんのオリジナルキャラクター「トラりん」のぬり絵が・・・。当館のキャラクター「あきつ君」ぬり絵のライバル?!。でも悔しいかなトラりんかわいいのです。。。あきつ君も負けずに、トラならぬ招き猫に変身して福を招くのデス(笑)。

「おうちミュージアム」では、この年末年始「#おうちミュージアムへ初詣 」ということで、皆さんの参加を呼び掛けています。当館では「文化館チャレンジ」として、滋賀県の神社仏閣にまつわる「?」をクイズにして出題中(特に第17・18・19回)。地元ネタがふんだんに盛り込まれていますが、滋賀の「お国自慢」につながる文化財に関する問題もアレコレ出題していますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
ということで、みなさま良いお年を~!!

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伏線回収「北海道の記者さんが、とある事件を追って」

みなさんは覚えておいででしょうか。8月3日付けブログで書いていた極秘情報:「北海道の記者さんが、とある事件を追って」当館にご来館・・・謹んで取材を受けた、あの事件。
「何ナニ?何があったの???」と、ご心配いただいた方も、中にはいらっしゃるかもしれませんが、どうぞご安心を。

その真実は、近代日本史において重要な事件の生き証人である当館の歴史資料「大津事件関係資料」を、わざわざ取材に来られたのでした~。というのも、明治24年、訪日中のロシア皇太子ニコライが、遊覧先の大津で、警備にあたっていた巡査・津田三蔵にサーベルで切りつけられ負傷したのが大津事件。社会を揺るがしたこの大事件で津田三蔵はその後、無期徒刑(無期懲役)となって、北海道の釧路集治監(源:標茶町)に収監され、獄中死しています。
北海道新聞さんでは、毎週日曜日に「時を訪ねて」というタイトルで特集を組まれており、今回はこの大津事件を取り上げるとのことで、遠路はるばる滋賀までお越しになったのです。収監先の北海道にあっても、この事件がどれほど注目された事件であったか、よくわかりますよね。紙面では、大津事件において「司法の独立」が守られたことや、津田三蔵が亡くなった経緯などが詳しく書かれており、滋賀に住む私たちにとっても、大変興味深い内容となっていました。

・・・ということで、北海道新聞さんにちょっぴりワガママなお願いをさせていただきました・・・その結果・・・ご快諾!!

期間限定!当館の前にある掲示板に、8月16日付け北海道新聞別刷を、特別に掲示させていただきます!紙面は2ページ建てで、大変読み応えがあります!是非立ち止まって熟読していただきたい(熱中症に気を付けて)!
掲示期間は8月31日まで!「見に行けないわぁ」という方は・・・[北海道新聞 どうしん電子版]のパスポート会員となって読んでいただくか、・・・・・・・当館にご相談ください!

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大切な収蔵環境

皆さんは「燻蒸(くんじょう)」をご存じですか?「いぶし蒸らす」と書きますが、料理のお話ではありませんヨ?! 気体の薬剤を使って、害虫駆除や防カビ・殺菌を行う「燻蒸」。当館では、文化財を保管する適切な環境を維持するため、収蔵庫などの空間(エリア)に対して行う施設燻蒸を、年2回実施しています。

使用するのは炭酸ガス製剤(ブンガノン)。文化財害虫に対して忌避・殺虫効果があり、施設の管理に有効な薬剤を使用します。 超微粒子ミストとなった薬剤が、わずかな隙間にまでいきわたるため、広い範囲に高い効果を発揮してくれます。人体に蓄積しない環境にやさしいタイプのガスですが、吸引によって喉や鼻への刺激があるため、専門の業者さんが防塵マスクを着用して作業を行います。噴霧してから約半日、ガス濃度を確認しながら、空間にガスを浸透させていきます。

近年、文化財を守る方法の一つとして、IPM(総合的有害生物 管理)も注目されています。薬剤だけに頼らず生物被害を防除する考え方で、農業(農薬を減らす)に限らず、博物館、美術館、図書館、資料館、文書館等においても、導入され始めた考え方です。日常の清掃・温湿度調整などの環境管理と、薬剤などを用いた防除を組み合わせて、文化財を守っていこうという取り組みです。文化館でも、年間を通した保存環境のモニタリングにあわせて、日ごろから収蔵環境に目を光らせています。

文化財の虫害対策は、文化財を長期に守っていくためには欠かせないもの。貴重な文化財を適切な環境でお守りする、これも文化館の大切な役目の一つなのです。

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お月さまは何処に?

皆さんは最近、「月」を見た覚えはありますか?夜空に浮かぶあの「月」です。明るい街中にあっては、あまり意識されないかもしれませんね。たまに地平から出たばかりの月が、いつもより大きく見えたりする(気がする)時に、「すごいなぁ大きいなぁ」と感動することがあります。・・・が、実は最近、なんだか「月」が恋しくてなりません。それは何故か?!
・・・それは夜空に雲がかかり続けているから・・・。一体何日雨が降り続くことやら~!この長雨で被災された地域の皆さまにおかれましては、謹んでお見舞い申し上げます。
太陽はね、わかるのです。その存在が。雲があっても日中は明るくなりますし、7月に入ってからも時々ですが、きれいな夕焼けにお目にかかれたりします。では月は?あの、淡くてひっそり、慎ましやかに夜空に浮かぶ月を何日見かけていないでしょう?(そういえば今年は長雨とコロナで”七夕“の存在もすっかり忘れていたことに、今気づきました・・・)。

「お日さん(太陽)には元気をもろて、お月さんにはなんや慰めてもろてる気がしますなぁ」ある小説に出てきた印象的な言葉です。そうなのです。まさしく今、夜の静寂に、物言わぬお月さまを眺めつつ、「はぁ・・・」とため息をつきながらも、「また明日も頑張ろう」と・・・思う時間が足りていない!皆さんの心を慰め、励ます力にもなり得ましょうに・・・。

ここで、困った時の文化館。館蔵品の中に「深林明月図」という絵がございます。江戸時代の作品で、作者は紀楳亭(きばいてい)【詳しくはコチラ:収蔵品紹介】。墨の濃淡で表現される水墨画の世界は、音のない静寂な空気が漂い、禅の精神にもつながるようでとても心が静まります。そして小さく控えめに描かれるお月さま。いえいえ、明かりのない夜の風景を、細部にわたって照らし出し、際立たせているのは、お月さまの御業なのですよ。神秘の力が宿ります。

館蔵品の中には、このようにお月さまが描かれている作品が他にもあります。皆さんに元気になってもらうには、画面いっぱいにドンと描かれたお月さまも・・・良いかな?と思ったのですが、それはこの梅雨時の空気感とは違う気がして、それはそれで、また次の機会にしたいと思います。今は静寂を楽しみつつ、長い梅雨が明けるのを楽しみに、雲が晴れることを願うといたしましょう~。

むむっ!確認したところ、本日の月齢は25.8、新月に向かう有明月!月出は1:37、月入16:02?!う~ん、これは夜に見えてないワケだ(笑)。次の満月は8月4日、その頃にはスカッと元気な日常を取り戻していたいものです。

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新型コロナと文化財

新型コロナウィルス感染拡大のニュースが連日報道される中で、私たちも日々の暮らしの意識を変えて、対策に挑まなければならない状況です。
我がお城:琵琶湖文化館では、手洗い・マスクの徹底はもちろん、換気や机の配置換え、ドアノブ・電話機など人が触れるところの除菌など、出来る限りの対策をとっています。 一人一人の心掛けで、随分と変わるものですよ。

また、例年と違う事と言えば、文化館の業務のひとつに、春のお祭りや法要、地元公開などにあわせて、寄託者さまからお預かりしている文化財を一時返却する機会が増える時季でもあるのですが、今年は「規模を縮小する」「実施を見合わせる」等のご連絡をいただいております。先方さまからの電話で伝わるお声は憔悴気味で、新型コロナのため致し方無いこととは言え、苦渋の決断であったことをお察しします。地域で守られてきた行事や、代々受け継がれてきた神事を「行わない」という判断は、とても難しいことであったと思います。そこで、ふっと考えるのです。

新型コロナがきっかけでこのような危機的な状況になっていますが、しかし、それより以前から、文化財を取り巻く状況は、高齢化や過疎化、住民形態の変化などの理由から、地域で守り継承してゆくことが難しくなっていると、警鐘を鳴らされてきました。新型コロナで即決か、緩やかな自然消滅か、結果は同じことになってしまいます。

今回のこの緊急事態で、「いつものように」「例年のように」行えることの有り難さを実感したのは、自分だけではないはずです。「いつものように」「例年のように」行えないことを、残念寂しい、物足りないと、思う人々の気持ちは、それらを大切に思っているからこその感情ではないでしょうか。お祭りやイベントは、人々をつなぐ連帯感を生み、地域の結束力を深めます。「今年も無事、皆で執り行えた」という安堵感や達成感は、次につなげる力となります。新型コロナがきっかけというのは癪ですが、今一度考えるきっかけになったことは確かです。普段の「当たり前」を見つめ直し、外出自粛のこのフラストレーションを未来にぶつけましょう!「来年行えることを楽しみに」その思いがあれば日本は大丈夫です。

とは言え、子ども達のにぎやかな声が聞こえないのは寂しいもの。例年ならこの時季・・・そうです、そろそろ鯉のぼりを揚げる時季ですよ!これなら3密を避けて、道行く人々にも楽しんでもらえます。日本の古き良き風習です。子ども達の健やかな成長を願って大きく掲げましょう!そして来年はみんなでお揃いのハッピを着て、お祭りに参加するのです~!

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速報!朝日新聞[滋賀版]にて連載が始まります!!

皆さまにご案内いたします。この度、当館の収蔵品を紹介する新連載が、朝日新聞[滋賀版]にて始まることが決定いたしました!

タイトルはズバリ「滋宝 SHIHŌ ~琵琶湖文化館 収蔵品から~」です!とてもおシャレな良いタイトルだと思いませんか?!滋賀の宝至宝を意味する「滋宝 SHIHŌ 」!! ロゴも素敵です!

連載では、当館の学芸員と滋賀県文化財保護課の専門職員が、執筆を担当!仏教美術をはじめとして、国宝・重要文化財を含む絵画や彫刻、工芸品、書跡典籍、歴史資料などを、魅力的に紹介します!作品はカラー写真で掲載。わかりやすい解説のほか、その作品に関するトリビア、関連する話題、筆者の思いなど、様々な工夫を凝らして、皆さんにお届けします。

実は、今回連載の企画をいただいた際、タイトルについては、皆であーでもないこーでもないと頭をひねりながら考えておりました。ありきたりではつまらない。。。様々なジャンルの文化財を数多く収蔵する当館です。館蔵品はもとより、県内の社寺さまからお預かりしている寄託品も是非紹介したい・・・。それらを網羅する、”キャッチー”なタイトルが何か・・・。
するとある日、このコーナーの編集をして下さる担当記者さんが、「突然、天から降って来た!」と興奮気味に、「滋宝 SHIHŌ 」を名づけて下さいました(笑)。これぞ神のお告げにも等しい不思議体験!滋宝降臨!!さすがのセンスです(笑笑)。皆さんにも気に入っていただければ幸いです。

初回は明日!4月7日(火)!月2回の掲載予定となっています。デジタル版での配信もありますので、全国の皆さんにご覧いただくことができますよ!どうぞお楽しみに!!

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研究紀要第36号 発刊しました

年度末の気忙しさにアタフタしておりますが、今年も無事、桜の花の咲くころに!学芸員の調査・研究成果である「研究紀要第36号」を発刊いたしました!さて、その内容はといいますと・・・。

【網代双鳥鏡について】
和鏡のなかでも網代双鳥文(格子の地文様に鳥を二羽表したもの)に注目し、宋代・花鳥画との関連を指摘する。
【近江における明智光秀家臣団伝承について】
昨年発行の紀要第35号で、明智光秀近江出身説を語った筆者が、その後県民から寄せられた情報を元に、県内各地に伝わる明智家臣団の伝承を集成する。
【資料紹介】観音寺(草津市芦浦町)所蔵 木造十一面観音菩薩立像】
当館に寄託されている本像は、表面に赤褐色の染料が施された檜の代用檀像で、鎌倉時代以降、中世に遡る貴重な作である。
【平成31年度年報】

こちらは、研究紀要のサイトから、各項目についてPDF版のダウンロードが可能となっていますので、是非ご利用下さい。

当館の研究紀要は、昭和58(1983)年に第1号が発行され、あいだ1年のみ休刊となったものの、継続して刊行しております。それぞれの専門・研究分野によって、書かれてきた内容は様々ですが、先輩学芸員共々、積み上げて来た成果を皆さんにお返しできるよう、引き続き頑張っていきたいと思います。

研究紀要は、県内の図書館はもとより国会図書館や市町教育関係機関、博物館などにも送付しておりますので、是非皆さま手に取ってご覧くださいませ。

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この時季「花粉知らず」で、ヒノキを学ぶ

最近・・・飛んでますよね・・・困ったことに。。。そう、毎年この時季になるとスギやヒノキの花粉が飛散し、くしゃみや鼻水、鼻づまり、目の充血といった症状に、苦しんでおられる方もいらっしゃるのでは?今日は、そんな方におススメの「花粉知らず」な話題です。

こちらに、当館オススメの『ヒノキ』があります。勘が良い人はもうお気付きですね?「安土・桃山時代の近江展」に出品された檜(ヒノキ)図です。本来であれば開催期間中ですので、会場で花粉を気にせず(!)、皆さんにご鑑賞いただいているところなのですが、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、会場の安土城考古博物館さんでも臨時休館となっており、今しばらくご覧いただくことが出来ません。
ということで、ここはじっくりと、皆さんにはお家で、お勉強をしていだきましょう~。
檜図は、湖北(現:長浜市)に生まれ、狩野永徳や長谷川等伯らとともに名前を連ねる、安土桃山時代の巨匠:海北友松(かいほう・ゆうしょう)が描いた作品です。シンプルな画面構成がカッコイイ!
この屏風については、制作年代が定かではありませんが、署名の書体は、慶長7年(1602)に制作されたことが明らかな作品と近似しており、現存する友松の金碧画中、最も早い時期に位置づけられ、注目される作品です。さて、どこが友松らしいかと言いますと・・・。

などなど、友松独特の手法に注目すると、作品をより楽しむことが出来ると思います(詳しくはコチラ)。

さて、檜図の展示作業を見ていたところ、華やかな金碧屏風がまたたく間に展開していく様子が、なんともステキだったので、屏風の展示方法とともにご紹介します。
まず屏風の中央を広げて安定させ、それから左右を順に広げていきます。

最後に角度や間隔を調整して、屏風の展示の完成です。会場では幅広に見えますが、折りたたむと6分の1!と小さくなるのですね~。

これを見て、お家にある屏風を久々に広げてみようかな、と思った人は・・・ぜひ影響されてください(笑)。

「パッと見るとスギかヒノキかわからない!」という方は、葉っぱにご注目。スギは先が尖ってイガイガなのに対し、ヒノキの葉は平たく広がっている感じです。この豆知識も、是非知っておいていただきたい!!友松が描いたのは間違いなくヒノキ・・・なのですヨ。
なかなかご覧いただく機会の少ない作品ですからね。新型コロナウィルスが早く終息することを願わずにはいられません!!展覧会が無事再開できますように!
※3月25日より再開決定

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刀剣界

当館が収蔵している文化財「大津事件」にかかわる資料の特別観覧ということで、東京からご来館がありました。取材に来られたのは、全国刀剣商業協同組合の嶋田氏です。組合の機関紙「刀剣界」に、近代国家日本の発展と大津事件の関連について、概要を紹介したいとのことでした。刀剣界が注目?!そうなると、アレですね?!そうです、アレです。大津事件関係資料の「サーベル」です。

全国刀剣商業協同組合さんは、内閣総理大臣認可の刀剣商および刀職者のための協同組合として活動されています。言うなれば刀剣のスペシャリスト。「刃先と峰の間にある鎬(しのぎ)のヤマが少し減っているので、自分で(研いで)手入れをしていたのかもしれませんね」「錆が付いて銘は読めませんが、これが歴史の価値なんですよね」「いやぁ素晴らしい感激です」等々。全国で数々の刀剣類をご覧になっている嶋田氏。研ぎ澄まされた刀剣、美術品的価値の高い刀剣をご覧になる機会も多いと思いますが、だからこそ歴史的価値にもご理解のある言葉をいただけて光栄でした。

聞けば、前日は少し興奮してしまって眠れなかったとのこと。当館に来る途中で、「大津事件の碑」(現:大津市京町)にも立ち寄って来たと言っておられました。今でも多くの方が訪れる歴史を物語る場所です。明治24(1891)年に起きた事件ですが、それを物語る文化財にふれ、その地を訪れた嶋田氏は、「滋賀には歴史が生きている」と素敵な言葉を残してくださいました。当館にとってなかなかご縁が薄かった刀剣業界の方とのいいご縁。機関紙「刀剣界」にどのように書いていただけるのか、1月の発行が楽しみです。

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安定した収蔵環境の維持(施設燻蒸編)

琵琶湖文化館では多数の指定文化財を含む約9,000点の作品を収蔵しています。博物館の仕事のなかで基本的かつ最も重要な仕事は、これら”作品の保管 ”とも言えます。作品の展示公開や調査研究といった活用も、適切な保管の上に成り立っているのです。
博物館では専門の職員による日常的な作品管理だけでなく、収蔵環境の把握と対策、具体的には定期的なモニタリング、それによって得られた環境情報に基づく清掃や調湿等を行います。そして、さらに安定した収蔵環境を維持するために行うのが、虫やカビなどから文化財を守る「燻蒸(くんじょう)」という作業です。
燻蒸には、大きく分けて二つのタイプがあり、作品そのものに対して行う方法と、作品を保管する施設全域に対して行う方法とがあります。前者は一般的に収蔵庫に作品を搬入する前に行うもので、後者は安定した収蔵・展示環境を維持するため、収蔵庫や展示室といった施設全域に対して行います(写真は、空間全域に薬剤を充満させる際に行う目張り作業の様子です)。
文化館では、この施設燻蒸を年に数回、計画的に実施しており、先週も収蔵庫の燻蒸作業を実施しました。展覧会などに比べると地味で地道な作業ですが、「近江の至宝」を守る当館としては最も重要な任務の一つといえます。

学芸員W
 

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収蔵品掲載情報:近江の平成雲根志

琵琶湖文化館の収蔵品を点数別でみると、書跡・典籍・古文書といった書の類がもっとも多くなっています。その中には、経典や教義書といった信仰に関わるものはもとより、近江の歴史や文化に関する書物も多く含まれています。
今回『近江の平成雲根志』(著者:福井龍幸氏/企画:琵琶湖博物館/発行:サンライズ出版)という本が出版され、その中で当館所蔵の『雲根志』が掲載・引用されていますので、ご紹介いたします。
『雲根志』とは、近江出身の博物学者で「石の長者」といわれた奇石収集家の木内石亭(1725~1808)が著した代表的な書物です。当館ではこの『雲根志』 の版本を収蔵しています。本書では、霊異類、光彩類、寵愛類など独自の分類(3編15項目)によって、膨大な数の「石」が挿絵とともに、紹介されています。
その功績は近代以降においても各方面の学者に大きな影響を与えており、鉱物学者・益富壽之助氏(1901~1993)などが、石亭に関する事柄や国内外の奇石を紹介した『石 ― 昭和雲根志』(1967年)という書物を発刊しています。
今回は「平成雲根志」ということで、本著作の中では「雲根志的世界の石」という章を設けて、オリジナル『雲根志』にて取り上げられた奇石があらためて紹介されています。それに加えて、まさに石亭のイシ(意志or石?)を継承しつつ、著者自らが収集した奇石も紹介されています。時代を越えた奇石コレクターの熱意を感じる著作です。是非、手に取ってみてはいかがでしょうか。

学芸員W

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毎年のお戻りラッシュ

毎年この時期は、秋の特別展・企画展が終わり、それに伴って全国の博物館・美術館において出陳された琵琶湖文化館の収蔵品が、続々と戻ってきます。このため館内は連日、作品の搬入、点検で忙しい日々を過ごしています。
県内の社寺様においてもご宝物の特別公開があり、お預かりしている作品を一時返還し、公開を終えると受け取りにあがっています。
今年は、先のブログでも紹介した野洲市の兵主大社様において神馬(重要美術品)と宝塔が、米原市の成菩提院様では浄土曼荼羅図(重要文化財)と普賢十羅刹女像(滋賀県指定文化財)の公開があり、草津市の観音寺様では狩野永徳作と伝わる王会図(草津市指定文化財)が披露されました。
また大津市の乗念寺様では69年ぶりに帰省された聖観音立像(重要文化財)の特別公開がありましたが、無事に昨日文化館へとお戻りになりました。
本日も公開を終えた成菩提院様のご宝物を学芸員が受け取りにあがり、無事、輸送・点検を終えて、収蔵庫におさめさせていただきました。
お戻りラッシュは、まだまだ12月まで続きます。

学芸員W

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「検診」の時期となりました

いつの間にか立冬も過ぎ、暦の上ではもう冬です。「このごろなんだか食欲が止まらなくって。。。」とおっしゃるあなた!それは冬眠の準備に入っているのかも?かく言うワタクシも、あと2週間後には生活習慣病検診を控えているというのに、甘い物が控えられないこの頃です。。。

「検診」と言いますと、文化館で行われている収蔵品の点検調査も、資料の大きさ(≒身長・腹囲?)を測ったり、(レントゲンではありませんが)写真撮影をしたりして、状態に変化がないかをチェックする、ある意味、資料にとっての「検診」なのかもしれません。

 先週のことですが、文化館から他館へ通年展示で貸出ししている考古資料について、その「検診」の時期が参りましたので、先方さまにご協力をお願いし、一時返却をしていただきました。今回受診するものは、高島市マキノ資料館で展示していただいていた宮遺跡出土の須恵器の器と、そこに入っていた和同開珎という奈良時代の銭。高島市の高島歴史民俗資料館の学芸員さんたちに大事に運ばれて、久々に文化館へ戻ってまいりました。

返却された収蔵品は、その後文化館で、細かい部分まで計測したり、写真を撮ったりと、「精密検診」を受けております。学芸員さんの行うこの「検診」、一見静かに淡々と進められているように見えますが。。。漏れ聞くところでは、こんな「問診」があったとか、なかったとか。。。

学芸員さん:最近、具合の悪いところはありませんか?
須恵器さん:もともと持病のカッケ(欠け)があって。。。
学芸員さん:ああ、そうですね。カルテ(調査簿)にもきちんと書いておきますね。。。
急な変化がないようなら、今日は写真だけ撮って、しばらく様子を見ましょうか?
須恵器さん:セッコウは、まだ入れてもらえないんですね。。。

それはさておき、「検診」が済みましたら、またマキノ資料館の方で展示されることになっております。湖西の方へ足を延ばされる際には、ぜひマキノ資料館にお立ち寄りいただき、その元気な姿をご覧いただけると幸いです。
マキノ資料館の見学は事前予約制となっています。予約・問い合わせは、高島歴史民俗資料館 TEL:0740-36-1533/FAX:0740-36-1554 までお願いします。)

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一休さんゆかりの寺院と版木

守山市には「一休さん」の愛称で親しまれる一休宗純(1394~1481)ゆかりの寺院があります。その名を少林寺といい、一休宗純の高弟である、桐嶽紹凰(とうがくしょうほう・1451~1534)という人物によって開かれたお寺で、一休さんゆかりの寺宝(肖像画や彫刻など)も複数所蔵されています。
その中には、現存が確認される一休宗純画像(頂相)のうち、二番目に古いものが伝来しており、僧侶の肖像画には珍しく朱色の太刀が一緒に描かれていることから、通称「朱太刀像」と呼ばれています。
この朱太刀像とともに、これを原画とした、江戸時代作の版木(複数刷るために彫られた木板)も伝来しており、こちらは現在、琵琶湖文化館に寄託されています。この版木を、お寺でお使いになられるということで、先日一時返還させていただきました。
というのも、古くから数十年ごとにご住職自らこの版木を用いて数百部摺刷し、さらに軸装にしつらえて、檀家さんをはじめとする所縁のある方々にお配りされているためです(このため、版面には長年使用された墨摺りの痕跡を確認することができます)。
数十年ぶりのこの機会。今でも生き続けるお寺さんと地域社会との関係、また一休信仰のカタチをここにみることが出来ます。

学芸員W

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井伊家伝来古文書(近代文書)の調査

徳川家譜代の大名で、ながく江戸幕府を支えた彦根藩の井伊家。そんな井伊家には、当時の幕藩体制や藩政等の実情を知ることのできる古文書が数多く伝来し、現在、彦根城博物館さんに保管されています。そして、これら伝来古文書の多くは、約40年前に網羅的な調査が行われ、膨大な資料の全容が明らかとなり、成果は『彦根藩文書調査報告書』(1~5巻)として、まとめられています(文書群のうち桃山~明治初期までの2万7800点は平成8年に重要文化財指定)。

そして現在、彦根城博物館さんでは、井伊家伝来古文書のうち近代文書(明治初期以降~)の調査が進められており、先月も調査員である大学の先生をはじめ、県内の学芸員、大学院生等が参加して、集中調査(史料調書作成、史料整理等)が実施され、当館も参加させていただきました。

激動の時代に井伊家がどのように歩みを進め、また「近代の彦根」がいかに形作られたのか、今後も数年かけて調査を行っていくということで、歴史の街・彦根の魅力がさらに深まりそうです。

学芸員W

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収蔵品放映情報:相撲幟 技と清流が生んだ色彩

このブログでも度々、収蔵品の展覧会への出陳情報とあわせて、本や雑誌などで紹介、掲載されていることをお伝えしていますが、実はテレビなどの動画コンテンツでもよく紹介されています。
今回は東海地方のテレビ局さんから収蔵品の画像利用についてお問い合わせをいただき、先日、成果品のDVD(右写真)をご寄贈いただきました。

この番組は相撲幟(のぼり)制作の伝統技術についてのもので、これまであまりご縁のなかった世界のお話しでしたが、相撲の歴史を紹介するということで、当館に寄託されている御上神社(野洲市)ご所蔵の滋賀県指定文化財「相撲人形(行司・力士)一組」が取り上げられました。
鎌倉時代に遡る木造彩色の相撲人形は、現存する多くの相撲人形が力士単体の像であるなか、力士が組み合い、行司とセットで伝来する非常に珍しい作例で、当代の相撲神事の実像を今に伝えてくれる貴重な作品です。
 
なお、日本ケーブルテレビ連盟が運営する動画コンテンツサイト「じもテレ」でも、9月29日まで動画が公開されますので(動画はコチラ・本品が登場するのは、3分39秒頃から)、東海地方以外の方でもご覧いただけます。
番組の主旨はあくまでも、伝統的な相撲幟の制作技術を取り上げたものですが、王道の歴史系情報番組だけでなく、このように意外な場所?で滋賀の文化財が活躍していることがありますので、ぜひぜひ、チェックしていただければと思います。

学芸員W

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近世絵画の名品たち

このホームページの収蔵品紹介コーナーでも多数取り上げているように、琵琶湖文化館には仏教美術や歴史的な資料以外にも、江戸時代の絵画(近世絵画)の名品を数多く収蔵しています。そのため、近世絵画の出陳の依頼や本やテレビで紹介したいとの相談をよく受けます。

今回もその一例で、江戸時代の美術を網羅的に紹介した河出書房新社の新刊『江戸の美術 大図鑑』(監修:狩野博幸氏・並木誠士氏・今橋理子氏)において、当館の近世絵画5点が紹介されています。
掲載されている作品は、復古大和絵の土佐派に学んだ菊池容斎(1788~1878)の「鯉遊之図」や琳派・酒井抱一の内弟子である鈴木其一(1796~1858)の「紅梅水鳥図」、近年、奇想の画家として大人気の曾我蕭白(1730~1781)の「叡山図」(滋賀県指定文化財)、紀州三大南画家と称された桑山玉洲(1746~1799)の「山水図」、そして大陸の写実的な画法を学んだ宋紫石(1715~1786)の「柳汀双禽図」です。
このように琵琶湖文化館では、近世画壇の各派・各画風の作品を幅広く収蔵しており、さらに近江ゆかりの画人、画題の作品も重層してあります。
上記の作品はホームページの収蔵品紹介ですべてご覧いただくことが出来ますが、江戸時代の美術史全体のなかでどのように位置づけられる画人なのか、作品なのか、この本を読むと一層わかりやすく理解することができます。
このような形での当館の近世絵画分野の公開活用についても、皆さんに是非、注目していただければと思います。

学芸員W

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「湖南 花の寺と磨崖仏めぐり」2017

湖南市では毎年、4月から6月にかけて「湖南 花の寺と磨崖仏めぐり」と題した一連のイベントが行われています。
イベント期間中には花の名所として知られる市内4ヶ所のお寺様(西應寺、正福寺、長寿寺、善水寺)の桜やハギ、サツキなどが見頃を迎え、湖南の仏教美術の一つの特色である、境内や周辺に所在する「摩崖仏(まがいぶつ)」とともに拝観することができます。また近くの岩根山を歩くトレイルウォーキングイベントなどもあわせて開催されます。
また一部期間に限ってですが、それぞれのお寺様では寺宝の特別公開が行われます。当館では、これに伴ってお預かりしている正福寺様の「鰐口」(滋賀県指定文化財・鎌倉時代)を、一時返還させていただきました。正福寺様ではこのほかにも、湖南市指定文化財の「山越阿弥陀如来画像」や「十三仏画像」が公開される予定です。(公開期間は6月1日(木)から6月7日(水)まで。※そのほか詳細についてはコチラをクリック)。
これを機会に是非、自然の美しさとともに湖南の仏教美術の魅力にもふれていただきたいと思います。

学芸員W

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春の例大祭と指定文化財

以前のブログで、浅井氏の追善法要(仏事)に寄託品の「絹本著色浅井長政像」(県指定文化財)を一時的にお返ししていることをお伝えしましたが(詳しくはコチラ)、当館では、祭礼(神事)の際に寄託品を一時返却させていただくこともあります。
先週も春の例大祭にあわせて、指定文化財を返却させていただき、本日、祭礼でのお役目を終えて無事に当館にお戻りになりました。

今回一時返却したのは、東近江市のとある神社ご所有の鬼面2面で、毎年この時期にお返ししています。地元では「火祭り」と呼ばれ、多くの松明がたかれますが、他所のお祭りに比べて特徴的なのは、祭礼のなかに「御面渡御(おめんとぎょ)」という儀礼があることで、行事がこの鬼面2面を捧持し、囃子方を従えて一時間近くかけて集落を練り歩きます(左の写真はその時の様子です)。今回その様子を間近で見学させていただきましたが、祭礼中は周辺一帯に交通規制がかかり、大道路などでは交通警備員に誘導されながら慎重に運ばれていました。

また響き渡る囃子方の鳴り物にひきつけられて、家より続々と人々が外に出て来て、この鬼面に膝を屈し、深く頭を下げる姿は優れた美術工芸品であると同時に、今でも生きた信仰の対象(ご神体)であることを再認識する機会となりました。

ここでは面(おもて)という有形の文化財と信仰という無形の文化財が、相互に連関して独自の郷土文化を守り育んでいます。

学芸員W

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毎年の追善法要と寄託品

長浜市小谷山の麓にある小谷寺では毎年4月、北近江の戦国大名・浅井氏の追善法要が営まれます。当館では、それにあわせて寄託品の県指定文化財「絹本著色浅井長政像」を日帰りでお返しにあがっています。
法要では本堂の上座に本図が掲げられ、読経のなか参列者の方々が焼香するなど、終始法要の主役となります。

浅井長政(1545-1573)といえば、織田信長の妹・お市を正室とするなど織田家と友好関係を築くも、後に信長と敵対。天正元年(1573)には居城である小谷城が攻め落とされ自害し、浅井三代の歴史は幕を閉じます。

本図には、徳勝寺(徳昌寺・浅井氏の菩提寺)の住職・源秀の天正2年(1574)の賛文があり、長政の一周忌にあわせて、京の絵師に描かせたことがわかります。ちなみに長政の画像には、大別して本図と高野山の持明院本の二系統があり、後世、この原図2幅をもとに多くの作品が模写、制作されました(長浜城歴史博物館蔵本、安土城考古博物館蔵本など)。そういった意味でも貴重な作品ですが、今でも地域の方々の崇敬の対象としてお使いになられていることも、大変意義深いことといえるでしょう。

最近、近くを通る北陸自動車道に「小谷城スマートインターチェンジ」(3月25日開通)ができ、小谷寺を含め、小谷城址周辺へのアクセスはずいぶん良くなっています。これを機会に小谷城址や周辺の社寺、資料館へ是非、足を運んでみてはいかがでしょうか。

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無事にご帰還されました。

過去のブログでも紹介しました湖東のお寺様から一時寄託されていた仏像4躯(詳しくはコチラ)が、先日、お寺へお帰りになりました。
昨年からの本堂の防災工事に伴って、堂内に安置されていた重要文化財4躯を、約9ヶ月間当館にて一時保管させていただいていました。そして今回、本堂改修が無事完了したとのことで、県教委文化財保護課の職員の方や美術品取り扱い専門業者の方々などとともに、お返し上がりました。
返還した御像の中には、等身大の一木割矧造(いちぼくわりはぎづくり)の像などやや大型の作品もあり、総勢10名という大所帯での搬出・搬入作業となりました。現場では、お寺の方や檀家さん、そのほか関係者の方など多くの人々の見守るなかで、無事、須弥壇へ安置させていただきました。移動も含め一日がかりの返却作業でしたが、天候にも恵まれ、滞りなく作業を行うことができました。

4月、5月には各地の神社で春の例大祭が行われますが、それに伴って、当館ではご寄託いただいている宝物(御面など)の一時返還もピークを迎えます。当館のそういった活動も随時ブログで紹介していきますので、どうぞお見逃しなく!!

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ガラス乾板の整理③

さて、そろそろガラス乾板の整理も佳境です。ほんとはブログを書く時間も惜しいほどの佳境です(笑)。挑んでいるのは、とあるご縁で文化館にある「年代物」のガラス乾板です。
これがまた貴重なガラス乾板で、撮影された時期は不明ですが、個々の乾板には「昭一〇.七.七日写」などの日付が記されており、ということは本体の撮影はおそらく。。。そのガラス乾板に写っているは、県内の国宝や重要文化財などの指定文化財です。僕たちは「仏像ワンダーランド」への扉を開けてしまったようです。。。ようこそお越いでヤス(笑笑)。

これらのガラス乾板、大切に個別包装されており、「○○神社 □□立像 蒲生町」など、先輩学芸員さんと思われる誰かが、一度整理をして下さった跡がありました。しかもほとけさまの種類ごとに箱で分類されています。ナイスです先輩!・・・しかしここで気付くべきでした。町名が平成の大合併、市町村合併する前の表記であることに!しかもガラス乾板本体に記載されているのは、モチロンそれ以前、昭和初期の郡および町名!・・・あぁ、もはや既に記憶に薄い・・・「キタ!愛知郡!」「懐かし!伊香郡!」。現代っ子の僕たち?は、神社やお寺さんの現住所を調べるのにも一苦労することとなりました。

でも、今までのガラス乾板と違って、所在地も所有者も資料名も書かれているのだから「これは楽勝でしょう!」と、タカをくくっていた僕たち。そうは問屋ガ卸シマセン。作業を始めて3分で悲鳴・・・「昭和の文字が読めません(泣)!!」・・・乾板に書かれている文字はとても個性的で、且つ、部分的に崩し字、旧字体も混じっています。うぅ、また調べなくてはなりません・・・見る人が見れば簡単に読めるのでしょうが、これ、なんて書かれているかわかります?中には文字がかすれて消えてしまっていたり、暗号にしか思えない不可解な文字も。。。そんなこんなありましたが、2日もすると作業に目が慣れて、随分と読めるようになりました。フッフッフッ、僕たちも成長するのでゴザイマスヨ。(写真解読【帝釈天立像】【四号】)

結局、ワンダーランドの中には、仏像に限らず工芸や典籍、絵画作品も残されていることが判りました。作業を終えて、図らずも僕たちは、昭和初期の市郡町村にタイムスリップし、改めて滋賀県の文化財の層の厚さを堪能してきた・・・そんな気分です。いい旅でした。

かくして!僕たちが整理・リスト化したガラス乾板、その数1,591枚!当初想定していた数を上回る枚数となりました。約1ヶ月に渡る地道な作業。。。半分目が死んでる日もありましたが、なんやかんやと楽しく作業できました。意外とこういう作業が大好物な自分?新しい発見デス。
感謝すべきは根気よく一緒に取り組んでくれた職場の仲間です。くじけず頑張ってこれたのも皆さんのおかげです。とってもいいお仕事ができました!

さぁ、今年度も残り1週間!えっ?もう?!僕の本業:事務方の決算が、事業報告が!!・・・何をしてても追い込まれる運命にあるようです。頑張ろ・・・

筆:あきつ

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ガラス乾板の整理②

はい、今日も元気にガラス乾板の整理をしています。2月下旬から始めたこの作業も、ずいぶん手慣れてきましたヨ。
「展覧会資料」群のヤマを越えた僕たちは、次に「館蔵品」シリーズに突入しました。これは楽チン。だって「館蔵品」。見れば「誰」の「何」ていう作品か、すぐわかる。・・・と思うでしょ?!・・・そうですよ、すぐにわかるのは学芸員さん・・・だからガラス乾板にもあえて何も書かれていません・・・ヒントすらない。でも学芸員さんは本業が忙しいので、この整理作業のお役目をいただいたのは、僕たち、あきつ組・・・。ガラス乾板が入っている箱に「館蔵品 絵画」「館蔵品 書蹟」って・・・文化館がどれだけ所蔵していると思ってるのーッ!と、僕はいったい誰ニ、何ニ向かって叫んでしまったのでショウカ・・・とにかくやるしかないのです。。。
館蔵品の写真台帳とリストをつき合わせて、分からないところはベテラン学芸員さんに聞きながら、コツコツと作業を進めます。書跡・墨跡なんて、もはやトランプゲームの「神経衰弱」状態です・・・「あ、この書体どこかで見た」「この人の字は特徴があって忘れられん」「潔いこの一筆は誰?」・・・台帳とにらめっこしながら、行ったり来たりの作業です。
(これでも、ここにあるガラス乾板は、館蔵品のほんの「一部」なのですヨ。)

そして忘れてはいけないのが、作業する相手がガラスであること。学芸員さんのように白手袋を着用して、少々年代物なので取り扱いは慎重に・・・そして情報をパソコンに入力してリスト化・・・。この作業で、肩はパンパン、目はシバシバになり、また机作業で動きも少ないため、一気に老けた気がします。。。

でも、「館蔵品の作品がガラス乾板に残っている」っていうのも、ちょっと自慢じゃありません?!琵琶湖文化館の歴史の一部ですよね!そう思うと、とっても大切な作業に関わらせていただいているのだと、有り難い気持ちになるのです(そうなのだと自分に言い聞かせ・・)。なんだか僕たちの知らない文化館がまだまだ出てくる気がします。

さぁ、次は「何」シリーズ?!・・・悩ましいほどいっぱいあるのです~(泣笑)。

筆:あきつ

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ガラス乾板の整理①

はい、このところブログの更新がままならず、スミマセン。というのも、この数週間、僕たちは「ガラス乾板(かんぱん)」と格闘していたのでございます。
みなさん「ガラス乾板」ってご存知ですか?僕もこの職場へ来て初めてその存在を知ったのですが、教科書にも出てくる坂本竜馬の写真を撮ったのは「湿版(しっぱん)」、で、その後に使われたのが「乾板」、いわゆる写真感光材料です。ガラスで出来ているため重くてかさばり、割れやすいので、その後フィルムが出てくるとそちらが主流となり、現在ではその存在を知る人も少ないかもしれません。

そのガラス乾板が、当館には「資料」として残されています。その整理を進めるわけですが、いざ作業を始めてみると、いろいろなシリーズに分類できることがわかりました。ですが、写っているものが「何」なのか、乾板はガラスなので、そこには何も書かれていません。情報としては箱に書かれているタイトルのみ・・・「湖東焼」「近江画人遺芳」「南蛮資料」「南画」「旧館写真」・・・南画って何が???その箱の中に、乾板が重ねられて入っている・・・もしくは大切に紙に包まれて入っている・・・一体どうすれば?
最初はハテナマークばっかりだったのですが、これが琵琶湖文化館の前身である滋賀県立産業文化館(昭和23年開館)から琵琶湖文化館の初期(昭和40年頃)までの間に開催された展覧会のククリであるらしいことがわかったので、ほっとひと安心。「旧館」とは産業文化館が武徳殿にあった頃、「現会館」とは旧滋賀会館に移った頃のこと・・・よし、なんとかなる・・・。
と思いきや!!その頃の展覧会のしおりやパンフレットには、ほとんど写真が掲載されていません。ですよね・・・今みたいに写真がたくさん載っている図録なんて、当時ではありえませんよね・・・甘かった・・・しおりに目録が載っていれば良い方で、中には作者紹介のみとか・・・となると、次に探すのは展覧会を開催した時の関係書類を綴じた綴りです。しかし、これまた先輩学芸員さんたちの達筆な文字が・・・読み辛い・・・。

そんなこんなありましたが、長い年月の間に離ればなれになっていた資料が「群」にまとまってくると、「こんな展示もしていたのか!」とちょっと感動。。。「この展覧会の出品作品全部並べて再現して欲しいなぁ」「面白そうな展示やなぁ」と、気持ちは当時の会場へ・・・陳列の様子や、写真パネル展を開催した近江の「石造美術」や「庭園」、「建物」など、今も現地やカラーのパンフレットなどで見られるものでも、白黒写真だとどうしてこんなに郷愁に駆られるのでしょうか。
ちょっと嬉しかったのが、産業文化館の報告書でしか見たことのなかった写真が出てきたこと!感動のあまり「アナタ!ここに!乾板にいらっしゃったの!!」と声に出してしまったくらい(笑)。このような思わぬ出合いが整理作業を楽しいものにしてくれました。
乾板を傷つけないように白手袋をしての作業は、緊張感もあって肩が凝って大変です。ですが、ひとつひとつのピースを合わせていくジグソーパズルみたいで達成感もあります。地道な作業ですが、僕たちの「乾板整理」は、まだまだ続きます。さぁ、次は何シリーズ?

筆:あきつ

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公文書の保存と活用

先月、滋賀県庁にて「未来に引き継ぐ公文書 ― 時代を越えた共有財産 ―」と題した講演会が開催され(講師は井口和起氏[京都府立総合資料館顧問・福知山公立大学長])、当館の職員も出席させていただきました。
平成23年4月に「公文書等の管理に関する法律」が施行され、地方公共団体にも管理対象となる公文書等について、ますます適正な管理に努めるよう求められるようになりました。滋賀県でも「未来に引き継ぐ新たな公文書管理を目指して(方針案)」などが策定され、適正な公文書管理の検討が進められています。
そのような中で、平成25年3月には「滋賀県行政文書」(戦前の9,068簿冊の公文書)が滋賀県指定文化財に指定されました。本資料の中には、旧藩県引継書類、郡役所文書、琵琶湖疏水関係文書、大津事件関係文書などが含まれており、滋賀県のみならず日本の近代史を語る上で貴重な資料群です。
20161216-1大津事件といえば、当館の収蔵品にも「大津事件関係資料」(滋賀県指定文化財)があります。凶器のサーベルや血染めのハンカチは殊に有名ですが、実はその大部分を占めるのは事件の顛末やその後の動向を伝える公文書の類です。そして、この公文書によって、事件の内容を詳しく知ることが出来るのです(例えば写真は事件現場の略図《行兇者近傍配置巡査取調調書のうち露国皇太子殿下ヲ傷ケタル現場略図部分》)。このような公文書は県民の共有財産であり、滋賀県の歴史を語るうえで欠かすことの出来ない歴史的文書といえます。
滋賀県庁内にも滋賀県県政史料室という施設があり、滋賀県が所蔵している歴史的文書を県民の皆さんに利用していただく場所を提供しています。また、これら歴史的文書を活用した企画展示も定期的に行われています。皆さんも是非一度、足を運んでみてはいかがでしょうか。

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「つながる美・引き継ぐ心」 番外編:お不動さま

現在、滋賀県立近代美術館で開催されている「つながる美・引き継ぐ心-琵琶湖文化館の足跡と新たな美術館-」展。みなさま、この展覧会の第3章「つながる」に出陳されている不動明王さまを、もうご覧いただけましたか?
このお不動さまは、近江八幡市の伊崎寺さまのご所蔵で、平成18年に国の重要文化財の指定を受けた際に、琵琶湖文化館で展示をさせていただくこととなり、その時のご縁で今回出陳されています。(現在は、この不動明王さまは比叡山国宝殿で管理されています。)

先日、お不動さまを寺の本堂から琵琶湖文化館へ搬入した時の、懐かしい写真を見つけましたので、2016isaki-1今日は是非、皆さんに当時の職員さんたちの武勇伝(?!)を紹介させていただきたく。。。
平成18年3月25日、琵琶湖文化館から学芸員さんとこの日出勤していた男衆(事務方・警備員)含む6名、滋賀県教委文化財保護課から2名、長浜市の学芸員さん1名の応援をいただき、総勢9名の強者たちが、近江八幡市の湖岸にある「伊崎の竿とび」で有名な伊崎寺のお山へ向かいました。これだけの人数で出陣?!した理由は、不動明王坐像とその光背、附の二童子像を、梱包の専門業者にお願いするでなく、自分たちでほとけさまを山から下ろし、公用車で運ぶという重大な使命があったからです。2016isaki-2
朝一に文化館を出発、お寺さまに着くと、先ずは堂内でほとけさまの状態確認。それから梱包、輸送、文化館に搬入・・・と、お戻りはお昼をまわってました。

この日、文化館でお留守番をしていた僕が、よ~く覚えていることがあります。それは無事にお不動さまが文化館に到着され、ほっとした時の皆さんの会話です。
学芸員ではないものの、力自慢としてこの日応援に駆り出された職員さんたち。大仕事に緊張されていたのでしょうね。高揚感というか、達成感というか、皆さん一様にテンション高めでした(笑)。「普段慣れていないので、梱包資材を運ぶだけでも手が震えたわ。」「ベテラン学芸員さんの指導があったからこそ(言われるとおりに)うまく運べて良かった。」「足元がズルッといきそうだった時、後ろから支えて貰って本当に良かったわ。助かった有り難う。」など、顔を紅潮させて話しておられたこと、僕はよ~く覚えています。あ~僕も行きたかったな、と(笑)。

もちろん文化財を扱われるのは専門知識と技術をお持ちの学芸員さんです。この時も何でもない顔をして、笑って話を聞いておられました。でも、事務方が必要とされてお手伝いに駆り出されるということは、それだけ信頼されているということです。時にはこうして助け合い協力させてもらうことで、展覧会が学芸員さんだけのものではなくなる・・・それが万年お留守番の僕にとっても、とても嬉しい出来事だったのです。このアットホームな感じ(?)が、琵琶湖文化館ならではのエピソードだと思います。

さて、今回の展覧会でそんな懐かしい思い出の「ご縁」をいただきましたので、この時行きそびれた僕は、皆さんが行かれた道を、いざ伊崎寺へ、行ってみる決心をいたしました!20161111今でこそ参道には砂利が敷かれてとても歩きやすいですが、当時は石がゴロゴロしていてとても歩きにくかったと聞いています。・・・そうかぁこの道をお不動さまを背負ってボチボチ下ったか・・・この辺かな?ズルっといったの(笑)・・・頭の中では当時の会話が思い出されてとても楽しい道行。駐車場から15分ほどで本堂に着くと、琵琶湖から吹く風の音がなんとも心地く、そこはまさしく癒しのパワースポットでした。

来れて良かった~!っと、大満足の帰り道、「あ、駐車場が見えた」と油断したところで、僕の足は「ズルっ」と・・・コケてませんよ?!そこは踏ん張りましたよ?!!・・・きっと僕は間違いなく、文化館ファミリー・・・と、再確認した帰り道なのでした~~ イヒッ!!

筆:あきつ

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「つながる美・引き継ぐ心」 番外編:仮面

現在、滋賀県立近代美術館で開催されている「つながる美・引き継ぐ心-琵琶湖文化館の足跡と新たな美術館-」展。みなさん、この展覧会の第3章「つながる」に出陳されている仮面(赤鬼・青鬼)を、もうご覧いただけましたか?234
この仮面は、東近江市の日吉神社さまのご所蔵で、毎年春の例祭に合わせて一時返却をさせていただいている大切な文化財です。実は先日、地元の自治会さまから「祭礼には使用していない他の仮面も是非町内の人に見て貰いたい」というご依頼を受けて、「ふれあい広場」という地域イベントに、急きょ参加・展示をさせていただくこととなりました。

当日は見事な秋晴れに恵まれ、会場となった公園には大勢の方が集まり、マジックショーやカラオケ、地元有志のバザーなどが行われていて、それはそれは大変にぎやかなイベントとなっていました。
早速、施設の中の一角に設けていただいた机で梱包を外すと、先ずはみなさん「なんと厳重に巻いて持って来てくれはるのやね」と驚かれました。小さいお面ですが、衝撃を与えないように薄葉紙と綿布団で何重にもお守してお運びしております。
20161101いざお預かりしている3つの仮面【能面:痩男(やせおとこ)・大癋見(おおべしみ)、狂言面:祖父(おおじ)】を並べると、地元の皆さんが興味深そうに覗きに来られます。「祭礼の仮面は毎年見ているけれど、他にもあるとは知らなかったわ」「どれくらい古いのかしら」(:江戸時代です)「これらも指定品になってほしいな」など、私たちもさまざまなお声を聞かせていただく機会となりました。

ひと段落しておいとまさせていただいた帰り道、「地元のイベントにあんなにたくさん、子どもから大人からお年寄りの皆さんも、み~んなが参加される地域も今どき珍しく盛大でしたね。」『それだけ地域の結びつきがしっかりしているということ。だからお祭りも文化財も、地元の宝として大切に残していかなければという意思も受け継がれる。』「ほんとですね~。安心ですね~。」と、学芸員さんと話しながら文化館に戻りました。

地元のみなさんの「誇り」をお預かりしていることをしっかりと胸に刻み・・・なんだかとても心晴れ晴れ、いい会場に呼んでいただきました。有り難うございました。

筆:あきつ

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